【デート・ア・ライブ】 デート・ア・ガンダム -武×士道×グラハム- 【機動戦士ガンダム00】   作:LN58

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第11話 この広い大地と仲間達のこと Bpart

――――――炎の精霊〈イフリート〉とのデート当日

 

士道「あ、あと1分……」ドクンドクン

 

士道「俺がやるんだ……。俺がやるしかないんだ……。一人でもやる他ないんだ……」ブツブツ・・・

 

士道「俺にしか精霊は救えないんだから…………」ブツブツ・・・

 

――――――

神無月「士道くん、リラックスしてください。今の士道くんは挙動不審ですよ」

――――――

 

士道「あ、ああ……」

 

士道「す、すみません……」

 

士道「俺がやらなくちゃならないのに、こんなんで…………」

 

――――――

神無月「自信を持ってください」

 

神無月「あなたは たしかに あなたの守護天使の大いなる導きがあって これまでの〈デート・ア・ライブ〉を遂行してきました」

 

神無月「そして、今はその導きを受けることはできない状況ではあります」

 

神無月「しかし、あなたの中にはあなたの守護天使と共にあった記憶と経験が残り続けているのです」

 

神無月「その上で、あなた自身が考えて出した“第5の選択肢”が結果として全て良い方向に事態を進めてきました」

――――――

 

――――――

神無月「自分を信じてください」

――――――

 

――――――

神無月「グラハム氏は誰よりも士道くんの導き出した答えを重んじてきました」

 

神無月「我々もまた、士道くんの嘘偽りのない真心のこもった想いこそが対話の答えだと確信しています」

――――――

 

士道「――――――『自分を信じる』」

 

――――――

神無月「そうですよ」

 

神無月「あなたはこれまで不可能と思われていた特殊災害指定生命体“精霊”を一度ならず二度もデレさせた稀代のプレイボーイなんですから」

 

神無月「今回も必殺の“泣き落とし”が炸裂する様を期待していますよ」

――――――

 

士道「……ありがとうございます、神無月さん」

 

士道「そういうことなら、期待していてくださいよ、俺の必殺技を」ハハッ

 

士道「そうだ。こういう時だからこそ平常心なんだ」

 

――――――

令音「シン、琴里を地上に送った。まもなく そちらに着くはずだ」

 

令音「たのんだよ」

――――――

 

士道「はい」

 

士道「…………フゥ」

 

士道「ああ。『予測不可能な事態に対応し』てみせるさ。『口ではなくて、態度でな』、グラハム・エーカー!」

 

 

コツコツコツ・・・・・・

 

 

士道「!」

 

士道「よう、琴里」

 

琴里「またせたわね」

 

士道「あっ――――――」ドクン!

 

琴里「……おめかしした女の子に会って一言もなし?」ハア

 

琴里「いの一番に教えたと思ったけど――――――」

 

士道「……おめかししてくれたんだな」

 

琴里「ま、まあね」

 

琴里「一応、デートって形式をとってるんだし、士道がアクションを起こすきっかけくらいは作っておくわよ」プイッ

 

琴里「褒められて悪い気はしないし……」ボソッ

 

 

士道「なら、『琴里は今回のデートをずっと楽しみにしてくれていた』ってことだよな?」スッ

 

 

琴里「え」パシッ

 

琴里「あ、士道、急に何を――――――」ペタッ

 

琴里「へっ!?」カア! ――――――急に手を男の人の心臓の位置に持っていかれ、

 

 

士道「わるい、琴里。俺、落ち着こうとしたけど、全然 心臓の高鳴りが止まらないんだ……」ドクンドクン

 

 

士道「お前の姿を見た瞬間に 頭の中が真っ白になって 気が利いたことを言えそうにない…………」ブルブル・・・

 

琴里「そ、そうなんだ……」ドクンドクン ――――――触っているだけで自分の心臓も高鳴っていく!

 

琴里「そ、そう! そんなに私とのデートが楽しみだったの! 感激のあまりに震えが止まらないだなんて、す、少しは感心したわ!」アセアセ

 

琴里「だ、だからね、士道!」アセアセ

 

琴里「あなたが普段はグズでノロマで鈍感なんだってことは知り尽くしているんだから、」

 

 

琴里「私の前で無理にカッコつける必要なんてないわよ!」ドクンドクン

 

 

士道「こ、琴里……」

 

琴里「むしろ、甘い言葉を囁いて ところかまわず女の子を口説きまくる プレイボーイ全開の士道なんて想像しただけで気持ち悪いわ」

 

琴里「そうよ、あなたは“兄貴”じゃなくて、“おにーちゃん”なんだからさ」フフン

 

士道「あ……」

 

士道「あ、ありがとう、琴里……」

 

琴里「まったくもう、世話が焼けるんだから、士道ったら」

 

琴里「本当に……」フフッ

 

琴里「もう大丈夫でしょう? こんなところで立ち話もなんだし、さっさと行くわよ。あまり待たせるもんじゃないわよ」

 

士道「ああ。そうだな。わるかった、琴里」

 

琴里「――――――」フフン

 

 

――――――さあ、私たちの戦争〈デート〉を始めるわよ。

 

 

――――――

神無月「極まったあああああああ!」

 

神無月「ここで 士道くん! 死中に活を見出し、抑えきれない不安感を逆手に取った まさかの新技だぁ!」

 

令音「自分が怒っている以上に激怒している人が近くにいると不思議と怒りが収まるアレと同じことだね」

 

令音「以前に〈ナイトメア〉時崎 狂三(分身体)の凶行に対抗して 時崎 狂三 以上の覚悟を示した時と同じく、」

 

令音「今回の霊力封印で大きな問題となっている 琴里の中の増大した不安感を減らして ある程度の平静を取り戻す効果を発揮している」

 

神無月「たしかに、それもあるんですが、やはり 士道くんは“現代のサムライ”なだけあって 無意識に相手のツボにはまる言葉運びをしていますよ」

 

神無月「今回のデートとしては、相手を楽しませるよりも 相手の中の不安感を払拭することが第一というわけで、」

 

神無月「ここでは『俺がいるからお前は大丈夫だ』だとか言って 相手を安心させるのがセオリーかと思ってましたが、」

 

神無月「まったく その逆! 自分の弱さを曝け出す勇気を最初に持ってくるあたり、士道くんのセンスは本物です!」

 

令音「大きく出るべき相手か、本音を見せるべき相手か、その見極めができているというわけだね」

 

令音「大きな不安を抱えている琴里としても 自分と同じぐらいに不安を抱えているシンを見て ホッとしたわけだ」

 

令音「だが それ以上に、相手の手をとって自分の心臓の高鳴りを直に感じさせるスキンシップのやり方には脱帽だよ。見事としかいいようがない」

 

令音「この大胆かつ情熱的なアプローチはシンの守護天使の在り方を彷彿とさせるね」

 

神無月「士道くん! いいです! 実にいいですよ!」

 

神無月「あなたの中にはたしかにあなたの守護天使の魂が息づいています!」

――――――

 

 

――――――遊園地『オーシャンパーク』/ プールエリア

 

十香「おおー!」

 

十香「スゴイな、これは! 建物の中に山や湖があるとは!」

 

四糸乃「流れるプールです!」

 

よしのん「テンション上がるね、これは!」

 

十香「シドー! あの波の立つ湖に入ってもいいのか!?」

 

士道「ああ、もちろんだ」

 

十香「よーし! いくぞ、四糸乃!」

 

四糸乃「は、はい――――――」

 

士道「って、まてまて、二人共」ガシッ

 

士道「プールサイドは滑りやすいから走っちゃダメだ。ここは小さい子供だっているんだからな」

 

十香「わ、わかったのだ、シドー」

 

士道「よしのんも、ほら。流されないようにしっかりとな」ギュッギュッ

 

よしのん「おー、さっすが、士道くん! ついでに、素敵なプレゼントをありがとう!」

 

四糸乃「ありがとうございます」

 

士道「よし、行って来い」

 

 

スタスタスタ・・・

 

 

士道「本当はダブルリードと首輪がよかったんだけど、それじゃ犬みたいな扱いだしな。これで何とかなってくれよ」

 

琴里「元気ね、二人共」

 

士道「おお 来たか、琴里――――――」クルッ

 

士道「あ」

 

琴里「……何よ、妹に欲情する気?」ドキドキ

 

士道「琴里……」

 

琴里「え? 何よ、また、そんな辛気臭い顔をして……」ドキドキ

 

琴里「も、もしかして、まだ心臓が高鳴っているとか……?」ドキドキ

 

士道「俺、どう答えるべきか、ずっと考えていた」

 

士道「でも、ダメだったんだ」

 

士道「だから、自分で考えてもダメなら、この際 本人に 直接 訊いた方がいいと思った」

 

琴里「え? 私に? 何を?」

 

士道「正直に答えてくれ、琴里」

 

 

――――――琴里は“おにーちゃん”からの答え、“兄貴”からの答え、〈フラクシナス〉からの答え、どれが一番聞きたいんだ?

 

 

琴里「!!」

 

琴里「そ、それは…………」

 

士道「俺、お前のことを 毎日 見ているようで 全然 見てなかったから、こんなこともわからないんだ」

          

士道「お前が大好きな“兄貴(グラハム・エーカー)”が言いそうなことはわかるのにな、俺……」

 

琴里「し、士道…………」

 

――――――

令音「二人の【感情値】と【気力値】が大幅に減退か。それもそうか」

 

令音「どうやら、琴里の内面の急所を突いた問いになってしまったようだね……」

 

神無月「今年の四月一○日から〈デート・ア・ライブ〉が始動してから グラハム氏が予てより危惧していた状況に 最悪のタイミングでなってしまったわけですね」

 

神無月「司令にとって“五河 士道”とは“おにーちゃん”と“兄貴”のことでした」

 

神無月「当然、“兄貴”が“おにーちゃん”の別人格などではなく “おにーちゃん”に憑依した未来人の幽霊ということは知りようがなく」

 

神無月「それが、5年前のあの日、初めてその事実を知ることとなった――――――」

 

令音「そして、あの日から2週間“兄貴”と共に〈ラタトスク〉で過ごす日々の中で、琴里には“おにーちゃん”と“兄貴”の区別がつくようになった――――――」

 

神無月「その“おにーちゃん”にしてみても、“兄貴”の存在は自分だけの特別のものと感じていたのに、」

 

神無月「〈デート・ア・ライブ〉が始動したことで5年ぶりに再会できた“兄貴”が五河司令といつの間にか仲良くなっていたことに不満を覚えていたようです」

 

神無月「しかし、司令にしてみても、すでに“おにーちゃん”と“兄貴”が別の存在であることを理解していたので、」

 

神無月「“おにーちゃん”と“兄貴”の間に入り込めない 絶対的な隔たりをはっきりと感じるようになってしまったために、」

 

神無月「士道くんと五河司令は 互いに相手を想い合っているのに 守護天使:グラハム氏をめぐって嫉妬し合う 奇妙な三角関係になっているわけですね」

 

令音「こんなシチュエーションは我々が把握しているギャルゲーや恋愛漫画にはまったくないものだね」

 

神無月「グラハム氏としては そのことが心苦しかったようで、前々から我々に対策案の確立を求めていたのですが――――――」

 

神無月「ご覧の通りの有様で、不甲斐ないばかりです」

 

令音「〈フラクシナス〉のAIにもシミュレートさせてみたが、このことに対して芳しい結果は得られず、」

 

令音「シンの守護天使が直々に“愛”の何たるかを〈フラクシナス〉に理解させるための暗闘が続けられていた」

 

令音「おそらく、シンの守護天使の消失はその時に起きたのではないかと思う」

 

神無月「さて、本当にどうしたものでしょう……」

 

神無月「おそらく、士道くんは“おにーちゃん”としての答えも“兄貴”としての答えも持ち合わせています」

 

神無月「しかし、相手が〈フラクシナス〉司令であることも含めて、疑心暗鬼の状態になって 誰の言葉で答えるべきかがわからなくなっていますね……」

 

令音「琴里にしてみても、ここで〈フラクシナス〉を選択してしまえば、」

 

令音「そこからシンが言う言葉が全て〈フラクシナス〉から言わされているもののように聞こえてしまうだろう」

 

令音「どちらも、〈デート・ア・ライブ〉の内情を知り尽くしているだけに、」

 

令音「攻略される側に立たされると これほどまでやりにくいものはないと思っているだろうね、互いに」

 

令音「ところで、シンの守護天使としてはこうなった場合の仮の対処方法に何を想定していたんだい?」

 

神無月「いや~、それが実に単純明快でして~」

 

令音「…………?」

 

 

――――――問答無用で口付けしてオとす。

 

 

神無月「それぐらいしかないそうで~」

 

令音「……なに?」ピクッ

 

神無月「いえ、そういうのも自分的にはありかと思ってまして~」

 

神無月「この時期の女性にしかない 幼さと危うさが同居する 司令の綺羅びやかな水着姿を 若さと情熱にまかせて汗でびっしょりにしながら、」

 

神無月「未成熟な若者同士が熱い吐息を交わし合って我を忘れて互いを貪り合うシーンをぜひ~!」

 

令音「切迫した事態とは言え、それでは琴里があまりにもかわいそうだ」

 

令音「やはり、シンの守護天使の提案を“なかったこと”にしておいて正解だったね」

 

令音「とは言え、今回の戦争〈デート〉が失敗して、琴里が精霊の力に支配されそうになったのなら、」

 

令音「元々の琴里の【好感度】で上から抑え込むように それを実行する他なくなるだろう」

 

令音「しかし、自分たちだけでは行き詰まってしまった状況を変えるのは常に外部からの真新しい刺激――――――」

 

神無月「ええ。私たちだけでは出せなかった新たな道を示してくれることに賭ける他ありません」

 

神無月「……士道くんと司令を頼みましたよ、二人共」

――――――

 

十香「シドーも琴里もどうしたのだー?」

 

四糸乃「泳がないんですか?」

 

よしのん「そうだよ! 一緒に泳ごうよ! ねえねえ!」

 

士道「あ、すまない。その……」

 

琴里「ああ うん。まあね」

 

十香「?」

 

十香「いったいどうしたというのだ、シドーも琴里も?」

 

よしのん「あ、わかった!」

 

よしのん「士道くんったら想像以上に義妹の水着姿が可愛くて声が出せなくなっちゃったんだ!」

 

琴里「え」

 

十香「なに、そうなのか、シドー!?」

 

士道「あ、いや、そういうわけじゃ――――――」

 

十香「むむむむ」ジー

 

琴里「……な、何、十香? あ、どう? 似合ってるかしら?」

 

十香「悔しいが、よしのんが言っていることは本当だな」

 

十香「私から見ても琴里の水着姿はかわいいぞー!」

 

琴里「そ、そりゃあ、どうも」

 

十香「そう思うだろう、シドーも?」

 

士道「あ、ああ。そりゃもう……」

 

琴里「あ……」ホッ

 

よしのん「そりゃそうでしょう! 昨日の水着コンテストで優勝したのは なんて言ったって 四糸乃なんだから!」

 

よしのん「士道くんの好みは四糸乃みたいな若い果実が好みなんだから」

 

琴里「…………うん?」ピキッ

 

――――――

令音「シン。琴里の【ご機嫌】が――――――」

――――――

 

士道「や、やめろおおお! それじゃ まるで俺がロリコンみたいじゃないか!? 人聞きの悪いことを言うなああああ!」

 

士道「というか、あんなの、反則だろう! 別の意味でドキドキさせられただけで、俺はちがうぞ!」

 

よしのん「ええ? じゃあ、士道くんは 実際のところ どう思っているわけ? 早く言わないと誤解は解けないよ~?」

 

――――――

令音「シン。さすがにその話題に関しては何かしらフォローを入れないと、琴里の機嫌が――――――」

 

神無月「士道くん。あなたは決して間違っていません!」

 

神無月「好きなものは好きでいいんです!」

 

神無月「士道くんと初めて会った時から、私は士道くんのことを世代を超えた同志だと確信しておりました!」

 

神無月「今こそ、司令への愛を叫ぶ時です――――――」

 

神無月「グヘッ」ドカバキ!

 

神無月「――――――って、な、何をするんですか、みなさん!?」

 

令音「シン」

 

令音「シン……」

――――――

 

士道「く、くそっ! わかったよ! 言えばいいんだろう!?」

 

十香「おお!」

 

よしのん「よしきたー!」

 

四糸乃「ふぁいと」

 

琴里「あ……」

 

 

士道「正直に言って、誰にも見せたくもないし、触らせたくもないぐらいだよ!」ゴゴゴゴゴ

 

 

琴里「ふぇ!?」

 

士道「俺が大学進学して家からいなくなった後、綺麗になった琴里が一人で暮らしている中に、」ゴゴゴゴゴ

 

士道「悪い男に入り込んできて、琴里が、琴里が、琴里が好き放題される嫌な想像が過ぎったぐらいだ!」ゴゴゴゴゴ

 

士道「琴里を傷物にしようとする不貞な輩はどこのどいつだ! 探し出して片っ端からたたっ斬ってやる! 出てこい!」ゴゴゴゴゴ

 

琴里「」

 

十香「おお」

 

四糸乃「あ」

 

周囲「」

 

――――――

神無月「…………そうです! それでこそ、あなたは司令のおにーちゃん、現代のシスコン侍です!」ガクッ

――――――

 

士道「ハッ」

 

士道「そ、そういうわけだ」ゼエゼエ

 

士道「俺は純粋に妹の将来を心配しているだけであって、妹に欲情しているわけじゃないからな!?」ゼエゼエ

 

士道「美人薄命とかいうし、変な虫がつかないようにするために そういうのはあまり人前で出させたくないってのが俺の正直な気持ちだ」ハア

 

琴里「…………士道」スッ

 

士道「…………琴里?」

 

琴里「この馬鹿兄ッ!」ゲシッ

 

士道「あいたっ!?」

 

 

琴里「誰が自分の性癖を盛大に告白しろって言ったのよ! このバーカ!」ハラハラ

 

 

琴里「聞いているこっちの方が恥ずかしくなったじゃない!」カアアアアア!

 

士道「わ、わるい……。やっぱり、今日の俺は全然ダメだな……」ガクッ

 

琴里「そうよ! こっちの想像の斜め下を突き抜けるダメっぷりにはイライラさせられるわ!」

 

士道「………………」

 

琴里「で、でも、いいわ」

 

琴里「はい」スッ

 

士道「え」

 

琴里「ほら、グズグズしないでよ、鈍チン!」

 

琴里「あ、あんた、自分で言ったじゃない!」

 

琴里「私のこと、『誰にも見せたくもないし、触らせたくもない』んでしょう!?」

 

琴里「だ、だったら、そうなるように私の側を離れないでいなさいよ、まったく!」

 

士道「あ、ああ…………」

 

琴里「…………もう私がいないと本当にダメダメな“おにーちゃん”なんだから♪」

 

――――――

令音「【感情値】と【気力値】が元の水準を大きく超えて回復したか」

 

令音「どうなるかと思っていたが、結果としては経過は順調そのものだと言えるな」

 

令音「よくやってくれた、十香、四糸乃」

 

令音「1対1の対話ではどうにもならないことも、ふとしたきっかけで突破できる可能性が出てくるわけだね」

 

神無月「ええ。グラハム氏がよく言っていました」

 

 

――――――精霊の純粋さに救われている。

 

 

神無月「今回も良い方向に働いて士道くんを助けてくれましたね」

 

神無月「そうです。士道くんが命懸けで助けた見返りが何もないだなんて、そんなことはありえないんです」

 

神無月「彼女たちも士道くんのために何ができるのかをずっと考えてきているわけなのですから」

――――――

 

 

 

士道「あ、あのな?」ドクンドクン

 

琴里「な、何よ?」ドキドキ

 

士道「たしかに『他の男には触らせたくない』って言ったけど、」ドクンドクン

 

士道「それって『俺が妹の身体を触りたい』って意味じゃないからなああああ!?」ドクンドクン

 

琴里「……わ、わかっているわよ、そんなこと!」ドキドキ

 

琴里「でも、やるからにはしっかりと押さえていてよね、士道!」ギュッ

 

十香「よし、シドー! ちゃんと琴里の身体を抱きしめたか!」

 

十香「では、みなで初めてのウォータースライダー! 出発だ!」

 

 

バシャアアアアアアアアアアアアアアアア!

 

 

十香「わあああああああああああああい!」

 

琴里「あああああああああああああああ!?」

 

士道「おううっ!?」

 

士道「い、意外とスピードが出るもんだな――――――」

 

士道「危なっ?!」ギュッ

 

士道「いや、いやいやいやストップストップぅ! 勢いが付きすぎじゃないか、これぇ!?」ハラハラ

 

琴里「あ」ドキドキ

 

士道「!?!!」

 

士道「言わんこっちゃない――――――」

 

士道「ああああああああああああああああああああ!」

 

琴里「お、おにーちゃん――――――」

 

 

ヒュウウウウウウン! バッチャアアアアアアアアアアアアアン!

 

 

士道「やっぱり、3人でやるもんじゃなかったなぁ……」ブッハァ!

 

十香「おもしろいな、シドー!」アハハ!

 

士道「さ、さすが、十香。自由落下はお手の物か……」ゴホゴホ・・・

 

士道「大丈夫か、琴里? プールの水をガブ飲みしなかったか? どこか痛いところはないか?」ゴホゴホ・・・

 

士道「あ」

 

琴里「………………」ガタガタ・・・

 

士道「髪――――――」ドキッ

 

琴里「お、おにーちゃん……」ガタガタ・・・

 

琴里「り、リボン……、リボン とって…………」ガタガタ・・・

 

士道「あ、ああ……」

 

 

 

琴里「まったく、無茶をするわね」キュッキュッ ――――――黒いリボンを付け直して 元のツインテールに戻す。

 

士道「なあ、琴里? こんなところまで そのリボンをしてこなくたって いいじゃないか? プール用のリボンを買ってやろうか?」

 

琴里「何よ? これじゃ不服なの?」

 

士道「いや、だからさ、いくら大のお気に入りだからって、こんなところまでしてくるなら それなりに用心をして欲しかったなって」

 

士道「お前、夏本番の大混雑の中でなくしたら、立ち直れなくなるんじゃないのか?」

 

士道「俺が新しいのを買ってあげるからさ」

 

士道「それでも、肌身離さず 持っていたいなら、防水ポーチに入れて持っていろよ。痛むしさ」

 

琴里「あら、士道にしては随分と気が利くじゃない」

 

琴里「あ」

 

 

琴里「……それとも、やっぱり 私のことを頼りない司令だと思ったから、その発言なのかしら?」

 

 

士道「何を言っているんだ、こんな時に?」

 

琴里「あ」

 

琴里「………………」

 

琴里「……私も士道と同じってこと」

 

 

琴里「今の私は 士道にとって“かわいい妹”なの? それとも、“攻略対象の精霊”? はたまた、“頼りない司令”? どれ?」

 

 

士道「それは…………」

 

琴里「ごめん。わかってる。――――――自分が“ズルい女”だってのは」

 

琴里「私、いつからこんな感じになっちゃったんだろう?」

 

琴里「いや、そんなのはわかりきったことだったわね」

 

琴里「そうよ、士道のかわいい妹である私が ある日 突然 精霊になって〈ラタトスク〉の一員になった時からよ」

 

士道「なら、俺の前だけでも強がる必要はないだろう? 家にいる時のように“かわいい妹”として振る舞えば――――――」

 

 

琴里「ダメなの……、白の私は“弱い私”だから……」

 

琴里「黒の“強い私”じゃないとダメなの……」

 

 

士道「何を言ってるんだ? “弱い”とか“強い”って何のことだよ?」

 

琴里「わからないの?」

 

琴里「そう。士道は強いから弱い私の気持ちなんてわからないわよね……」

 

士道「いつものように 察しが悪くて 悪かったな!」

 

士道「でも、そんな俺が精霊との対話役に選ばれてもいるんだ!」

 

 

士道「一人で抱え込むなよ! そんなに俺のことが信用できないのか? 俺を〈デート・ア・ライブ〉の遂行者に仕立て上げておいて!」

 

 

琴里「…………!」

 

琴里「そ、そんなこと言ったって、私はこんなにもか弱い女の子なのよ!?」

 

琴里「5年前から“現代のサムライ”になるために我武者羅な武者修行の日々に明け暮れて、」

 

琴里「歳を重ねて行くごとに どんどん強くなっていったのは士道じゃない!」

 

琴里「昔は 背丈だって そんな変わらなかったのに、今じゃ こんなにも士道の方が大きくなって…………」

 

士道「琴里……」

 

琴里「私だって、精霊の力を克服するために士道と同じように武芸を修めようとしたこともあったわ!」

 

琴里「そりゃあ、士道が常日頃“武士道”“武士道”言いまくっているんだもの。女の子の私でも“サムライ”に興味を持つわよ」

 

琴里「でも、やればやるほど『自分には才能がない』ってことに嫌というほど気付かされていった……」

 

琴里「十香と同じぐらいの背丈や体格にもなれそうにないし……」ボソッ

 

琴里「それがどれだけ悔しかったか、士道には絶対にわからないはずだわ!」

 

士道「なんでそんなことにムキになる必要があるんだ?」

 

士道「たしかに、琴里が宿した精霊の力は強力だけれどリスクが大き過ぎて、〈デート・ア・ライブ〉を遂行する俺の力になることは難しいかもしれない」

 

 

士道「でも、琴里が精霊の力を抑えてくれているおかげで、炎の精霊〈イフリート〉が現界する際に起きる空間震が起きずにすんでいるんだぞ」

 

 

琴里「え」

 

士道「空間震の1回で、たとえ人的被害がなかったとしても、毎回 どれだけの経済的な損失が出ているか わかっているか?」

 

士道「空間震警報が鳴るだけで天宮市の機能が全てシャットダウンされて、人々はシェルターの中の閉鎖空間に閉じ込められて、」

 

士道「自分の家や職場、学校が外に出られた時には跡形もなく無くなっていないことを ひたすら繰り返し祈る作業を強いられる――――――」

 

士道「その不幸を思えばこそ、たとえ矛盾を孕んでいたとしても〈デート・ア・ライブ〉を遂行することに俺は躊躇いはないんだ」

 

士道「琴里はさ、『自分に宿った力が使えないことをもったいない』だなんて思うなよ。そんな必要はないんだ」

 

士道「むしろ、積極的に使うべき類のものではないことは誰よりも理解しているだろう?」

 

士道「俺だって、藤堂先生から譲ってもらった業物の名刀を持ってはいるけど、それを実際に人に向けて使おうとは思わないのと同じだ」

 

琴里「…………士道」

 

 

士道「いいんだよ、司令として頼りなくたって!」

 

 

士道「俺にしてみれば、養親から預かった唯一の家族の無事を真っ先に確かめられる立ち位置にいるだけでも、すごくありがたいことなんだから」

 

士道「もし、お前が本当にただの“かわいい妹”である世界があったって俺は一向に構わないけど、」

 

士道「空間震が発生する度に妹の無事を考えながら〈デート・ア・ライブ〉を遂行するのはハードモードどころかEX-ハードモードだぜ」

 

士道「それなのに、世界の命運を左右するかもしれない〈デート・ア・ライブ〉を遂行しているのは、」

 

 

 

――――――どうしようもなく妹のことが心配でしかたがない“五河 士道”なんだからさ。

 

 

 

士道「………………ハア」

 

士道「ハッ」

 

士道「なんだ?」

 

十香「いや、『いつものシドーに戻った』と思ってな」

 

四糸乃「……琴里さんと喧嘩しましたか?」

 

よしのん「いなくなった途端、気が抜けるんだもん」

 

よしのん「わっかりやすいなぁ、士道くんは」

 

士道「そうなのか……」

 

十香「うむ」

 

四糸乃「はい」

 

士道「まいったな。せめて、お前たちの前だけでも いつもどおりの振舞いをしたかったのにな……」

 

士道「わるい。せっかく、楽しい一日になるはずなのに、嫌なものを見せて悪かった」

 

士道「俺がお前たちをこの世界で生きていくように誘ったホストなんだから、もっと気持ちよく過ごせるようにしないといけないのに――――――」

 

 

――――――大丈夫です、士道さん。

 

 

四糸乃「大丈夫です」

 

よしのん「うんうん。大丈夫だよ、士道くん」

 

十香「うむ。よくわからんが、とにかく大丈夫だ、シドー」

 

士道「え」

 

十香「シドーは命懸けで私にこの世界の素晴らしさを伝えてくれた」

 

十香「その身でもって世界で生きる楽しさも厳しさも私に教えてくれた」

 

十香「そして、独りでいることよりも誰かと一緒にいる喜びもシドーが教えてくれたんだぞ?」

 

十香「私はもう独りでいる時間とは縁を切ったのだ」

 

十香「シドーは優しいからな」

 

十香「こんなにもキラキラと輝くような毎日をもらっているのだから、多少の不満は大目に見てやらんことはないぞ」

 

十香「こういう時は『困った時はお互い様』だな!」

 

十香「もし手伝えることがあるなら、いつだっても言ってくれ! 私はシドーのためなら何だってするぞ!」

 

士道「十香……」

 

四糸乃「士道さん。だから、大丈夫です」

 

四糸乃「私はあまりお役に立てないかもしれませんけれど、がんばります」

 

よしのん「士道くん、遠慮しないで四糸乃も頼ってあげて」

 

よしのん「それが今の四糸乃にとって一番のご褒美だから」

 

士道「四糸乃……」

 

よしのん「ま、頑張ったら その分だけ 更にご褒美がもらえるからね!」

 

十香「うむ! シドーの役に立って いっぱい ご褒美をもらうのだ!」

 

四糸乃「はい……」ヘヘッ

 

士道「みんな……」ハハッ

 

士道「そっか……」

 

士道「なんか俺一人でがんばる必要はなくなっていたみたい感じだな……」

 

士道「そうだよな。子供はいつか大きくなって独り立ちしていくんだ……」

 

士道「十香や四糸乃だって、いつまでも子供じゃないんだ……」

 

士道「その足で社会の荒波に立ち向かっていく勇気と知恵が備わっていくんだな……」

 

士道「それなら、そうなるように俺がしっかりと見守らないといけないんだな……」

 

士道「よし」

 

十香「シドー! 私にしてもらいたいことはないか?」

 

四糸乃「わ、私もです……」

 

士道「そうだな」

 

士道「聞いてくれるか、みんな? 〈フラクシナス〉もだ」

 

士道「わるかった。でも、大丈夫だ」

 

 

 

――――――俺はこれから 本気で“五河 琴里”をデレさせるから 力を貸してくれ。

 

 

 

士道「よう、少し長かったな」

 

琴里「あんたねぇ。女の子が戻ってくるなり そういうことを言うのはデリカシーに欠けるんじゃないの――――――?」

 

琴里「あら、あの二人は?」

 

士道「琴里、こっちも待たせたな」

 

琴里「え」

 

 

士道「ここからは俺とお前の二人きりの時間だぞ」

 

 

琴里「……ああ〈フラクシナス〉から指示が出たの? 『こっちじゃ上手くいかないから遊園地エリアの変更』ってこと?」

 

士道「馬鹿、お前! 一日ずっと水に浸かって身体を冷やしていたら、今日の最後に紫色の唇でキスすることになるぞ? それでもいいのか?」

 

琴里「ふぇ?!」

 

士道「ここまではアレだよ。『前半で適度に身体を解しながら頭を冷やして、後半でテンションを上げていく』っていう算段だったんだよ」

 

士道「どうだ? 少しは胸のつかえが下りたんじゃないか?」

 

琴里「……へえ、士道にしてはなかなか大胆なデートプランね」

 

琴里「そうね、正直に言って悪くなかったわ」

 

士道「そりゃあ、全方位交際なんてやらされた後なんだから、午前と午後にわけたデートをするなんて わけないだろう?」

 

士道「十香と四糸乃なら心配ない」

 

士道「プールのジャングルクルーズに行かせてる。それが終わったら、令音さんの案内で俺たちの邪魔にならないように遊園地を満喫することになってるから」

 

琴里「……驚いたわね。十香と四糸乃だけにさせておく踏ん切りがついたなんて」

 

琴里「これも あなたの守護天使がそう言ったから そうしているのかしら?」

 

士道「…………ちがうよ」

 

琴里「…………『ちがう』?」

 

士道「でも、このことは俺の守護天使に誓っておこう」

 

 

――――――私、“五河 士道”は精霊〈イフリート〉を、否 “五河 琴里”という一人の少女を守るためにデレさせることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

折紙「――――――『オーシャンパーク』」

 

折紙「…………やはり、昨日の水着」

 

折紙「……網を張っておいて正解だった」

 

折紙「士道――――――、そして、グラハム・エーカー――――――」

 

折紙「あなたたちの考えや気遣いは身に染みるほど理解できた。感謝してもしきれない」

 

折紙「けれど、たとえ本当の仇が“五河 琴里”でなくとも、私には戦う理由がある」

 

折紙「そうでなかったら、5年前にあなたたちに普通の人間として得られる全てを預けてまで力を得た意味がない!」

 

折紙「だからこそ、私は戦う! 私は憎む! 私は殺す!」

 

折紙「精霊を殺せない“鳶一 折紙”に存在する資格なんてない!」

 

 

―――――― DW-029 討滅兵装〈ホワイト・リコリス〉。

 

 

折紙「AST一個中隊分の火力――――――、」

 

折紙「精霊を単機で仕留める性能――――――」

 

折紙「使わせてもらう! 利用できるものは全て! ありったけ!」

 

 

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