【デート・ア・ライブ】 デート・ア・ガンダム -武×士道×グラハム- 【機動戦士ガンダム00】   作:LN58

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第12話 この街で失った愛を再び Apart

――――――遊園地『オーシャンパーク』/ 遊園地エリア

 

士道「ほら、琴里。手」スッ

 

琴里「はあ? 子供扱いしないでくれる?」アセアセ

 

士道「それとも、もしかして怖いの、士道?」フフン

 

士道「ああ 怖いよ」

 

 

士道「手を繋いでいない間に琴里が精霊の世界へ行ってしまうかもしれないからさ」

 

 

琴里「……そういうことなら、いいわよ」ギュッ

 

琴里「ホント、私がいないとダメダメなんだから、おにーちゃんってば♪」

 

琴里「あ、そうか。本当は私のこと『自分以外の誰かに触らせたくもない』んだっけね。このムッツリすけべ」

 

士道「はいはい。認めるよ。俺はムッツリすけべだ」

 

士道「こうして久々に妹の手を繋いでみて 今までとの感覚の違いに 実は戸惑いを隠せないでいるんだ」

 

琴里「あら、素直に認めるのね」

 

琴里「どう? とびっきりかわいい私の手を触れられることのありがたさを理解できたかしら?」

 

士道「ああ 気をつけるよ。何かにびっくりした拍子にこんなにも小さくて温かくて心地よさを感じる手を握り潰すことがないようにな」

 

琴里「ちょ、ちょっと! それ、お化け屋敷で言うセリフじゃないわよ! 洒落にならないわよ、それ!」ゾクッ

 

士道「そうなんだよな~」

 

士道「手を放したら 琴里がいなくなってしまう気がして……」

 

士道「手を握っていたら 握り潰してしまいそうで……」

 

士道「琴里はどっちがいいんだ? それとも、俺の服にでもしがみついているか?」

 

琴里「わ、わるかったわよ!」

 

琴里「…………けど、ちょっとだけ大人っぽかったかも」ボソッ

 

士道「その歳でアダルトゲームにハマっちゃってる“おませさん”ほどじゃないけどな」ハハッ

 

琴里「なっ」

 

琴里「ち、ちがうわよ! あれは精霊とデートしてデレさせるためのに最適な“恋愛の教科書”なのよ!」

 

琴里「士道! あなた、少し偏見を持っているかもしれないけれど、アダルトゲームはゲーム業界の裏の主役なのよ!」

 

琴里「一般向けのゲームではできないことを世に示したことで、それがフィードバックされて表のゲーム業界に影響を与えた名作だってあるんだから!」

 

士道「別に俺は偏見なんて持ってないさ。結局、それをプレイして実際に犯罪に及ばない人間の方が圧倒的に多いんだし」

 

士道「けど、現実なんてもっと凄いからな」

 

士道「戦国武将で 槍の名手として名高く 加賀百万石の礎を築き上げた 前田 利家は 20歳の時に12歳のまつと結婚して 翌年には子供を生ませているんだからな」

 

士道「わかるか? 小学5年生と結婚した二十歳過ぎたばかりの男が子供を生ませているんだぞ! それが罷り通っていたのが戦国の世だ!」

 

士道「そんなのを知っていたら、あんな見た目やこんな見た目で登場人物全員が18歳以上のエロゲーなんて腰が引けてるってもんだぜ!」

 

琴里「な、何よ!? あんた、あ、愛さえあれば相手が幼気な美少女相手に孕ませたいとでも思っているわけ!?」ドキドキ

 

士道「バーカ」

 

琴里「あいたっ」

 

士道「そこまで言ってないだろう? というか、いろいろと毒されてないか、言葉の端々?」

 

士道「だいたい、“子供”なんてこれからたくさん増えていくのに、自分から増やす必要がどこにあるっていうんだ?」

 

琴里「……まあね」

 

士道「今だけなんだぞ?」

 

 

――――――琴里がその“子供”でいられるのは。

 

 

琴里「………………っ!」

 

琴里「……まったく、末恐ろしいわね」

 

琴里「さっきから、どういう頭の構造をしていたら そんな言葉が次々と出てくるのかしらね」

 

琴里「やっぱり、これも士道が“兄貴”と一心同体だったから――――――」

 

士道「ほら、行こうぜ」パシッ

 

琴里「う、うん……」ギュッ

 

 

士道「怖くないか、琴里?」

 

琴里「うん、平気。“現代のサムライ”が か弱い美少女の私のことを 守ってくれるんでしょう?」

 

士道「ああ」

 

士道「でも、こうやって手を繋ぎながら、遊園地を歩き回るのなんて、いつ以来だったっけな?」

 

琴里「たしか、5年前よ。その時は私の父さんと母さんも一緒だったでしょう」

 

士道「そうだったな。それも5年前だったか――――――」

 

士道「あの時もこうやって手を繋ぎながらお化け屋敷を進んでいった記憶があるな」

 

琴里「そうよ。あの頃の士道は本当に頼りなくて――――――、」

 

琴里「今ならわかるけど、士道さ、途中で“兄貴”と交代してもらっていたわよね」

 

士道「ああ。そうだった。本当にあの頃は子供だったな」

 

士道「そう考えると、5年前っていうのが 相当 昔のように感じられる」

 

 

士道「…………俺は変われたかな、琴里?」

 

 

琴里「私は否が応でも変わることを迫られたけど、」

 

琴里「――――――変わることを選んだのは士道よ」

 

士道「ああ」

 

琴里「本当に何もかも変わったわね、私たち」

 

士道「でも、俺たちはまた5年前と同じように手を繋ぐことができている」

 

琴里「うん」

 

――――――

令音「【感情値】がだいぶ安定してきたね」

 

令音「これなら琴里の霊力封印は問題ないだろう」

 

令音「そして、5年間の蟠りを解消できた今の二人なら、次に炎の精霊〈イフリート〉の力を解放した時もきっと大丈夫のはずだ」

 

令音「あとは、霊力封印のタイミングは二人にまかせるとしよう」

 

神無月「いやはや、私としてはもっと司令が過激にビシバシする様が見たかったのですが、」

 

神無月「こういった司令の内面や士道くんとの絆、5年間の成長や思い出の跡を見ることができて、胸の内が温かくなっていきますね」

 

神無月「まあ、私としても今日に至る5年間で 年端も行かない一人の少女の部下となったり、“現代のサムライ”足らんとする一人の少年に訓練を施したりしてきました」

 

神無月「その日々のことを思い出すと、ようやくここまで実を結んだものだと、感無量の思いです」

 

令音「私もだよ」

 

神無月「まあ、それはそれとして――――――、」

 

神無月「司令! お慈悲を! お慈悲をぉおおおおおお!」

 

神無月「戻ってきたら、ぜひ 私にお慈悲をお与えください、司令!」

 

令音「感動の余韻に浸る間もないもんだね」

 

令音「さて、このまま何もなければ二人は自然な流れにまかせてキスをするだろう」

 

令音「それで、今回の戦争〈デート〉も我々の勝利となる」

 

令音「そう、何もなければ――――――」

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

士道「ハッ」

 

士道「な、何だこれは!?」キョロキョロ ――――――気づくと、X字状の拘束台に囚われ、おっぴらげに股や脇が広げられていた。みっともない。

 

士道「俺、なんでこんなところに囚われて――――――」ガチャガチャ ――――――もちろん、両手首・両足首・胴体・首筋の拘束具は完備。起き上がれない。

 

士道「ふざけるな、この! 待っていてくれ、琴里――――――」グググ・・・

 

士道「!」

 

 

折紙「士道……」

 

 

士道「折紙ぃ! 何のつもりだ、これは!?」

 

折紙「私はこれから炎の精霊〈イフリート〉の討伐を行う」

 

折紙「それに士道が巻き添えにならないようにした」

 

士道「なっ」

 

士道「待ってくれ! 俺の守護天使から話を聞いたんじゃないのか?」

 

士道「5年前のあの日、大火災の中で お前の両親を殺した精霊は琴里じゃない――――――」

 

折紙「たしかに。5年前から空間震が天宮市を中心に起こるようになってから精霊に関する情報が本格的にASTで集められるようになった以上、」

 

折紙「当時の記録をASTが保管している可能性は無に等しかった」

 

折紙「だから、5年前のあの日に居合わせて大火災を止めてくれたアスガルド社の凄腕魔術師:グラハム・エーカーには感謝しかない」

 

折紙「彼の証言のおかげで、私も5年の間に正確さを失いつつあった記憶の誤りを正すことができた」

 

 

――――――本当の仇は 天使の姿をした“白い悪魔”なのだと。

 

 

士道「!」

 

士道「あ、何か憶えがあるぞ、それ!」

 

士道「そうだ! あの日、俺 空から降ってきた光弾で危うく死にかけたんだ!」

 

折紙「そして、私の両親は運悪く“白い悪魔”が無造作に放った攻撃で塵すら残らず灼かれた!」

 

士道「そうだったのか……」

 

士道「けど、じゃあ、なんで折紙は 今〈イフリート〉を討とうとしているんだ!? お前の仇じゃなかったんだろう!?」

 

士道「お前、今から自分がやろうとしていることがわかっているのか!?」

 

折紙「わかってる」

 

 

――――――“五河 琴里”を名乗る精霊〈イフリート〉を殺す。

 

 

士道「折紙!?」

 

折紙「たしかに、私怨を向けるべき相手ではなかったのは事実かもしれない」

 

折紙「けれど、士道。私は以前にも言った」

 

折紙「精霊は特殊災害指定生命体という害獣である以上は一刻の猶予も与えずに駆除する他ない」

 

折紙「現に、〈ナイトメア〉時崎 狂三のように 強大な力を保持したまま 人間社会に紛れ込んで殺戮を行う――――――」

 

折紙「人間の皮を被った悪魔を野放しすることはできない」

 

 

――――――自分と同じ思いをする人間を これ以上 作らせはしない。

 

 

士道「……そんなの、当たり前だろう」

 

折紙「士道は あの時 どういうつもりで時崎 狂三と対話をしようとしていた?」

 

士道「もちろん、霊力封印によって空間震を起こさせないことが最優先だ」

 

士道「けれど、人間社会に紛れ込むことができる手口を教えてもらえれば、」

 

士道「そこから新たな精霊の所在を突き止めることができるようになるかもしれないだろう!」

 

士道「それに、長く消失せずにいられるコツや、空間震を起こさずに現界できるコツも教えてもらえれば、」

 

士道「お前たちASTが精霊と戦う必要もなくなるんだ!」

 

士道「折紙、お前はそんなに俺のことを信じていないのか!?」

 

折紙「ちがう」

 

士道「そ、そんな……」

 

折紙「そういうことじゃない」

 

士道「え」

 

 

折紙「士道。他の何に替えても、私はあなたにだけは生きていてもらいたいの」

 

 

士道「折紙! それは俺も同じ想いだって言っただろう!」

 

士道「折紙ができなかったことを俺がやってみせなくちゃ、空間震で多くの人々の生命や生活がこれからも奪われ続けるんだ!」

 

士道「こればかりはお前のワガママにつきあうわけにはいかないんだ! 多くの人々の人生が懸かっている!」

 

 

折紙「私もあなたの命だけは譲ることはできない!」

 

 

士道「!」

 

折紙「精霊との対話――――――、そんなものは誰がやったって結果は見えている」

 

折紙「だから、私の邪魔をするのならば容赦なく排除するつもり」

 

折紙「けれど、あなただけはそうするわけにはいかない」

 

士道「どうしてだ!?」

 

 

折紙「()()()()()()……」

 

 

士道「!!」

 

士道「それ、新学期が始まって俺と折紙の初めての会話――――――」

 

士道「なら、教えてくれ! 何を忘れているんだ、俺は!?」

 

折紙「そのことに関しては 士道が憶えてなくても 今は問題ない」

 

 

折紙「私が“天使”を殺す――――――、その時まで預かっていてもらっていれば」

 

 

士道「…………『預かる』?」

 

士道「どういうことだ? もしや俺は5年前のあの日に折紙に会っていた? そして、何かを預かった――――――?」

 

折紙「話は終わり」

 

折紙「必ず炎の精霊〈イフリート〉を討ち取る」

 

折紙「士道はそこで吉報を待っていて欲しい」

 

折紙「過ちは繰り返させない」

 

士道「ふざけるな!」

 

士道「なあ、こんな形の出逢いしかなかったのか!?」ポタポタ・・・

 

士道「そんなの、悲しすぎるだろう!」ポタポタ・・・

 

士道「俺は折紙に死んでも殺めて欲しくないんだ!」ポタポタ・・・

 

士道「お願いだ!」ポタポタ・・・

 

折紙「士道……」スタスタスタ・・・ ――――――見下ろすように拘束台の上の少年の側へと歩み寄る。

 

士道「折紙…………」

 

折紙「――――――」キュポ・・・ ――――――どこかで見た憶えのある栄養剤を取り出して開封する。

 

士道「え」

 

士道「ちょっとまって、それ、俺に飲ませようとしているのか――――――」 ――――――寝かされた状態で飲まされるのは辛い。

 

折紙「――――――」グイッ ――――――すると、その場で一気に口の中に流し込み、

 

士道「な、なんだ、自分で飲むのか――――――」

 

士道「ハッ」

 

折紙「――――――」ズキュウウウウウウウウウウウウウン!

 

士道「!!?!」 ――――――すかさず、少年に口移しをするのであった。

 

折紙「――――――」

 

士道「!!!!」

 

折紙「――――――」プハァ

 

士道「――――――」ゴクン!

 

士道「お、折紙ぃ……」ゴホゴホ・・・

 

折紙「――――――」スチャ ――――――更に、猿轡を取り出す!

 

士道「!!?!」ムグググ! ――――――これでは声を発することができない!

 

折紙「これで士道が自分の舌を噛み切ることはない」

 

折紙「戦いに集中できる」

 

士道「!!!!!!」ムグググ!

 

折紙「抵抗は無意味」

 

 

折紙「士道。無事に戻ってこれたら、士道に預かったものをほんの少しだけ返してもらう」ニッコリ

 

 

士道「??!?」ゾクッ ――――――野獣の眼差しを感じた。

 

折紙「大丈夫。痛いのは最初だけだから」フフッ

 

折紙「これで私は奪われたものを少しずつ取り戻していける――――――」スタスタスタ・・・

 

士道「………………」

 

士道「………………!」

 

士道「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」ジタバタ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

琴里「まったく、士道ったら遅いわねぇ」

 

琴里「まあ、これもきっと“おにーちゃん”と“兄貴”の粋な計らいなのかしらね。そう思うと待たされるのも悪くないわね――――――」

 

琴里「!」

 

折紙「見つけた。五河 琴里――――――、」

 

折紙「いや、炎の精霊〈イフリート〉!」

 

琴里「鳶一 折紙……」

 

 

ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!

 

 

琴里「空間震警報……」

 

琴里「へえ、庶民の休日を自分一人の勝手な都合で踏み潰すわけね」

 

琴里「まあ、問答無用でミサイルぶっ放してくるよりは理性的だけれど、」

 

琴里「それ以上に、これまで数人掛かりで精霊にさんざん返り討ちに遭ってきたのに、たった一人で挑もうだなんて、」

 

琴里「あなた、想像以上にクレイジーな女ね! クレイジーを通り越してサイコだわ!」

 

 

琴里「神威霊装・五番〈エロヒム・ギボール〉、灼爛殲鬼〈カマエル〉!」

 

折紙「DW-029 討滅兵装〈ホワイト・リコリス〉! 起動!」

 

 

――――――

令音「何かありそうな予感はしていたけど、まさか鳶一 折紙が単身で武力介入してくるとはね……」

 

神無月「まだ遊園地の来場者やスタッフの避難が完了しきっていない中で、精霊とASTの交戦を表沙汰にするだなんて正気ではない!」

 

十香「それよりも、シドーは!? シドーは 今 どこにいるのだ!?」

 

四糸乃「士道さん……」

 

神無月「やられました」

 

神無月「状況から言って、士道くんがいなくなったタイミングで鳶一 折紙が現れたということは、すでに彼女が士道くんを――――――」

 

十香「おのれ、鳶一 折紙! 貴様はどこまでシドーの邪魔をすれば気が済むのだ!」ゴゴゴゴゴ

 

神無月「あ、どこへ――――――」

 

十香「当然、琴里とシドーに仇をなす鳶一 折紙を成敗しに、だ!」

 

よしのん「ダメだよ、十香ちゃん! 今のきみたちは精霊の力を士道くんに封印している状態なんだよ!」

 

よしのん「今回の相手は今までとは桁違いのやつだ!」

 

よしのん「行けば 命の保証はない! それは士道くんが一番――――――」

 

よしのん「あ」

 

十香「忠告は感謝する」

 

十香「だが、シドーを放ってはおけん」

 

よしのん「十香ちゃん……」

 

よしのん「でも――――――」

 

十香「!」ピカーーーン!

 

神無月「これは――――――」

 

令音「時崎 狂三の時と同じ、【精神状態】が不安定になることで 霊力封印が一部解けて顕現した 限定霊装――――――」

 

 

十香「シドーが全力で琴里を助けるなら、私も全力でシドーを守る」

 

 

よしのん「でも、それだって不完全――――――」

 

神無月「いえ、相手がCR-ユニットならば、ある程度は勝機は見出だせそうです」

 

神無月「〈プリンセス〉夜刀神 十香、不本意だとは思いますが、今回は私の指示で動いてもらえませんか?」

 

神無月「私が今回の戦闘の指揮をとり、士道くんと司令の両者を必ずや生還させてみせます」

 

神無月「そのためには、あなたの力が必要なのです」

 

十香「なんだっていい。シドーと琴里が助かるというのであれば」

 

神無月「ありがとうございます」

 

よしのん「………………」

 

四糸乃「よしのん……」

 

よしのん「四糸乃?」

 

四糸乃「私も、ダメ?」

 

よしのん「四糸乃が自分で決めたことなら 止めるわけないでしょう?」

 

四糸乃「私も! 私も一緒に行きます!」

 

十香「そうか。来るか、四糸乃」

 

神無月「それはありがたい申し出ですが、霊装も無しに戦地に行かせるのは――――――」

 

令音「待て。今、四糸乃に霊力が流れ込んで――――――」

 

四糸乃「!」ピカーーーン!

 

 

四糸乃「私も大丈夫です」

 

 

神無月「…………限定霊装が2つも」

 

神無月「――――――『覚悟はできた』と見て、よろしいですか」

 

十香「当たり前だ。すでにできているぞ」

 

四糸乃「はい! 私も、士道さんと琴里さんと助けたいです!」

 

神無月「よろしい!」

 

神無月「では、作戦を開始します! 必須条件:死傷者ゼロ! そして、士道くんと司令がキスできるシチュエーションを構築します!」

 

令音「腕の見せ所だね」

 

神無月「本当は 私が 直接 出たいところでもあるんですが、そうなると 各方面に迷惑がかかりますから……」

 

令音「しかし、この戦況は――――――」

 

神無月「ええ。5年前の大火災の時にしか現界していないはずの炎の精霊〈イフリート〉の攻撃や癖を 鳶一 折紙は ある程度 見切っていますね」

 

神無月「初見であそこまで対応できるとは、ASTも本当に恐ろしい人材を発掘してきたものです」

 

令音「………………」

――――――

 

 

琴里「やってくれるじゃない。見たことのない機体ね。新型かしら」

 

折紙「…………まだ」ギリッ

 

琴里「――――――っ!」ドクン!

 

琴里「力を使い過ぎた――――――」フラッ

 

折紙「今!」

 

折紙「大型レイザーブレード〈クリーヴリーフ〉展開!」

 

琴里「!」

 

折紙「掴んだ! 【随意領域(テリトリー)】展開!」

 

折紙「討滅せよ! 50.5cm魔力砲〈ブラスターク〉!」

 

 

チュドンチュドンチュドンチュドンチュドンチュドーン!

 

 

折紙「――――――!」

 

琴里「なめるなあああああああ!」

 

折紙「懐に入り込まれた! けど、ここからが!」

 

折紙「緊急分離!」

 

琴里「!」スカッ

 

琴里「小賢しい真似を――――――」

 

折紙「はああああああああ!」ブン!

 

琴里「ちっ」ズバッ

 

琴里「くっ」ジュウウウウウウ!

 

折紙「やはり――――――」

 

折紙「いける!」

 

折紙「炎の精霊〈イフリート〉、あなたの攻撃は〈プリンセス〉と比べたら パワーはあっても あまりにもキレとスピードがない!」

 

折紙「それも当然! あなたは5年前の大火災で現界した後 一度も戦ったことがない ただの素人!」

 

折紙「あなたを殺すために 私は過酷な訓練を乗り越えて 何度も精霊に立ち向かっては返り討ちに遭い その度に這い上がってきた!」

 

折紙「存在するだけで人々を苦しめる特殊災害指定生命体に 今こそ 復讐の刃を届けてみせる!」

 

琴里「鬱陶しいわね! いったい何なのよ、あんたは!」

 

折紙「あなたが5年前の大火災で実際にお父さんとお母さんを殺したかなんてどうだっていい!」

 

折紙「けど、あなたが5年前のあの日に現れさえしなければ、お父さんとお母さんは避難しようとして外に出て塵すら残らずに灼かれることはなかった!」

 

折紙「だから、殺す! 私が殺す! あなたを殺す!」

 

折紙「炎の精霊〈イフリート〉! いや、“五河 琴里”! お前を殺す! 絶対に殺し尽くす!」

 

琴里「!!?!」

 

 

折紙「そうじゃなきゃ、士道が出てきて精霊と対話しちゃう! そして、殺される! そんなことは絶対にさせない!」

 

 

琴里「あなた、何を言って――――――」

 

折紙「はあああああああああああああああ!」

 

琴里「しまっ――――――」

 

琴里「!!!?」

 

折紙「しぶとい!」

 

折紙「終わりだ! 〈イフリート〉!」

 

――――――――――――

―――――――――

――――――

―――

 

折紙「ここまでの情報提供、深く感謝します、グラハム・エーカー」

 

折紙「しかし、あなたはASTとは方針が対立するアスガルド・エレクトロニクスの人間――――――、」

 

折紙「なぜ私に接触してきたのですか?」

 

――――――

グラハム「なに、これは私自身のワガママというやつさ」

――――――

 

折紙「…………『ワガママ』?」

 

――――――

グラハム「すでに話した通りだが――――――、」

 

グラハム「私は 西暦24世紀の 乙女座生まれの 地球連邦平和維持軍に所属する 巨大人型機動兵器:MSのパイロットだった」

 

グラハム「それまでに至る過程で、私と世界は〈ガンダム〉という存在によって“来るべき対話”に備えて、変革を余儀なくされた」

 

グラハム「結果からすれば、〈ガンダム〉による変革によって 世界は地球外生命体襲来の危機から救われることになった」

 

グラハム「だが、変革の過程で戦火の炎に消えていった命も数多くあった」

――――――

 

折紙「………………」

 

――――――

グラハム「鳶一 折紙、きみは5年前の炎の中で少年と出会い、絶望を怒りに変えることで生き永らえることができた」

――――――

 

折紙「それしか あの時の私には選ぶことができなかった…………」

 

折紙「それ以外の道があることを知らなかった…………」

 

折紙「けれど、精霊を倒すためのどれだけ険しい道程も、私にはゴールが見えていたから、挫けることなく 今日までやってくることができた」

 

――――――

グラハム「それで、少年にあれほどまで入れ込んでいたというわけなのだな」

 

グラハム「気持ちはわからなくもないが、あまりに強すぎる想いは、時に自分を傷付けることになるぞ?」

 

グラハム「私も、かつてそうだった。自らの正義を信じ、誇りと情熱のおもむくままに戦った――――――」

 

グラハム「だが、その結果、私は実に多くのものを失ったよ……」

――――――

 

折紙「それが理由ですか?」

 

――――――

グラハム「ああ。きみは実に“ミスター・ブシドー”という修羅になっていた頃の私にそっくりだ」

――――――

 

折紙「――――――“ミスター・ブシドー”?」

 

――――――

グラハム「周りが勝手にそう呼ぶ」ハハッ

 

グラハム「だが、少年と共に“武士道”を実生活の体験を通じて学び直したことで、いかに過去の私が“武士道”を勘違いしていたかを痛感させられた」

 

グラハム「あれではたしかに『そう呼ばれても致し方ない』と今では思っている」

――――――

 

折紙「なるほど。士道が“武士道”を目指すきっかけとなったのはあなただったのですね」

 

――――――

グラハム「さて、前置きはここまでにして、本題である忠告といこう」

 

グラハム「きみの頭には『世界を平和をもたらすため』という建前すらなく、ただ純粋に『自分の世界を乱した悪をこの手で倒す』ことしか頭にないであろう」

 

グラハム「そして、その目的が達成されるのであれば、きみは魔道に陥ることも厭わないのではないかな?」

――――――

 

折紙「……それはどういう意味?」

 

――――――

グラハム「では、はっきり言おう」

 

 

――――――きみは 精霊を殺すためならば ()()()()()()()()()()()()()()()()だ。私はそのことを危惧している。

 

 

グラハム「きみには私と同じ道を歩んで欲しくない」

――――――

 

――――――

グラハム「――――――というわけなのさ」

――――――

 

折紙「!?!!」

 

折紙「何を言っている、グラハム・エーカー!?」

 

折紙「なぜ私が精霊になんかに――――――」

 

――――――

グラハム「だが、一向に結果が伴わない現実に痺れを切らしているのも事実であろう」

 

グラハム「そして、きみは力の誘惑に囚われている」

 

グラハム「もし強力なCR-ユニットが目の前にあれば、無断でそれを持ち出すぐらいのことはしでかすであろうな」

 

グラハム「たとえば、そう、きみたちASTの最大のスポンサーであるDEM社から送られてきた例の装備――――――、とかな」

――――――

 

折紙「…………っ!」ジロッ

 

――――――

グラハム「――――――怖い顔だ」

 

グラハム「どうだね? きみの戦士の誇りに賭けて 私の言うことが全て戯言であると 天地神明に誓えるかね?」

――――――

 

折紙「……くっ」

 

――――――

グラハム「即答できかねるか。ならば、今後の行動をもって見定めるとしよう」

 

グラハム「だが、荒唐無稽のように聞こえたデタラメにも、確たる根拠が 私にはあるのだよ」

 

グラハム「実は、5年前の大火災で 無差別攻撃を行い きみの両親を殺害した精霊“白い悪魔”のことなのだが――――――」

――――――

 

折紙「どういうこと? まだ情報を隠していた?」

 

――――――

グラハム「きみによく似ていたのだよ」

――――――

 

折紙「!!?!」

 

折紙「どういう意味!?」

 

折紙「ま、まさか――――――」

 

――――――

グラハム「そのとおり。遠方の激しい空中戦の真っ最中ではっきりとは視認はできなかったが、」

 

グラハム「少なくとも、四月一○日に始動した〈デート・ア・ライブ〉に参加して、初めて きみを見た時、ずっと頭の中に引っかかっていたものがあった」

 

グラハム「もちろん、他人の空似の可能性も十分にあったのだが――――――、」

 

グラハム「今日に至るまでの〈デート・ア・ライブ〉の日々で、」

 

グラハム「『5年前のあの日に現れた“白い悪魔”の正体がきみである』という仮説を強力に後押しする存在が現れてしまった」

――――――

 

折紙「………………?」

 

折紙「〈プリンセス〉や〈ハーミット〉の能力でそれができるとは思えない」

 

折紙「なら、〈ナイトメア〉時崎 狂三――――――」

 

――――――

グラハム「そのとおりだ」

 

グラハム「時崎 狂三の天使〈刻々帝(ザフキエル)〉は巨大な時計盤で、自身の寿命を時間に換算して時間操作する弾丸を創り出す能力だ」

 

グラハム「憶測でしかないが、時間を操る能力というのであれば、その究極は直接の時間移動に辿り着くと私は想像している」

――――――

 

――――――

グラハム「つまりはこうだ」

――――――

 

――――――

グラハム「今からそう遠くない未来の“鳶一 折紙”は戦いの中で消耗しきり、精霊の力でさえも欲してしまうようになる」

 

グラハム「そして、“精霊を殺す精霊”となり、全ての精霊を殺した後で自身も始末することを誓った」

 

グラハム「そんな中、〈ナイトメア〉時崎 狂三の時間操作能力に目をつけて、自身を5年前の大火災の日に飛ばさせた――――――」

 

グラハム「目的は“鳶一 折紙”という一人の少女の凄惨極まる人生と過去を“なかったこと”にするためだ」

 

グラハム「おそらく、あの時 私と少年が見たのは“鳶一 折紙”の人生を破滅に追い込んだ元凶と交戦していたものと思われる」

 

グラハム「それだけに、死物狂いの猛攻を“精霊を殺す精霊”は繰り出していたことだろう」

 

グラハム「だが、ここで致命的な見落としを“精霊を殺す精霊”はしていた」

 

グラハム「それは眼下に広がる天宮市の街並み――――――」

 

グラハム「“精霊を殺す精霊”が放った攻撃は天宮市の街並みに降り注ぎ、大火災が起きた街中で避難をしようとしていた“鳶一 折紙”の両親を焼き払った――――――」

 

 

――――――それこそが“白い悪魔”の正体。

 

 

グラハム「だが、幼い日の“鳶一 折紙”が見上げた先にいるはずの“白い悪魔”はすでにそこにはいなかった」

 

グラハム「自分が犯してしまった取り返しのつかない過ちに気づいたのか、自身が仇と思い込んでいる元凶をなお追撃しているのか、それはわからない」

 

グラハム「そして、呆然自失として生きる希望を失った“鳶一 折紙”の許に、炎の中を潜り抜けてきた一人の少年“五河 士道”が現れ、」

 

グラハム「“五河 士道”によって 生きる希望を取り戻した“鳶一 折紙”は この日の怨恨を忘れないために少年と約束をした――――――」

――――――

 

――――――

グラハム「それが私の目の前にいる“鳶一 折紙”という一人の少女の真相ではないかと私は睨んでいる」

――――――

 

折紙「そんな与太話、信じられるものか!」

 

折紙「――――――私自身が仇だなんてこと!」

 

――――――

グラハム「そうだ。今のは西暦24世紀を生きた未来人である私が勝手に想像したものでしかない」

 

グラハム「だが、きみの性格からしてみれば、追い詰められれば そういうことをしでかしそうだと 私は危惧している」

 

グラハム「うむ。実際に ここまで話してみて、私の中ではそれはますます確信へと変わりつつある」

 

グラハム「そう考えると、私自身は復讐を果たせなかったが、行くところまで行ってしまった彼女の方がきみに近いように思えてきたな」

 

グラハム「たしか、彼女の名は“ルイス・ハレヴィ”だったな……」

――――――

 

――――――

グラハム「だからこそ、鳶一 折紙。きみには私と私が守護する五河 士道に誓って欲しいのだ」

――――――

 

――――――

グラハム「どれだけ苦しい戦いの日々であっても 決して人間としての一線を捨てないということを」

 

グラハム「私はそのためにきみとの話し合いの機会を待っていたのだ」

 

グラハム「なぜならば、私は国や所属にこだわらぬ意志の元に私の戦争をしているからだ!」

――――――

 

――――――

グラハム「あえて言おう! 少年が生きる世界のためであると!」

――――――

 

折紙「………………!」

 

折紙「グラハム・エーカー……」

 

折紙「なら、交換条件」

 

折紙「何があっても士道のことは守り抜くことを誓って」

 

折紙「それこそが私の最大の望み。生きる理由。存在意義――――――」

 

グラハム「その旨をよしとする」

 

 

―――

――――――

―――――――――

――――――――――――

 

 

士道「(折紙のやつ、俺をこんな真っ暗なところに閉じ込めて、どれくらい時間が経ったのかもわからない)」

 

士道「(たぶん、『オーシャンパーク』の舞台裏か何かだと思うけど…………)」

 

士道「(身体が燃えるように熱い……)」

 

士道「(考えがまとまらない……)」

 

士道「(意識が朦朧としている……)」

 

士道「(これは――――――、最初に折紙の家に上がった時に飲まされたやつと同じものだろうか……)」

 

 

士道「(早く誰か助けに来てくれないものだろうか……)」

 

士道「(いや、今の 拘束台に股を広げさせられて 猿轡を咥えさせられて 股座をイキリ勃たせている姿なんて見せられない……)」

 

士道「(なんで こんな時にアソコがイキリ勃っているのか わかんねえけど、)」

 

士道「(このままじゃ まるで放置プレイで興奮しているヘンタイだと思われてしまう!)」

 

士道「(だから、誰も来るなぁああ! いや、誰か来る前に なんとか鎮まれぇえええええ、俺の鏖殺公(サンダルフォン)!!)」

 

士道「(うぅ、ジタバタすると腰の部分だけが他より動く感じがして、ソソリ勃った局部に嫌でも意識が向いてしまう……)」

 

士道「(ここは忍耐の時なのか――――――、藻掻く時なのか――――――)」

 

 

士道「(こういう時こそ冷静になって機を窺うことにして、気を落ち着かせることに専念して、またどれくらいか――――――)」

 

士道「(微かに聞き慣れた嫌な警報が鳴り響いているのがわかった……)」

 

士道「(どこからか人々の慌てふためく声や足音も聞こえてくる……)」

 

士道「(折紙のやつ、本当に始めちまったんだな……)」

 

士道「(何をやっているんだよ、本当に……)」

 

士道「(そんなことをして、ただですむと思っているのか?)」

 

士道「(お前がやっていることは軍法会議ものだぞ! お前は精霊を手にかける以前に、同じ人間の手で処罰される未来しかないじゃないか!)」

 

士道「(きっと、俺以外にもお前のことを心配してくれている人だっていただろうに、)」

 

士道「(お前は自分の選択に本当は後悔はないのか? 精霊と戦うことができれば、それで満足なのか?)」

 

士道「(お前は、俺との明日さえ、復讐のためならば捨てるのか!?)」

 

 

士道「(助けなくちゃ……。琴里も、折紙も)」

 

士道「(けど、俺はこんなところに 独り 縛り付けられて、何もできずにいる……)」

 

士道「(俺はなんて無力な存在なんだ……)」

 

士道「(人間の力を超えた特殊災害指定生命体“精霊”を 唯一 霊力封印できる存在だからといって、)」

 

士道「(俺自身が“精霊”を超越した存在じゃないことをすっかり失念していた…………)」

 

 

――――――力が欲しい。

 

 

士道「(理不尽な現実を跳ね返すだけの力が欲しい……)」

 

士道「(だからこそ、俺はあれほどまでに“武士道”に焦がれて 今日まで鍛錬を重ねてきたというのに……)」

 

士道「(何の役にも立っていないじゃないか……)」

 

士道「(最愛の家族が自身の存在を失いかけている瀬戸際だってのに、いの一番に助けにいけないだなんて……)」

 

士道「(俺にできることは本当にデートしてデレさせるぐらいしかないのか……)」

 

士道「(そうか。だから、俺はあんなにも対話することに固執していたのか……)」

 

 

士道「(精霊の圧倒的な力を理解するに連れて、どれだけ足掻いても人類は武力で精霊に勝利することができないと、誰よりも理解していたから……)」

 

 

士道「(勝てるわけがない。これまで遭遇してきた精霊はみんな、そもそもの正規の対策班のASTを歯牙にも掛けないほどだった……)」

 

士道「(なら、俺一人の頑張りで本当に何とかなるんなら、世界を救うための人柱になるしかないじゃないか……)」

 

士道「(それで、家族やみんなが助かるのなら、“サムライ”として これ以上の名誉はないじゃないか……)」

 

 

士道「(とは言っても、同胞である人間の奇策に嵌って何もできずに己が無力を噛み締めているだけの俺には何も掴めないまま終わるんだろうけどな……)」

 

 

士道「(くそっ! くそぉおおおお!)」

 

士道「(また、俺は! 5年前と同じように! 何もできないまま! 何もわからないままで終わるのか!?)」

 

士道「(琴里は!? 折紙は!? 閉じ込められている俺を迎えに現れるのはどっちなんだ!?)」

 

士道「(それとも、他の誰かなのか? そして、全てが何もかも終わった頃に 全てを知らされて――――――)」

 

 

士道「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」ググググググ!

 

 

士道「(また、あんな思いをするぐらいなら、誰かの明日を繋げて 俺はここで力を使い果たして死んでやる!)」

 

士道「(そうだとも! “サムライ”の命の捨て場所は 苛烈極まる戦場よ! こんな場所なんかじゃない!)」

 

士道「(うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!)」グググ・・・

 

士道「(はああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!)」ミシミシミシ・・・

 

士道「(うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!)」メキメキメキ・・・

 

 

士道「!?!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」バキッ! ――――――自身の左腕ごと拘束台を圧し折る!

 

 

士道「(左腕が逝ったぁ…………)」ズキズキ

 

士道「(いつもなら これぐらいの無茶をしても 灼かれるような思いをするだけで 全快するんだけどな……)」ポタポタ・・・

 

士道「(でも、無茶の仕方は完璧にマスターしている…………)」ブルブル

 

士道「(折れていても何とかなれ……)」ズキズキ

 

士道「(ぐうううううううううううううううううううううううう!)」グググ・・・ ――――――骨折と引き換えに自由を得た左手で猿轡を 無理矢理 引き離す!

 

 

士道「だああああああああ!!」ブチッ!

 

士道「あ」カポッ

 

士道「はずれたぁ……」ゼエゼエ

 

士道「あ、ああ…………」ズキズキ

 

士道「――――――!」スゥーー

 

 

士道「誰かああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

 

士道「………………」

 

士道「…………まあ、さすがにこんなところに誰かが来るわけがなかったか」

 

士道「…………ああ」ガクッ

 

 

十香「シドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」ドッゴーン! ――――――天井を斬り裂いて舞い降りる!

 

 

十香「そこにいた! シドー! シドー!」ギュッ!

 

士道「十香……」ホッ ――――――驚く気力も残っていない。

 

十香「今すぐ ここから出よう!」

 

士道「あ、ああ…………」

 

十香「し、シドー!? どうしたんだ、その左腕!?」

 

士道「……何でもない。それよりも、この拘束具を壊してくれ。そうすれば応急処置ができるから」ゼエゼエ

 

十香「わ、わかった!」

 

士道「よかった。希望はまだ――――――」

 

士道「行くぞ、琴里! 折紙!」

 

 

――――――5年前のジンクスなんて吹き飛ばしてやる!

 

 

――――――

神無月「士道くん! よかった! 無事に脱出することができたようで何よりです!」

 

神無月「しかし、そのために また無茶をしましたね……」

 

令音「ああ。左腕が完全に折れてしまっているね」

 

令音「ただ、応急処置は適切だから、一旦は〈フラクシナス〉に帰還させて 医療用顕現装置で少しでも治療をやっておくべきだ」

 

神無月「聞きましたね! 一旦、士道くんは〈フラクシナス〉で応急処置を施します!」

 

神無月「それまではみなさん、状況の整理も兼ねて〈フラクシナス〉で待機しておいてください!」

――――――

 

 

――――――

十香「大丈夫か、シドー?」

 

士道「大丈夫だ。左腕がちょっと力が入りづらくなっているだけだから」ハハッ ――――――医療用顕現装置で骨折そのものは体内で固定されて見た目は大丈夫な状態。

 

よしのん「いや~、そんなことを言っても、士道くん? 左腕がおかしな状態になって平気そうに笑っていたのはちょっとしたホラーだったよ?」

 

四糸乃「大丈夫でも、無理はしないでください、士道さん……」

 

士道「助けに来てくれて、ありがとう、みんな」

 

士道「実際、ずっとあんなところに独りでいたら 頭がおかしくなっていたところだ」

 

十香「ああ。何もないところで独りでいるのは辛いからな」

 

十香「よく頑張ったな、シドー」

 

士道「お、俺が褒める場面なのに、なんで十香が…………」

 

十香「じゃあ、シドーも褒めてくれ!」

 

士道「あ、ああ……」ハハッ

 

士道「ほら、四糸乃もだ」ニコッ

 

四糸乃「あ、ありがとうございます……」

 

よしのん「四糸乃も通路にたくさん仕掛けられた罠の解除で頑張っていたからね。いっぱい褒めてあげて」

 

士道「もちろんだとも」

 

 

――――――また精霊の純粋さに助けられたな。

 

 

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