【デート・ア・ライブ】 デート・ア・ガンダム -武×士道×グラハム- 【機動戦士ガンダム00】   作:LN58

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第12話 この街で失った愛を再び Bpart

――――――

士道「戦況はどうなってます?」

 

神無月「優勢と劣勢が入れ替わりながら、今は司令が優勢となっている状況です」

 

神無月「最大威力に関しては〈プリンセス〉夜刀神 十香の天使〈鏖殺公(サンダルフォン)〉が上ですが、」

 

神無月「通常戦闘における破壊力は自身の再生能力を活かした力押しができる司令――――――、いえ、〈イフリート〉の天使〈灼爛殲鬼(カマエル)〉が圧倒的です」

 

神無月「しかし、小柄な体格と大振りな得物の組み合わせが災いして、どうあっても反応が鈍い箇所が出てきています」

 

神無月「そこを新型のCR-ユニットを解除して身軽となり、機動力による撹乱と練度の差でAST:鳶一 折紙が〈イフリート〉に大ダメージを与えました」

 

士道「琴里は!?」

 

神無月「人体の急所へ渾身の一撃が何度も極まりましたが、〈イフリート〉の再生能力は桁違いで、即座に復活を果たし、普通ならば すでに4度は殺されています」

 

士道「………………琴里!」

 

神無月「申し訳ありません。本当ならば すぐにでも司令の援護に向かわせたい状況でしたが、まずは士道くんの捜索を優先させていただきました」

 

令音「今の十香と四糸乃の限定霊装では危険すぎるからね」

 

令音「霊力封印をされた・されてない精霊の差は歴然だ。琴里が十香に匹敵する強大な精霊なのだから尚更」

 

士道「ASTの増援は?」

 

神無月「今の所、確認できません」

 

神無月「前回の〈ナイトメア〉時崎 狂三との戦争で、展開できる戦力がないのでしょう」

 

士道「そうだった……」

 

令音「未確認の新型CR-ユニット――――――、AST一個中隊に相当する戦闘力――――――、」

 

令音「圧倒的な戦闘力の精霊には数的優位を持って対抗することが基本のASTでありながら 単身で精霊討伐に挑んだことを考えると、」

 

令音「おそらく、ASTに配備されたばかりの新型機を無許可で持ち出して、一般人の目の前で戦端を開いたことにより、」

 

令音「そのせいで、増援を送るタイミングや責任問題のことでAST内部が相当に揉めているんじゃないかと思われる」

 

令音「すぐには駆けつけることはできないだろうし、我々がそうであるようにAST側も今の激しい攻防に入り込むことができないはずだ」

 

神無月「そうして、互いの死力を尽くした1対1の戦いが続いているわけです」

 

神無月「鳶一 折紙が持ち出してきた新型機の性能も驚くばかりですが――――――、」

 

神無月「こちらを見てください」

 

令音「シン。これはこの前の〈ナイトメア〉時崎 狂三との戦いや今回の戦いの序盤で見せていた天使〈灼爛殲鬼(カマエル)〉による戦闘シーンだが、」

 

令音「戦いの途中から 琴里は こちら側にまとめておいた 見たこともない戦い方に変えてきたんだ」

 

神無月「これです! 角の間から炎の輪を発射する攻撃です! 小さくとも かなりの誘導性能で、機動力による攪乱戦法を確実に潰しています!」

 

士道「何だ、これは!? 炎のチャクラム!?」

 

士道「…………?」

 

士道「これ、どこで見たことがあるような感じがする――――――」

 

神無月「そして、巨大な戦斧の形をした天使〈灼爛殲鬼(カマエル)〉が分離したかと思うと、両手剣に姿を変えて 反撃に転じました」

 

神無月「今の状況はこの続きとなります」

 

士道「少し琴里の体格には合わない刃渡りの長さで、しかも二刀流だけど、」

 

士道「精霊のアホみたいな腕力でなら、両手に持った剣でデタラメに振り回すだけでも相当な脅威になる!」

 

神無月「ええ。事実、機動力による攪乱戦法が通用しなくなったので、」

 

神無月「鳶一 折紙は分離しておいた新型機を再び装着して圧倒的な火力と装甲で押しつぶそうとしましたが――――――」

 

 

士道「トライパニッシャーだとぉ!?」

 

 

士道「角の間から出す炎のチャクラムと、両手のロングサーベルとショートサーベルのエネルギーを収束させて火球を放ったのか!?」

 

士道「あれなら元々の〈灼爛殲鬼(カマエル)〉の戦斧形態よりも機動性と手数に優れて、」

 

士道「トライパニッシャーで十分な火力を確保することで、砲戦形態なしで 圧倒的な火力を維持しつつ 間断なく攻め立てられる――――――」

 

 

士道「5年前の時から炎の精霊〈イフリート〉は進化している?!

 

 

令音「シン」

 

神無月「士道くん、あれが何なんかをご存知なのですか?」

 

士道「ハッ」

 

士道「…………?」

 

士道「なんで 俺、あれの原理が理解できたんだ? それに、5年前に〈イフリート〉と戦った この既視感――――――」

 

令音「………………」

 

神無月「まさか――――――」

 

士道「もしかして――――――、」

 

 

――――――いるのか、俺の守護天使?

 

 

――――――

 

 

イフリート「あら? さっきまでの威勢はどうしたの?」

 

イフリート「十香と比べたら パワーはあっても あまりにもキレとスピードがないから余裕だって言ってたのは どこのどいつ?」

 

折紙「くっ」

 

イフリート「哀れねえ。ただの素人のチャンバラ相手にプロの戦闘術が通用しないだなんてね」

 

イフリート「ほら、もっと怒りなさい! もっと憎みなさい! もっと力を入れて 私を楽しませなさい!」

 

イフリート「じゃなかったら、あなたの5年間の努力なんてものは 私の5年間の眠りを覚ます 体の良い目覚まし程度に過ぎないってことになるんだから!」

 

折紙「い、〈イフリート〉ぉおおお!」

 

イフリート「兵法に曰く、相手の隙を突いて動揺を誘う――――――」

 

イフリート「基本中の基本ね」ポイッ ――――――二振りの炎の刀を空に捨てる。

 

折紙「武器を捨てた――――――?!」

 

折紙「ハッ」

 

イフリート「この距離なら【防御用随意領域(テリトリー)】は意味をなさないわよね?」シュッ

 

折紙「き、緊急回避――――――」

 

折紙「あ、これは――――――」ゾクッ

 

イフリート「あなた、人間が精霊に勝てるって本気で思っているわけ?」ブン! 

 

折紙「ガハッ」ドゴォ! ――――――鳩尾に深々と拳がめり込む!

 

イフリート「私の武器が天使〈灼爛殲鬼(カマエル)〉だけだと思ってた? それがあなたの最初の判断ミスよ」

 

イフリート「じゃあ、【ハワード】と【ダリル】の二刀流が切り札だと思ってた? あなたはまた判断ミスを犯した」

 

イフリート「元々 精霊と人間とでは パンチ力にだって 天と地ほどの差があるのに、」

 

イフリート「相手が素手になったなら少しでも差が埋まるとでも思った? なら、あなたはどうしようもないグズで間抜けね」

 

折紙「うぅ…………」ゴホゴホ・・・

 

イフリート「それに、自分の装備の弱点も把握しきれてないわよね、あなた? でかい図体のせいで懐がお留守になっていたわよ」

 

イフリート「こんなふうにね!」ボカスカ!

 

折紙「あ、ああ…………」ボゴォ!

 

イフリート「懐に飛び込んできた相手すら緊急回避のバリアーで包み込む調整をしているだなんて、よっぽど浮かれ気分だったようね!」ボカスカ!

 

イフリート「今のあなたは緊急回避用に展開される自分の【防御用随意領域(テリトリー)】に相手を一緒に閉じ込めて殴られ続けるサンドバッグよ!」アハハハ!

 

イフリート「さて、あと何発 内臓が耐えられるかしら? 顔を潰してやってもいいけど、顔から噴き出す汚いのに触れるのが嫌だからやらないけど!」ボカスカ!

 

折紙「あ――――――」ボコボコ

 

イフリート「気持ちいいでしょう? 良い声で鳴きなさい! 豚は豚らしくブーブー鳴いてればいいのよ!」

 

イフリート「所詮、人間なんて 自分たちが築き上げた社会機構に自分から飼い慣らされるしか能がない家畜でしかないんだから!」

 

折紙「お、お前は――――――」ゴホゴホ・・・

 

イフリート「おっと、そう言えば、あなたは士道の命令だったら自分からペットになることも辞さないケダモノだったわね」

 

イフリート「なら、あなたのことは殺さないでおいてあげるわ」

 

イフリート「人間の尊厳を投げ捨てた人間以下の存在にいちいち構っていたら、精霊である私の品格が損なわれるのよね」

 

折紙「き、貴様ああああああああああああああああ!」

 

折紙「うっ」ガシッ

 

イフリート「はい、これで終わり」グググ・・・

 

イフリート「人間って本当に脆いわね。こんな小娘の手でも絞められるような弱点を晒しているんだもの」

 

イフリート「首根っこを押さえてしまえば、生かすも殺すも思いのままね」

 

折紙「私は絶対に精霊に敗けない――――――」

 

イフリート「――――――そうね、勝つまで生きていれば、ね」

 

折紙「アア・・・・・・」

 

折紙「シドー・・・・・・」

 

折紙「」ガクッ

 

イフリート「………………フフッ」

 

イフリート「あは、あはは、あははははは!」

 

イフリート「勝った! 私は勝った!」

 

 

イフリート「ねえ、士道! ねえ、グラハム! 私、私の力だけで敵を倒したわよ! 褒めて! 褒めてよ!」

 

 

イフリート「これでもう何も心配することなんてないわ!」

 

イフリート「どこまでいっても人間でしかないのに無茶ばかりする“おにーちゃん”も、肉体がなくて見ているしかできない“兄貴”も、」

 

イフリート「これからは 全部 私が問題を解決するから、私を頼って!」

 

イフリート「そして、私を見て!」

 

 

イフリート「それから、ずっとずっと一緒に暮らしましょう! 私たちの幸せを邪魔するやつは 全部 私が潰すから!」

 

 

イフリート「あ、でも、その前に“おにーちゃん”には少しオシオキが必要よね~」

 

イフリート「いつもいつも子供扱いで からかってばかりなのがいけないのよ、“おにーちゃん”?」

 

イフリート「そして、“兄貴”にはちょっとばかり借りを返しておかないとね?」

 

イフリート「5年前の時は“兄貴”にさんざんに打ち負かされたから、ずっと負けっぱなしっていうのも、ねぇ?」

 

イフリート「それに、鳶一 折紙に私の攻略法を教えたのも“兄貴”なんでしょう?」

 

イフリート「まあ、これについては『私の実力を図る ちょうどいいテスト相手を用意してもらった』ってことで帳消しにしてもいいわ」

 

イフリート「でも、どうすれば“兄貴”とまた戦えるのかしらね?」

 

イフリート「5年前のあの時と――――――、時崎 狂三の時と――――――、」

 

イフリート「何か共通点があるのかしら?」

 

 

イフリート「あ、わかった。“おにーちゃん”と“兄貴”は一心同体の一蓮托生の関係」

 

 

イフリート「なら、ちょっとばかり“おにーちゃん”に怖い思いをさせておけば“兄貴”が現界できるようになるんじゃないかしら!」

 

イフリート「いいわね! ちょうど“おにーちゃん”にはオシオキしておきたかったところだし、一石二鳥ね!」

 

イフリート「じゃあ――――――、」

 

 

イフリート「士道、そこにいるわよね」チラッ

 

 

士道「!!」ビクッ

 

折紙「」

 

イフリート「安心して。()()は死んでないから」

 

イフリート「正直に言って、興が乗らないのよね。私が手ずから殺す価値のないケダモノだし」

 

士道「琴里、お前……」

 

士道「いや、お前は炎の精霊〈イフリート〉なのか!?」

 

士道「琴里は間違ってもそんなことは絶対に言わない!」

 

イフリート「ああ そうね。私は“五河 琴里”であって“五河琴里”じゃない存在よ。自分でもそうとしか言いようがないわね」

 

士道「そんな! 手遅れだったのか、琴里……」

 

イフリート「――――――『手遅れ』?」

 

イフリート「そんなことないわよ、士道。むしろ、『どうして最初からこうしなかったんだろう?』って後悔するぐらい、今すごく充実しているわ」

 

イフリート「それでね、士道」

 

イフリート「褒めてよ、士道。士道の邪魔ばかりするそれは私が倒しておいたわ。しかも、士道のお望み通り 命は奪わずにね」

 

士道「それは、まあ、『よくやった』って言いたいところだが……」

 

士道「なら、もう霊装を展開している必要はないだろう? さっさと引き上げようぜ。デートは仕切り直しだ」

 

イフリート「ねえ、頑張ったからご褒美をもらえる?」

 

士道「ここでか? 言ってみろ、聞くだけなら――――――」

 

イフリート「じゃあ、士道」

 

 

――――――“兄貴”をここに呼んで。

 

 

士道「――――――!」

 

士道「そんなの、自分で話をつければ――――――」アセアセ

 

イフリート「ちがうの。5年前の時と時崎 狂三の時と同じように現界して欲しいの」

 

士道「わかっていたら、ここまで〈デート・ア・ライブ〉は苦労してない! わかってることだろう!」

 

イフリート「そうよね。うん、ごめん。無理なお願いをして」

 

士道「あ、ああ……」

 

士道「気にするなよ。俺の方も、俺の守護天使だって、これからのことを思えば、現界の方法を探っていくからさ」

 

イフリート「やっぱりね。そういうことだから、士道さ?」

 

 

――――――死んで?

 

 

士道「!!!?」

 

イフリート「あ、ごめんね。今のは嘘よ。ちょっとしたジョークよ」

 

イフリート「本当は士道への日頃のオシオキも兼ねて、一度 真剣で斬り結んで欲しかったの」

 

イフリート「はい、士道。この刀を使って」スッ ――――――炎の刀が地面に突き刺さる!

 

イフリート「大丈夫よ、そんなに心配しないで」

 

イフリート「士道は私と霊力のパスが繋がっているから、士道も 私も 何度 斬られても その度にニューゲームできるから」

 

士道「お前、本気で――――――」

 

イフリート「私のお願いでも嫌なの?」

 

士道「意味がわからない!? お前は俺や俺の守護天使に殺したいほど恨みがあったのか!?」

 

イフリート「そんなわけないじゃない、この唐変木」

 

 

――――――むしろ、今すぐにでも抱きしめたいほど愛しているわよ、二人共。

 

 

士道「え」

 

イフリート「相手が斬る価値のないケダモノだったけど、私だけの力で勝つことができたんだから、」

 

イフリート「“おにーちゃん”と“兄貴”に私の能力を直に確かめてもらって認めてもらいたいし、」

 

イフリート「5年前の時に“兄貴”にさんざんに打ち負かされたから、今こそリベンジをしたい気分なの」

 

 

イフリート「だから、私は士道の守護天使:グラハム・エーカーとの果し合いを所望するわ! 果てしないほどにね!」

 

 

イフリート「でも、“兄貴”は『自分が死人だから あまり生者の営みに干渉したくない』って現界するのをギリギリまで我慢しているみたいだからさ、」

 

イフリート「ちょうど 私と士道なら お互い殺しても死なないんだから、互いに殺し合っていれば“兄貴”もきっと混ざってくれるはず!」

 

イフリート「その時、私は5年前のリベンジが果たせるの!」

 

イフリート「だから、お願い。ご褒美として協力して」

 

士道「お前は本当に“五河 琴里”じゃないんだな……」

 

イフリート「?」

 

士道「断る! サムライにとっての刀は遊びの道具なんかじゃない! おいそれと抜かないことに意味がある!」

 

イフリート「ええ? だから、『私と士道はニューゲームできる』って言っているじゃん。このスカポンタン」

 

士道「スカポンタンなのはお前の方だ!」

 

イフリート「……そっか、協力してくれないんだ、士道は」

 

イフリート「じゃあ、しかたないわね」スッ ――――――天に手をかざす。

 

士道「な、何を――――――」

 

士道「!」

 

士道「ま、まさか、お前――――――」

 

 

ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!

 

 

イフリート「10分、時間をあげる」

 

イフリート「それまでに私を殺せなかったら、空間震で街はメチャクチャになるから」

 

イフリート「さあ、来て! 人生最高の10分にしましょう、士道! 私の成長ぶりをしっかりと見て!」

 

士道「な、何なんだよ! 何なんだよ、それ! 映画の見過ぎだろうがよ!」

 

士道「うわっ」ヒョイ

 

イフリート「どうしたの、士道? 私たち、殺されても死なないけど、斬られたら痛いのは変わらないのよ?」

 

イフリート「それとも、士道は斬られ役になるのが趣味なのかしら?」

 

イフリート「さあ、刀をとって、士道! でないと、何度も私に殺されることになるわよ!」

 

士道「く、くそっ!」バッ

 

士道「うわあああああああああ!」ガキン!

 

イフリート「まっていたわ、この瞬間を! ようやく 士道と刃を交えることができる この時を!」フフフ・・・

 

士道「たのむ! たのむから! 元の琴里に戻ってくれええええええええええええ!」ポタポタ・・・

 

――――――

神無月「士道くん!」

 

令音「琴里……」

 

十香「い、いったいどうなっているのだ、これは!?」

 

十香「戦いは終わったのではないのか!?」

 

十香「鳶一 折紙を自力で撃退した後、どうして琴里はシドーと戦っているのだ!?」

 

十香「しかも、今度は本物の空間震警報まで――――――」

 

四糸乃「琴里さん……」

 

よしのん「――――――『一番の敵は身内の中にいた』ってやつだね、これは」

 

よしのん「しかもだよ? 『話を聞く気がない』んじゃなくて『言葉が通じているのに話が通じていない』なんて、これまででもっとも厄介な相手だ」

 

四糸乃「本当に琴里さんは“琴里さん”じゃなくなってしまったのですか?」

 

十香「わからない。先程までの言動からすると 自分でも それがはっきりしていない様子だった」

 

神無月「村雨解析官! 今の状態での霊力封印は可能ですか!?」

 

令音「可能だ」

 

十香「なら――――――!」

 

令音「だが しかし、今の精神状態のままで霊力封印をしたとなると、炎の精霊〈イフリート〉と“五河 琴里”の人格が混ざりあった状態で落ち着くことになる」

 

令音「そうなれば、普通の人間としての生活もままならないほどに琴里が変わり果ててしまう可能性が非常に高い」

 

十香「そ、そんな!?」

 

神無月「それは非常に魅力的なお話ですね~! いや~、さっきまでの会話を聞いてて最高にゾクゾクしてましたよ、私~!」

 

十香「おい」

 

神無月「おっと、失礼」コホン

 

神無月「しかし、今の我々〈フラクシナス〉クルーがあるのも、炎の精霊〈イフリート〉でもある一人の少女が我々の司令を務めているからです」

 

神無月「司令としての立場を失ってしまうことになれば 元も子もありません」

 

神無月「それは兄である士道くんにとっても耐え難い現実でしょう」

 

十香「なら、何か策はないのか! 何だっていい! 私はあの二人に恩がある!」

 

四糸乃「私もです!」

 

 

令音「なくはない」

 

 

十香「おお 本当か!」

 

四糸乃「お、教えてください。何でもしますから」

 

神無月「村雨解析官……」

 

令音「そういえば、昨日の水着コンテンストで優勝したのは四糸乃だったな。なら、ちょうどいい」

 

四糸乃「私、ですか」

 

令音「ああ」

 

令音「きみには一暴れしてもらう」

 

令音「きみが勝利の鍵だ」

――――――

 

 

ガキン! ガキン! ガキン!

 

士道「………………!」

 

イフリート「楽しい! 楽しいわ! 楽しいわよ、士道!」

 

イフリート「ねえ、士道! こんな時間がもっと続いたらいいと思わない? もっと私と剣で語り合いましょう!」

 

イフリート「もう最高の気分だわ! 最初から私が出ていればよかったのよ! そうすれば、万事全て解決よ!」

 

士道「……たしかにな。妹であることを抜きに考えれば、お前が護衛についてくれれば 本当に頼もしいぐらいだ」

 

士道「琴里も立派に成長したもんだな――――――」

 

イフリート「でしょう!」

 

士道「――――――なんてこと言うと思ったか! お前はまだまだだ!」ブン! ――――――戦いの中で 冷静さを取り戻して 冴え渡る武芸!

 

イフリート「なっ」ガキーン! ――――――しかし、返す刀で、炎の精霊が手にした刀は弾き飛ばされていた。

 

士道「心も技も体もなっちゃいない 見様見真似の生兵法と力任せなだけのお前に 武芸者が遅れを取るものか!」

 

士道「お前の敗けだ!」ジャキ! ――――――そして、すかさず、喉元に刀を突き出した。

 

イフリート「いやはや、さすが。士道って本当に強いわよね。まったく敵わないわ」

 

イフリート「この子には戦いの才能がなくても 一生懸命 頑張ってきたものがあるから、」

 

イフリート「精霊の力で 多少は荒削りになっても やれるものだと思ってたのに…………」

 

士道「もう止めにするんだ。空間震を止めてくれ――――――」

 

イフリート「あら、憶えてないの? 止める条件はあなたが私を殺すことよ」

 

士道「……そんなことができるものか!」

 

イフリート「まだそんなことを言ってるの? 殺しても生き返るんだから、一度は“サムライ”らしく 思いっきり やってみせたらどうなの?」

 

イフリート「じゃないと――――――」スッ

 

士道「あ」ビクッ

 

イフリート「隙あり」ドン! ――――――不意に 自分の首に突きつけられた刀を持つ手を握りながら 相手の懐に掌打を叩き込む!

 

士道「うあっ」ドタッ

 

イフリート「――――――私があなたを殺すだけよ」ジャキ! ――――――刀を奪って床に倒れた相手の喉元に突きつける!

 

士道「!!」

 

イフリート「じゃあね。まずは1回ね。士道の命は私がもらったわ」

 

イフリート「やったー! これが私の初白星よ、おにーちゃん!」フフッ

 

士道「こ、琴里ぃいいいいいいいいいいいいいいいい!」

 

 

折紙「大型レイザーブレード〈クリーヴリーフ〉展開! 【随意領域(テリトリー)】展開!」

 

 

イフリート「――――――!」

 

士道「まさか、折紙!?」

 

折紙「やらせない! 士道だけは! 絶対に!」ヨロヨロ・・・

 

イフリート「まあ いいわ。気にするほどのものでもないし」

 

イフリート「ほら、もう気力だけで立っているような あなたの攻撃なんて 何ともないんだから」バリーン!

 

折紙「くぅうううううううううう!」フラフラ・・・

 

士道「もういい! もういいんだ、折紙! お前はよくやってくれた!」

 

折紙「そうはいかない……」

 

折紙「今ここで 私にできなかったから、私はまた士道に助けてもらうことになる……」

 

折紙「でも、私はもう士道に全てを預けてあるから、私が最後まで持っている唯一のものまで預けてしまったら、本当に私の中には何もなくなってしまう……」

 

折紙「だから――――――!」

 

イフリート「うるさい。邪魔するな。私と士道の最高の10分を汚すな、ケダモノ」

 

イフリート「堪忍袋の緒が切れたわ。生かしておくつもりだったけど、もうあなたはいなくていい」

 

イフリート「――――――〈灼爛殲鬼(カマエル)〉。【(メギド)】」ジャキ!

 

士道「!!」

 

士道「本気かよ!?」

 

士道「に、逃げるんだ、折紙! 止めるんだ、琴里ぃいいいい!」

 

イフリート「こんな時でも、おにーちゃんは…………」

 

イフリート「まったく…………」フフッ

 

士道「こ、琴里……」ホッ

 

イフリート「とりあえず、この前みたいに壁になられても困るから、足で押さえつけておくわ。嬉しいでしょう?」グリグリ・・・

 

士道「ああああ!? ぐあああああああああ!?」メキメキメキ・・・ ――――――地面にめり込む勢いで踏みつけられている!

 

イフリート「じゃあ、さようなら――――――、いや、消えろ、ケダモノ」

 

折紙「あ」

 

折紙「お父さん……、お母さん……」

 

折紙「士道……、グラハム・エーカー……」

 

折紙「ごめんなさい――――――」

 

 

十香「はあああああああああああああああああ!」ブン!

 

 

イフリート「!!!!」スバアアアアアン!

 

イフリート「っつう!」

 

折紙「え」

 

士道「と、十香?」

 

十香「正気に戻れ、琴里! 今のお前がやっていることをシドーが喜ぶはずがない」

 

イフリート「と、十香? いったい何をするのよ――――――」カチカチカチ・・・

 

イフリート「――――――【(メギド)】が凍りつく!?」カチカチカチ・・・

 

四糸乃「…………琴里さん」

 

氷結傀儡「間一髪だったね! 感謝の言葉なら後で聞くよー!」イヤッハー!

 

折紙「なぜ精霊が私を――――――」

 

イフリート「まさか、あんたたちがこの私に楯突くだなんてね? 甘く見ていたわ」

 

氷結傀儡「士道くん! 絶対に琴里ちゃんを放しちゃダメだからね!」

 

士道「!」

 

士道「うおおおおおおおおおお!」ガシッ

 

イフリート「な、何をするのよ、士道!?」ドタッ ――――――隙を突いて脚を掴んで転倒させる!

 

士道「今だ! 四糸乃! よしのん! 俺にかまうな! やれえええええ!」

 

イフリート「!!!!」

 

四糸乃「はい!」

 

氷結傀儡「琴里ちゃん、ちょっと 頭 冷やそうか」

 

 

――――――〈氷結傀儡(ザドキエル)〉!

 

 

イフリート「!!!!?!!!」

 

イフリート「つ、冷たい! 寒い! 凍える!?」

 

イフリート「こ、この! こんなの、私の炎で――――――!」

 

イフリート「――――――ほ、炎まで凍る!?」カチカチカチ・・・

 

イフリート「や、やめなさい、四糸乃! 炎まで凍るような吹雪に普通の人間の士道が耐えられるはずが――――――」

 

イフリート「はずが――――――!?」

 

 

士道「ちょっと、おいたが過ぎたようだな、かわいい妹よ?」

 

 

イフリート「ど、どうして!? 私はこんなにも寒いのに、どうして士道は平気そうなの!?」

 

士道「いや、俺もメチャクチャ寒いッ! 皮膚が裂けてきたッ! 血が滲むッ!」

 

士道「まだ6月で夏本番ってわけじゃなくても涼しい格好で着て、さっきまで炎の刀で斬り合っていたから どっと吹き出た汗が冷えてヤバい!」

 

士道「けどな! たとえ火の中 水の中 森の中であろうと、俺にはやらなくちゃならないことがあるんだ!」ギュッ

 

イフリート「あ……」

 

士道「炎の精霊〈イフリート〉、お前が全ての元凶でもあり、同時にお前にはずっと助けられてきたな」

 

士道「でも、今の俺は――――――、」

 

士道「いや、今の俺を支えてくれているのは もう炎の精霊〈イフリート〉だけじゃないんだ」

 

士道「そして、ごめんな、琴里」

 

士道「ここまでやって、ようやくお前が何を想っていたのかを理解することができた」

 

士道「本当にどうしようもない“おにーちゃん”で悪かった」

 

士道「でもな! これだけは聞いて欲しいんだ!」

 

士道「新学期が始まった四月一○日――――――、」

 

士道「俺が十香や折紙と知り合うきっかけになった あの空間震の時に いの一番に思っていたこと」

 

 

――――――5年前と同じで 何があっても お前だけは絶対に守り抜く!

 

 

士道「俺のこの5年間は実質的にお前のために費やしてきたんだああああああああああああ!」

 

士道「だから、帰ってきてくれ、琴里ぃいいい!」

 

士道「お前がいない人生は俺には耐えられなあああああああああああああい!」

 

イフリート「あ、ああ……」ドクン!

 

イフリート「お、おにーちゃん! おにーちゃん! おにーちゃあああああん!」’

 

士道「琴里!」

 

イフリート「おにーちゃん――――――」’

 

 

折紙「大型レイザーブレード〈クリーヴリーフ〉展開! 【随意領域(テリトリー)】展開! 今度こそ仕留める……!」ゼエゼエ

 

 

イフリート「きゃああああああ!?」’ブン! ――――――しかし、集中力が続かず 対象は空高く放り投げられる!

 

士道「琴里ぃいいいい!」

 

士道「くそっ! やめろ、折紙!」

 

折紙「もう邪魔はさせない! これで最後にする!」ゼエゼエ

 

十香「鳶一 折紙! このわからず屋ああああああ!」

 

折紙「あなたたちにかまっている暇はない!」ゼエゼエ

 

折紙「討滅せよ! 50.5cm魔力砲〈ブラスターク〉――――――、あ!」ゼエゼエ

 

折紙「こ、このぉ! 〈ハーミット〉ぉ!」カチカチカチ・・・

 

四糸乃「士道さん! 急いでください!」

 

氷結傀儡「霊力のほとんどが凍って炎の精霊の意識が薄れている今がチャンスだよ!」

 

十香「ここは私たちに任せろ! 急げ!」

 

士道「わかった!」

 

士道「――――――〈フラクシナス〉!」

 

――――――

神無月「わかりました、士道くん!」

 

神無月「最後はあれで極めてください!」

 

令音「シン、空間震の危険はすでに去ったが、このまま逃せば 消失する恐れがある」

 

令音「【好感度】は十分。他のパラメーターが少し安定しないが、このまま一気にいくしかない」

 

令音「たのんだよ!」

 

令音「きみがこの戦争〈デート〉を終わらせるんだ!」

――――――

 

士道「琴里、今 行くからな」

 

士道「最初の時と同じだな、グラハム」

 

士道「たとえ、あなたが側に居なくても、俺はあなたと一緒に居たことを証明するために!」

 

 

 

――――――【グラハム・スペシャル】!

 

 

 

イフリート「ば、馬鹿な奴らよね。いったいどっちの味方なのよ」ゼエゼエ

 

イフリート「さすがにこれ以上は保たないけれど、このまま何もなしで終わるわけにはいかないわ!」

 

イフリート「――――――〈灼爛殲鬼(カマエル)〉。【(メギド)】」ジャキ!

 

イフリート「十香、四糸乃。嫌いではなかったけど、私と士道の邪魔をしたあなたたちが悪いのよ!」

 

イフリート「さようなら――――――」

 

イフリート「!!」フラッ

 

イフリート「どうして! どうして止めるのよ!? 私はあなたの全てを理解して あなたのためにやっているのに!」

 

イフリート「全部 消せばいいじゃない! 怖いものは全部! 嫌なものは全部! あなたから大切なものを取り上げようとするものは全部!」

 

イフリート「撃てば全て終わるのよ! だから――――――!」

 

 

士道「琴里ぃいいいいいいいいいいいい!」ヒュウウウウウウウン!

 

 

イフリート「――――――上! 新手!?」

 

イフリート「ええい! ままなれよ!」

 

イフリート「!!」

 

イフリート「あ、あれは……、お、おにーちゃん…………」’

 

イフリート「あ!」’

 

イフリート「だ、ダメ! あれはおにーちゃん! ダメ! ダメ! ダメ! ダメ!」’

 

イフリート「ダメえええええええええええええええええ!」’

 

イフリート「逃げてぇえええ、おにーちゃん!」’

 

――――――

神無月「士道くん!」

 

令音「シン!」

――――――

 

十香「邪魔をするな、鳶一 折紙!」ゼエゼエ

 

折紙「夜刀神 十香、それはこちらのセリフ――――――」

 

折紙「…………!」ゼエゼエ

 

折紙「――――――ノイズ? こんな時に強力な電波障害!? いったいどこから!?」ゼエゼエ

 

折紙「このままでは――――――」ゼエゼエ

 

折紙「絶対に逃さない、〈イフリート〉ぉおお!」チラッ

 

折紙「!!?!」

 

折紙「あ、あれは士道!? どうして空から士道が――――――」

 

折紙「あの落下速度――――――、やはり、【グラハム・スペシャル】! しかも、士道の身体から光の粒子が出ている!?」

 

折紙「もしかして、【グラハム・スペシャル】の正体は――――――」

 

折紙「というより、何? 右腕の異様に大きな物体は――――――?」

 

 

折紙「――――――折りたたみ式の実体剣?」

 

 

十香「シドーーーーーーーーーー!」

 

折紙「!」

 

折紙「夜刀神 十香――――――」カチカチカチ・・・

 

四糸乃「し、士道さん!」

 

折紙「くっ! 士道ぉおおおおおお!」ビューン!

 

 

 

 

 

イフリート「――――――」

 

士道「――――――!」

 

士道「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 

「怖くはないか、少年?」’

 

「いいや、怖くはないさ。それよりも、今ならわかるような気がする」

 

「俺の守護天使:グラハム・エーカーは5年前に俺に“武士道”という名の力を託してくれた」

 

「それと同じように、グラハムもまた、戦うための力――――――、それだけじゃない いろんなものをを誰かから受け継いできていたんだな」

 

「ああ。そうだとも。その力の意味を間違いながらも、戸惑いながらも、生きてきた」’

 

「その誰かもまた、同じように他の誰かから何かを託されて生きてきたのだ」’

 

「それが連綿と続いていって、俺たちは想像もつかないような奇跡を成し遂げて永い歴史を創り上げてきたんだな」

 

「そのとおりだ、少年」’

 

「そして、その受け継がれた力をもって戦いの中で何を成すのか――――――、」’

 

「その答えこそが我々に課せられた使命であり、世界を形作るものなのだ」’

 

「そう、その答えこそが――――――」’

 

 

 

「刹那、何故〈エクシア〉に実体剣が装備されているか、わかるか?」

 

「GNフィールドに対抗する為だ。計画の中には対ガンダム戦も入っているそうだ」

 

「もしもの時には、お前が切り札になる。任せたぜ、刹那」

 

 

「破壊する…ただ破壊する! こんな行いをする、貴様たちを! この俺が駆逐するッ!」

 

「戦うだけの人生――――――、俺もそうだ! だが今は! そうでない自分がいる!」

 

「〈ガンダムエクシア〉、刹那・F・セイエイ、未来を切り開く!」

 

 

「ようやく理解した! きみの圧倒的な性能に、私は心奪われた!」

 

「この気持ち、まさしく愛だ!」

 

「だが、愛を超越すれば、それは憎しみとなる!」

 

 

「私は純粋に戦いを望む! 〈ガンダム〉との戦いを! そして〈ガンダム〉を超える! それが私の生きる証だ!!」

 

「そうだとも! もはや愛を超え、憎しみをも超越し、宿命となった!!」

 

「た、戦え、少年! 私を切り裂き、その手に勝利を掴んでみせろぉ!!」

 

 

 

――――――生きる為に戦え。

 

 

 

十香「シドーーーーーーーー!」

 

四糸乃「士道さあああああああああん!」

 

 

――――――心頭滅却すれば火もまた涼し!

 

 

士道「燃え尽きはしない!」

 

士道「十香! 俺に決して折れぬ玉鋼を!」

 

士道「四糸乃! 抜けば玉散る氷の刃を!」

 

士道「そして、世界の歪みを破壊する力を!」

 

 

――――――俺の守護天使〈破壊征剣(エクシア)〉!

 

 

士道「一刀両断! 斬り裂けえええええええええええ!」

 

イフリート「う、嘘。ありえない、こんな――――――」

 

イフリート「おにーちゃん……」’ホッ

 

――――――

神無月「こ、これは――――――」

 

令音「【砲】の熱線を凍らせることで物質化させて斬り裂いているのか――――――」

 

神無月「しかし、そのせいか、電波障害が激しく、画面が――――――」

 

令音「…………大気中の氷が激しく擦れ合うことで雷が発生する原理と似たようなことが起きているのかもね」

 

神無月「けれど! そんなことよりも! 今は!」

 

神無月「士道くん! そのまま一気に極めてください!」

 

神無月「司令を! 五河司令を救ってください!」

――――――

 

 

イフリート「――――――〈灼爛殲鬼〉が!?」バリーン! ――――――天使〈灼爛殲鬼〉を真っ向から斬り裂く!

 

士道「捕まえた……」ガシッ  ――――――そして、役割を終えた折りたたみ式の実体剣(GNソード)は光の粒子となって消える。

 

イフリート「うっ」ビクッ

 

士道「琴里、もう放したりなんかしないからな……」

 

イフリート「うん――――――」’

 

イフリート「うっぅうううう!」’ヒッグ

 

士道「琴里?」

 

イフリート「もう、何やってるのよ、おにーちゃん! 私、もう自分が自分だって意識が保てないのに!」’ポタポタ・・・

 

イフリート「もういいの、おにーちゃん! もう後戻りできないの!」’ポタポタ・・・

 

イフリート「だから、早く私を――――――、」’ポタポタ・・・

 

イフリート「私から――――――」’ポタポタ・・・

 

士道「ふざけるな!」

 

イフリート「え」’

 

士道「琴里、お前は俺の可愛い妹だ! この世で一番に大切な俺の家族だ!」

 

士道「もうどうしようもないくらい大好きだ!」

 

士道「お前が人間の心を喪って俺の身体を焼き尽くしたとしても、俺は灰になるまで ずっと このままお前のことを抱きしめていたい!」

 

士道「いや、もっともっと これ以上ないってくらいに 力強く抱きしめたいなぁ、琴里ぃ!」

 

イフリート「ふぇ!?」

 

士道「そうだ、ようやく理解した!」

 

 

――――――この気持ち! まさしく愛だ!!

 

 

イフリート「ふええええええええええええええええ!?」’

 

イフリート「あ、あああ、あわわわわわわわわ!」’

 

士道「精霊だからって何だ! ちょっと身体から火が出るくらいが何だ! 少し暴れ回りたい気持ちを持て余しているのが何だ!」

 

士道「琴里、お前は俺のことが好きか! 俺はお前を猛烈に愛しているぞおおおおおおお!」

 

イフリート「士道! 兄貴! おにーちゃん!」’グイッ

 

士道「!!」ズキュウウウン!

 

 

イフリート「好き! 私も大好きよ! おにーちゃん、大好き! 世界で一番愛してる!」’

 

 

イフリート「だから……、だから……、あの時みたいに私を置いて行かないで! 私を独りにしないで! ずっと側にいて!」’

 

士道「ああ! ああ!! ずっと一緒だ、琴里!」

 

イフリート「うん!」’

 

 

――――――おにーちゃん、大好き!

 

 

 

ヒューーーーーーーーーーーーーン!

 

 

 

四糸乃「士道さん! 琴里さん!」

 

折紙「士道!」ガシッ

 

士道「お、折紙……」

 

十香「琴里!」ガシッ

 

琴里「と、十香……」

 

琴里「あ、ありがとね、ずっと――――――」

 

琴里「」ガクッ

 

十香「琴里!」

 

士道「琴里!」

 

十香「……大丈夫だ。命に別条はない」

 

士道「そっか。ようやく終わったんだな……」

 

折紙「………………」

 

士道「あ、助かったよ、折紙――――――」

 

折紙「――――――」グイッ

 

士道「!?」ズキュウウウン!

 

十香「あああああ!? 何をするのだ、鳶一 折紙! 貴様ああああああ!」

 

四糸乃「あ…………」

 

 

折紙「士道……」

 

士道「折紙……」

 

 

士道「なあ、折紙。琴里の精霊の力はまた封印された。もう琴里と戦わなくてもいいんだよな?」

 

折紙「……今はそういうことにしておく」

 

折紙「でも、もしまた精霊の力が暴走したのなら、私は次こそ精霊を殺す……」

 

士道「やめろ、折紙! 時崎 狂三の時は失敗したけど、着実に〈ラタトスク〉の作戦は成果を挙げている!」

 

士道「ASTが最初に手を出していなかったら、ここまで俺もお前も苦労することはなかったんだぞ!」

 

士道「それに、周りをよく見ろ! こんなんじゃ、どっちが人類に危害を加える悪党かわからないだろう! 遊園地がメチャクチャだ!」

 

士道「お前、言ったよな! ――――――『自分と同じ思いをする人間を作らせない』って!」

 

士道「それって、理不尽な暴力で周りを不幸にする存在に対しての怒りだったはずだ!」

 

士道「俺には 今のお前が一番みんなを怖がらせている“お前自身がもっとも許せない理不尽な存在”になっているように思うぞ!」

 

士道「精霊じゃなければ、他の理不尽な暴力は見逃すのか!?」

 

折紙「………………っ!」

 

士道「なあ、折紙。俺は人には過ぎた力を持ったことで孤独に苛まれる精霊たちを人間にする戦いをさせられている」

 

士道「けど、今の俺には精霊以上に人間に戻さなくちゃならない存在のように感じるぞ、お前が」

 

 

士道「さっきのアレ、あんなのはキスのうちに入らないよ……」

 

 

折紙「!!!?」

 

折紙「あ、ああ…………」ジワッ

 

士道「ごめんな! ごめんな、折紙!」

 

士道「でも、俺はASTの鳶一 折紙じゃなくて、俺との男女交際に胸をときめかせてくれていた鳶一 折紙が大好きだったから!」

 

士道「だから! だからぁ!」ポタポタ・・・

 

折紙「うわああああああああああああ!」ポタポタ・・・

 

十香「…………シドー、鳶一 折紙」

 

十香「……今回はこれでよかったのかな?」

 

 

 

――――――空中戦艦〈フラクシナス〉

 

令音「すまなかった、シン……」

 

令音「今日のことは完全に私の判断ミスだ」

 

令音「きみの守護天使が提案していたように、きみが目覚めてすぐに封印してしまった方が安全だった」

 

令音「ただ 琴里が今日のデートのことをあまりにも楽しみにしていたのでね……」

 

士道「え、それって つまり――――――、」

 

士道「じゃあ、琴里の俺への【好感度】は最初から――――――」

 

――――――

グラハム「妹君が言っていたとおりだよ」

――――――

 

令音「ああ。琴里は“おにーちゃん”のことが大好きなのさ」

 

士道「え」

 

士道「――――――って、グラハム!?」

 

士道「どこへ行っていたんだよ、また! 心配したんだぞ!」

 

――――――

グラハム「いや、私は最初からずっときみの側にいたぞ。それがきみと私の宿命だったではないか」

 

グラハム「だからこそ、【グラハム・スペシャル】の時にも力を貸していたのだが」

――――――

 

士道「あ、そうか……」

 

士道「やっぱり、グラハムはずっと俺の側に変わらず――――――」

 

士道「で、でも、それならどうして急にグラハムを認識できなくなったんだ?」

 

士道「本当にもう今日は大変だったんだぞ……」

 

――――――

グラハム「それについてだが――――――」

――――――

 

令音「ああ。そのことに関しては我々も調査を行っている」

 

令音「きみは〈ラタトスク〉が持つ“精霊に対するジョーカー”だが、きみの守護天使も“もう1つのジョーカー”なのだからね」

 

令音「もしも時崎 狂三のような凶悪な精霊と対抗せざるを得ない場合の切り札を我々は失うわけにはいかない」

 

士道「…………!」

 

士道「…………狂三」

 

――――――

グラハム「……さて、それはどうかな?」

――――――

 

令音「シン、今日もよくやってくれたが、我々が把握しているだけでも精霊はまだまだ存在する」

 

令音「それでも、我々の作戦は少しずつ実を結んでいっている」

 

令音「次の精霊の出現はいつになるかは予測できないが、それまでは今日まで戦いの疲れを癒やし、次の戦いまで英気を養ってくれたまえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

琴里|スヤァー

 

士道「琴里、眠っているな」

 

士道「見慣れていたはずの寝顔なのに、今日は不思議と感じるものがあるな」

 

グラハム『そうだな。それがきみが勝ち取った戦果だ』

 

グラハム『少年、よくやったと心から最大級の賛辞をきみに贈ろう』

 

士道「ああ ありがとう。でも、結局、グラハムはずっと側にいて 最後も一緒になって琴里のことを助けてくれた」

 

士道「5年前と同じだな。またグラハムに俺と琴里は助けられた」

 

士道「本当に感謝してもしきれないよ」

 

 

グラハム『少年、そのことに関してだが、私は3つほど少年に詫びなければならないことがある』

 

 

士道「え、何だよ? 改まって……」

 

グラハム『1つ目、私は5年前に初めての仮の肉体をもって現界し、精霊になった琴里と交戦することになった』

 

士道「ああ。そのおかげで、俺も琴里も、それに街のみんなも助かったって話だろう、今日みたいにさ?」

 

士道「グラハムがやらなくちゃどうしようもなかったんだから、いったい何を改まって詫びるだなんて――――――」

 

 

グラハム『私はそのために、精霊になったとは言え、きみのもっとも身近で大切な女性に刃を突き立て引き裂いたのだ。それも何度も』

 

 

士道「!!!!」

 

グラハム『いかに強大な天使〈灼爛殲鬼〉と言えども 当たらなくてはどうということはない』

 

グラハム『そもそも、血で血を洗う戦いとは程遠い幼気な少女に兵法の何たるかなど理解できているはずがなく、』

 

グラハム『戦いそのものは 私と私の天使が 終始 圧倒していた』

 

グラハム『そして、私は 不本意ながらも きみの最愛の家族に刃を深く突き立て、一旦は行動不能に追いやったのだ』

 

グラハム『しかし、時崎 狂三との戦いで見せたように あの驚異的な再生力によって すぐに復活してしまい、』

 

グラハム『私はその度に刃を握る力を強めて 何度も幼気な少女を斬り刻んできたのだ』

 

グラハム『だが、それでも傷はすぐに治り、何度も復活しては、街を灰燼に帰そうとし、』

 

グラハム『やがて、私と私の天使の現界時間が終わりを迎えようとしていたのを感じた』

 

グラハム『その時、私はきみの大切な家族の命と世界の人々の命を天秤に掛け、世界を選んだのだ』

 

グラハム『私は完全に引導を渡すつもりで最後の攻撃を繰り出し、人体の急所を貫いたのだ』

 

士道「グラハム……」

 

士道「………………」

 

グラハム『………………』

 

士道「……いや、でも、現に琴里は生きているし、今回だって琴里の霊力の封印は成功したんだ」

 

士道「だから、いつまでも気にすることは――――――」

 

グラハム『2つ目、私はきみの身体を2週間も奪い続けていた。だから、あの日のことを含めて 少年はほとんど何も憶えていなかったのだ』

 

士道「え」

 

グラハム『きみが5年前のあの日からしばらくのことを憶えていないのは、死者である私が生者であるきみの身体を完全に乗っ取っていたからだ』

 

グラハム『そして、霊力が封印されて弱りきった精霊:五河 琴里を安全な場所に運び込み、彼女の許に迫った魔の手から守り続けていたからでもある』

 

グラハム『――――――きみの身体を使ってな』

 

士道「あ……」

 

グラハム『そして、接触してきた〈ラタトスク〉と交渉して 精霊:五河 琴里の身柄の安全と自由を保障させることに成功した』

 

グラハム『その時の手土産として、私が西暦2280年9月10日生まれの乙女座の未来人の幽霊であることを明かしてな』

 

士道「な、なんだ、やっぱり 俺の守護天使が守ってくれていたじゃないか。それで何を謝るだなんて――――――」

 

 

グラハム『私は人類が初めて捕獲に成功した精霊:五河 琴里を使った非人道的な実験の数々に協力していた』

 

 

士道「!!?!」

 

グラハム『――――――精霊:五河 琴里 本人からの願いもあって、だがな」

 

グラハム『自分が あの日以来 何者になってしまったかを知ることで 自分の中に潜む内なる恐怖に抗うと同時に、』

 

グラハム『不可抗力であったとは言え、街に甚大な被害をもたらしてしまったことへの罪悪感から、』

 

グラハム『自分を使った初めての精霊の研究が後の世に役立てられることを切に願ってのことだった』

 

グラハム『私には〈ラタトスク〉以外に彼女を受け容れてくれる組織を見出すことができず、彼女もまたそれを受け容れていたので拒否することができなかった』

 

グラハム『ならば せめて、事の顛末を見届ける責任を果たすことにし、』

 

グラハム『あの日から2週間、精霊:五河 琴里が元の日常に解放されるまで きみの知らない時間を共に過ごすことになったのだ』

 

士道「………………」

 

グラハム『………………』 

 

士道「……で、でも、その時の研究のおかげで精霊の問題を武力以外で解決する糸口が見出だせたんだろう?」

 

士道「琴里も辛かっただろうけど、今 琴里が笑うことができているのなら、俺としてはそれで――――――」

 

 

グラハム『最後に3つ目、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

士道「え……」

 

士道「あ…………」

 

士道「そうか、考えてみれば そういうことだよな、全部……」

 

グラハム『ああ。だから、私はきみに詫びなければならない』

 

グラハム『私は私の天使で精霊:五河 琴里に引導を渡すつもりで最後の一撃を加えた直後に現界が解除されてしまった』

 

グラハム『しかし、あれで殺しきれなかった場合に備えて、意識を失っていたきみの身体を使わせてもらった』

 

グラハム『そして、案の定 復活した精霊:五河 琴里に対して、今度はきみの命も天秤に乗せて戦闘行動を再開したところ、』

 

グラハム『勢い余って きみときみの妹君の唇を奪う形で 初めての霊力封印に繋がったわけなのだ』

 

士道「………………」

 

グラハム『だが、それだけではない』

 

グラハム『精霊の霊力封印と精霊のデレ具合の関連性の研究のために、私は何度もきみときみの妹君の唇を奪い続けたのだ』

 

士道「え」

 

グラハム『そして、精霊の感情が不安定になることで霊力が逆流する際も、その度に――――――』

 

士道「ぐ、グラハム…………」

 

 

グラハム『だから、私はきみに詫びなければならないのだ』

 

 

グラハム『私は所詮は人の道を踏み外した身――――――、堕ちるべき地獄にも辿り着けずに生者の道を踏み外させる忌むべき悪霊なのだ』

 

グラハム『そして、きみの側から決して離れることができない厄病神――――――』

 

グラハム『サムライの作法として切腹も辞さないつもりでいたが、あいにく すでに幽霊となった今では死にたくても死ねない不便な身体で、』

 

グラハム『そういった面もあって、私はきみの中に封印されることを選んだわけでもあるのだ』

 

士道「………………」

 

 

グラハム『少年、今度こそ私を軽蔑したか? ならば、もう一度 私を封印したまえ! 私はきみときみの妹君の純潔を穢した厄病神なのだ!』

 

 

士道「………………」

 

グラハム『………………』

 

士道「………………」

 

グラハム『………………』

 

グラハム『そうか。なら、今は保留でもかまわない』

 

グラハム『だが、もし私に愛想が尽きたのなら、いつでもそうするといい。私は一向にかまわない』

 

グラハム『ではな。これからは 可能な限り 声をかけないことを約束しよう――――――』

 

士道「まてよ」

 

グラハム『む』

 

士道「待ってくれよ、グラハム!」

 

 

士道「誰が……、いったい誰が、いつ、そんなことを頼んだんだよ、グラハム……!」ポタポタ・・・

 

 

士道「わかっていて、俺にそんなわかりきったことを言わせようとしているのか、グラハム!」

 

グラハム『少年……』

 

士道「結局、琴里を救えたのは俺とグラハムが力を合わせたからじゃないか!」

 

士道「どっちか一方あればいいんじゃない! どっちも必要だから俺たちは一緒にやってきたんじゃないか!」

 

士道「俺はずっと一緒にいて欲しいんだ!」

 

士道「今回のことで どれだけ琴里のことが大事だったかがわかったし、」

 

士道「それ以上に、俺にはやっぱり俺の守護天使が居てくれないと こんなにも不安でダメなんだってことに 気づかされたんだから」

 

グラハム『そうか』

 

グラハム『ならば、寄る辺のない塵芥のこの身だ』

 

グラハム『これからも私グラハム・エーカーは五河 士道と大切なもののために力を尽くすことをここに誓おう』

 

グラハム『あらためて、よろしくたのむ、五河 士道』

 

士道「ああ。こちらこそ、これからも頼りにしているぞ」

 

 

――――――俺の守護天使:グラハム・エーカー!

 

 

―――

――――――

―――――――――

――――――――――――

 

 

 

――――――私って『本当にズルい女だなぁ』ってずっと思ってた。

 

 

 

琴里「士道が五河家に来てから“おにーちゃん”ができて本当に毎日が楽しくてしかたなかったのに、」

 

琴里「士道がずっと何を感じて、何を思って、何を欲しがっていたかなんて 全然 考えていなかった」

 

琴里「だから、ある日 士道が夜になっても帰ってこない日が来た時、頭の中がこんがらがってわけがわからなくなった」

 

琴里「でも、お父さんとお母さんは『士道が家出するかもしれない』って予感がしていたらしくて、すぐに家を飛び出していったの」

 

琴里「それで『士道にとって私は“妹”であっても“家族”じゃないんだ』って思われていたことがすっごく悲しかった」

 

琴里「けれど、お父さんとお母さんと一緒に連れ帰ったその日から少しずつ“おにーちゃん”がかっこよくなっていって、」

 

琴里「私も“妹”から“家族”になってったのを感じることができて、すごく嬉しかった」

 

 

琴里「それから ある時、今までの“おにーちゃん”とは思えないような“五河 士道”が 時々 顔を見せるようになったの」

 

琴里「その“おにーちゃん”はすっごく変な言葉遣いでおかしなぐらいに自信満々だったけど、」

 

琴里「それでいて子供っぽくて大人っぽくて、一緒にいて物凄く疲れることもあるけれども、それでいてすごくウキウキしてくるような“五河 士道”だった」

 

琴里「だから、私はその“五河 士道”のことをいつしか“兄貴”と呼ぶようになって、」

 

琴里「大好きな“おにーちゃん”とはちがった素敵な人として認識していくようなった」

 

琴里「だって、“おにーちゃん”は右の手で箸を使うのに、“兄貴”は左の手で箸を使うのよ」

 

琴里「それも扱いが下手くそで、それで意地になって普通にフォークを使えばいい料理でも箸で食べようとするんだから、笑いが止まらなかったわ」

 

琴里「普段の“おにーちゃん”も大好きだったけど、急に変なことをしだす“兄貴”のことも本当に好きになっちゃってた」

 

 

琴里「だって、同じ“五河 士道”だとずっと思い込んでいたから」

 

 

琴里「けれど、実はそうじゃなかったことがわかったのは――――――、」

 

琴里「そう、5年前のあの日、8月3日、私の9歳の誕生日―――――」

 

琴里「私は人間を精霊にする精霊〈ファントム〉に精霊にさせられて、助けに来てくれた“おにーちゃん”も巻き込んで、」

 

琴里「自分が自分でなくなっていく感覚をゆっくりと味わわされながら、絶望が私の心を呑み込んでいく時、」

 

琴里「初めて“兄貴”が眩い光の中から実体を持って現れたの」

 

琴里「姿形は“五河 士道”じゃなくなっていたけど、1回聞けばすぐにわかるあのキザな口振りで、目の前に現れたのが“兄貴”だってすぐに理解できた」

 

琴里「そう思った時、たぶん 泣いていたのかな? ただでさえ、自分が自分じゃなくなって好き勝手に暴れちゃう中でどうしようもなかったのに、」

 

琴里「私、“おにーちゃん”と“兄貴”を同じぐらいに好きでいた悪い子なんだって――――――、」

 

琴里「だから、こんな目に遭っているんじゃないかって――――――」

 

 

琴里「そこからのことはあまり憶えていない」

 

 

琴里「けど一瞬、全身が灼けるような痛みに包まれて目が覚めたのか、唇と唇が触れるぐらい目の前に“五河 士道”の顔があって、」

 

琴里「火傷の痛みとはまったく違う 顔から火が出るような感覚に襲われたのだけは辛うじて憶えてる……」

 

琴里「それで素っ頓狂な悲鳴を“兄貴”があげていたのを聞いた後、私は気づいた時には〈ラタトスク〉に保護されていた」

 

琴里「けれど、人類が初めて捕獲した精霊の貴重なサンプルとして可能な限りのデータを採取するために、」

 

琴里「罪悪感に駆られて自分から志願したとは言え、数々の非人道的な実験をやらされるようになって、私は 毎日 泣いて夜を過ごしていたの」

 

琴里「その度に“兄貴”は側に寄り添ってくれていたの」

 

琴里「どれだけ心が荒れ果てて、顔を合わせる度に悪態をついて、何度も拒んでも、“兄貴”だけは側に居続けてくれた――――――」

 

琴里「でも、ちがうの! 私は“兄貴”のことが大好きだけど、それと同じぐらい元々“おにーちゃん”のことも好きだったの!」

 

琴里「目の前にいるのが“五河 士道”であっても“おにーちゃん”じゃないと意味がないの!」

 

 

――――――私って本当にずるい女よね?

 

 

琴里「ずっと“兄貴”が側にいて私のことを慰めてくれていたのに、ずっと憎まれ口を叩いて……」

 

琴里「でも、そんな憎まれ口であってもしっかりと受け止めてくれる“兄貴”のことがますます頼りになって、」

 

琴里「この人は本当は“五河 士道”じゃないけれども、私の“兄貴”ってことで本当に好きになっちゃった」

 

琴里「だから、私が〈ラタトスク〉の一員となることで束縛から解放されるのを見届けて“兄貴”がいなくなって“おにーちゃん”が帰ってきた時、」

 

琴里「今度は“おにーちゃん”じゃなくて“兄貴”のことを求め続けたの!」

 

琴里「本当にサイテー!」

 

琴里「でも、“おにーちゃん”も“兄貴”に少しでも近づく努力するようになって あっという間に見違えるようになった」

 

琴里「そのことに私は嬉しいような悲しいような気持ちでよくわからなくなっちゃった」

 

琴里「でも、ある時 こんなことを思いついたの」

 

琴里「私が精霊の力に振り回されるぐらいに弱かったから“おにーちゃん”と“兄貴”は一緒にいられなくなった――――――」

 

琴里「なら、私が“おにーちゃん”と同じように強くなっていけば、“兄貴”も帰ってくるんじゃないかって」

 

琴里「だから、泣き虫で弱虫だった私は“兄貴”のように強くあるために――――――、」

 

 

琴里「誕生日に“おにーちゃん”が選んで“兄貴”が渡してくれた黒いリボンを付けている間は 強い“五河 琴里”でいることに決めた」

 

 

琴里「でも、まだまだだったわね」

 

琴里「時崎 狂三から士道を救うために ついに霊力を解放したけれども、」

 

琴里「結局 私が一番の足手まといになって また“おにーちゃん”に死ぬような思いをさせて……」

 

琴里「けれど、そんな私であっても“兄貴”がそうだったように“おにーちゃん”が愛してくれていることを伝えてくれたことが何よりも嬉しかった……」

 

琴里「本当にどこまでも優しい“おにーちゃん”――――――、本当にどこまでも我が道を行く“兄貴”――――――」

 

琴里「私、破廉恥かもしれないけれど――――――、」

 

 

 

――――――今でも“おにーちゃん”と“兄貴”のことが好き! 大好き! 世界で一番愛しているから!

 

 

 

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