【デート・ア・ライブ】 デート・ア・ガンダム -武×士道×グラハム- 【機動戦士ガンダム00】   作:LN58

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特別編1 琴里フォーエバーラブ -あの日から5年目を迎えて-

――――――仮想世界:MISSION-2306

 

グラハム「よくぞ来た、琴里」

 

グラハム「私から本日最後となる誕生日祝いをさせてもらおう」

 

琴里「はいはい、ありがとね、兄貴」

 

琴里「それで、兄貴から何をプレゼントしてもらえるのかしら?」

 

グラハム「それはこのデータだ。刮目したまえ」

 

琴里「――――――『データ』?」

 

琴里「まあ、そうよね。兄貴には実体がないんだし」

 

琴里「それで、いったい何のデータよ――――――」ピッ

 

琴里「!!!!」カアアアア!

 

グラハム「どうだね、あの日から5年目となるきみへの誕生日プレゼントは?」

 

 

――――――“現代のサムライ”五河 士道の気になる女の子ランキング!

 

 

琴里「はあああああああああ!?」

 

琴里「ちょ、ちょっと! な、何これ!? わ、私のことをからかっているの!?」

 

グラハム「私は至って大真面目だぞ、琴里」

 

琴里「余計にタチ悪いわ、こんなの!」

 

グラハム「落ち着きたまえ、琴里」

 

グラハム「これは〈フラクシナス〉が解析してシミュレートした正式な分析結果だ」

 

グラハム「きみは〈フラクシナス〉が出した分析結果に異を唱えるのかね?」

 

琴里「そ、それは…………」

 

琴里「で、でも、なんでこれを誕生日プレゼントにしようだなんて思ったわけ、あんたは?」

 

グラハム「無論、愛だ」

 

琴里「なぜそこで『愛』ッ!?」

 

グラハム「私はちゃんと理解しているつもりだぞ、琴里」

 

 

グラハム「きみが愛して止まない“五河 士道”が他の誰かのものにならないか不安でしかたがないのはな」

 

 

琴里「うっ」

 

グラハム「その不安は常に炎の精霊〈イフリート〉の封印を解く銃爪になりかねないものだ」

 

グラハム「だからこそ、きみには揺るぎなき愛を持ってもらおうと思ったわけなのだ」

 

グラハム「これは〈デート・ア・ライブ〉を遂行していく少年のためでもあり、何より きみ自身のためでもある」

 

琴里「そ、そこまで言うなら、これが私のこれからの人生にとって本当に必要なものかを見させてもらうわよ!」

 

グラハム「うむ。では、共に見ていくとしよう」

 

 

 

グラハム「恋愛には2つの段階があるという」

 

グラハム「燃え上がるように情熱的な恋愛状態と、穏やかで安定した愛着状態だ」

 

琴里「それぐらい知っているわよ、兄貴」

 

琴里「恋愛状態になった人間の脳内では快楽物質:ドーパミンや興奮物質:ノルエピネフリンが大量分泌されているのよ」

 

琴里「だから、恋愛状態はまさに“恋の病”ってことで、中毒症状に近いものがあるわ」

 

琴里「十香や鳶一 折紙の様子を見れば、それは明らかよね」

 

グラハム「そうだな」

 

グラハム「事実、〈フラクシナス〉の分析結果では『少年がデートしてデレさせた精霊は全て“五河 士道”に対して恋をしている』と判定されている」

 

琴里「……まあ、それはそうよね。そうじゃなかったら、霊力封印ができないんだし」モジモジ

 

グラハム「だが、この恋愛状態は長くても3年しか続かないという」

 

琴里「ま、まあ、『3年目の浮気』なんて歌が流行したぐらいには有名な話よね……」

 

グラハム「しかし、それでも愛する関係が続いているのだとすれば、それが愛着状態であると言えよう」

 

グラハム「愛着状態では愛情ホルモン:オキシトシンと父性を喚起するバソプレシンなどが多く分泌されるそうだ」

 

グラハム「それを踏まえて、少年自身が〈デート・ア・ライブ〉でデートしてデレさせた女性に対する感情をまとめたものがこのランキングというわけだ」

 

琴里「と言いつつ、他の精霊からのデータもしっかりと載せているじゃないのよ、これ!」

 

グラハム「そう、〈デート・ア・ライブ〉を指揮するきみと、〈デート・ア・ライブ〉を遂行する少年を守護する私だけが見ていいものなのだよ、これは」

 

琴里「………………!」

 

 

 

琴里「へえ、十香が完全に士道に恋愛感情を抱いているのはわかりきっていたことだけど、」

 

琴里「グラハムに対しては『士道と昔からの顔馴染みで羨ましい』と思っていたわけなのね……」

 

琴里「これは意外だったわ。てっきり『士道とよくテレビ電話している人』ぐらいだと思っていたけど」

 

琴里「四糸乃からは、まあ、【好感度】が高いのは納得ね。恋愛感情ではないにしてもね」

 

琴里「けど、もっと意外なのは、鳶一 折紙からの【好感度】がかなり高いことよ」

 

琴里「というより、グラハム? あなた、いつ鳶一 折紙と仲良くなれたのよ? あんまり士道以外の男性とうまくやれてるイメージが全然――――――」

 

琴里「あ、そっか。グラハムも 鳶一 折紙も ヘンタイ同士で通じ合うものがあったってことね。それなら納得だわ」

 

グラハム「前置きはそこまでにして、本題である『“五河 士道”が精霊たちをどう思っているのか』を見てみるとしようか、琴里?」

 

琴里「ま、まって! まだ心の準備が――――――」

 

グラハム「いや、覚悟を決めたまえ。私は我慢弱く 落ち着きのない男なのさ」ピッ

 

琴里「だ、ダメええええええええええ!」

 

琴里「…………?」

 

琴里「え」

 

琴里「え……」

 

グラハム「どうしたのかね、琴里?」

 

琴里「…………これ、どういう意味?」

 

 

――――――『士道は私たちの誰に対しても恋愛感情を持っていない』ってこと!?

 

 

グラハム「落ち着きたまえ、琴里」

 

グラハム「少年は恋愛状態よりも愛着状態の方が強いのであって、決してきみたちに対して無関心というわけではないぞ」

 

琴里「でも! それでも納得がいかないわよ!」

 

琴里「たしかに、士道は“現代のサムライ”としてきっちりとした貞操観念を持っているわ。だから、色恋沙汰にこれまで目もくれなかったわけだし」

 

琴里「けど、これはあまりにも酷くない? 私に言ってくれていたことは本心じゃなかったの?」

 

琴里「そりゃあ、十香は私から見てもナイスバディだし、ドーパミンとノルエピネフリンが多く分泌されているのには納得しているわ」

 

琴里「でも、それ以上にバソプレシンやオキシトシンの方が多いってことは、」

 

琴里「士道は十香のことを“気になる女の子”としてよりも“守るべき対象”として認識しているってことよね?」

 

琴里「四糸乃にだって 庇護欲を掻き立てられているから、ドーパミンとノルエピネフリンの数倍 バソプレシンとオキシトシンが多いのよね?」

 

グラハム「そういうことになるな」

 

琴里「それでいて 一番に腹立たしいのが、〈ナイトメア〉時崎 狂三(分身体)に対して出したノルエピネフリンが最高値ってところよ!」

 

琴里「というか、下手をしたら 一番 恋愛状態に近いのって狂三ってことになるじゃないのよ、これ!?」

 

グラハム「それはきみが全方位交際の時にランジェリーショップに行かせたりするからだろう」

 

琴里「そ、それは、まあ、そうだけど…………」

 

グラハム「だが、安心するがいい」

 

 

――――――“最高の精霊”時崎 狂三はすでにこの世に存在しない。

 

 

グラハム「少年が待ち望んでいた 空間震を抑止する“正義の味方”になれるはずだった時崎 狂三はもういないのだ……」

 

琴里「…………そう、ね」

 

琴里「でも、ドーパミンとノルエピネフリンの分泌量がこの中で最低の私っていったい何なの?」

 

グラハム「いや、何を言っているのだ、琴里?」

 

グラハム「バソプレシンとオキシトシンの分泌量が他の精霊の倍近くあるのだから、」

 

グラハム「唯一きみに対して少年は恋愛状態の先にある真の愛着状態になっているのだぞ」

 

琴里「それって『“家族”として愛している』って意味でしかないじゃない……」

 

グラハム「素直ではないな」ヤレヤレ

 

グラハム「思い出してみるがいい、琴里」

 

 

グラハム「5年前は私:グラハム・エーカーがきみを救ったが、その5年後にきみを救ってみせたのは“五河 士道”なのだぞ?」

 

 

琴里「あ」

 

グラハム「こんなデータはただの数字でしかないものだ」

 

グラハム「だが、その数字が意味するものを踏まえた上で、現実に体験したものを肯定する材料にすることはできないものか?」

 

琴里「………………」

 

グラハム「それに、きみとの戦争〈デート〉の時は“兄妹”であることを辞めてまで きみを救おうとする気概を見せていたのだ」ピッ

 

グラハム「わかるかね。これは『養子離縁届』というものだ。18歳になったらきみの両親に出すつもりで念書と共に書き上げていたのだ」

 

琴里「そ、そうだったんだ……」

 

グラハム「更に、これを見るがいい」ピッ

 

琴里「へ」

 

琴里「え、ええええええええええええええええええ!?」

 

琴里「ね、ねえ、グラハム? これって、アレよね?」ア、アワワワワ・・・

 

 

――――――こ、『婚姻届』ぇ!?

 

 

グラハム「そのとおりだ、琴里」

 

グラハム「“五河 士道”は長年連れ添った“家族”との新しいカタチをあの時は本気で考えていたわけだ」

 

琴里「そ、それって、追い詰められた気の迷い、とかじゃなくて?」

 

 

グラハム「断言しよう。“五河 士道”が“家族”として一番に愛しているのは“五河 琴里”であるとな」

 

 

グラハム「というより、この『養子離縁届』『婚姻届』はきみとの戦争〈デート〉が終わった後に取り寄せたものだ」

 

グラハム「その事実が何よりの証だ」

 

琴里「う、嘘……」

 

琴里「そ、そうよ! こんなの、〈デート・ア・ライブ〉を遂行するための必要悪と割り切って責任を取ろうとしているだけじゃない!」

 

グラハム「たしかに、少年はこれまで女性というものに興味がなく、これからも本質的には女性への興味を持たないままでいることだろう」

 

グラハム「しかし、そういった私心を持たずに〈デート・ア・ライブ〉に挑むように言ったのは他ならぬ“五河 琴里”であろう」

 

グラハム「そうして、きみの気持ちも汲んだ上で出した結論が、この『養子離縁届』と『婚姻届』なら、何を疑う必要がある? 何を不安に思う必要がある?」

 

グラハム「きみこそが“五河 士道”が守りたいと願う“日常の象徴”であり、最も愛する“家族”なのだぞ」

 

グラハム「あの時“みなしご”だった少年と“家族”になった時点で、少年は何に代えても“家族”を守る決意を固めていたのだ」

 

 

――――――“現代のサムライ”である少年を普通の人間と同じに見てもらっては困る。

 

 

琴里「………………」

 

グラハム「………………」

 

琴里「……ねえ、グラハム」

 

グラハム「何かな、琴里?」

 

琴里「ありがとう」

 

グラハム「どういたしまして、だな」

 

琴里「たしか、誕生日は9月10日だったわよね? あれだけしつこく自分が乙女座であることをアピールしていたんだし」

 

琴里「だから、今度 盛大に誕生日パーティーを開いてあげる。思えば、兄貴とは5年前の8月3日から2週間だけの付き合いで、一度もしてあげたことがなかったしね」

 

グラハム「その旨をよしとする」

 

琴里「そう」フフッ

 

 

 

琴里「ところで、話は変わるんだけど……」

 

グラハム「どうした? 言ってみたまえ」

 

琴里「じゃあ、言うけれど――――――、」

 

 

琴里「この前の戦争〈デート〉の時に()()()()()()()が何者かについて心当たりはある?」

 

 

琴里「私の本心とまるで兄貴みたいな性格が混ざったみたいな炎の精霊〈イフリート〉について、さ」

 

グラハム「心当たりはある」

 

グラハム「というより、あの炎の二刀流【ハワード】【ダリル】の名は私と共に空を駆けた誇り高きフラッグファイター;元部下の名前だ」

 

グラハム「そもそも、歪みきっていた頃の私が搭乗していた〈磨修羅生(マスラオ)〉の写し身みたいなものであったな」

 

琴里「それってどういうこと? どうやってグラハムの記憶を再現した形態になれるわけ? 私、ああいったものだなんて全然……」

 

グラハム「おそらくだが――――――、」

 

グラハム「5年前にきみから封印した炎の精霊〈イフリート〉の霊力はきみの体内から少年の体内に移り変わっていたのは知っていよう」

 

グラハム「そして、今年の四月一○日に〈デート・ア・ライブ〉が始動するまで私は眠りに就いていた――――――」

 

 

グラハム「私が思うに、炎の精霊〈イフリート〉が5年の歳月の間に()()()()()()()()()()()()()なのだと思う」

 

 

琴里「……どういう意味?」

 

グラハム「これは 最近 この仮想世界で〈ハーミット〉四糸乃と少年のデートの付き添いで直に接していて感じたことなのだが、」

 

グラハム「四糸乃の本心と思われていた“よしのん”から 十香と同じような“純粋な精霊”の気配を感じたのだ」

 

琴里「――――――『純粋な精霊』?」

 

グラハム「すまないが、そう表現するしかないぐらい、人間の肉体の気配が一切ない霊結晶〈セフィラ〉の波動を感じていたのだ」

 

琴里「そりゃあ、よしのんはパペットなんだから――――――、え? 『十香と同じような』?」

 

グラハム「そのとおりだ」

 

グラハム「最近、私は〈プリンセス〉夜刀神 十香だけには何か特別なものを感じている」

 

グラハム「これについては藤堂師も似たようなことを言っていた」

 

グラハム「十香はまるで人間ではないような()()()()()()()()()を強く感じさせる存在だということが最近わかってきたのだ」

 

グラハム「そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()からも純粋な霊結晶の波動を強く感じていた」

 

グラハム「――――――とは言っても、かなり繊細微妙な感覚ではあるがな」

 

 

琴里「じゃあ つまり、私が精霊化した時に出てくる破壊衝動の正体は()()()()宿()()()()みたいなものなの?」

 

 

グラハム「少なくとも、そう考えるのが妥当だろう」

 

グラハム「そして、霊結晶から発する霊力そのものにも人格があり、」

 

グラハム「人格があるからこそ きみの肉体を通じて学習し、同じく少年の身体に取り憑いている私の記憶と人格を5年の間にそれなりに再現することができたのだろう」

 

グラハム「未来人の幽霊でしかない私が精霊の存在を感知できるのも、霊結晶に宿る人格が幽霊みたいな波長だとすれば辻褄が合う」

 

グラハム「逆に、精霊の側から私の存在を感知されないのは、少年の肉体があるおかげで それが隠れ蓑になっているのだろう」

 

グラハム「生きている身体からは様々なエネルギーが常に放出されているわけだからな」

 

グラハム「言うなれば、きみと少年の間にある目に見えない繋がりを通じて、私は精霊のことを知り、精霊も私のことを知った――――――」

 

琴里「……なるほどね。あなたが味方で本当によかったわ、グラハム・エーカー」

 

琴里「けど、そうだったんだ」

 

琴里「私が5年前のあの日に〈ファントム〉に与えられた霊結晶〈セフィラ〉は単に超強力な顕現装置(リアライザ)の一種というわけじゃなかったのね」

 

琴里「“あなた”も士道の身体の中に封印されているうちに兄貴の影響を受けていたみたいだし、」

 

琴里「これから少しずつまともな人格に変わっていくように、私がきっちりと指導してあげるから、覚悟なさい!」

 

 

 

琴里「今日は本当にありがとう、兄貴。いろいろとタメになる誕生日祝いだったわ」

 

グラハム「うむ。少しは無い知恵を絞った甲斐があったというものだ」

 

琴里「そんなことないわよ、兄貴」

 

琴里「私は兄貴のことだって“家族”だと思っているし、いつも士道のことを守ってくれてありがたいと思っているわよ」

 

琴里「本当にあなたは士道の守護天使よ、グラハム・エーカー」

 

琴里「だから、これからも士道のことを守り導いて欲しいの」

 

グラハム「皆まで言うな。私も少年の“家族”であるきみのことも全力で守り抜くことを誓おう」

 

琴里「そう。なら、いいわ」

 

 

――――――本当にありがとう、兄貴。

 

 

琴里「時間の流れが60分の1の仮想世界でも随分と時間が経ったみたいだし、今日はこれぐらいにしておくわね」

 

グラハム「ああ。今日もごくろうであった、琴里。ゆっくり休むといい」

 

グラハム「それと、夏休みだからと言って夜通しでゲームをしてはいけないぞ。きみの美容と健康のためにはな」

 

グラハム「特に、今年は豊作ということで積みゲーを一気に消化するつもりなのだろうが――――――」

 

琴里「う、うっさい! これも〈デート・ア・ライブ〉に必要なものよ、馬鹿兄貴!」

 

グラハム「まあ、積みゲーを崩す時間が欲しいのならば、いつでも この仮想世界に来るといい」

 

グラハム「私はこの仮想世界であっても姿だけで実際に手にとってプレイすることはできないが、」

 

グラハム「きみと一緒に積みゲーを攻略しようではないか、琴里」

 

グラハム「いや、私だけじゃなく 大切な者たちと一緒に 同じものを見て、同じものを聞いて、同じものを感じる時間は極上の一時となることだろう」

 

琴里「それ、最高! 良いアイデアだわ、馬鹿兄貴! 最高ね、この仮想世界!」

 

琴里「そうなのよね! だから、いつも家に一人で暇を持て余している四糸乃に傑作神ゲーを布教しようと思うんだけど、どう?」

 

グラハム「悪くないのではないか?」

 

琴里「やった!」

 

 

 

琴里「あ、そうだった。このデータ、この仮想世界でしか見られないものなのよね?」

 

グラハム「厳密には〈フラクシナス〉で随時更新中のものだから、現時点で同じ分析結果は将来的には二度とないと言っていい」

 

琴里「なら、最後にもうちょっとだけ見させてもらうわ――――――」ピッ

 

琴里「あら? まだデータに続きが――――――」スー

 

グラハム「あ、待ちたまえ。そこから先は――――――」

 

琴里「え」ピタッ

 

琴里「え、えええええええええええええ!?」ドンビキー

 

琴里「ちょっと、馬鹿兄貴! 何なのよ、これぇ!?」

 

グラハム「…………『何』とは何かな?」

 

琴里「とぼけないで!」

 

 

――――――士道の馬鹿兄貴に対するドーパミン・ノルエピネフリン・バソプレシン・オキシトシンの分泌量が 全部 最高値じゃない!?

 

 

琴里「わかってはいたけど、わかってはいたけど、わかってはいたけど……」ズーン・・・

 

グラハム「お、落ち着きたまえ。きみはもっとクールだ」

 

琴里「これが落ち着いていられるわけないじゃない!?」

 

琴里「くぅうううう! 最後の最後にとんでもない爆弾を用意してくれていたじゃないの、馬鹿兄貴!」

 

琴里「あんたみたいなのが四六時中いるんじゃ、士道が女の子にまったく興味を持たなくなるのも当然じゃないのよ!? どうしてくれるわけ!?」

 

グラハム「では、ここまでのデータを踏まえた上で あえて逆に訊こう」

 

 

――――――きみは これ以上 少年に何を求めているというわけなのだ?

 

 

琴里「え」

 

グラハム「私がこのデータを見せたのは、きみの揺れる乙女心を不動のものにして〈デート・ア・ライブ〉への影響を抑えるためだ」

 

グラハム「そのために、少年も私もきみに精霊の力を使わせないための努力をしてきた」

 

グラハム「そして、少年もきみと結婚することも辞さない覚悟で〈デート・ア・ライブ〉にすでに臨んでいるのだ」

 

グラハム「言うなれば、きみはすでに少年とは許婚の関係になっているのだぞ」

 

グラハム「そこまでの覚悟ができているという証拠を提示したのだ」

 

グラハム「もう一度 訊こう」

 

 

――――――きみは これ以上 少年に何を求めているというわけなのだ?

 

 

琴里「そ、それは…………」

 

琴里「………………」

 

グラハム「……すまない。今日はきみの誕生日だと言うのに、最後の最後にキツイ言葉を浴びせてしまった」

 

琴里「…………わからないの、私には」

 

グラハム「む」

 

琴里「士道からすれば“精霊”はみんな“子供”みたいな存在なんだって……」

 

琴里「どうしたら私は士道の力になれるの?」

 

琴里「今の私と同じ歳だった頃の士道はもう立派にサムライ少年だったのよ?」

 

グラハム「……難しいな。人にはまず得意不得意があるわけだからな」

 

琴里「わかってるわよ、そんなの」

 

琴里「士道は言ってくれたわ」

 

琴里「私が精霊の力を封印しているだけで〈イフリート〉による空間震の発生が抑えられているから何もできないことを僻むことはないんだって……」

 

グラハム「それに、少年の成長と無茶を支えていたのは、炎の精霊〈イフリート〉の再生能力でもあるからな」

 

グラハム「琴里がいたからこそ、少年は強くなることができたのだ。そう卑下することはないのだぞ」

 

琴里「そう。そうなんだけど……」

 

琴里「やっぱり、私は嫌なの!」

 

グラハム「……何がだ?」

 

 

琴里「やっぱり、私もおにーちゃんと兄貴のようになりたい! 互いを支え合う関係になりたい! 本当の意味で苦楽を共にする二人になりたいの!」

 

 

琴里「後ろから見ているだけの私でいたくないのよ!」

 

グラハム「琴里……」

 

グラハム「そうか、ようやく理解できた」

 

グラハム「きみもまた“五河 士道”であったのだな、琴里」

 

琴里「へ」

 

グラハム「少年も私も現在進行形でいろいろな愛の在り方を研究していた」

 

グラハム「そして、それがきみの“五河 士道”に求める愛の在り方ならば!」

 

 

グラハム「琴里、きみも戦え」

 

 

琴里「正気!? また精霊の封印を解いて『暴走覚悟で戦え』って言いたいわけ!?」

 

グラハム「ちがうな。まったくもってちがう」

 

グラハム「これからはきみ自身のための戦いをするのだ」

 

 

琴里「――――――『私自身のための戦い』?」

 

 

グラハム「軍隊とは戦場で相手を殺める兵士だけで成り立っているものではない」

 

グラハム「兵の戦いを指揮する将がいて、兵の戦いを支える卒もいて、初めて成り立つものだ」

 

グラハム「きみには兵は無理だが、将としての才能を磨くなり、卒として日常を支えるなり、兵が万全の力を発揮できるように全力を尽くすのも立派な戦いなのだ」

 

グラハム「事実、生前の私も優れた技術者である盟友がいたからこそ、〈ガンダム〉と対等に戦うことができたのだ」

 

グラハム「そして、戦場に立つことがない盟友もまた、私の機体を万全の状態に仕上げることにプライドを持ち、意地を見せた」

 

グラハム「いったい誰が私の無理に必ず応えてくれた最高の盟友を戦場に立つことのない臆病者であると謗ることができよう?」

 

琴里「………………」

 

グラハム「琴里、きみもまた“孤独”であったことをようやく理解することができた」

 

グラハム「しかし、運命の赤い糸で結ばれた少年と私の間に介入することができる者はこの世には存在しないのだ」

 

グラハム「それでも、少年との確かな繋がりを戦場で掴みたいのであれば――――――、」

 

 

――――――一人の戦士としての誇りと矜持を持って同じ戦場に立つといい。

 

 

琴里「………………」

 

琴里「うん。わかったわよ、グラハム・エーカー」

 

琴里「ホント、兄貴の前だと隠し事ができないわよね……」

 

琴里「そりゃそっか。あの日から2週間を私と一緒に過ごしてきたのは“兄貴”の方だったんだし」

 

グラハム「当然だ。それが同じ感情と価値観を生活の中で共有してきた“家族”というものであろう?」

 

琴里「へえ、そう思っていてくれてるんだ。なんか嬉しい」

 

グラハム「むしろ、私は詫びなければならないな」

 

グラハム「私が取り憑いたことで少年が“五河 士道”となったのと引き換えに、きみを“孤独”にさせてしまっていたようだ」

 

琴里「まったくもって そのとおりよ」

 

琴里「この責任、どうとるつもりなわけ? あなたはこの他にも 5年前のあの日から2週間で山ほど責任をとらなくちゃならないことがあるのよ?」

 

グラハム「さてな。肉体がない以上はどうもできんよ。死にたくても死ねない不便な身体ですまないと思っている」

 

グラハム「だが、これだけは誓える」

 

 

――――――無垢なる少女の世界と愛する人を天秤に掛けて揺れる想い! しかと受け取った! そして、必ずや成就させる! 露払い役は私が担おう! 

 

 

グラハム「琴里よ。私がきみに代わって少年を守り抜くと改めて誓いを立てよう」

 

グラハム「だから、もう気負う必要はない」

 

グラハム「きみはもっと自由に生きるといい」

 

グラハム「これからは、きみ自身のための戦いをするのだ」

 

グラハム「それをもって きみが“兄貴”と慕ってくれた未来人の幽霊からのささやかな誕生日プレゼントとさせてもらおう」

 

グラハム「そして、あえて言わせてもらおう」

 

 

グラハム「誕生日おめでとう、琴里。あれから5年間、“独り”でよく頑張ってきたな。その力の根源はまさしく愛だ」

 

 

琴里「――――――!」

 

琴里「あ、兄貴…………」ジワッ

 

琴里「ホント、どうして あなたは“五河 士道”だったの、グラハム・エーカー?」ヒッグ

 

琴里「そんなんだから、私は“おにーちゃん”だけじゃなくて――――――、」

 

琴里「私、“兄貴”のことも――――――」ポタポタ・・・

 

 

 

――――――私って、本当に“ズルい女”よね。

 

 

 

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