【デート・ア・ライブ】 デート・ア・ガンダム -武×士道×グラハム- 【機動戦士ガンダム00】 作:LN58
――――――
士道「なあ、グラハム。俺の守護天使」
士道「俺、さっき夢を見ていたんだ」
グラハム『ほう? どんな夢だったのかね?』
士道「荒唐無稽な夢だったよ」
士道「俺と十香が結婚式を挙げたり――――――、」
士道「妊娠した折紙に寄り添って子供の名前を考えたり――――――、」
士道「年頃の女の子みたいな四糸乃と恋人になったり――――――、」
士道「黒リボンを解いても平気になった琴里とのんびりしていたり――――――」
グラハム『幸せそうな夢ではないか』
士道「そうなんだけどさ」
士道「みんな、幸せそうな表情を浮かべて俺に笑顔を見せてくれるんだけど、俺だけはなぜか『ちがう』って思っていたんだ」
士道「まあ実際、1回の夢で4人の女の子とつきあっている夢を連続して見られた時点で変だけどさ」
グラハム『ほう? なぜ『ちがう』と思ったのかな?』
士道「なぜなんだろうな? 夢の話なんだから夢の世界にまで現実的な思考を持ち込む必要はないってのにさ」
グラハム『では、どういった経緯で十香と結婚式を挙げる夢となったのだ?』
士道「……そこからして曖昧なんだ」
士道「結局、俺は十香を無事に元の人間に戻すことができたのかもわからない」
――――――いや、
グラハム『なるほど。たしかに、それはそうであったな』
士道「だろう? そこからしてあり得ない!」
グラハム『では、
士道「そりゃそうだろう? 身元不明の記憶喪失の女の子を手篭めにするだなんて、下衆のやることじゃないかよ!」
グラハム『ふむ。それでは、
士道「怖いことを言わないでくれよ、俺の守護天使……」
グラハム『安心したまえ。婚前交渉はしないと誓わせたのだから、手荒な真似は今後は一切ないはずだ』
士道「いや、結婚しないから! 少なくとも 俺たちはまだ学生なんだから、そんな関係を考えて毎日を過ごすのは貞淑とは言えないから!」
グラハム『そうであったな! きみには琴里のために取り寄せた『養子離縁届』と『婚姻届』があるからな!』
士道「できれば、それも無しの方向で解決したい」
グラハム『おや、なぜかな?』
士道「琴里がそんな苦肉の策を受け容れるはずがないだろう?」
士道「だから、全てが終わったら記憶処理で精霊だった時の記憶をなくして、あるべき“家族”の姿へと元通りにしたいんだ」
グラハム『通じ合っているのか、通じ合っていないのか、そこが二人の間にある歪みというわけだな……』ヤレヤレ
グラハム『しかし、そこまで身近な乙女たちとの未来を夢見たのであれば、実は
士道「言われてみれば、たしかにそうだな。そんな夢を見た気が――――――」
士道「…………?」
グラハム『どうしたのかな?』
士道「いや、さっきのシミュレーターの影響だったのかな?」
士道「“最高の精霊”の代わりに 見覚えがあるような ないような
グラハム『先程のシミュレーターで設定された架空の精霊はこんなところだが?』
士道「…………やっぱり、ちがうな」
士道「俺が夢で見た女の子はもっと普通の感じだったな――――――」
士道「そう、俺と同じように世話好きで十香たちの面倒も率先して引き受けてくれた――――――」
士道「しかも、十香と折紙の喧嘩を仲裁してくれるから本当に毎日が大助かりで――――――」
士道「家も近いもんだから俺の家の合鍵を渡していたな、その子には――――――」
士道「――――――」
士道「りん…ね……?」
グラハム『……少年?』
士道「あ、あれ?」ポタポタ・・・
士道「なんで、俺、泣いているんだ?」ポタポタ・・・
士道「……こんなの、夢の話だろう?」ポタポタ・・・
グラハム『………………』
グラハム『少年、実は
士道「え」
グラハム『正確には、仮想世界で起きたバグを〈フラクシナス〉
グラハム『おかしな世界に流れ着いてだな。――――――裏世界とでも言うのだろうか』
グラハム『先程 そのデバッグを済ませてきたところだったのだが、』
グラハム『その直後に目覚めた少年が見たという夢と何らかの関係があったのではないかと思う』
士道「そうなのか?」
グラハム『断言はできないが――――――、』
グラハム『仮想世界における裏世界では データ上で再現されたきみが様々な架空の精霊と戦争〈デート〉を繰り返していてだな』
グラハム『仮想世界を管理するために人格を与えられて誕生した人工精霊:或守 鞠亜ですら知らないシミュレーションが行われていたのだ』
士道「そう言えば、グラハムの提案で あのポンコツAIの教育も兼ねて 電脳空間上で人工精霊が作成されていたんだっけ」
グラハム『ああ。私が仮想世界の構築をしながら、人工精霊の教育もしていたのだが――――――、』
グラハム『今にして思えば、〈フラクシナス〉が選んだ人工精霊のアバターの出処に疑問を持つべきであったな』
士道「え」
グラハム『結論はこうだ』
グラハム『実は、仮想世界構築の初期段階の時点で外部から〈フラクシナス〉の電脳中枢に入り込んだコンピュータウイルスが紛れ込んでいたらしい』
士道「!!」
士道「もしかして、〈フラクシナス〉が造り上げた電脳世界の人工精霊:或守 鞠亜のモデルとなったのが――――――」
グラハム『ああ。お察しの通り、外部から侵入してきていた人工精霊だったのだよ』
士道「それって、言葉通りの意味か?」
グラハム『電脳上で再現されたスペックはまさしく特殊災害指定生命体と遜色ないレベルの戦闘力であったぞ』
グラハム『まあ、そうとは知らずに これまで私が何度も撃退していたわけだが』 ――――――ハムパンチ! ハムキック!
グラハム『私と或守 鞠亜が造り上げた仮想世界だ。そこでなら私の天使〈ガンダム〉を思う存分に動かすことができる』
士道「さすがは俺の守護天使:グラハム・エーカーだぜ!」
士道「けど、外部から〈ラタトスク〉に人工精霊を送り込んできたクラッカー集団がいるってことだろう、それ?!」
グラハム『そういうことになる』
グラハム『少年、思い当たる組織は1つしかあるまい?』
士道「!」
――――――デウス・エクス・マキナ・インダストリー!
士道「世界中のASTの最大のスポンサーであり、真那を戦いの道に引きずり込んだ仇! 当然、精霊のデータはどこよりも集めている!」
グラハム『――――――嫌な予想は当たってしまったな』
グラハム『少年、ここからはDEM社からの本格的な武力介入が予想される』
グラハム『今回のサイバーテロはほんの序章に過ぎないはずだ』
士道「ASTが部隊の再編成で以前のようには動けなくなったっていうのに、ASTの元締めが来るっていうのか!」
グラハム『きみのもう一人の妹君を“魔術師”に仕立て上げて非道な任務に就かせていたような連中だ』
グラハム『きみと私が遂行する〈デート・ア・ライブ〉が邪魔になれば、容赦なく始末することも厭わないはずだ』
グラハム『現に、私は“或守 鞠亜”を死なせてしまった……』
グラハム『久々の“死”には堪えるものがあったな……』
グラハム『一応、仮想世界を管理する架空の精霊“第0号”としてのデータは常時記録してあるから、再現はいくらでもできるにしてもだ…………』
グラハム『やはり、私は隊長失格だな……』
士道「!!!!」
士道「ぐ、グラハム…………」
グラハム『気にするな、少年』
グラハム『言ったはずだ。私にとってはきみの行末こそが一番の関心事であって、未来人の幽霊にとってはその他のことはどうでもよいことなのだ』
グラハム『きみさえ無事であれば、
グラハム『安心したまえ。最終的には私の天使〈ガンダム〉が侵入者である人工精霊を霊結晶〈セフィラ〉に相当するものを破壊して消滅させている』
士道「でも、大勢を救うために一人を犠牲にして得た勝利を喜べるはずがないじゃないか!」
グラハム『そのとおりだとも』
グラハム『仮想世界で再現されたきみはまさしく“五河 士道”であったぞ』
グラハム『2人の人工精霊――――――、そのどちらも救おうとして その使命を全うしたのだからな』
士道「!」
グラハム『人工精霊である以上は霊力封印ができるかは未知数ではあったが、』
グラハム『少なくとも、きみの再現体は見事に対話の末に2人をデレさせていたぞ』
グラハム『それだけがせめてもの救いであったかもしれん……』
士道「……そうか」
士道「シミュレーターの中の俺はそれでも〈デート・ア・ライブ〉を遂行したんだな」
グラハム『ああ』
士道「なあ、グラハム? 俺の守護天使?」
グラハム『何だね?』
士道「夢の中の俺もきっと〈デート・ア・ライブ〉を遂行してみせたんだと思う」
グラハム『というと?』
士道「俺たちが遂行する〈デート・ア・ライブ〉の目的は人々の当たり前の営みを守ることが大本だろう?」
士道「だから、理想的なシチュエーションを求めて繰り返されるだけの日々を俺は否定したんだと思う」
グラハム『――――――それは『シミュレーターで再現される仮想世界の現実とちがいはない』ということかな?』
士道「いいや、気分の問題だよ」
グラハム『ほう、『気分の問題』とな?』
士道「楽しい時や人生が上手く行っている時はとにかく 昨日のこれまでの成功よりも より発展的な明日を求めて前進したい気分のはずだ」
士道「けれども、本当に哀しい時や人生の何もかもが嫌になっている時は良い方向に変わるかもしれない明日よりも楽しかった昨日の思い出にすがるしかないんだ」
士道「時は未来に進んで、明日はいずれは今日になって、今日もまた昨日になっていくというのに、心はずっと昨日の彼方に置き去りになったままだろう?」
士道「それって、精神衛生上よろしくない状態のはずだから、俺は何度も繰り返される幸せな毎日を否定できるんだ」
士道「だって、進むべき方向へまっすぐ進んでいる状態と、今日と昨日の間をあてもなく行ったり来たりしている状態ってことなんだから」
士道「――――――俺はその幻影に囚われている“最悪の精霊”のことを知っている」
グラハム『……なるほどな。その心意気だったからこそ、少年が夢の世界の不自然さに気づけるのも頷ける』
士道「だから、夢の中の俺は楽園を支えていた大樹をこの手で斬り倒したんだ……」
士道「夢の世界は『俺にとって都合が良いようにできている』わけだから、終わらせようと思ったら、それはすぐに叶ったよ……」
士道「後悔はないと思う……」
士道「夢の中で俺の守護天使の代わりに尽くしてくれたあの子との思い出も一夜の夢でしかなかったのだから……」
士道「俺の守護天使がいない世界で俺が天使〈ガンダム〉になれたのも夢の中の話だ……」
グラハム『……そうか』
士道「けれど、夢の中であっても、相手が精霊であるという確証がないのに、女の子とデートしてデレさせるのは もう立派な職業病だな」
士道「寝ても覚めてもデートしてデレさせることばかり考えている 身も心も立派なハニートラップ専門のエージェントになっちまったみたいだ」
グラハム『DEM社の武力介入への警戒をしなければならなくなったわけだが、』
グラハム『空間震の完全抑止のためにも、現界してくる精霊全てを霊力封印するまで、きみがやる他ないのだから 致し方ない』
士道「わかってるって」
士道「むしろ、俺は安心した」
――――――夢の中でも、シミュレーターの中でも、俺は立派に〈デート・ア・ライブ〉をやれているってこと。
士道「これなら現実世界でも〈デート・ア・ライブ〉をやり遂げられる可能性が十分にあるってことだよな?」
グラハム『そのとおりだとも。きみは一人ではない。きみの決断を支えてくれる者たちがいることを忘れないでくれたまえ』
士道「ああ」
――――――これからもよろしく頼むぞ、俺の守護天使:グラハム・エーカー。