メガテン新作ゲーム……?   作:せとり

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年末

 

「もうすぐクリスマスか……」

 

 時が経つのは早い。

 朝。カーテンの隙間から漏れる光で自然に目を覚ました私は、スマホに表示された日付を見てそう独り言ちた。

 

 私が討伐隊に入隊してから、早くも一か月が過ぎ去ろうとしていた。

 この世界にやって来た当初は11月上旬で、まだ秋を感じさせる季節だった。

 だが今はもう12月下旬。外はすっかり冬の訪れを感じさせる寒さになっている。

 

「今日は……非番だっけ」

 

 出勤日でもないことを確認して、2度寝するか迷う。

 眠気は無いし肉体的な疲労は感じないが、何だか若干の気だるさを覚えていた。

 精神的な疲れだろう。ここの所、精力的に働き過ぎているのかもしれない。

 ぽすんと頭を枕に預け直し、起こしかけていた体を横にする。

 

 仕事で疲れている訳ではない。

 討伐隊の勤務体制はホワイトそのものだった。

 

 政府は(収入を減らすことなく)週休3日・1日6時間労働を目標に掲げており、国家機関や国営企業はその範を示すべく、率先して実施に努めている。

 国家機関である討伐隊もその例に漏れず、必死に採用活動を行い人員を増やすことで、そのホワイト環境を実現していた。

 

 労働時間が短くて休みは多く、そのくせ給料は滅茶苦茶良い。

 夢のような労働環境だった。

 

 私はあのまま地元の部隊に所属することになり、自宅から駐屯地に通っている。

 基本的な仕事内容は非常に単純で、異界発生の兆候があればすぐさま駆け付けられるようにと、ひたすら待機が続く。

 とはいえ急な出撃はそこまでないので、基地内にいれば何をしていようと割と自由だ。

 勿論仕事中であるという事を弁えた上での行動なら、の話だが。流石に遊んだり酒を飲んでいたら懲戒ものである。

 基本的には、自主訓練を行ったり、昇進の為の勉強をしたりが殆どだ。たまに仲間を誘って許可を貰い、異界に悪魔を狩りに行くこともある。

 

 まあ楽な事ばかりではなく、それなりに苦労もあるのだが。

 

 職務上、討伐隊は24時間体制で警戒していなければいけないので、シフトによってはかなり不規則な生活になるし、異界が発生すれば休日だろうと容赦なく呼び出されて現場に急行させられる。

 いつでも通信できるように、討伐隊貸与のスマホは常に電源を入れて携帯していなければならないし、お呼びがかかったらすぐに戦えるように、遠出をする際は自宅に保管してある最低限の装備を持っていかなくてはならない。

 貴重な備品は基地内から持ち出せないが、防具や刀なんかの最低限戦える装備は貸与されて自宅にも置かれているのだ。

 

 国民を悪魔から守るための仕事だし、緊急出撃の際には様々な手当が貰えるので、そういった意味ではやりがいを感じるのだが、常に即応体制を維持する必要があるのは結構しんどいものがある。

 

 とはいえ疲れているのはそれだけが原因ではない。

 ホワイト労働のお陰で出来た余暇を使って、プレイヤーの共同体を作るという目的の、趣味の活動を張り切っていた所為だ。

 その甲斐あって、それなりの規模のプレイヤー組織を作ることができた。

 

 組織名は、『プレイヤー共済連盟』。

 

 その名の通り、プレイヤー同士で助け合い、互いに力を貸し合って何かをする事を目的にした組織だ。

 私たちの暮らしを脅かす様々なリスクに対して、協力し合って力を蓄え、万が一に備えようという、私の理念を具現化したような趣旨だった。

 

 設立にはかなりの苦労があった。

 色んな人に話を持ち掛けて、利を説き、説得して……。

 初めから耳を貸してくれない人もいれば、時には罵倒してくる人もいて。中々に大変だった。

 

 それでも今までの活動が知られていたので、信用はそれなりにあったのか、話を聞いてくれる人も多かった。

 少なくとも声を上げても完全にスルーされるという事はなかった。

 私の言葉に大いに賛同して力を貸してくれた人もいたお陰で、どうにか設立にこぎつけることができた。

 協力してくれた人、加盟してくれた全ての人には感謝の念に堪えない。

 

 大目標は自身やその他プレイヤーの生存。その為の手段としてプレイヤー全体の戦力増強だ。

 

 前からやりたかったことでもある、より大規模なプレイヤーへの生活支援も始めている。

 賃貸寮を1棟丸ごと借りて、連盟員を優先して部屋を割り振っている。

 首都圏にある、鉄筋コンクリート造の7階建て、バストイレ別のワンルームが80室ほどだ。

 駅やスーパー、コンビニなども徒歩10分圏内にあり、賃料は月々350万円。

 景気が良くて住宅需要も多いこの世界の相場的には、まあまあ安いほうだった。

 敷金礼金込みで1000万を超えるが、出せない額ではなかった。

 

 なんだかんだ言って、プレイヤーは小金持ちだ。特に私みたいなランカーは討伐隊による好待遇のお陰で、1か月目にして一般的な感覚では割と引くほど貰っている。その上で税金も気にしなくていいというバブル状態だ。気前が良くなっている人も多い。

 数人の有志がまとまった額を負担してくれるだけで、あっという間に大きな拠点を構えることができた。

 

 掲示板上で入居者を募集した所、思いのほか盛況で、部屋は現在満室だ。二号棟を借りるのも検討する程だった。

 

 ランカーと比べたらそこまでだが、一般プレイヤーの金回りもそこそこ良い。なんせ異能者給付金によって何もしなくとも毎月10万円以上が懐に入ってくる。

 時期も良かった。

 ぼちぼちと面倒な手続きが終わって異能者登録を行い、給付金が入ってきて新生活を始めるぞ! というタイミングのプレイヤーが結構いたのだ。

 どうせ新天地で働き始めるなら、同じ境遇の仲間が大勢いる場所で暮らしたい、という心理が働いたのだろう。

 定職を得てからの引っ越しは中々難しいものがあるし、ある種の新生活需要を掴んだと言える。

 

 家賃として、寮の賃料を住民に頭割りにして徴収しているが、それ以上の負担はさせていない。

 水道光熱費や共益費なんかはこちらで負担している。

 その他にも、住民から人を雇って食堂を稼働させて格安で食事を提供したり、洗濯や掃除などの家事代行サービスをやらせたりと、寮での暮らしを良くするべく色々やっている。

 お陰で住民からは好評を得ている。口コミで宣伝されて、連盟加入者は日々増加していた。

 

 ちなみに今のところ連盟に加入しただけでは、大きなメリットもなければデメリットもない。

 一定額の共済金を徴収したいところだが、いきなりお金を払う必要があるのでは抵抗も大きい。今言い出せば反発もあるだろうし時期尚早だ。

 現在の運営費は私の持ち出しや、有志の寄付金によって賄っている。

 

 今は利益を与えて、共同体としての形を整えていくのが先だ。

 自分達からこの共同体を崩したくない、連盟を維持したいと思わせて、その為の力になりたい、お金を払いたいという声を上げさせるのが理想だった。

 そういった空気を作ることができれば、では皆から毎月運営費を徴収します、という言葉も言いやすいし受け入れやすい。

 

 レベルが上がり覚醒が進んだことで、非凡なプログラミング技術を発揮し始めた千尋に、連盟のホームページを作ってもらった。

 さすが超高校生級プログラマーの潜在能力の持ち主。あっという間にハイクオリティで仕上げてくれた。

 今はレベル上げに苦労しているようだが、そのうち悪魔召喚プログラムとか作ってくれるんじゃないかという期待すらある。

 

 各々のプレイヤーが何かやりたいことがあれば、クラウドファンディング形式で資金を募って支援できるような仕組みも作ってもらった。

 色んな才能の持ち主がいるし、堅実なプロジェクトもあれば奇抜なプロジェクトもある。なかなかの活況だった。

 

 他にも、ネットで評判のよさげな道場や教室の先生をお呼びして、連盟員向けの無料講座を開いたりしている。

 武術や魔法に興味はあるけど、選択肢が多すぎて何から始めればよく分からない、という人の背中を少しでも後押し出来ればと始めた事だったが、さすがプロというべきか、教えてくれる事が実践的で分かりやすく面白いとかなり好評で、今後も定期的に開催する予定だ。

 

 後はプレイヤー掲示板のまとめとか、プレイヤー目線でこの世界の情報を纏めたキュレーションサイトなんかも、管理する人を雇って運営させている。

 こういうサイトは先駆者が有利だ。あまりにもクオリティが低かったり、よほどのヘマをしない限り、最初に居ついたサイトをユーザーは利用し続ける。

 こうした情報サイトを握っておくのは、プレイヤーという小さい界隈限定だが、世論形勢に有利に働く。

 テレビや新聞などの大手メディアと比べたらショボすぎるが、小さいながらも情報伝達手段(マスメディア)を握っておくのは重要だった。

 

 掲示板上で分かりやすく情報を纏めてくれていた人をスカウトしたり、人材募集した際に、前世はまとめサイト運営で生計を立てていました、という管理人経験者を採用できたので、サイト自体の質はかなり良い。

 働き始めて掲示板を見て回る時間が無いけど情報は集めたい、という需要にマッチしたのか、アクセス数はどんどん伸びている。

 プレイヤー全体が、それら連盟の息が掛かったサイトの利用者になってくれる日も近いだろう。

 

 私自身もYouTuberよろしく顔出ししてパワーポイントで資料を作って連盟の目的や私のやりたいことなどを説明した動画をプレイヤーに向けて限定公開している。

 他にも記事を書いたりと、共済の思想を広めるべく努力している。

 

 ちなみにそうしたサイトは、検索エンジンからはたどり着けないように隠してもらっている。

 別に後ろめたいことをしている訳ではないが、プレイヤーでもなんでもない部外者に入ってこられると困るからだ。

 

 そうした活動が実を結んだのか、ちらほらと期待通り連盟員から「運営費を貰わなくて大丈夫ですか?」という声が届いている。

 それとなく誘導してそうした声を強めていき、資金を得ることで更なるサービスの充実を図り、新規加入者を増やし、共同体としての繋がりをより強固にしていく、というのが今後の方針だ。

 

(こっちの仕事は誰かに任せたいんだけど……残念ながら全てを丸投げできるような腹心はいないんだよな)

 

 そうした人材は目下育成中で、むしろ教育するために負担は増している。

 今は私がトップダウンで様々な指示をする必要があり、労働時間が短いとはいえ討伐隊との二足の草鞋は中々しんどかった。

 

 ちらりと時計を見ると、私が起きてから30分ほどの時間が経っていた。

 ベッドに横になってぼうっとしながら考えを巡らせているうちに、それだけの時間を無駄にしてしまったようだ。

 

(いかんいかん。ぼうっとしてる暇があったら少しでも何かしないと)

 

 じっとしていても元気は出ない。

 カーテンを閉め切った部屋で寝ているぐらいなら、熱いシャワーを浴びて体を温めたり、日光を浴びて散歩でもした方がまだ建設的だった。

 気持ちを切り替えて飛び起きると、手早く着替えて寝室を出る。

 

 以前は賑やかだったマンションの自宅も、最近はめっきりと静かになった。

 理由は単純。ここで暮らす人の数が減ったからだ。

 共済連盟の寮に移ったり、自分で部屋を見つけて移り住んだり、討伐隊に入って教育隊に行っていたりと、その身の振り方は様々だが、ほとんどの住人が家を出ていた。

 

 起き出してきた私を見て、唯一残った住人である赤髪のメイドが声をかけてくる。

 

「おはようございます、三千桂様」

「おはよう、翡翠」

「すぐお食事になさいますか?」

「うん、お願い」

「かしこまりました」

 

 まるで本職を思わせるような楚々とした振る舞いで、テキパキと朝食の支度を始める翡翠。

 もはや誰もコスプレとは思わないだろう、堂々としたメイド姿だった。

 出会った当初のオドオドした様子と比べたら、見違えるようだ。

 

 例え初めは真似事でも、1か月間休むことなく毎日続けていれば、確実に本物に近づいていく。

 完成度の高さは本人の努力の賜物だろう。髪を染めてカラコンまでする気合の入ったコスプレイヤーだ。

 かくいう私も、普段から和装でいることに違和感を感じなくなっていた。

 

 私の身の回りの世話をさせて欲しいと言い、次々と巣立っていく住民の中で、ただ一人残留したのが翡翠だった。

 私としても、彼女が残ってくれたのは助かった。

 一人暮らしには慣れているとはいえ、何かと忙しい日々を送っていたので、家事をこなしてくれるのは純粋にありがたい。

 留守中の電話やメールの一次対応をしてくれたりと、メイドだけではなく秘書のような役割もこなしてくれているので、今では無くてはならない人材だ。

 

 本人は自分から頼み込んだことなので、無給でいいし給料なんていただけないと断っていたが、気持ちはどうあれ雇う形になる以上、当然賃金は支払っている。

 

 ちなみにレベルを上げても味覚に変化はないそうで、料理を任せてもメシマズなご飯は出てこない。

 普通に美味しい食事を作れているし、やっぱりデメリットは発現しないようだ。

 

 なんにしても、やりたいことが多すぎる。

 財政の許す限り色々と手を広げた結果、資金繰りはカツカツだった。

 もっと収入を増やす必要がある。

 とはいえ他人の財布はあまり当てにできないので、自分の給料を増やすのが最も手堅い資金調達の手段と言える。

 

 討伐隊において一番手っ取り早い昇給の方法は、レベルを上げて強くなることだ。

 レベルが高いほど基本給は上がっていき、更にC級、B級といった戦闘能力のランクによって倍率がかかってくる。

 そこに階級・勤続・休日・深夜・残業・危険といった様々な手当や、活躍に応じたボーナスなどが付与されることになる。

 

 とりあえず実技しかないA級認定試験はパスできたけど、階級の昇格試験は筆記もあるので付け焼刃では厳しいものがある。

 筆記試験に加えて小論文や口述試験まであるそうなので、軽く教本を読んだ程度では到底太刀打ちできないだろう。地道な勉強が必要だった。

 中隊長以上になるには陸軍大学校に行って、指揮課程を修了する必要があるみたいだし。

 そっち方面での昇給は、単純に強くなるのとはまた別の難しさがある。

 

(S級は流石にまだ厳しいしな……)

 

 レベル上げと並行して勉強も頑張らないといけないし、趣味の活動にも力を入れたい。

 やるべきことを列挙していくと、分身したくなるぐらいに多忙だった。

 最近は睡眠時間もあまり取れていなかった。異能者になって体が強くなっていなければ過労死していたかもしれない。

 

 ほどなくして、トレーに料理を並べて翡翠か朝食を運んでくる。

 事前に用意していた食事を温め直してきたのだろう、早い支度だった。

 

 食欲をそそる香ばしい匂いがふわりと漂ってくる。

 ご飯に味噌汁、焼き魚に卵焼き、そして野菜の和え物と漬物。朝の和食に相応しい献立だ。

 いつもながら手間がかかっている。一人暮らしだったら料理の手間を惜しんで弁当や惣菜ばかりを口にしていただろう。

 

「いただきます」

 

 合掌して小さくお辞儀。箸をとって食べ始める。

 

「うん、おいしい。本当にいつも助かるよ。ありがとうね」

「いえ、仕事ですので……」

「そうは言っても毎日やるのは大変でしょ? いつも言ってるけど手を抜いたりサボったりしてもいいからね? 別に週に2-3日ぐらいは何もせずに遊び呆けていても文句は言わないから」

 

 そこまで高い報酬を支払っている訳ではないので、毎日休むことなく働いている姿を見ると気が引ける。

 しかし翡翠は何でもなさそうに微笑を浮かべると、首を横に振った。

 

「いえ、好きでやっている事ですから。それに適度に休んでいるので大丈夫です」

 

 ここまできっぱりと断られると、もう何も言えない。

 

「そっか、無理しないでね」

「はい、ご心配ありがとうございます」

 

 それからは会話もなく、黙々と食事を終える。

 

「ごちそうさまでした」

「お粗末さまでした」

 

 そして翡翠は使い終わった食器を下げると、食後のお茶を用意して戻ってきた。

 

「今日はお休みでしたよね? どこかへ向かわれますか?」

「特に人に会う用事もないから家にいるよ。あ、昼飯と夕飯は作らなくていいよ。外食したい気分だから何か食べに行こう」

「わかりました」

 

 自分が休みの日まで相手を働かせるのは心苦しいものがある。

 外食したいは方便だった。私が休みの日はせめて炊事の手間ぐらいからは解放してあげたい。

 彼女はこうでもしないと休んでくれない。真面目なのはいい事だが、無理をしていないか心配だった。

 

「あ」

 

 不意に私は、ある重大事項を伝え忘れていたことに気が付いた。

 

「……そういえば、異動を命じられたって話、してないよね?」

「はい、存じません」

「だよね。私も昨日、突然司令から言われたんだ。“石巻に行け”って」

 

 まあ司令としても急な話だったのか、戦力を引き抜かれて不服という顔をしていたけど。

 

「石巻ですか?」

「そう、宮城県の、例の大規模異界がある所の基地だね」

「そうなんですか……いつ頃ですか?」

「年末に連休をやるから、年初にはあっちに移れってさ」

「年初にはって……すごく急ですね」

「うん、私も驚いてる」

 

 A級認定試験を合格した際にそれとなく匂わされてはいたけれど、まさかこんなに早いとは。

 ちょっと予定が狂う。

 

 よりレベルの高い悪魔と戦えるようになるのは個人戦力増強という面で見ればメリットだが、東北に転勤して連盟の組織運営をやりにくくなるのはデメリットだ。

 リモートワークで仕事ができる世の中とはいえ、人と人との繋がりは対面時よりもどうしても薄くなる。

 まだ未熟な組織の地盤を固めるには、色んな人と直接顔を突き合わせて信頼関係を築き上げていくのも大事な作業だった。

 

(新年会もできないかもしれないな、これ)

 

 プレイヤー同士の親睦を深めるために、立食パーティーなどをやりたいと考えていた。

 忘年会でやるには準備期間が足りなさ過ぎた。12月中にやるなら、せめて11月ぐらいには予定を決めて会場を抑えておきたい。

 少人数ならともかく、大規模なものは無理だ。寮でやることも考えたが、騒がしいのが嫌いな人にとっては迷惑だろうし。

 

 やるなら新年会かと思っていたのだが……。

 来月開催に向けて今から準備しようと思っていたところにこれだ。異動直後は忙しくなるだろうし、幹事はできる気がしない。

 

(……もう花見までお預けでもいいかもな)

 

 こういった機会でも作らないと、各地に散っているプレイヤーが一堂に会する事はまずないので、出来ればやってみたかったが、もうこれは縁が無かったと考えてひとまず諦めた方がいいかもしれない。

 

「……もしかして単身赴任でしょうか? 私はお供できませんか?」

 

 不安げな表情を浮かべて翡翠が聞いてくる。

 

「どうだろう。避難命令でゴーストタウン化した町を国が丸ごと買い取って基地に流用してるそうで、向こうでは一軒家が与えられるみたいだから住む場所は問題ないだろうけど……流石に同伴オッケーかは聞いてないや」

 

 あちらとしても成人前の独身者に家族同伴か単身赴任かを聞いてくることは無かった。

 

「その辺は明日聞いてくるよ」

「お願いします」

 

 

 

 

 

 

 

【PL共済連盟雑談スレpart13】

 

273:名無しのプレイヤー

 「速報」姉上会長、東北に飛ばされる

 

274:名無しのプレイヤー

 マ?

 

275:名無しのプレイヤー

 マジ。ランカーディスコの方で話してた。年初から石巻基地に異動だってさ。

 

276:名無しのプレイヤー

 入隊して1か月足らずで最精鋭の仲間入りか。やっぱ凄いな

 

277:名無しのプレイヤー

 年初って猶予は2週間ぐらいしかないじゃん。急だな

 

278:名無しのプレイヤー

 いきなり転勤か。大変だ

 

279:名無しのプレイヤー

 お労しや姉上

 

280:名無しのプレイヤー

 まあランカーの人達もちらほら異動の声がかかってるみたいで、プチオフ会だーって盛り上がってるけど

 

281:名無しのプレイヤー

 草

 

282:名無しのプレイヤー

 まあ俺らって全国に散らばってて、普通に暮らしてたら中々会う機会はないからな

 

283:名無しのプレイヤー

 姉上って会食好きだよな。政治家みたい

 

284:名無しのプレイヤー

 直接会って話をするのが一番手っ取り早く人と仲良くなれる方法だからな。接待はどこもやってることだよ

 

285:名無しのプレイヤー

 接待とか会食に悪いイメージを持ってる人もいるけど、悪いのはその場で裏取引とか賄賂を交わす人間であって、会食自体は別に悪い物でもなんでもない

 

286:名無しのプレイヤー

 実際政治力は高いよな。まだこの世界に来てから2か月も経ってないのに100人規模の組織を作ってる訳だし

 

287:名無しのプレイヤー

 動画見たけど喋り上手いよね。話してることも尤もだし頭良さそう

 

288:名無しのプレイヤー

 ああいう人が引っ張ってくれると頼もしいわ

 

289:名無しのプレイヤー

 強くて賢くて心が綺麗でコミュ力も高くて可愛い。姉上最強か?

 

290:名無しのプレイヤー

 マジで有能だよな。前世は何してた人なのか気になるわ

 

291:名無しのプレイヤー

 最近ここ見始めたばかりなんだけど、なんで皆会長のこと姉上って呼んでるんですか?

 

292:名無しのプレイヤー

 特典繋がりだね。会長の能力特典が原作っていうかファンの間では兄上と呼ばれてた。

 そして会長の性別は女。後は分かるな?

 

293:名無しのプレイヤー

 なるほど。ありがとう

 

294:名無しのプレイヤー

 ついでに言うと会長っていうのも俺らが勝手に呼んでるだけで、実は正式な役職ではなかったりする

 

295:名無しのプレイヤー

 え、そうなの?

 

296:名無しのプレイヤー

 嘘だー

 

297:名無しのプレイヤー

 いやマジだよ。連盟にはまだちゃんとした規約が作られてないし。暫定であれこれ決めてはいるけど、実はすべてが曖昧だったりする

 

298:名無しのプレイヤー

 それは組織として大丈夫なのか?

 

299:名無しのプレイヤー

 あんまり大丈夫ではないな

 

300:名無しのプレイヤー

 まあ金を出してるのは会長とランカーの一部だし。出資者が納得しているうちは問題にはならんでしょ

 

301:名無しのプレイヤー

 定款は今作ってる最中らしいな

 

302:名無しのプレイヤー

 へー

 

303:名無しのプレイヤー

 定款ってなんですか(小声)

 

304:名無しのプレイヤー

 一言で言えば、会社の憲法かな。会社を運営していく上での規則を明文化したものだよ

 

305:名無しのプレイヤー

 今のところ連盟は法人じゃなくて任意団体だから普通に規約でいい

 

306:名無しのプレイヤー

 あー、関係者しか読まなそうなめっちゃ長いやつか。それ作るって大変そうだね

 

307:名無しのプレイヤー

 参考例は結構あるけど、きちんとしたのを作るとなると、まあ難しいわな

 

308:名無しのプレイヤー

 そのうち法人化するんかね?

 

309:名無しのプレイヤー

 一般社団法人か? あんまメリットはなさそうだけど

 

310:名無しのプレイヤー

 法人化のメリットは団体の社会的信用が上がって団体名義でも色々契約できるぐらいだし、プレイヤー同士で纏まるだけなら任意団体のままでいいと思う

 

311:名無しのプレイヤー

 ほーん。じゃあ今のままでいいのか

 

312:名無しのプレイヤー

 俺はそれでいいと思う

 

313:名無しのプレイヤー

 どうだろうな。任意団体のままだと、何かしようとしても団体名義で契約できないから、個人名義で契約することになる。

 例えば寮なんかは会長名義で借りてるだろうから、会長が死んだりすると色々と面倒なことになる。運営資金とかも個人口座で管理することになるし。

 平和に暮らしてる人の集まりならそれでいいかもしれないけど、会長は命の危険がある職に就いてる訳だしな。色々と考える必要はあるかもしれん

 

314:名無しのプレイヤー

 なるほどなー

 

315:名無しのプレイヤー

 会長が死んだら後を継ぐ人もいないだろうし、連盟は自然消滅するんじゃないか?

 

316:名無しのプレイヤー

 ……確かに!

 会長の代わりができそうな人は現状いないな

 

317:名無しのプレイヤー

 姉上には早いところ鬼の力を発現して欲しいな。鬼の再生能力があれば安心できる

 

318:名無しのプレイヤー

 今の姉上のレベルっていくつなの?

 

319:名無しのプレイヤー

 前の近況報告動画では、確かLV18になったって言ってたはず。その気になれば痣も出せるしスケスケもできるとか。まだ鬼の力は引き出せてないみたい

 

320:名無しのプレイヤー

 姉上と会うと全身を隅々まで透視されるってマジですか?

 

321:名無しのプレイヤー

 透視メガネを自前で持ってるなんてエッチだなぁ

 

322:名無しのプレイヤー

 銀髪美女に透視される……我々の業界ではご褒美です

 

323:名無しのプレイヤー

 見えるのはエロじゃなくてグロなんだよなぁ

 

324:名無しのプレイヤー

 俺らが思ってる透視:服が透けて見える! えちち!

 実際の透き通る世界:人体模型(リアル100%)

 

325:名無しのプレイヤー

 まあやり方次第では服だけ透かして見るとかできるのかもしれないけどね

 

326:名無しのプレイヤー

 姉上はそういうのに興味なさそう

 

327:名無しのプレイヤー

 仕事人間っぽいしな

 

328:名無しのプレイヤー

 会長も忙しい人だよな。討伐隊で働きながら組織運営とかよーやるわ

 

329:名無しのプレイヤー

 ちょくちょく寮に来てヒアリングとかしてたけど、これからはそれも難しくなりそうね

 

330:名無しのプレイヤー

 東北行ったらこっちに関わってる暇はなさそうだよなー

 

331:名無しのプレイヤー

 全国に新幹線網が出来てるし、列島横断で早くもリニア新幹線が完成してる。仙台から東京まで1時間かからないみたいだよ

 

332:名無しのプレイヤー

 往復2時間か。それぐらいならまあ来れる距離ではある

 

333:名無しのプレイヤー

 よし、なら日帰りも余裕だな!

 

334:名無しのプレイヤー

 当たり前のように働かせようとすんなw

 

335:名無しのプレイヤー

 いつ休んでるのか分からないぐらいずっと働いてるみたいだからな。体には気を付けて欲しいわ

 

336:名無しのプレイヤー

 それな。現在最高位の異界の抑えに赴任する訳だし。慣れるまで本職に専念して欲しい。万が一という事がある

 

337:名無しのプレイヤー

 万が一か……。こっちにはリカームとか地反しの玉とかないんかね?

 

338:名無しのプレイヤー

 わからん。それっぽい噂はあるけど、少なくとも表には出回ってない物だな

 

339:名無しのプレイヤー

 仮にあったとしても超貴重なんだろうな。

 効果の程にもよるけど、死からの蘇生とかとんでもない奇跡だし。大量生産できない限りは絶対秘匿するでしょ

 

340:名無しのプレイヤー

 民間にも腐るほど需要がありそうだしな。そんな貴重なモノを一部で独占してますとか暴動ものだろうし。あったとしても隠すしおいそれとは使えないか

 

341:名無しのプレイヤー

 傷薬とかペインキラーも医療分野での需要が大きすぎて民間では常に品薄らしいな

 

342:名無しのプレイヤー

 効果も即効性もやべーもん。そらそうなる

 

343:名無しのプレイヤー

 普通の傷薬だと流石に欠損した手足とかは生えてこないみたいだけど、精製して効果を高めたやつなら欠損すら治癒するみたいだからな。欲しがらない奴なんていないよ

 

344:名無しのプレイヤー

 マグの用途も色々あるみたいだし、それらを採集するために必要な異能者が重要過ぎる。

 異能者をここまで優遇してるのも、背景知識を得た今だと当然だと納得した。むしろもっと育成に力を入れた方がいいんじゃないかとすら思うよ

 

345:名無しのプレイヤー

 異界が貴重な資源を齎すダンジョンなら、採掘効率を高めるために投資するのは当たり前じゃね?

 

346:名無しのプレイヤー

 その当たり前ができない国もあるからな……。この世界の日本はそれができる国でよかったよ

 

347:名無しのプレイヤー

 >当たり前ができない国。

 もしかして俺らの祖国をディスってます?

 

348:名無しのプレイヤー

 そんな! 元の日本のままだったら今よりもっと酷いことになっていただろうなんて思っていませんよ!

 

349:名無しのプレイヤー

 完全に思ってて草

 

350:名無しのプレイヤー

 まあその世界線だと討伐隊の規模はもっと小さかっただろうな

 

351:名無しのプレイヤー

 国家や国民を守ると言うやりがいの元、命の危険には見合わない賃金で搾取されてそう

 

352:名無しのプレイヤー

 そして有能な人材は海外に流出していくんですね、わかります

 

353:名無しのプレイヤー

 討伐隊では業務を遂行できなくなって民間委託とか始めたりして

 

354:名無しのプレイヤー

 普通に暮らしてて悪魔被害に遭っても危機管理が足りてないとか自己責任とか言われそう

 

355:名無しのプレイヤー

 緊縮日本の悪口を言うのはやめるんだ!

 

356:名無しのプレイヤー

 緊縮日本も大概悪口な気がするw

 

357:名無しのプレイヤー

 いちいち前の世界の日本だの書くのは面倒だからな。わかりやすくていいけど

 

358:名無しのプレイヤー

 コロナ日本とか小日本とかよりはマシな気がする

 

359:名無しのプレイヤー

 どれも酷いw単純に前日本とか元日本とかじゃ駄目なのか

 

360:名無しのプレイヤー

 駄目じゃないけど、帝国・皇国・日帝・大日本とかと比べてパンチが弱い

 

361:名無しのプレイヤー

 こっちのイケイケな日本を見てると、前世の日本はどうしてああなってしまったんだ感が強い

 

362:名無しのプレイヤー

 正直政治とか興味なかったけど、コロナのグダグダで政治家って大事なんだなって思いました。まる。

 

363:名無しのプレイヤー

 その点、リーダーに相応しい有能なプレイヤーがいてよかったわ。

 

364:名無しのプレイヤー

 カリスマがやばいわ姉上は。あの人についていけば大丈夫って安心感が凄い

 

365:名無しのプレイヤー

 俺が率いてやるって感じの対抗馬も特にいないし、これからプレイヤー勢力は連盟一色になりそうかな

 

366:名無しのプレイヤー

 転生直後に話題になってたランカーグループは結局どうなったの?

 

367:名無しのプレイヤー

 そういえば影薄いよなあそこ

 

368:名無しのプレイヤー

 今はレベル上げに忙しいんだろ。大半は討伐隊に入ってる訳だし。仕事の傍ら全く違う事をしてる姉上が異常なんだ

 

369:名無しのプレイヤー

 というかランカーディスコって、底辺連中の僻み妬みを嫌ったチュートリアル上位者が情報交換の場として作ったに過ぎないし。

 最初に声掛けした人も組織化しようとかあまり考えてなかったと思うよ

 

370:名無しのプレイヤー

 ランカー達は会長が説得したみたいだね。

 高額の寄付金まで出す積極的賛成の人は少ないけど、総論としては、とりあえず傍観して上手くいきそうなら合流させてっていう消極的賛成に持ってったみたい

 

371:名無しのプレイヤー

 あちこち飛び回って直接説得し回ったって話だな。後寄付金集め

 

372:名無しのプレイヤー

 すげえ……

 

373:名無しのプレイヤー

 流石です姉上

 

374:名無しのプレイヤー

 さすあねは笑う

 

375:名無しのプレイヤー

 ふむ。このまま順調に行けば連盟ももっと大きな組織になっていくのだろうか

 

376:名無しのプレイヤー

 そういえばうちって資金面は大丈夫なんかね?

 色々サービスを提供してるけど、会費も取らずにやっていけるんだろうか

 

377:名無しのプレイヤー

 一応寮の賃料は住民負担(それでもめっちゃお得)だけど、他の事は全部会長の持ち出しと寄付金で賄ってるらしいからな……これ以上の拡大となると収入面を強化しないと難しそうだ

 

378:名無しのプレイヤー

 世話になってる分、俺らも寄付するべきなんだろうか

 

379:名無しのプレイヤー

 今のところ小口の寄付は受け付けていなかったはず。

 

380:名無しのプレイヤー

 なんで?

 

381:名無しのプレイヤー

 会長の意向。無理して寄付するぐらいならまず自分の生活に役立ててくれって事をどこかで言ってた

 

382:名無しのプレイヤー

 優しい……

 

383:名無しのプレイヤー

 これは身も心も清らかな天使ですわ

 

384:名無しのプレイヤー

 お前ら知らないのか?

 姉上はな、まだこの世界に来たばかりの誰もが手探りの状態の中で、家も所持金もなくて困ってる文無しホームレスプレイヤー10人を自分の家に招いてる聖人だぞ

 

385:名無しのプレイヤー

 これはさすあね

 

386:名無しのプレイヤー

 聖人すぎて逆にちょっと不安になるわ。そんなに優しくて組織運営とか大丈夫か?

 

387:名無しのプレイヤー

 会長宅で暮らしてた人に聞いた話だけど、会長は底抜けに優しい人ではあるけど、締めるべきところは締められる人だってさ。

 指示は的確で物腰は柔らかくて話もよく聞いてくれる最高の上司だってその人は絶賛してたよ

 

388:名無しのプレイヤー

 へー、厳しい一面もあるのか

 

389:名無しのプレイヤー

 そういえば単純に忘れてたのか確信犯なのか金を使い込んじゃったらしくて寮で家賃滞納した奴がいたけど、会長と1対1で話をした後は怯えるみたいに身を縮こまらせてたわ

 

390:名無しのプレイヤー

 なにがあったんですかねぇ……

 

391:名無しのプレイヤー

 「お話」かな

 

392:名無しのプレイヤー

 甘いだけの人じゃないみたいで安心したわ

 

393:名無しのプレイヤー

 とはいえこのままおんぶにだっこじゃいけないと思うんだよな

 

394:名無しのプレイヤー

 じゃあどうする?

 

395:名無しのプレイヤー

 寄付金集めのクラウドファンディングでもする?

 

396:名無しのプレイヤー

 それもいいかもだけど、やっぱり定期収入は作っとくべきだと思うんだよね。

 具体的には会費。1人月5000円でもあるとないとじゃ全然違うと思う

 

397:名無しのプレイヤー

 寮暮らしなら、浮いてる水道光熱費分だと思えばそのぐらい安いな

 

398:名無しのプレイヤー

 給付金で月10万以上貰ってるし、もっと取ってもいいと思うけどな

 

399:名無しのプレイヤー

 月1万とか?

 

400:名無しのプレイヤー

 一律だと寮暮らしとそれ以外が不公平だし、寮住みなら1万、それ以外なら5000円とか分けた方がいいんじゃないかな

 

401:名無しのプレイヤー

 確かに

 

402:名無しのプレイヤー

 ちょっと高い気がするけどな。あんまり高いと新規が入ってこないだろ

 

403:名無しのプレイヤー

 まあ細かい額は置いといて、連盟を維持するためにとにかく少額でもいいから会費は取るべきだと思う。署名でも集めようかと思うんだけど、どうかな?

 

404:名無しのプレイヤー

 いい考えだと思うよ

 

405:名無しのプレイヤー

 俺も賛成。財政基盤の強化は大事だ

 

406:名無しのプレイヤー

 いいね! やろう!

 

407:名無しのプレイヤー

 よーし、ならオンライン署名でやってみるか

 

 

 

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