メガテン新作ゲーム……?   作:せとり

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ウィルオウィスプ

 仄暗い迷宮内。

 脇道からヌッと姿を現したモノを見て、俺は全身から血の気が引いた。

 

「あっ……」

『■■――!』

「やっべ……!」

 

 それは通路の中空を浮かぶ、紫の人魂。迷宮内を徘徊する悪魔であるウィルオウィスプだった。

 後ろに下がっても、しばらく一本道が続く。

 相手の足が遅いわけではないし、遠距離攻撃手段も持っている。背を向けて逃げても、追いかけてきたウィルオウィスプに九十九針を射られ、非常に苦しい逃走劇となるだろう。

 把握している安全地帯も遠い。ここはやるしかない。

 しばしの逡巡。俺は覚悟を決めて、マチェットの柄を握りしめて咆哮した。

 

「う、うおおおお!!」

 

 己の怯懦を払拭するように声を張り上げ、通路に浮かぶ人魂に向かって突貫する。

 特攻じみた闇雲な突撃ではない。勝算はある。この雷の力を纏うマチェットを奴に当てれば、きっと弱点を突けるはずだ!

 ――本当に?

 そう疑う気持ちもあったが、俺はそう信じた。信じたかった。

 

 僅かに迷いが生じた所為か、それとも普通に速度で負けていたのか。先手を取ったのはウィルオウィスプだった。

 ウィルオウィスプの周りに無数の針が生み出され、それが勢いよく飛来する。

 

「ぐっ……!」

 

 着弾。衝撃はそれほどでもなかったが、全身から生じる激痛に思わず足が止まる。正確な被害状況をすぐさま知ることはできなかった。

 激しい痛みの不協和音で、何本の針がどこに突き立っているのかもよく分からない。咄嗟に顔の前でクロスさせた腕にも、深々と針が突き刺さっている様が見て血の気が引いた。

 

 ――ここで止まったら駄目だ。動け!

 痛みとショッキングな光景を目の当たりにして混乱した精神を、俺の中の冷静な部分が活を入れる。

 こんな敵の真ん前で動きを止めれば、待っているのは死だけだ。

 

「ああああ!!」

 

 恐怖で萎えそうになる気力を振り絞り、俺は不気味な人面の浮かぶ紫の人魂に向かって一歩を踏み出し、片手で振りかぶったマチェットを叩きつけた。

 攻撃に呼応して、無数の雷光を纏う黒刃。ウィルオウィスプは空中でひらりと身を躱し、その直撃を回避した。

 かろうじて先端が掠ったのか、微かに引っかかるような手応え。殆ど空振りと変わらない感触の無さに、俺は外したと絶望的な気持ちになった。

 しかしその掠り傷は、ウィルオウィスプに対して劇的な効果を齎した。

 

『■■■ー!?』

 

 僅かに触れたマチェットの穂先から、目も眩むような稲妻が放たれた。小規模な雷に打たれたウィルオウィスプは、感電したかのように体を硬直させていた。

 

(い、今だ!!)

 

 このチャンスを逃すまいと、俺は雷光を纏うマチェットを振り回した。

 空中で体を静止させるウィルオウィスプはただの的だった。渾身の力で何度もマチェットで切りつけると、やがてウィルオウィスプは力尽きたような呻きを残し、光の粒子をまき散らし空気に溶けるようにして消えていった。

 

「ぜえ、はあ……か、勝ったのか」

 

 残された光の粒子が自分の体に纏わりつき、その肉体に吸収されていく様を、俺は呆然と見つめた。

 

 

 

 

【攻略】迷宮攻略スレ5【情報交換】

 

456:名無しのプレイヤー

 以前雷属性のマチェットを作った者です。ウィルオウィスプを倒してきました。

 やはり電撃は弱点だったようで、攻撃を当てると硬直したので楽に倒せました。

 そしてウィルオウィスプを倒した際に、レベルアップのような現象を確認しました。

 特殊能力が目覚めた自覚はありませんが、筋力や反応速度、体力といったフィジカル面がかなり増したようです。

 

457:名無しのプレイヤー

 釣り……か?

 

458:名無しのプレイヤー

 嘘っぽい偽報告も結構出てるからなー素直な目で見れない

 

459:名無しのプレイヤー

 自称悪魔を倒した奴はもう10人ぐらいいるからな

 

460:名無しのプレイヤー

 そんなに嘘松いるのかよ

 

461:名無しのプレイヤー

 いや、そいつらが全部嘘つきって訳ではないと思うけど、ここじゃ証拠を提示できないからな。発言とログから真偽を判断するしかない

 

462:名無しのプレイヤー

 草。人狼かよ

 

463:名無しのプレイヤー

 とりあえず>>456、その時の状況を語ってくれ。真偽は見た者が勝手に判断する

 

464:名無しのプレイヤー

 >>463

 了解です。タイピングするのでちょっと待ってください

 

 

 

 

480:名無しのプレイヤー

 という訳で、倒したウィルオウィスプが光の粒子になって消えると、その光が自分の体に吸収されるように纏わりついてきて、体が軽くなったように感じました。

 九十九針を食らって結構な重傷を負っていましたが、レベルアップによって傷が回復するといった現象は確認できませんでした

 怪我はその後、所持していた傷薬を用いて治療しました

 

481:名無しのプレイヤー

 ふーむ、発言に特に矛盾は見当たらないな

 

482:名無しのプレイヤー

 属性の弱点突いて倒した、怪我を負って危うく負けそうだった、って言うのも真実味があってホントっぽい

 

483:名無しのプレイヤー

 それな。武器一本で無傷で倒したとか盛ってるとしか思えない話も多い

 

484:名無しのプレイヤー

 無我夢中でよく覚えてない~とか誤魔化さずにできるだけ戦闘の詳細を語ったものグッド

 

485:名無しのプレイヤー

 俺も>>456に対する心証は結構いいかも

 

486:名無しのプレイヤー

 この人って色付き宝石の効果の第一発見者なんでしょ? 他にも宝石の効果を検証する人が現れればかなり話の信憑性が増すね

 

487:名無しのプレイヤー

 つってもそれ自体嘘の可能性もあるからなー

 

488:名無しのプレイヤー

 逆に他の自称悪魔討伐者が嘘が発覚しないために嘘を重ねることもありうるからな。

 発言ログは要チェックだな

 

489:名無しのプレイヤー

 俺は>>456をかなり白目で見てる。

 書き込みは最低限だし自己顕示欲があるようには見えない。レスも丁寧だし義務感で報告してる感じ。

 いつ探索に出てるんだってぐらい多弁な自称攻略組よりは今のところ信用してる

 

490:名無しのプレイヤー

 皆節穴すぎだろ。

 >>456の話なんて嘘に決まってるだろ?

 

491:名無しのプレイヤー

 >>490

 だったら根拠を示せよ、自称スキルが使える異能者くん?

 

492:名無しのプレイヤー

 >>490

 お前の話だとレベルアップすると体力が回復するしスキルを覚えるんだっけ? 

 あれれー? おかしいなー? どっちが嘘をついてるんだろうなー?

 

493:名無しのプレイヤー

 マジで人狼みたいになってて草枯れる

 

494:名無しのプレイヤー

 どうしてこんな余計なことに労力を使わなきゃならんのかね……ホント疲れるわ

 

495:名無しのプレイヤー

 この緊急事態でなぜ普通に協力し合うことができないのか……マジで嘘つきは死ねよ

 

496:名無しのプレイヤー

 自己顕示欲を拗らせてるのか、周囲を困らせたり不幸にしたい捻くれ者か。

 なんにせよまともな人格はしてないだろうな

 

497:名無しのプレイヤー

 俺は割と好きだな。こんな状況でも足を引っ張ろうとする人とか、それに苛立つ人とか、真面目に振る舞う人とか……書き込みから色んな人間模様が垣間見えて面白い

 

498:名無しのプレイヤー

 >>497

 これを腹を空かせた引きこもりが強がってレスしてると思うと、確かに面白いな

 

499:名無しのプレイヤー

 ギスギスしてきたな……

 

500:名無しのプレイヤー

 ??「深淵を覗き込む時、深淵を覗いているのだ……」

 

501:名無しのプレイヤー

 >>500

 ……ん???

 

502:名無しのプレイヤー

 >>500

 byニーチェ

 

503:名無しのプレイヤー

 >>502

 ニーチェ「えっ!?」

 

504:名無しのプレイヤー

 >>503

 デカルト「我思う、故に我思う」

 ソクラテス「生きる為に食べよ。生きる為に食べるな」

 アリストテレス「垣根は相手がつくっているのではなく、相手がつくっている」

 プラトン「目は心の目である」

 カント「存在するとは、存在することである」

 ヘーゲル「天才を知る者は天才である」

 マルクス「豊かな人間とは、自身が富であるような人間のことであって、富を持つ人間のことである」

 

505:名無しのプレイヤー

 草

 

506:名無しのプレイヤー

 やめろww

 

507:名無しのプレイヤー

 名言詳しいなおいw

 

508:名無しのプレイヤー

 錚々たる面子が適当な事言っててワロタ

 

509:名無しのプレイヤー

 一人改変されてないのが混じってて耐えられなかった

 

 

 


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