メガテンの天使。
もうそのフレーズだけで信用できない。天使面していたところで、結局は『悪魔』に過ぎないのだ。
ようやく見えた黒幕と思しき存在。
それがどんなことを話すのかと、俺は固唾を呑んで見守った。
『まずはチュートリアル、お疲れ様でした。これよりスコアの算出、及び特典の付与、その後に転生を行います。戦闘は無いので、どうぞ肩の力を抜いてお聞きください』
慈母のような笑みを浮かべて天使がそんなことを言っているが、いまいち信用ならない。
他のプレイヤーの反応はどうだろうかとパソコンの画面をちらりと見る。
「ん……? 書き込みが止まってる?」
しかし見ていたスレッドは、0時前の時点で書き込みが止まっていた。
試しにレスをしてみたが、エラーが出て書き込むことができなかった。他のスレも確認してみたが同様だ。どうも掲示板全体が凍結されているらしい。
相談が封じられた?
『プレイヤーの皆様には独力でキャラクター作成を行って欲しいと考え、掲示板の機能を一時停止しております。ご了承くださいませ』
こちらの動向を見ていた訳ではないだろうが、ちょうど天使から説明があった。
『今しがた生き返り、状況を理解しておられない方々は大勢いらっしゃると思われますが、途中で死んでしまった方々の為の説明に時間を割くつもりはないのであしからず』
チュートリアルで死んだ人が生き返っているのか?
というかやっぱ性格悪いなこの天使。自分で蘇生しておいて話についてこれない奴は見捨てるって酷すぎるだろう。
やはり天使の皮を被った悪魔……。
『では転生先の設定を決めていきましょう。お手元にあるパソコンの画面をご覧ください』
促されてPCモニターを見ると、どこかで見たようなフォーマットのステータス画面のようなものが表示されていた。
いや、これはキャラクターシートか?
『なにをどうすればいいのか、ゲーマーの皆様には細かい説明は不要でしょう。締め切りは1時間後です。では私はこれにて失礼いたします。プレイヤーの皆様のご武運をお祈りしています』
その言葉を最後に、テレビから天使の姿は消えた。
テレビモニターの電源は切れ、ただ真っ暗の画面だけが映っている。
「……え? それで終わり?」
説明らしき説明もないまま終わってしまった。
肝心の事は何も言っていない。不完全燃焼であった。あの天使は一体何だったのか。疑問だけが深まった。
「はあ……」
やっぱりクソ天使じゃないか。
固まっていても仕方がないので、キャラクターシートに目を通していく。
スコア:1042(評価:S)
覚醒能力特典:ガチャを引いてください。スコアボーナス『SR確定』
住居:ガチャを引いてください。スコアボーナス『SR確定』
所持金:ガチャを引いてください。スコアボーナス『SR確定』
ステータス:ボーナスポイントを割り振ってください。余剰10P。
「ふむ……?」
大半はガチャで決めるらしい。
だが俺はスコアボーナスとやらで全てSR確定のようだ。どれも一発勝負のようなので、最低保証はありがたい。
ステータスは……力・速・魔・体・運のメガテン風ステータスに、ボーナスポイントとして与えられた10Pを自由に割り振れるようだ。
レベルは初期化されるのだろうか、ステータスに表示されているレベルは1で、各ステータスもALL1だった。
「ステ上限はいくつなんだろうな。40なら10Pは大きいけど、99だと微妙、999だと……うん」
まあ初期ステータスが1なので、そこまでインフレはしないと思うが……。
「とりあえずガチャ引いてみるか」
他の要素を決めれば、ステータスの優先度も見えてくるだろう。
まずは特典ガチャだ。
クリックすると、ソシャゲだったら落第だろう、何一つ購買意欲をそそらないシンプルなガチャ画面が表示された。
『覚醒能力特典』
レベルが上がるほど、より特典元の力に近づいていく。特典元のキャラになりきることで、覚醒効率アップ。
書いてあることがピンとこない。
覚醒者や転生者として前世の悪魔をガチャで決めるのか?
しかしキャラになりきるとかなんのこっちゃ。
まあ試してみれば分かるか?
『1回(SR確定)』と書かれたボタンをクリックする。
「おー、虹演出だ」
一応演出はあるらしい。光が収まると、物凄く見覚えのあるキャラクターの立ち絵が出てきた。
「んん???」
予想していなかった人物の姿。目頭を揉んでから二度見するが、見間違いではないらしい。
長い黒髪を後ろで縛り、紫と黒の石畳模様の着物姿。6つ目を持った異貌の侍。
近年、社会現象となるほどに流行した漫画の登場人物。敵勢力の最高幹部。その名は……。
『黒死牟(鬼滅の刃)』
特典名には、しっかりと名前から出典まで記されていた。
「なんで鬼滅のキャラが……? メガテン関係なくね?」
もしかしてプレイヤーに与えられる能力は、全て他作品から輸入しているのだろうか。
レベルが上がるほど、特典となるそのキャラ本来の力に目覚めていくという事か……?
黒死牟のスペックを思い出してみる。
鬼滅の刃の世界では、ラスボスとバグ、2人の例外を除けば最高峰の実力者だ。
全集中の呼吸を修め、痣や透き通る世界に至るほど剣士として完成された腕前。鬼の身体能力に回復力、そして理不尽な間合いを持つ血鬼術。
弱点などを含めてどこまで再現されるのか分からないけど、普通に強そうだ。
当たりの部類じゃないか、これは? さすが確定SR。
他のラインアップはどんな感じなんだろうな。
成長することで能力が解放されていくのなら、これは潜在能力みたいなものか。
ランクが高いほどスケールし、ランクが低いと伸びしろも少ない感じだろうか。それだとかなり残酷だな。シビアなソシャゲみたいに高レアじゃないと使い物にならず、人権がないみたいなことにならなければいいが。
後は……なりきりってつまりコスプレだよな。
黒死牟の衣装は、和服だけどまあ奇抜ってほどではないし、成長を早めるという実利があるなら普段着にしても全然いけるな。
向こうの世界に原作があるとは限らないし、キャラの特徴はしっかりと覚えておこう。
時間制限もあることだし、他のガチャもサクッと済ませていく。
で、結果がこうだ。
住居:関東。分譲マンション。
所持金:283万円。
「えっ、分譲マンションが貰えんの?」
それに所持金300万近くも。滅茶苦茶太っ腹だ。
関東。分譲マンション。283万円。ワード的に、世界観も現代日本っぽいな。
「まさかローン付きだったりするのか。いやでも所持金をこれだけくれるなら、1000万ぐらいの部屋ならポンとくれてもおかしくないか……?」
そうであれば結構な資産だ。余計なものがついてこなければいいが。
ボーナスポイントの割り振りはどうするかな。
リアルとゲームとでは勝手が違うだろう。
各ステータスがどう作用するのか分からない部分もあるが、特典能力を考慮すれば、戦士タイプのビルドが合うだろう。
「無難に力体速に3ずつ振って……余りの1Pは幸運に振っとくか」
ゲームでは運なんか上げるよりも、攻撃力の力・魔、防御力の体、素早さの速を上げた方が手っ取り早く強かったが、色んな要素が複雑に絡んでくるリアルなら、運も重要になるかもしれない。
まあ、ゲン担ぎだ。1Pぐらいいいだろう。
「結構いい感じに見えるな」
ガチャは全てSR確定だったからな。
やはり固定値は正義。スコア稼ぎしておいて本当に良かった。
前話のアンケートにご協力いただきありがとうございました。
お陰で主人公の性格が大体固まりました。
>他作品からの能力輸入
つ『能力クロス』タグ
本当は異能者やサマナー、ペルソナ使いやデビルシフターなどメガテンっぽさを出したかったのですが、ビルドを考えるのが面倒くさ(げふんげふん)
メガテン系列縛りでキャラを選ぶにも数が限られますし
その点既存キャラを持ってくれば、種類は豊富で考えることも減るし特徴付けも簡単にできる。
二次創作って素晴らしい。数多の原作者様に感謝です。
>兄上の理由。
単純に鬼滅が好きだったので
縁壱は強すぎるし無惨様は……うん
兄上のコスプレして戦う銀髪美少女。かっこいい……かっこよくない?