ティアナ様は告らせたい~少女(一部女性含む)たちの恋愛頭脳戦~ 作:アルブレヒト・ミュンヒハウゼン
狼獣人のマコトは、困惑していた。
それは、周りの人間の放つ異様なプレッシャーに気圧されているためだ。
所属しているギルド、【
狼に端を発する獣人のため、威圧や防御を削って弱体化させることは得意中の得意だが、高火力にさらされたり搦手を用いられたりするとめっぽう弱い。守りに入った相手を削り切ることも不得意だし、味方の回復や能力強化に特化した相手も苦手……多くね?
現状、高火力、搦手、防護、回復、そして能力強化を使う相手と、見事に全て揃っている。
だが、この事態を引き起こした張本人のひとりであり、この場にも参戦している【
マコトとしては、別に勝たなくてもいいので素直に敗北を認めてしまいたい、とも思うが、
(……しゃーねぇ、な。止められなかったあたしも悪い。
それに、勝算のある勝負を捨てるのはあたしの流儀じゃねぇ)
改めて気合を入れ直し、前を向く。
そのマコトの正面。
小綺麗な布が被せられた机の後ろには、【美食殿】のギルドマスター、ペコリーヌと、そのメンバーであるコッコロが立っている。
ペコリーヌは扇状に並んだマコト達をぐるり、と見回すと、ゆっくりと笑みを浮かべる。普段とは異なるその笑みに、皆が自然と居住まいを正す。
仕立てのいいドレスはいつも通りだが、やたらと悪目立ちする黄金の王冠を戴き、なぜか『味王』と書かれたたすきをかけている。正直、服装とのミスマッチが露骨で全く似合っていないのに、それでも威厳のようなものを感じる。何が何だか分からない。
だが、マコト以外、主に右側の面々は全く気にした様子がない。というより、単に周りに気を配っていないだけなのだろう。
漏れそうになる息を飲み込む。頭痛に襲われる前に始まってほしい。
コッコロは普段通り、緑の外套を肩にかけた格好だ。ただし、なぜか真っ赤なパプリカを大事そうに胸前に掲げている。緑と赤の補色の組み合わせは目に鮮やかで、そのコントラストに目を奪われる。ただ、そもそもパプリカを持っている意味が分からない。
だが、マコト以外、主に右側の面々は【以下略】
そのコッコロがゆっくりと歩き出す。何かを確かめるように一歩ずつ、しかも歩くたびに小さく辺りを見回すので展開が遅い。ただ、目的地と思しき場所まではそう距離がないので我慢できる。というか、いつになったら始まるんだ?
その目的地である布が被せられた机の横に来ると、一度顔を決める。きりり、としたその表情からは普段の可愛らしさより凛々しさが前面に出ている。その姿に、思わず息が漏れる。
ここだけは皆同じ気持ちだったようで、右側からもマコトの発したものと同様の音が複数漏れ聞こえる。
再び静かになったその時、コッコロが厳かに口を開く。
「わたくしの気が確かなら」
だが、
「コッコロちゃん、記憶です、記憶」
慌てたようにペコリーヌが訂正する。
……最初からぐだぐだだ。もうこっちの気が確かではない。始まらないなら逃げ……帰りたいんだが。
少しだけ頬を赤く染めたコッコロが、再度口を開く。
「わたくしの記憶が確かなら、ここに参集なされた皆様は以前、主さまにお食事をごちそうされた方、あるいはごちそうしようとされた方。
お優しい主さまのこと、皆様の料理や心意気に対して感謝を述べられたことでしょう……」
なんだか奇妙な口上だ。コッコロらしいと言えばらしいが、マコトには背伸びをしている言い回しのように聞こえ、なんとなく微笑ましい。その内容はアレだが。
だが、コッコロは感極まったのか、ぐすり、と鼻をすする。どこが感涙に該当する箇所なのかわからない。
だが、マコト以外の面々、主に右側からは細く息が漏れ出る音が複数聞こえる。
コッコロの同類がいるらしい。しかも複数。
……やはりマコトの気が確かではなかったようだ。もう勝ち負け関係なく早く帰りたい。
話は進む。
「ですが、主さまから感謝を頂いた回数だけならわたくしが最も多いのです。そのことをお忘れなきよう。
ただ、そこに至るまでには大変長い時間を要しました。
まず、主さまのお好きなメニューを聞き出すまでに」
……あ、これ長くなるやつだ。
だが、完全に脱線し始めたコッコロを置いて、奇抜な格好のペコリーヌが口を開く。
「馬肥ゆる秋、美食殿ガチンコチャーハン対決!!
さぁ皆さん、今の心境を一言お願いします♪」
大きく手を左右に開くと、右側を指す。
……いつも思うんだが、よく中指と薬指くっつけていられるな。
彼女が指したのは、マコトから見て一番離れた場所にいるサレン。緩やかなウェーブのかかった金髪が特徴的なエルフで、【サレンディア救護院】のギルドマスターだ。
見た目からは冷たく尖った印象を受けるが、話してみると情に厚く、しかも気立てがいい。
更に、貴族出身にもかかわらず驕った部分もない。それもそのはず、旧態然とした貴族社会を嫌っているという。それどころか、形だけになっていた孤児院である【サレンディア救護院】をギルドとして復活させ、その運営に日夜奔走しているという。
まさに、力ある者は義務を果たす、を地で行く高潔な人物だ。少々勝ち気な部分と凝り性な部分はあるが、それで魅力が薄れるわけではない。むしろ、より魅力が増す要因となっている。
本来であれば朗らかな笑顔が似合う美少女なのだが、今は全体的に力が入っている。加えて、鮮やかなスカイブルーの瞳には必勝の炎が見える。その視線だけで辺りを焼け野原にできそうだ。
(なまじ美人が凄むと迫力があるんだよなぁ……)
迫力満点の美人エルフは、端的に迫力ある言葉を作る。
「全員潰す」
……うん、力ある者だ。
その左には黒鉄の全身鎧が置かれている。なんでこんなところにあるんだよ邪魔だな、と率直に思うが即座に打ち消す。何しろ、その中には人が入っている。
否。人がいる、が正しい。どうでもいいが。
このランドソルで常に全身鎧を着込んでいる、といえばたった一人しかいない。
【
鎧姿であることから分かる通り、護ることに重きを置いているため、普段は王宮の正門を護っている。置物と勘違いして、写真を撮られることもあるらしい。分からんでもないがされるがままになっているのはどうだろう。
だが、有事の際は責任者として前線に赴き、防御のみならず戦闘能力の高さを活かして外敵を排除する。その強さは【
確かに、向き合っただけで強さが滲み感じ取れる相手はそういない。自身を律することのできる強者はいるだけで鎮護の役目を果たす。その意味でも、彼女が軽々に動かない事実は王宮の盤石さを物語っている。
(それが街でも適用されてくれれば、てのは欲張り過ぎだな)
がしゃん、と金属のぶつかり合う甲高く、そして重い音が響く。
「サレンちゃんには負けない」
……口は軽々に動くようだ。
ジュンの隣はマコトも所属する【
見る者にふわふわとした印象を与える、柔和な笑顔が特徴の彼女だが、その笑顔の奥にはしっかりとした芯がある。以前から自身の信奉するものへの執着、あるいは頑固さは持っていた。マホマホ王国が最たる例だ。
だが、何かと揉めがちな人間側との対応を、王都に住む獣人の代表として引き受けざるを得なくなった過酷な境遇が、彼女を強かに鍛え上げた。口ではなく手が出がちなマコトに対しても、柔和な笑顔と優雅な立ち振舞で接してくれるマホは尊敬の対象であり、かけがえのない友人だと思っている。
流石にこっ恥ずかしくて口に出したことはな……態度でも示したことが無いことに気付き、今度なにかしようと決心する。
(色違いのリボ……スカーフとかで勘弁してくれれば)
にこやかだが、どことなく周りを見下したような視線を向けて、マホが宣言する。
「皆はん、お上手そうやなぁ」
……明らかに穏やかではない。
マホの左隣、つまりはマコトの隣にはピンク髪を肩上で揃えているユイ。【トゥインクルウィッシュ】に所属する彼女は攻撃よりも癒やしを専門とするヒーラーだ。攻撃主体のこの世界においては稀有な存在だと言える。
加えて、獣人であるマコトと、人間であるユイが幼馴染であることも稀有だと言える。
人間、そして獣人が悪いのではない。ただ、双方の理解ができていないことが問題なのだと気付かせてくれたのがユイだった。マコトが自警団に参加することにしたのは、彼女の存在があってこそだ。彼女には感謝してもしきれない。
その自覚があるからこそ、今回の騒ぎに参加しているのだが。
(全てはユイ、お前のせいだからな……)
全身に妙な魔力が集まっている。服にラグが走り、その一部が……なぜか花びら? に変換されてはもとに戻っている。そのせいでところどころつややかな肌がちらちら見えているのは黙っておく。武士の情け、というやつだ。違うか。
「ええっと……勝つぞ」
……服装同様、軽いな。
(まぁ、今回はあたしも下手には引けないんだよなぁ……)
しくり、と痛む胸奥を忌まわしく思いながら、テンションが低いマコトは一人、虚しく息を吐き出す。
「……面倒なことになった」
そして。
意を決して左側を見ると、そこにはユウキがいる。
(あー……いなくなんねぇよなぁ……)
存在しているだけなら特に問題はない。問題なのは、この騒ぎに便乗していることだ。気合十分らしく、小さく拳を握って何らかのアピールをしている。まだ何も始まっていない。保護者へのアピールだろうか。
(というより、わかってないんだろうな)
「チャーハンは、作れる」
……いつもの抜けた感じの笑みを浮かべての宣言は構わないのだが……ああ、うん。そういう話じゃないんだ。
どうしてこんなことになったのか。
その理由は一昨日に遡る。
「あら、マホさんに……マコトさん、だったわね」
マホと連れ立って歩くマコトに声をかけてきたのはサレンだった。
「サレンはん、ジュンはん。その節はどうも~」
緩く手を振るマホの言う通り、サレンの正面には黒鉄の鎧を着込んだジュンがいた。
珍しい組み合わせとは思わない。二人は以前、【
マホの言う『その節』とは【
この三人はかなりの日数を使い、最悪の展開を免れることに成功していた。
ただ、獣人側にしてみればあまり芳しい結果には至らず、人間側の優勢勝ちのような形になった。
その時のなぁなぁの決着に対してちくりとした物言いか、と思ったが、マホからは嘘や嫌味を言う時特有の刺々しい匂いはしない。ただの社交辞令のようだ。
「久しぶりだね、マホさん」
マホへの挨拶の後、鎧のスリットがマコトに向けられる。
「きちんとした顔合わせは初めてか、【
あたしは」
「【
その言葉に、思わず息が漏れる。
突然振られたこと、そして知られていたことより、呼び方のほうが意表を突かれた。
「ははっ、マコト"ちゃん"か」
思わず笑みを含んだ声が出てしまった。外見も相まって堅い印象を持っていただけに意外だった。見た目で判断してはいけないとはよく言ったものだ。
だが、当のジュンはマコトが気を害した、と捉えたようだ。引き笑いのようになったことも、そう捉える一因となったのだろう。
「あ……いや申し訳ない。確かに、ほぼ初対面だというのに馴れ馴れしかったね。
こういうところだな、私は……」
早口になるあたり、本当に焦っているようだ。それどころか、衆人環視にも関わらず自省まで始めた。
更なる意外を追加され、多少なりとも構えていた気分が緩くほぐれた。
(あたしってもしかしてちゃん付けされやすい何かがあんのか?)
邪推で終わって欲しい、と思いながら手を振る。
「マコトでいいぜ。よく呼ばれるとはいえ、なんかくすぐったくてさ」
サレンに軽く目礼しながら告げると、向こうも軽く頷く。
「で、どうされたん、こんな道端で?」
「街中でジュンさんを見かけて声をかけたの。珍しかったから」
サレンの最後の一言には笑みが混じっている。
ジュンといえば王宮正門の護りが主任務だ、と言っても差し支えない。それを知っている者にしてみれば、確かに街中で見かけるのは珍しい。
対するジュンは頭をかくような素振りを見せる。兜で表情は見えなくとも、感情を外に見せる手段は心得ているらしい。
「市中の見回り、というやつだよ。以前のような騒ぎの際、初動が大事だと痛感させられたからね。
ただ、私は普段、正門前に突っ立っているだけだから手際が悪くてね」
【
ただ、先程のサレンの笑みからすると、どうやらジュンは単純に人手不足のあおりを食らったようだ。手際が悪い、という本人の言葉もその事実を認めている。全く、人がいいのも考えものだ。
「お二人は?」
サレンからの問いに、肩をすくめてみせる。
「姫さんの行き先と、あたしの行き先の方向が同じだったんで途中まで一緒に行くんだ。
……この辺はヒューマンの住民が多いから、念の為にあたしが姫さんについているんだよ」
意地の悪い言い方だと思うが事実だ。
このランドソルにおいて、未だに人間と獣人の溝は深い。一昔のように、獣人だと言うだけで襲われるようなことはなくなったが、だからといって敵意が完全に薄れたわけではないし、こびりついた悪意は拭い取られているわけでもない。むしろ、偏見や蔑視といった害意は色を確認できる程度には残っている。
そして、それは人間が多いこの地区では非常に顕著だ。
「耳が痛いな」
ランドソルの治安維持をも担当するギルドのトップ、ジュンは率直に反応してみせる。
だが、先の弱いところを見たせいか、少しだけ眉を下げて言葉を追加する。
「そういう一面があることは否定しないけど、別にそれだけじゃないんだ。
うちの姫さんはすーぐあっちこっち行くんで、時間通りに目的地に向かわせるためのお目付け役なんだよ」
事実、あっちにふらふら、こっちにふらふらと動き回るせいで、たった数メートルを行くのに十分近くかかっている。
当の本人は、ぷく、と頬を膨らませる。幼い仕草だが、微笑ましさが勝る。
「かあいお洋服や雑貨がうちを呼んどるんよ~。見たげんとかわいそや。マコトはんはない言ぅけど、おふたりはそういうことあるやろ?」
小首を傾げたマホに対し、二人は顔を見合わせ、そして声を合わせる。
「……ないな」
ジュンからある、と言われたら絶対に二度見してしまうところだった。
サレンは顎に指を当て、一通りは考えてくれたようだが、
「ないわねぇ」
答えはやはりシンプルだ。
それらの答えに、マコトは大きく顔を縦に動かす。
「だろう?」
「ああん、皆いけずやわ~」
小さく笑い声が響く。
ここで、「じゃ、姫さん行くぞ」と一言言えればよかったのに。
サレンはジュンへと向き直る。
「そういえばジュンさん。この前倒れてうちに担ぎ込まれてたけど、もう大丈夫なの?」
がしゃり、と金属がぶつかり合う音が響く。
「ああ。あの時は疲労というよりは魔物の毒にやられてね」
「毒は大変おすなぁ」
再びがしゃり、と金属がぶつかり合う音が響く。
「確かに。普段は魔法で治療してもらうから苦痛を感じないけど、その時ばかりはこの身を持って実感したよ」
この発言に、マコトは内心で感心する。
トップが実地を理解し、把握している組織は強い。何より柔軟性が高い傾向がある。
今の【
加えて、ジュンは治療側への理解として、魔法職であるマホへの敬意も含めてみせた。
その評価に、マコト個人としては如才ないと感想を抱くと同時、少しではあるが誇らしくある。加えて、やはり友人が褒められるのは嬉しい。
ただし、「褒められちった」とは喜べないのが【
まず、ジュン個人としては、他人の痛みを自分のものと想像できる感受性がある。組織のトップとしては弱点と捉えるかもしれないが、マコトとしては好感が持てる。
ただ【
弱さを理解し、許容できるということは、その弱さを利用し、活用できるのと紙一重だ。自身の弱さを利用して誘い込む、なんて手段を講じてくるかもしれない。
マホからはあまり交渉ごとには向かないと聞いていたが、このやりとりではそんなことを思わせない。その後に磨かれた、とするならその評価は改めなくてはならない。
個人と組織人とを切り分けて考えなければならない、ということがマコトにとっては難しい。どうしてもどちらかに傾いてしまう。
こうやって立場を含まずに井戸端会議ができる点で、自分はつくづくトップ向きじゃないな、と実感する。
加えて、【
マホの場合は後方支援系の魔法職なのに魔法の制御が下手なため、毒の治療のみを行うことが大変なのだ。何しろ既存の初歩魔法を組み合わせるだけで爆発させる。
つまり、
(【
更に余計な交渉材料になってしまうのではないか、と危惧してしまう。
【
「おかげで、人員や業務ローテーションを見直す機会になったよ。
……それなのに今日、こうやって私が駆り出されているのは、流石にどうかと思うけれどね」
肩の装甲を震わせる。
【
【
ジュンは更にくすり、と笑みをこぼす。
「本当、あの時はサレンちゃんと
どことなく声が弾んだ、その一言にマコトは眉をひそめ、
「王子はん? 王子はんがどないしはりましたの?」
笑みを消したマホが、狐獣人の本性むきだしで食いつく。
一番慌てたのはマコトだ。なんとなくマホが落ち着きないとは思っていたが、ここまで露骨に出してくるとは思わなかったのだ。
「お、おい姫さん。少年ってユウキのことなのか?」
「困った人を助けるほど優しいんは王子はんしかへん」
マコトの言葉に食い気味に言い放ったマホに対し、
「ああ、ユウキくんに助けてもらったんだよ」
ジュンはわざわざ言葉の定義をしてみせる。
内心で舌打ちする。
まずい。
マホは自分のこだわりに対しては非常に独占欲が強い。
自分の手元にある場合はそこまで固執しないが、手にしていないものに関して優位が保てないと知れるや、視野狭窄気味の思考と攻撃的な言動が目立つようになる。
マコトをはじめ、【
だが、ここでは通用しない。それどころか、確実に火に油を注ぐ人物が揃っている。
この場にいる全員が、何らかの形でユウキと親交を持っているだろうことは既に感づいていた。
まず、サレン。これはもう露骨で、使っている石鹸の匂いが同じだ。ただ、以前のクリスティーナ騒動により、未だにユウキ(とコッコロ)が【サレンディア救護院】にお世話になっていることは知っているので理解はできる。だからって同じ石鹸使うか? 喧嘩売ってんのかおおん?
次にマホ。言わずもがなだ。マコト同様、サレンの石鹸の匂いで気持ちを乱されているために噛みつきやすくなっているのだろう。ただ、ユウキに対しては引かないぞああん?
最後にジュンだが、これは先の証言の通り。よし戦争だ。
マコトの主観はともかくとして、マホに関しては少々厄介だ。匂いが原因なので即座に離れるのが最良だが、最低限マホの気を逸らさなくてはずっとこの調子が続いてしまう。【
だが、ジュンは優位を保っていることを自覚したようで、そのまま話を続ける。
「その後、料理をしたんだけど、手付きが危なくて見ていられなくてね。私も一緒に料理をしたんだ。
ふふ、誰かと一緒にご飯を作って食べる、というのは体だけでなく、心の栄養にもなるのだと知ったよ。
……そう思わないかい、マコト"ちゃん"? 居酒屋の娘であるキミなら分かってくれると思うんだ」
再び内心で舌打ちする。
そこまで調べ上げているのか、というより、
(露骨に油を注ぎに来やがった!!)
上等だ。
ならば、応えねばならない。闘争こそ我が望み、だ。
大きく伸びた犬歯が空気に触れる冷たさで、口の端が持ち上がっていたことに気付く。それは冷静さを取り戻すのではなく、胸奥に潜む闘争の炎を呼び起こすきっかけでしかなかった。
同時、ここで引いてはダメだ、と本能が叫んだ。
ここでの争いはマイナスになってしまうものの、それ以上に今後ずっとマウントを取られる、と。
(
……分からない。分からないが、ユイ以外の女がマコトに対してでかい顔をするのは癪に障るし、何より許せない。
だから。
ぐい、と犬歯をむき出しにする。
「ははっ。確かに、そういうことあるよな。
あたしも作るのは好きでさ。んで、あいつもタカりにくるからつい振る舞っちまうんだよな。
ちょっと味濃いのは自覚してんだけど、あいつ体動かすバイトばかりで腹も空かせててさ。ものも言わずにかっこむんで、こっちも気持ちいいんだよ。
金取ってないのはちょっとやりすぎかもしんないけど、あいつならいいかな、って思えちまうんだよな」
言っている内容に照れはある。何しろ、ユウキに合わせて作っていることを強調している。きちんと相手を見て、望む料理を提供しているのだ、と露骨なまでに。それはまるで、仲睦まじい間柄であるかのように。
だが、初手こそ最大にして最強の一撃を与えなくてはならない。相手の意思をくじき、こちらの強さをことさら強調するのだ。
それに、こそこそなんて性に合わない。この場にはマコトが唯一引け目を感じる
公私共に静かな敵対関係にある相手からの挑発を受け、頭に血が昇っていたマコトは、気付けなかった。
否。
マコトの敏感な嗅覚は、マホから発せられる刺々しい匂いを嗅ぎ分けていた。怒りや嫉妬など、露骨なストレスを感じているのは明らかだ。しかも、マコトに対して。
隣にいるから見えないが、確実に視線が突き刺さっている。
……痛いが、マホ相手なら少しの間着せかえ人形になっていれば溜飲を下げてくれる。なんだかんだで似合わないものを選ばないので、実は楽し……みじゃない。きつい。あたしがかわいい服なんて……本当に厳しい。それに、獣人としての矜持とかそんなものを使えば理由付け程度にはなる。
だから一切疑うこと無く受け入れ、戦うことを選択した。全ては自身の誇りのためだ。
だからこそ、気付けなかった。
この場に、ユイ以上にユウキに固執する理由を持つ者がいることに。
加えて、マコト以上に自身の誇り……というよりはこの場にいる誰よりも意地を張らなくてはならない理由を持っていることに。
もうひとつ付け加えると、マコトが感じ取っていたマイナスは、マホ相手ではなく、その相手から与えられるものであることに。
「……どす」
囁くような声がマコトの頭頂部にある耳に届く。
この音を発したのはマホだ。短刀の物騒な別称ではなく、ランドソルでは馴染みのない、マホが普段使っている言葉なのですぐに分かる。ここまでは予想通りだ。
それ以外は聞こえるはずがないと思っていた。
だが。
「……るい」
小声にも関わらず、怨嗟をふんだんに含む声には覚えがない。
その答えを、ジュンが口にする。
「うん? どうしたんだいサレンちゃん?」
その声の主、ジュンの隣のサレンは体を震わせる。しかもかなり大きい。内側から弾けそうになる感情やそれ以外の何かを耐えているかのようだ。
「ずるいずるい、ずっる~~~い!!」
……全然保たずに思い切り弾けた。まるで駄々っ子のように地団駄を踏んでみせる。
先程まで被っていた小利口にまとまった面をあっさりと脱ぎ捨て、負けず嫌いで強気な素顔をさらけ出す。そして、スカイブルーの瞳に力を込めてジュンとマコトを見据える。
きっ、と音が聞こえそうな力強さに、思わずマコトは小さく震える。
まさか、こんなことで感情を大きく出してくるとは。
否。
「あ、あたしだってあいつに焼きそば以外を食べさせたい!!
余計な邪魔さえなければ、あたしの手料理を振る舞えたのに~!! ガストン(偽)めぇ~!!」
決してここで引けないという意思、そしてマコトと同じ理屈で動いているのだろう。
そしてもうひとり。
「うちも~!! あん時はお昼食べよ思うたら王子はん寝てもうて、膝枕したったけどそれはそれ!!」
『膝枕ァ!?』
ジュンとサレンの声が揃う。
……マコトの口も動いた気はする。この際細かいことはいい。ただ、その事実は問題だ。
マホは一切空気を読まずに続ける。
「王子はんは美味しそうに食べてくれるから、見てるだけでも幸せになるんよ~」
『わかる!!』
そこは全員同意だ。まぁ、諍いの原因なので当然だ。
「それを!! 独り占めしたい!!」
サレンが独占を宣言する。
『それは許さん』
サレン以外の三人の声が揃う。
……声を上げたうちの一人、ジュンは毒にやられ、仕事をサボった後の一連の流れは忘れた。この一瞬だけ。
マコトも忘れた。ずっと忘れてもいい。どうせ数日後にはまた来るだろうし?
全員から否定されたサレンは、完全に据わった目をして皆を睥睨する。
「……勝負よ」
「え? なんで?」
その流れは分からない。
「……いいだろう」
だが、ジュンは乗った。そして、話を勝手に進める。
「勝者は少年に昼食をごちそうする。そしてふたりだけで食べる。敗者はそれを全力で見守る。
妨害やそれに類する行為を行った場合、規定違反として少年にある事ない事吹き込む。
それでいいかな?」
……いいも何も、ユウキ本人の意思が一切関与していないのに勝手に進めていいものなのだろうか。
マコトは、サレンがキレたことで一気に冷静になった。気合で負け……引いた、とも言う。
正直、これ以上はあまり関わり合いを持ちたくない。
第一、これでは単に当人たちが満足するためだけの争いでしかない。
もう少し突っ込んだ考え方をするなら、
(……勝ったからって、あいつに選ばれるわけじゃないだろうに)
喧嘩っ早いマコトが思うことではないが、今ここにいる三……四人はお互いの思惑とユウキへの想……考え方が絡み合った結果、いろいろとヒートアップしているだけだ。だから、発端であるマコトが引けば、このバカバカしい騒ぎはただの笑いの種として終わらせることができる。
そう、言い出しっぺだからこそ、幕引きを行わなければならない。
筋は通す。そういうことだ。負け……引き際が肝心。
無意味なイベント否定のための言葉を紡ごうとした、その時だった。
「そ、その勝負、私も乗った!!」
突然、聞き覚えのある声が投げかけられた。
マコトは否定ではなく、代わりにその名を紡ぐ。
「ユイ!?」
ジュンとサレンの後ろには、膝に手を付き、肩を弾ませているピンク髪の親友、ユイがいた。
すう、と息を吸う音と共に体を起こし、
「騎士クンとの食事の権利は、このわたしが貰い受けるッ!!」
必勝の意思を込めた視線を、黒鉄の全身鎧と金髪のエルフ、そして狐獣人に叩きつける。マコトは蚊帳の外だが気にしない。
「その意気やよし。いいだろう」
不屈の盾は静かに闘志をくゆらせ。
「ユイさん、だったわね。日時は追って知らせるわ」
若き実業家は闘志をみなぎらせ。
「いいえ、サレンはん。【
明後日の朝九時集合、審査員は王子はんとこ、【美食殿】の皆々にお願いしましょ?」
自称やんごとなき姫君は自ら戦う意思を表明するだけでなく、的確にまとめていく。
こうなるともう引っ込みがつかない。
「……わーった。【美食殿】にはあたしから話を通しておく」
不承不承を装うが、マコトはここで【美食殿】へと工作を行うことを思いついたのだ。
マコトが【美食殿】宛に三日はかかるようなクエストを発注すれば、この馬鹿げたイベントそのものを形骸化させられる。そのためには、マコト自身が【美食殿】へと赴く必要がある。
だが、ユイの後ろから、
「いや、それには及ばない」
杜若色の長髪を背に流した魔族のレイ、そして、
「マコトは出場者でしょ? それじゃあええと……リエキキョウヨ、ってやつになっちゃうからねっ」
蜜柑色のボブで肩をくすぐる猫獣人のヒヨリが現れる。
「だから、あたしとレイさんが伝えに行くよっ」
目論見が外れただけでなく、既に
となれば、声を喉奥から絞り出す。
「ああ……頼むよ、ヒヨリ」
こうして。
マコトは自ら死地を選んだ。
【
それとその装置、絶対【
当日まで出場者は立入禁止ということで、朝会場入りしたマコトはその周到さと迅速さに出かかったため息を飲み込んだ。
ここまで来てしまったなら、もうやるしかない。というか【
考え方を変えればいい。要は勝てばいいのだ。そうすれば、ユウキにご飯をごちそうできる。
……いつも通り、とは考えない。その点こそ、マコトがイマイチ乗り気でない理由だ。勝っても負けてもユウキはマコトの両親が経営する居酒屋に来て食事をするのだから、別に今更なんとも思わない。おいしっぽ、左右に大きく振れるな。
再び覚悟を決め、正面を見る。
小綺麗な布が被せられた机の後ろにいるペコリーヌが、にこやかに話を進める。
「さて、今回の食材は」
言いながら、机の上の布に手を伸ばす。どうやらこの布の下に食材があるようだ……というか、
「いや、チャーハンだから。食材って、コメか卵だろ?」
想像できてしまうのだから、その演技がかった進行はやめてほしい。
マコトのツッコミには一切触れず、ペコリーヌは布を丁寧に、しかしオーバーな動作で取り去る。
机の上に並んでいたのは、
「じゃ~ん☆ "プリ米"です♪」
思った通り、ザルに盛られた小粒が形成する山があった。
思わず声が漏れる。
「安直!!」
だが。
「マコトちゃん、今そういうのはいいから」
ユイは平坦な目で。
『獣人死すべし是非はない』
【
「マコトはん、元気がよろしおすなぁ?」
マホは煽るような視線で、それぞれマコトを詰る。
「姫さんまで敵!? いや今全獣人に宣戦布告されたんだけどぉ!?」
「"プリ米"、おいしいよ」
あ、うん……そういうのはいいけど……ありがとうユウキ。好き。
白いクロスが敷かれた机の上には、『審査員』と書かれたパネルが置かれている。
そこに座るのはレイ、ヒヨリ、そしてキャルだ。椅子はまだ二脚の空席があることから、進行役の二人がそこに収まるのだろう。
一番右側の席につくヒヨリが食材について触れる。
「"プリ米"、かぁ。
ふっくらして甘みの強い、おいしいお米だよね。
ん~、ただ、ちょっと粘りが強い品種だから、今回のチャーハン対決には向かない気がするけど……レイさん?」
その左隣、振られたレイはうなずく。
「そうだね。どちらかというとおかずをメインにするお米だから、炒めたり混ぜものをしたりといった加工を必要とするメニューには向かない。
それに、チャーハンは作り手のこだわりが出やすいメニューだ」
「あ、ごはんがパラパラしてなきゃ、とか、具材を楽しむ~、とかってこだわりだねっ」
「ヒヨリのは食べる側の、だね。作り手としては、炊きたてのご飯で作るという人もいれば、一旦冷やしたものを使う、って人もいる。そのこだわりが今回の食材に通用するか、そこも見どころだ。
そのへんをしっかりと押さえて仕上げることが勝利につながるよ」
「なるほどぉ……キャルちゃんはどう?」
一番左端に座るキャルが、少しだけ躊躇しながら発言する。
「おにぎり……あ、ごめん…………少し泣く」
『なんで?』
なんだか触れてはいけないものに触れてしまいあたふたする審査員席とは異なり、調理側のテンションはかなり上がってきていた。
「"プリ米"。
粘りの強い品種で、単体で食べることに適している」
「特に塩っ気の強い食材とは相性がいいわ」
「チャーハンに使える、とは聞きまへんなぁ」
……仲いいだろ、あんたら。
完全に的を得た解説になっている。そんなメジャーな食材なの、"プリ米"って。初めて聞いたよ、居酒屋の娘だけど。
「ルールを説明します。
制限時間以内に、今回の題材であるチャーハンを作ってください。チャーハンの定義は、『卵とお米を炒めたもの』とします。それ以外の具材を入れてもらって構いませんが、卵とお米は必ず使ってください。
調理時間の制限は60分。
事前に冷ご飯は用意していますが、ご飯を炊きたい、という方は仰ってください。炊き上げてからのスタートとします。ただし、どちらを使ったとしても評価への加減要素はありません。あくまでチャーハンとしての評価ですから。
ここにある具材は自由に使っていただいて結構です。各種機材も持ち込み可能です。ただし、使用するコンロの使える口は各自ふたつ、火力はご家庭用であることに注意してくださいね。
品数は問いませんが、人数分、審査員と挑戦者分なので、10人前は必ず作ってください。多い分には構いませんが、少ない場合はその時点で失格となります。
一人前のサイズは各自のテーブルに置いてあるライス型を参照してください」
その場の各々の口から、様々な思惑を含んだ吐息が漏れる。マコトも例外ではなく、重めの息が短く出る。
左手側に置いてある、レモンを半分に切った形をした取っ手付きの入れ物を手に取る。
逆さまにして奥行きを見るが、
(これ、男用の茶碗二個分くらいの大きさないか?)
ライス型を手にしたまま、考える。
(これで10人前は多いな。
チャーハンは火力が勝負。一気にそんな量は作れねぇ。しかもご家庭用コンロだから火力は貧弱)
導出される回答は単純かつ明瞭だ。
(……一人前ずつ作るしかない。時間はかかるが、味もクオリティも安定させられる)
大まかな方針さえ決まれば、調理手順や立ち回りはすぐに組み上げることができる。飲食店で実際に鍋を振るっている強みだろう。
ただ、流石に時間までは読めない。普段使いしている実家のキッチンとは異なる調理台だし、調味料の位置も異なる。火力もきちんと把握できているわけではないため、こればかりは実際に手を動かして確認するしかない。
それと、コンロを二口とも使うことはしない。むしろ効率が落ちることは目に見えている。
単純な話で、マコトは右利きのため、左手で鍋を振るうことに慣れているためだ。慣れない右手で鍋を振るうと、こぼしたりきちんと混ざらなかったりする。
それに、マコトには時間短縮のための秘策がある。その実行にはもう一口を使うので元から考慮の外だった。
(序盤は丁寧かつ慣れることを優先し、後半で速度を追求、だな)
方針も決まり、やっと周囲を見る余裕が生まれた。
生米の乗った机の後ろ、壁際にはそれ以外の食材が並んでいる。右側には肉や魚介が、左側には野菜や果物だ。山盛りとまでは行かないが、それでも全員が同じものを作っても余りそうな量だ。
よくもまぁこれだけを用意した、と感心する。肉はともかく、海に面していないランドソルで魚介を揃えるなど狂気か好事家の所業だ。好事家の方は目の前にいるのであまり深く考えない。どこから金が出ているのだろうか。え、まさか【
目の周りを腫らしているキャルを気遣いつつ、ヒヨリが手元のメモを読み上げる。
「えっと、この対戦は。
『しっぽまでしっかりあんこ、ケチらず大盤振る舞い、でおなじみタマ姉ぇの鯛焼き屋台』。
『ケバブといったらカタギのシノギ、喧嘩屋カヤ』」
……スポンサーが付いていたらしい。酔狂な。まぁ
「【サレンディア救護院】、【
流石にぼやきとなる。
「……てかいいのかよ。ギルド資金を個人的に流用してるんじゃないか?」
「他は知らないけど、うちの分はユイ個人の資産だから」
ああ、そういう……いやだったら前半は個人供出だよね? 表記ゆれは良くないだろ。
ヒヨリがまだ口を動かそうとしていることを知った瞬間、背中に寒気が走る。
嫌な予感がする。
参加者の所属するギルドがスポンサーになっているのに、【
会計を取り仕切っているのはマホなので、マコトへの断りは必要ない。ないのだが、一応は参加者だ。一言くらいあってもいいのではないか、という道義的な部分ではない。
獣人としての直感、というよりは一切マホの表情が変わっていないことに危機を抱いたのだ。
マコトの予感は、
「そして、【動物苑】の提供でお送りします」
考えうる中で最悪に分類される事実を以て的中してしまった。
思わず劇画調になってしまう。
「え、えらいことや……せ、戦争じゃ……じゃなくって!!」
マホに向かって叫ぶ。
「おいー!! なに獣人社会のトップが出張ってきてんだよ!? しかも相手は【プリンセスナイト】だぞ!! 完全に戦争起こす気マンマンじゃねぇか!! おいやべぇって姫さん!!」
だが。
「マコトはん、いつまでも甘っちょろいこと言うてないで、肚ァくくりなはれ」
聞いたことのない言葉だ。これまでのような薄皮で包んだ言い方ではなく、完全に直接的な物言いになっている。
「いいか、うちらは殺すの殺しますのでご飯いただいてるますよ?」
もう何語か分からない。
「いや、姫さんはそんなことないけどな?」
「マコトはん、これはあくまでリクレエーションですえ」
「レクリエーション、な」
「うちが【動物苑】のえらいさんに、レクリエーションで使うお金がちょぉーっと足りんから貸して、ってお願いした結果やの。相手さんの名前は出してまへんえ」
「……本当だろうな?」
つい、と視線が逸らされる。
「……黒い鎧が出はる、くらいしか」
「十分だよ!! ランドソルで黒い鎧ってひとりしかいねぇよ!! そこらのガキだって知ってるよ!!」
マホの決意がどちらを向いているかは知らない。それに、【動物苑】が露骨に絡んでいる理由も分からない。
本当にリクレ……レクリエーションだと思っているのかも知れない。絶対ありえないが。
いずれにせよ、マコトが出てどうこう、という話ではない。
ついでに言うと、ジュン達が一切動じていないこともある。自分の所属ギルドのトップより相手を信頼するのはどうかと思うが今更だ。
ただ、双方とも、たった一人の男にそれだけのメンツをかけた、ということは確かなようだ。
「まぁ……分かったよ」
一旦溜飲を下げることにする。
その、当の男はというと、
「いい子にしていたらリコリス飴貰える?」
……だめだこりゃ。
結局、ご飯を炊くのはサレンとジュンの二人となり、鎧が脱げないジュンの代わりにペコリーヌが米とぎから炊き上げまでのアシスタントを務めた。その間中、ずっとジュンが恐縮していたのはどういうことなのだろうか。
ともあれ。
全ての準備が整い、参加者五人があてがわれたスペースに入る。
そして、ペコリーヌが宣言する。
「
だが。
『……え、なんて?』
全員の声がハモった。
(続く)
第六話・次回予告
(例のBGM)
「マコトはついに、自らの意思で戦いから降りる。
だが、彼女に関係なく進行する最強の刺客が、次から次へとチャーハンを消していくのだった」
「次回、『ペコリーヌは超々々食べたい』」
「もう一度、キミとつながる物語」
「まだまだいけますよぉ♪ サービスサービス♪」
※次回更新は未定です。