偽・さよなら糸色亡月王先生   作:ポロロッカ星人

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かくしごとが映画になるぞー!
絶望先生も3分とはいえ映画になってたけど、今回はちゃんとした尺がもらえる映画!
でも絶望先生四期はないんだよ、藤吉さんの人がお亡くなりになってるから、きっと先生もゴーサイン出さないんだろうね……
私も松来さん大好きだったから解る。あの人じゃないと藤吉さんじゃない。
絶望少女が一人かけたら駄目なんだよ、全員でないと卒業させられない。
そういう意味で続編出ないことに嬉しくもあり、泣きたくもあり。
ふんがー。





新学期が始まって四日。

小森さんを抱いてしまった以外は、癖の強い生徒が多いもののなんとか授業を回せていた。未だに欠席のものもいるが……

■■■と、名前も顔も解らない生徒は未だに正体も解らぬまま。関内太郎、日塔奈美も来ていない。

今日の風浦さんも相変わらず別の人間だと思われる。初日は常月さん、二日目は木津さん、昨日はおそらく藤吉さん。

しかし今日はその誰でもない。明らかに別の女子である。常月さんの欠席は風邪か何かだろう。

やはり✕形の髪留めをして、口調も仕草も風浦さんだが腰回りというか、ほんの少しこう、非常にデリケートな差ではあるが、年頃の少女がダイエットとか言い出すような微妙なふっくら加減。

けして太っているわけではないが、あれは常月さんの腰付きではない。

他に欠席がない以上、もしかしたらあれが本当の風浦さんなのかもしれない。

小森さんに関しては、もう出席扱いで構わないと学校側でも判断された。

空き教室にひきこもってはいるが、勉学に関してはやる気がないわけではないらしく、一人で自習しているようだ。俗にいう保健室登校などと同じで、これならば出席扱いにしてもよいだろう。

 

『糸色先生、糸色先生、至急職員室まで来てください』

 

一限目の授業中、校内放送で呼び出された。

小森さんの件であれば、彼女が首輪をしている時点で教職員にはばれた。

ばれたのだが、お咎めはなく何故か誉められる始末。むしろ「この調子で頼みますよ」と校長に言われるあたり、子供を作る努力義務だの云々よりも、何か別の思惑が感じられた。

納得がいくかは別として、少なくともそれで決着したために今更授業中にその件で呼び出されるとは考えにくい。

 

「何の用でしょう? 先生は職員室にいってきますので、皆さんは自習でお願いします」

 

「はい」「やったー」と生徒が少しざわつく。そのままでも、この旧校舎にはこの学級しかないため迷惑はかけないだろうがそれはそれ。

 

「遊ぶ時間じゃないので、教室からは出ないように」

 

私は教室を出て、隣の新校舎にある職員室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ストーカー?」

 

職員室で待っていたのは、うちの女子生徒である常月まといであった。

なんでも、付き合っていた男性にしつこくつきまとい勝手に合鍵を作ったり、不法侵入、盗聴、盗撮をして、今回ついに警察の御厄介になったようだ。

 

「ひきこもりの次はストーカーですか……」

 

やはり癖のある生徒ばかりが集められているのだろうか。

男性が少ないこの現代では、女性としては競争率も高いだろうし、惚れた相手に対して独占欲なり執着心なりが強く働いても多少は仕方のない面もあるかもしれない。

だがそれで実際の行為に発展するかといわれれば、自制するのが普通ではある。

まぁ、自制できないからこそのストーカーなのかもしれないが。そういった愛の重い女性が一定数いるため、ストーカー規制法も主に女性側に厳しい措置が取られる事が多い。最悪は収監されてしまう。

男性の場合子供を作ってもらわなければならないので、明確に法を犯していない限りは注意程度だ。

しかし、付き合っていた男性がいた割には婚約首輪もしていなければ、結婚しているわけでもないため指輪もつけていない。

 

「私、恋をすると駄目なんです」

 

伏し目がちに、常月さんは語りだした。

誰かを好きになると、その人の事ばかり考えてしまうこと。

今何を考えているのか、見ているのか、誰といるのか、何をしているか気になって仕方がない。

その人の事は何でも知りたいし、いつでも見ていたいし、いつでも声が聞きたくなるし、いつでも匂いを嗅ぎたくなるし、いつでも一緒にいると思えないと不安になる。

だから、恋をすると駄目。

現在の女子高生としては珍しく、男性遍歴のある娘だった。

容姿も整っているため、告白されても男性側も最初は断らなかったのだろう。

しかし毎度付き合う内に度か過ぎたストーカー行為に及んで振られたり、接近禁止命令が出されたりで関係を終えるしかなかったわけだ。

 

「どうしても好きになると駄目なんです。気になって5分ごとに電話したり、電話と同時にFAXしたり」

「ストーカー行為はさすがに相手に迷惑をかけますから、我慢しましょう」

「ストーカー……」

「何でいるんですか?」

 

いつのまにか風浦さんが背後にいた。

 

「教室で自習しているように言ったはずですが」

「面白そうだからついて来ちゃいました」

 

面白半分で場をかき回すのは本当にやめてほしい。

 

「でも先生、まといちゃんはストーカーなんかじゃありませんよ」

「いや、盗聴とかはどう考えてもストーカーでしょう」

 

それで警察の御厄介になっているわけで。

残念だが、自分の生徒をストーカー呼ばわりしたくなくとも現実逃避はできない。

事件一歩手前というか、有罪に腰まで浸かりそうな案件であり、このままでは担任の私の責任も問われてしまう。

 

「違いますよ。まといちゃんのは愛が深いだけです。いわばディープラヴ」

「女子高生にディープラヴを説かれても。深い愛というのはそれなりの人生経験を重ねて、本人に深みが出てこそですよ?」

「いえ、私のは風浦さんのいうとおり愛です! ただのディープラヴなんです!……ああ、タカシが今何をしているか気になる!?」

 

あぁ、また何か感化されてしまっている。

常月さんは立ち上がると、周囲の制止の声も聞かずに飛び出していった。

どうしよう、やはり担任としては追わなければいけないのだろうか。

昨日の今日で、今度こそ警察沙汰になれば逮捕案件間違いなしです。

 

「糸色先生、追ってください!」

「は、はい!」

 

結局、新井先生の言葉に反射で答えてしまった私は、常月さんの跡を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追いかけた先、彼女が誰かと言い争う声が聞こえてきた。

場所は普通のアパートの一室。どうやらここが常月さんの言っていたタカシという男の家だろう。

インターフォンを鳴らせば、半開きの扉から顔を見せたのは妙齢の女性だった。

 

「どちらさん? 今取り込み中だから後にしてほしいんだけど……」

「失礼、うちの生徒がご迷惑をおかけしていませんでしょうか?常月まといの担任です」

 

女性は不審者を見る様子だったが、私が常月さんの担任であると解ると、扉を開けてくれた。

女性の左手薬指には指輪があり、常月さんには無かった。

 

「良かった。あの子しつこいんですよね。連れて帰っていただけます?」

「解りました」

 

お邪魔します、と一言断り中に入る。

リビングと思われる場所から、男女の争う声、というよりも突き放す男とすがる女の構図そのままほ形だ。

 

「いい加減にしろよ。お前とは終わったんだよ!? 何度言ったら解るんだ!」

「そんなことない! だってあんなに愛しあっていたじゃない!」

「重いんだよ! ずっと言ってきただろ!?」

 

私が来たことにも気がつかず、先程から同じ問答を繰り返しているようだ。

 

「愛しあっていた、ですか……常月さん、貴女も本当は気がついているんでしょう?」

「先生……」

 

私に気がついた二人がこちらを見やる。

常月さんは罰の悪そうな様子で顔を伏せ、タカシと呼ばれた男は怪訝な視線をこちらに寄越してきた。

 

「誰だあんた」

「お邪魔しております。そこの常月まといさんの担任です」

 

部屋の主に軽く頭を下げると、私は常月さんの正面に立った。

 

「これ以上ご迷惑をおかけしてはいけません。帰りますよ」

「嫌です……」

 

面を上げ、こちらを睨む常月さんの顔は恋路を邪魔する不届きものへの敵意に満ちていた。

いくらまだ高校生といえど、美人が睨めば迫力もある。しかしそれは見た目だけ。

 

「常月さん、貴女とこちらの彼との関係は終わったんです。だからこそ貴女も過去形で言っていたではないですか……愛しあって『いた』と」

「ち、ちが……」

「自分自身でも答えが出ているのに、それを認めたくないだけなんです」

 

そもそも大人になればこのような過ちを犯さないというわけでもない。

人生は認めたくないことばかり。

誰しもが、主観的に物事を見たときには理不尽に感じる事を経験して、人生を歩んでいくのだ。

 

「私にも認めたくないことなどたくさん覚えがありますよ。むしろ、人生において胸はって認められることのほうが覚えがありません」

「……」

「それに、愛しあっていたとの事ですが、本当ですか?」

「どういう意味です? 私の愛が偽物だと?」

「いいえ、常月さん。貴女は確かに彼を愛していたのかもしれません。ですが、それは一方通行だったのではありませんか?」

 

私は彼女を見る。

形の良い耳には、かつて別の男に合わせてつけていたであろうピアスの穴が開いている。

今でこそピアスをつけていないし、その穴も塞がってきているようだが、それは彼女のこれまでの名残といえる。

私は彼女の首筋を見る。

数日前、風浦可符香として私の前に現れた時に、どうしようもなく惹き付けたあの首だ。そこに絞首の痕はない。男女の関係であっても、誰しもが頻繁にそういった行為をするわけではない。

二日もすれば痕など消えるし、関係が破綻していれば行為に及ばないのは尚更だろう。

だが、それだけだろうか?

常月まといという少女は魅力的な娘である。

そして健康的で女を知っている男が相手である。手を握るだけで照れるような中学生のカップルでもあるまいし、肉体関係もあったに違いない。

それでも、このタカシという男は常月さんの首を絞めた事すらないのではないかと疑問に思った。

いや、疑念ではなく予感というか。

私はトントンと指で首を示す。

 

「首を絞めていただけましたか?」

「それは……」

「別に絞首以外でも構いませんよ。他に類する事は……してないようですね。ただセックスするだけの、肉欲を鎮めるだけの相手だったのでは?」

「ば、馬鹿じゃないのかあんた。首絞めたら死ぬかもしれないんだぞ」

 

タカシが私の言葉に狼狽する。

身体だけが目当てだったかのような言葉に憤ったのもあるだろうが、絞首行為をしていないことを責めていると思われたのだろう。

ふむ、だがこの反応はトラウマ持ちか。

世の中に行為中の絞首が推奨され、義務教育でも教わるが、実際に行い相手を死なせかけたりでトラウマになってしまう男も一定数いたりする。

もしかしたらこのタカシという男もその類いか。

 

「相手になら殺されても構わない。そう思うから女性は愛した男に首を差し出してくれるのです。もし死なせてしまったその時は、男が責任を取ればいい。自害するのです」

 

命をかけた行為だからこそ、感じられる愛がある。

 

「それじゃ心中じゃないか!?」

「そう、相手といざとなったら心中できるかどうか……それこそ愛の深さ、ディープラヴなのです」

「ディープラヴ……」

 

願わくば、私の言葉が少しでも彼女の心に響いていれば良いのだが。

呆けている常月さんに再び向き直る。

 

「あっ……」

 

彼女の顎に触れて顔を上向かせる。

小森さんのいっそ病的なまでの白さとは違い、健康的な10代の少女の肌。滑らかな肌にそって視線を下げると、セーラー服の襟元から鎖骨の窪みが見えた。

あの時、無意識での行動に抵抗せずに、この少女の首を絞めていたのなら。

初恋の少女と重なって見えたあの時に、この手指を柔肌に食い込ませていたのなら。

私は、あの時の赤木杏の瞳にもう一度出会えていたのだろうか?

 

「私で良ければいつでも───」

 

───その後の言葉はあえて口にしなかった。

 

「……かえる」

 

常月さんは小さく一言、そう言って帰っていった。

彼女が帰宅したことでこの場は落ち着いたので、私も長居をする意味はない。

 

「お騒がせしました」

 

玄関を出たところで、タカシさんの奥さんだろう女性に声をかけられた。

 

「あ、あの!」

「はい、なんでしょう」

「お名前をお聞かせ願えますか?」

 

あぁ、常月さんがまた迷惑をかけた時には連絡が必要だからか。

 

「糸色望といいます。また常月さんの件で何かありましたら私宛に学校までお願いします」

「イトシキ先生……」

 

今度こそ、私はその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校に戻った私は、今日の事を報告した。

既に授業は全て終わっており、放課後のため、学校内には部活動に励む生徒以外はいなかった。

新井先生に、常月さんのこの一年の変遷を知る写真を見せられた。先生が把握しているだけで四人と付き合っていたらしい。

一人目が所謂アニメオタクだったが、私よりも年上の中年男。写真の中で彼氏とツーショットで映る常月さんは猫耳宇宙人の格好をしていた。

二人目は女性と付き合っていたらしく、ゴスロリ服を着ている。

三人目はパンクロッカーな女性とで、パンクファッションのドぎづいメイクに。おそらくこの時にピアスの穴を開けたのだろう。

そして四人目が先ほどのタカシという男性。先の三人と比べて普通なため、常月さんも普通な格好になったのか。

ただ、やはり一年で最低四人だと、彼女の恋はどれも長続きしていないのだな。

願わくば、生徒の次の恋こそは成就されることを密かに願っていよう。

 

「せーんせ♡」

 

帰宅するために荷物を取ろうとロッカーを開けると、そこに小森さんが入っていた。

どうやら私が戻ってくるのを待っていたらしく、ここなら必ず戻ってきた私と会えると踏んだのだろう。

 

「お昼休み来なかったから、心配したよ」

「それはすみませんでした。急な用だったもので」

 

昨日、昼食を一緒に食べようと言っていたことを思い出した。

どうやら新井先生がわざわざ説明しにきてくれたようで、怒ってはいなかった。

 

「うぅん。こうして会えたからいいよ」

 

えへへ、とはにかみながら嬉しそうに寄ってくる。

まだ出会って三日目だというのに、随分と甘えてくれる。

まぁ、あれだけの事をしたのだし、最早単なる教師と生徒ではないのだから当然ではあった。

 

「先生、今日はもう帰るの?」

 

待たせてしまっていた手前、このまま挨拶だけで解れるのも忍びない。

 

「そうですね、せっかくですし少し話しましょうか」

「……うん!」

 

適当な空き教室に入り、他愛もない話をした。

30分程で話を終えるつもりが、何故か小森さんに誘われた教室には布団が準備されており、学校を出たのはそれから2時間後の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、朝のHRに常月さんが遅れてやってきた。

 

「おはやうございます」

 

その姿は昨日までのセーラー服ではなく、私と同じく着物に袴、足元はブーツという大正を意識したものだった。

 

「ほほう、艶やかでいいですね。何かお祝いごとでも?」

「えぇ、とってもいいことが」

 

私が尋ねると、彼女はにこりと静かに微笑んだ。

 

「あの、先生……ご自分のピンチ解ってます?」

「何がです?」

 

何やら教室中の生徒が顔を青ざめさせているが、どうしたのだろうか。

この時は、まさか昨日の今日で彼女の想い人が変わるなど思ってもいなかった。

さすがに、ずっと視線を感じて、振り向けば必ず目が合うのですぐに気がついた。

教室を出ても視線は途切れず、私の数メートル後をずっとついてくる。

職員室に行っても、トイレに行っても、昼休みに小森さんと会っていた時も。

小森さんも視線に気がついたのか何かは知らないが、昼間の内から私に首を絞めろとねだってきた。

見られながらの行為に戸惑ったものの、彼女に対して責任があるので、乞われるままに首を絞めた。

放課後、業務を終えて帰宅途中、商店街での買い物中、近所の方と世間話中。

いつも視線を感じ、振り向けば電柱の影などに彼女の姿があった。

家に帰れば電話が鳴り、出てみれば「先生、お慕いしております」と一言だけ。それが数分おきにかかってくる。

電話が止んだと思ったら、先日ロール紙を換えたばかりのFAXが、「好きです」の四文字だけをひたすら繰り返してながし続ける。

30メートルの紙を使い終わって、物理的に止まるまで続いた。

これは、私が昨日した説教のようなもので常月さんが私に惚れたということでいいのだろう。

さすがにここまできて、考えすぎなどと頓珍漢なことは言うまい。

教師と生徒といっても、つい先日に前例を作ったばかりに、その言い訳は使えない。

まぁ、美少女に惚れられるのは男冥利につきるとして、タカシさんに迷惑をかけていないだけマシと割りきろう。

おそらくこれが他の生徒であれば簡単には割りきれないだろう。常月さんにどこか赤木杏の繋りを求めてしまっているというのは、なんとなく理解している。小森さんもそうだ。

彼女達の事情を、自分の都合のいいように解釈しているだけなのだ。

特例とするのに都合の良いと。我ながら屑である。

 

「……先生」

 

辺りの寝静まった頃、風呂を終えて寝間着に着替えた私は布団で寝ていたのだが、小さく聞こえた声と、布団を盛り上げる気配に目を覚ました。

恐る恐る布団を捲ると、闇のなかに光る双眸が。

 

「うひぃ!?……なんだ常月さんでしたか」

 

我ながら、情けない悲鳴をあげてしまった。

その正体は、ストーカー少女である常月まといであった。薄い藍色の寝間着を着て、布団の中で私の胸に抱きついていた。

 

「……どうやって中に入ったんですか?」

 

しっかりと鍵は二重に掛けていたはずだが。

 

「愛の力です」

 

愛があれば何をしても許されるというわけではない。その辺をもう少し理解させなければいけないらしい。

 

「夜分にすみません。どうしても私、我慢ができなくって……」

「いいですよ。いつでも、と言ったのは他でもない私ですし」

 

まぁ、常識的にせめて時間くらいは選んでほしいところだが、そうか、我慢ができなかったかぁ。

謝っているので、彼女自身もさすがにこの時間は非常識なのは理解しているらしい。

 

「それで、こんな夜更けにどうしたんです」

「あの……私にも小森さんのようにしていただけませんか? 解ってはいるんです。先生が他の女といることを咎めることなんてできないし、私はまだ先生のことを好きになったばかり。でも、小森さんのあの苦しそうなのに幸せそうな、先生との二人だけの世界を見せつけられると、私も先生に告白していただいた身ですが、まだキスしてもらったことはおろか、こうして身を重ねることも手を繋ぐこともしたことなかったわけですし……」

 

……あれ、私はこの子に告白したのだろうか?

私で良ければいつでも、とは確かに言った。しかし、それで告白したことになるのか。なるのだろうなぁ。

 

「不安になってしまった、と」

「……はい。先生が言ってくれた言葉は、その場凌ぎの嘘なんじゃないかって。淫らな女と笑っていただいてもかまいません。ですのでどうか私にも愛を教えていただけないでしょうか」

「そこまで卑下しなくとも良いですよ。それより、いいんですね?」

「あっ……はい」

 

彼女からそれを望んでくれるなら是非も無し。

私はそっと、彼女の首に両手を向けた。

 

「あ♡……ぎ、かはっ……♡」

 

ゆっくり、ゆっくりと力を徐々に込めていく。

恋い焦がれていた行為に、恍惚とした表情を浮かべる常月さん。

目尻に涙が浮かぶが、それは苦しさからではなく嬉しさからのもの。

瞳の中には私だけが映り込み、彼女から見た私の瞳にも、今は常月まといという存在しか映っていない。

彼女の両手がそっと伸びて、私の頬を愛おしげになでさする。

 

「い、と……し……き……せ……がはっ!?……はぁ、ごほっ! おぇ!?」

 

目を細め、意識が遠退きそうな予感から手の力を緩めた。

咳き込み、涙を流しながら悶える少女の柔肌は快感でさくら色に染まる。体勢を崩したせいで寝間着が乱れてはだけ、艶かしい生足と、官能的な胸元が露出する。

彼女は下着をつけていなかった。

 

「ぜぇ、ひゅー、ぜぇ……これが、愛」

 

息も絶え絶えでありながら、全身を小刻みに震えさせ、うっとりと蕩けた雌の顔を見せる。

 

「あぁ、愛しております。私の先生、私の愛し君(いとしきみ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、糸色望の家の前の街灯の下に一人の女性がいた。彼女は先日、常月まといの件で顔を会わせたタカシという男性の妻であった。

 

「あぁ、糸色先生……なんて情熱的なの」

 

彼女が隠れている街灯から数メートル。

隣の街灯に隠れるようにして、タカシが妻を見張っていた。

 

「なんだアイツ、俺を放ってあんなモヤシみたいな男に夢中になりやがって……」

 

その更に隣の街灯には、タカシの姉が隠れてタカシを見張っていた。

 

「タカシちゃん、だからそんな尻軽そうな女と結婚なんてやめとけば良かったのに……」

 

その更に隣の街灯には────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の学校にて。

小森さんの時は教室に来なかったために騒ぎにはならなかったが、常月さんは普通に教室に登校してきたために騒然となった。

堂々と私と同じような袴姿で、婚約首輪をし、肌は艶々としており、逆に私は色々と限界まで搾り取られて、自分では気がつかなかったのだが首筋にキスマークまでされていた。

先輩教師の甚六先生に「若いうちから無理しちゃいかんよ」と腰に貼る湿布薬を渡された。

 

 




風浦可符香
cv日塔奈美

本日の欠席生徒
■■■
関内太郎
常月まとい
日塔奈美───以上四名。

生徒紹介
常月まとい───惚れた相手に常につきまといたいストーカー少女。チョロインその2。
愛した相手に合わせてキャラが変わる。愛が重く、いつもそれが原因でふられている。
髪はショートカット。常に絶望先生といるために、途中からは案内役だったり説明役だったりと便利な舞台装置的役割も担う。きっと絶望先生を見ているうちに染まったんだろう。
当初はセーラー服で、あとは基本着物と女袴にブーツといった大正浪漫系に。
中の人は12人の妹の末っ子だったり、魔女見習いだったり、猫耳宇宙人だったりの人。ギャグからシリアス、童女から大人な女性や少年まで演じ分ける技巧派。
ポロロッカ星人の大学時代、この人のとある写真が原因でファンだった先輩が彼女と大喧嘩して別れる事になるほどの魅力的な方。

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