仮面ライダー妖   作:ちくわぶみん

12 / 19
さて、前回までのあらすじ~!

頼人くんたち御景市立要石学園高等部のオカルト研究同好会は、遂に僕たち五行院と出会い、仲間入りを果たす。
待ちに待った新入生だよヤッター!拍手~!

五行院の成り立ちや、妖怪と怪異の違いを説明し、そして加入の意志を示してくれた3人は、これから僕らと一緒に戦っていくよ~!

というわけで、ここからはいよいよ、本格的に彼らの戦いが始まるわけなんだけど……ちょ~っと厄介な事になってるんだよねぇ……。

何が起きてるのかって?
それはこの先を見て確かめてほしい。

それじゃ話は次の日から、はーじまーるよー!




第七夜「御景支部、始動」

五行院の一員になった翌日、僕と春歌、鉄平、そしてコワポンは、3人と1匹で再び五行院御景支部を訪れた。

 

家に戻った後、菅原学長から貰った巾着の中に入っていたガラケー、『五行フォン』にメールが届いていたのだ。

 

何故ガラケーが……と思っていたんだけど、どうやら五行院の人達の業務用連絡手段として採用されているらしい。

スマホとは違う独自の電波を使っているらしく、任務や秘匿したい連絡はこっちで行うよう念を押された。

 

「スマホにモデルチェンジしないのは開発部の強い意向らしいコン」

 

ちなみに、僕の五行フォンはコワポンが持っていたものを受け取った。キャンドライバー共々、交霊紙の持ち主に渡すために持っていたらしい。

 

そんなわけで、春歌と鉄平と合流し、石段を登って鳥居をくぐる。

 

すると、そこには……昨日まで爆心地のように荒れ果てていた社殿はなかった。

社殿も、参道も、社務所も全てが元通りになっている。

 

「「「な、直ってるーーー!?」」」

「ぬりかべチャッカーを複数使えば、どんなにボロボロになった建物でも元通りコン」

 

これが妖怪の力か……。すごい、物理法則の常識なんて遥かに越えてる!!

 

「本当に何でも元通りに直せちゃうの?」

「ぬりかべが直せるのは、建物や石材を使っているものだけコン。中の家具までは効果が及ばないから、大抵は家具デザインの得意な妖怪に直してもらうか、新調しているコン」

「なるほど、何でもアリってわけじゃないんスね」

 

ぬりかべ、だけに壁に関係してるのか。

ひょっとして、鳥山石燕じゃなくて水木大先生が描いた方の姿だったりするんだろうか?

 

家具デザインやってる妖怪ってのは想像つかないな~。ちょっと会ってみたいかも。

 

「……来たか」

 

声の方を振り向くと、晴矢さんが鳥居にもたれて立っていた。

相変わらず不機嫌そうな顔で、少し近寄り難い。

 

「ついてこい。雪村先生が待ってる」

 

それだけ言うとさっさと僕らの前を歩いて行ってしまう。

春歌と鉄平は不安そうに顔を見合わせたけど、「大丈夫だよ」と言って僕は歩き出した。

 

「…………」

 

晴矢さんの後ろ姿を見ながら、コワポンが何か言いたげな顔をしていたけれど、結局何も言わずに僕の肩に飛び乗った。

 

初対面の時からあんな感じだし、僕もあんまり良い印象は抱いてない。

でも、とても真面目な人なんだろうなって事は、戦いぶりや六道先生との会話から感じていた。

 

悪い人じゃないとは思うんだけど……。

 

「な~んかカンジ悪いなぁ……」

「春歌先輩、それ本人には絶対言っちゃダメっスよ?」

「あはは、わかってるって」

 

小声でそんなやりとりをしながら、僕達は晴矢さんの後を追って行った。

 

「おっ、やっと来たわね!」

 

境内に佇んでいたのは、巫女服に身を包み、綺麗な黒髪をポニーテールに結んだ女性だった。

 

「晴矢さん、この人は?」

「実技担当教師の雪村先生だ。座学の六道先生と並ぶ、東京校の顔役教師」

雪村雪華(ゆきむら せつか)よ。気軽に雪村先生、でいいわ。よろしくね、若人諸君♪」

 

明るく笑う彼女の笑顔からは、とても大人びた魅力を感じた。

 

「篝火頼人です。よろしくお願いします」

「犬山春歌です!お世話になりま~す」

「豆田鉄平っス!よろしくっス!」

「妖狐一族のコワポンですコン。よろしくお願いしますコン!」

 

それぞれ挨拶する僕らを見回して、雪村先生はうんうんと頷いた。

 

「いやー、あんのバカ六道にいきなりここへ出向するよう言われた時はムカついたけど、素直そうな子達でよかったわ」

「バカ六道……?」

「……雪村先生と六道先生は同級生で、いわゆる腐れ縁ってやつらしい」

「ああ、それで……」

 

何となく気づいてたけど、六道先生って結構周りを振り回すタイプなんだ……。

 

「あの、それで……どうして僕らはここに呼ばれたんですか?」

「そうね。新入りの歓迎会と、この御景支部の再編成に伴う顔合わせ、それから体制の確認って所ね」

「……再編?」

「どういう事コン?」

「まあ、立ち話もなんだし一旦中に入りましょ」

 

そう言われ、僕達は社務所の方へと通されることになった。

 

社務所の奥へと進むと、そこには大きな和室が広がっていた。

畳が敷かれ、部屋の中央には大きな机が置かれている。そしてその上には、色とりどりの料理やパーティー用のお菓子、飲み物が並んでいた。

 

「……えっと、これは?」

「お菓子がいっぱいあるコン!これ、食べていいコン?」

「さっきも言ったでしょ?新体制への移行と顔合わせを兼ねて、ささやかな宴会を開きたいって」

「雪村先生、その子達が例の新入りですか?」

 

腰まで伸びるストレートな黒髪で黒いセーラー服の少女が、料理を並べる手を止めてこちらを振り向く。

 

「そうよ。この3人が、交霊紙に選ばれた子達。仲良くしてあげてね」

「ふぅン……どうやら3人とも一般人のようだけど、全員妖怪が見えてるみたいだねぇ」

 

もう1つの声が、黒セーラーの子の背後から聞こえ、テーブルのお菓子のひとつに手が伸びる。

が、その手は黒セーラーの子に叩かれ、阻まれた。

 

「つまみ食いしようとしないでください。お行儀が悪いですよ」

「えぇ~、良いじゃないか~1つくらい~」

 

頭頂からアホ毛が生えた、栗毛のショートで白衣を羽織った少女が、黒髪の少女に不服げな態度で訴える。

 

「ダメなものはダメです」

「う~む、相変わらず君は真面目だなぁ」

「貴方が不真面目過ぎるだけでしょう。ほら、早く手を洗って来てください」

「はいはい……」

「まったく……」

 

ため息をつきながら、黒セーラーの子はこちらに向き直る。

 

「失礼しました。宵待黒海(よいまちくろみ)です。そしてこちらは……」

颯音多貴子(はやねたきこ)、研究部の所属だ。よろしく頼むよ」

 

2人とも丁寧に自己紹介してくれた。

 

「妖怪退治の専門組織に、白衣の研究者……?」

 

一見ミスマッチな組み合わせに、春歌が首を傾げる。

 

「六道先生が、妖怪はエネルギー生命体だって言ってたじゃないっスか」

「科学の知見も妖怪を相手する際に必要とされる、ってことですか」

「物分りが良いねぇ。助かるよ」

 

僕の言葉に、颯音さんが微笑んだ。

 

「これで顔合わせは済んだわね」

「えっ?これだけコン?」

 

雪村先生の言葉に、思わず僕達は顔を見合せた。

 

確かにコワポンの言う通り、明らかに人数が少ない。

街一つを守るんだから、もっと多くの人材が集まるものと思っていたんだけど……。

 

すると僕たちの疑問を察したのか、晴矢さんが口を開いた。

 

「この街には、どうも厄介な結界が張られているらしい」

「厄介な……」

「結界コン?」

 

僕たちが首を傾げたその時、五行フォンが着信音と共に震えた。

画面を見ると、六道先生の名前が表示されている。

とりあえず、スピーカーにして机に置いた。

 

『リモートでごめんね~。その辺は僕から説明するよ』

「六道先生、話聞こえてるんですか?」

「はぁ……まーたいつもの覗き見癖ね」

 

あまりにもタイミングが良く、僕らの会話も把握していたような物言いに驚いていると、雪村先生が大きめの溜息を吐いていた。

 

「雪村先生、どういう事ですか?」

「犬山さんは千里眼って知ってる?」

「えーっと確か……透視能力の事でしたっけ?遠くにあるものだけじゃなくて、壁の向こう側とか、人の心まで見えるっていう超能力の……」

 

思い出すように答える春歌に、雪村先生は満足気に頷く。

 

「概ねその通りよ。六道はその千里眼を持ってるの。しかも千里眼を通して視ているものが出してる音も聞く事が出来る。だから、離れてても私達の会話はしっかり盗み聞きしてたってわけ」

「えぇ!?すっごい!リクドー先生そんなに凄い人だったんだ!」

『いや~こうして素直に褒められるとこそばゆいねぇ!雪華も春歌を見習ったら?』

「そういう所も素直なのね……。って調子乗んなバカ六道!!」

 

本物の神通力に目を輝かせる春歌と、額を抑えて溜息を吐く雪村先生。

もしかして、六道先生にプライバシーを侵害された事でもあるんだろうか……。

 

「でも盗み聞きされてるって思うと、ちょっと気持ち悪いっスね……」

『鉄平、聞こえてるからね~?』

「すっ、すみませんっス!!」

「壁に耳あり障子に目あり、とはこの事コンね……」

 

慌てて頭を下げる鉄平を見て、コワポンが冷や汗をかきながら苦笑する。

こりゃ、六道先生には隠し事が出来なさそうだ。

 

『さて、本題に戻ろう』

 

そう言って六道先生は咳払いする。

宵待さんと颯音さんも、こちらに聞き耳を立てている。

 

『どうやら御景市には、市の全域を覆うように結界が張り巡らされているらしい。何のために張られているのかは現在調査中だけど、無闇に破っちゃいけないのは間違いない』

 

確かに。結界って、何かを封印するために、または何かからそこを守るために張られるものだし。目的が不明でも、勝手に破ったらろくなことが無さそうだ。

 

『ただ、その元々あった結界に上塗りするように、別の結界が張られているみたいでね。僕の千里眼ですら遮られてしまっていたんだ。一昨日まではね』

「一昨日、というと……ヤマノケを倒した日ですか?」

『そう。あの日、僕が山中で見つけた石碑に貼られていた御札を剥がした時、上塗りされていた結界が少し弱まったように見えた。今、君達が見えているのも、上塗り……めんどくさいから黒結界って呼ぼう。黒結界が弱まったお陰で、ピントを絞れば見えるようになったからなんだ』

 

黒結界、か。六道先生には、もう一つの結界が黒い色に見えてるのかな?

それにしても、御景市にそんなものが張られていたなんて知らなかった。この街、もしかして何か重要なものが隠されてたりするんだろうか……。

 

『しかも、どうやら術師の侵入を制限する効果があるらしい事も、近隣の支部からの報告で判明した。御景市に入れる術師の数は、今のところ一度に2人まで。出る際には制限がないけど、一度誰かが結界の内側に入ったら、次に他の術師が入れるようになるのは、きっかり24時間後になる』

「面倒ね……どうにかならないの?」

 

本当に面倒な性質だな……。

まるでシミュレーションゲームの出撃制限みたいだ。

 

『幸い、このケチな入場制限も、黒結界が弱まると共に緩くなるらしい……というのが研究部の見解だ』

「それで私と黒海が派遣されたというわけだね。結界を内側から調べられるし、幸いにも私は術師じゃないから黒結界に引っかからない」

『多貴子、黒海、期待してるよ。多貴子の頭脳と、黒海の力を合わせれば、解けない謎は無いんだから』

「ああ、任せたまえ!こんなに楽しそうなフィールドワークは久し振りだ。先生の期待には必ず応えてみせるとも!」

「……多貴子さんの面倒は任せてください。三食しっかり食べさせます」

『よろしく~。ゼリー飲料とサプリだけで三徹してぶっ倒れた時の事、今でも忘れてないからね』

「うっ……さ、流石に同じ失敗は繰り返さないとも!私は天才なのだからねぇ!」

 

どもりながら胸を張る颯音さん。

 

(コワポン、あれ絶対繰り返すやつだよね)

(言うだけ無駄コンね)

 

コワポンと声を潜めて呟いた。

宵待さん、結構苦労しているみたいだ。

 

『というわけで、今後の御景支部の方針は2つ。1つは黒結界の起点の捜索及びこれの解除。多貴子と黒海を中心に、護衛と必要な人員をつけた上で行ってほしい』

「偵察にも人員を割きたいところだねぇ。黒結界の起点を守っている存在がいる可能性もあるだろう?」

『そこは大丈夫。そういうの得意なやつを送っといたから、日が落ちるまでには合流できると思うよ』

「それは頼もしいねぇ。みっちりこき使わせてもらうよ」

 

方針が1つ固まったらしい。

黒結界が弱まれば増援が増える。なら、優先して解除した方がいいだろう。

 

『それともう一つ。一昨日、この街を一望したんだけど、どうも怪異が街中に潜んでるらしい。頼人、春歌、鉄平、心当たりはないかな?』

 

あれ?今気づいたけど六道先生、僕たちの名前呼び捨てになってない?

 

そんな僕の疑問を察したかのように、コワポンが耳打ちしてくる。

 

「六道先生は身内と自分の生徒は呼び捨てで呼ぶ癖があるんだコン。○○くんとか○○ちゃんって呼ぶのは、身内以外コンね」

「なるほど……」

 

正式に五行院の所属になったから、距離感が縮んでるのか。

と、納得したところで鉄平が挙手していた。

 

「そういえば……少し前から御景市の怪奇系サイトに、怪異らしき未確認生物の目撃情報が急増してるっス」

『その話、詳しく頼める?』

「はいっス」

 

そう言って鉄平は、背負っているリュックからタブレットを取り出す。

開かれたのは黒バックにおどろおどろしい文字で表記されたサイト名、いかにもって感じのするサイトだった。

 

投稿一覧をタップすると、最新の目撃談が縦に並んでいる。

日付は最新のもので昨日の夜。しかも1件や2件ではなく、1日辺り10件近くの情報が入っている。

 

「情報、多くない……?」

「そう言われると思って、地域別に目撃情報をまとめてあるっス。今度、印刷して部活に持ってくつもりだったっスから」

「鉄平くん、こういうの得意だよね。怖いの苦手なのに」

「あ、あくまで怖いだけで、調べる事自体は嫌いじゃないっスよ!?」

 

春歌の言葉に慌てて否定する鉄平。

僕は苦笑しつつ、彼のまとめてくれたデータを確認する。

 

目撃情報は、市内の各地区に点々と存在していた。

現れる場所が決まっているものが多いが、移動するものや、一定の条件で姿を現すものも枠外にまとめられていた。

 

「驚いたな。五行院に気づかれず、よくもここまで集まったもんだ……」

『こんなになるまで放置されてたのか、それとも御景支部の壊滅直後から急速に勢力を拡大したのか……。もし後者だとすれば、背後に糸を引いている者がいると考えるべきだね』

「調査部からの報告が終わり次第、優先順位を設定。一体ずつ片付けていくって事でいいんでしょ?」

『さっすが雪華、わかってるぅ~♪』

「はいはい」

 

上機嫌な六道先生に、雪村先生は呆れたような顔で応じる。

しかし、すぐにその声は引き締まった。

 

『さて、要点をまとめよう。黒結界の起点捜索並びに解除、怪異の発見及び撃破、そして壊滅した御景支部の立て直し。当面の指針はこの3つに絞る事とする。また、必要に応じて適切な人員を派遣し、これの対処にあたる。進展は常に報告すること。また、街への術師の出入りは常に把握し、なるべく市内に留めておくこと。以上、何か確認点は?』

 

その場の全員が異議なし、と答える。

 

『よし。それじゃ、僕はこの辺で失礼するよ。歓迎会楽しんでね~』

「ええ、アンタの分までお菓子バリバリ食べてやるわよ」

『程々にね~。あんまり食べ過ぎると太っちゃうよ~?』

「大きなお世話よッ!!このバカサングラス!!若白髪!!」

 

叫びながら、雪村先生は電話を切って僕に投げ渡した。

 

……なんか、いい歳した大人達が大人気ない喧嘩繰り広げている所を見せられちゃったような……。

 

「……まぁいいや。とりあえず、これからよろしく!」

「ああ!こちらこそ、よろしく頼むよ」

「一緒に頑張りましょうね」

「よろしくお願いしま~す!」

「頑張らせていただきますっス!」

「……フン」

 

こうして、後に『御景市オカルト研究部』と呼ばれるようになる五行院新生御景支部は、活動を開始した。

 

『坊主、乾杯の音頭は俺にやらせちゃくれねぇか?』

「断る。オッサン臭くなるだろ」

『んだよツレねぇな~。小狐、俺にやらせてくれよ』

「ダメコン。乾杯の音頭は譲らないコン。みんな~、ジュースは持ったコーン?」

『だあああクソッ!やらせてくれよぉ!』

 

 

その頃、御景市の西端にて。

黒服を着た男女が四十数人ほど、整然と並んでいた。

並んでいる彼らの前方には、リーダーらしき中年の男が点呼を取っている。

 

「やれやれ、特殊任務へのご指名と聞いて来たんだが……まさか情報部を悩ます問題児のお世話係まで押し付けられるとは。とんだ貧乏クジを引いたものだ」

 

列の前方に立っている灰髪ウルフヘアの男が、隣に立つ少女に目をやりながら呟く。

男は他の者達と同じく黒いスーツに身を包んでいるが、ネクタイは締めていない。

代わりに、胸ポケットからは手帳と万年筆が覗いていた。

 

「そんな事言わないでくださいよ~。エリート術師の出雲正親(いずも まさちか)さんとご一緒出来て、私、今すっごく嬉しいんですから!」

 

一方、少女の方はカメラマンベスト風にアレンジされたレディース用の学ランに黒ズボン、首からは古い一眼レフカメラを提げた、まるでカメラマンのような出で立ちだ。

黒髪をポニーテールにまとめ、赤縁の丸メガネをかけた顔には、愉快適悦とした笑みが浮かんでいる。

 

「こらこら、ご一緒じゃないだろう。君は調査部の車に勝手に紛れ込んで来た密航者なんだぞ。大阪支部の問題児、緋山美南(ひやま みなみ)くん」

「問題児じゃありません。五行院の情報屋です!」

「それは君が自称しているだけで、実際はただの記者かぶれなオタクちゃんだろう」

「うぐっ……痛い所を」

 

大袈裟に左胸を抑える美南に、正親はやれやれと肩を竦めた。

 

「報告を聞いた六道先生からの許可がなかったら、大阪支部へ送り返されていた事を忘れるんじゃないぞ」

「だって、突如として壊滅した支部に人員を集めているのに、派遣される人数に対して明らかに術師の数が少ないじゃないですか!これは絶対何かある、気になっちゃったからには取材するっきゃない!そうでしょう?」

 

胸の前で拳をグッと握り、早口で言い切った美南に対して、正親はふむ、と顎に手を当てた。

 

「なるほどなるほど、確かに一理ある。俺も君と同じ立場なら、まず間違いなく同行しようとするだろう。小説のネタの臭いがプンプンするからね」

「でしょでしょー?人気小説家のマッチさんなら分かってくれると思ってたんですよ~」

「しかし、君と違って班長に許可は求める。勝手に着いてくなんて、よくないよくない」

「むぅ……大人のド正論が痛いです」

「マッチ、緋山、私語は厳禁だぞ」

「「はい!すみません!」」

 

二人は慌てて前を向き、声を揃えた。

班長は咳払いすると、情報部の職員達を見回し、点呼を終える。

 

「今回の任務はこれまでにないものだ。敵は未知数、新種か突然変異か、組織立って行動しているのかさえ不明であり、既存の常識も通用しない謎の存在だ。それでも我々が組織の目として、耳として、少しでも多くの情報を持ち帰る事で、対応への道筋が必ず拓かれる。そのための一歩だ!気合いを入れろ!」

『了解!!』

 

班長の呼び掛けに職員達は声を揃えて応じる。

無論、正親と美南もだ。

 

「特にマッチ、お前と相棒は特に情報収集向きだ。だからこそあまり無茶はしないよう、肝に銘じろ」

「善処はします」

「善処ではない、遵守しろ。命令だ」

「……了解しました」

 

班長の厳しい視線に、正親は素直に応じざるを得ない事を確信し、両手を挙げた。

 

「それと緋山、お前には仮面ライダーとして、非戦闘員を護衛する任務を与える」

「え……!?」

「調査部の仕事は遊びじゃないんだ。軽い気持ちでこの場に立っているなら、今すぐ帰ってもらうぞ」

「わ、分かりました……ちぇー……」

「舌打ちするな、聞こえてるぞ」

「すすすすみませんッ!!」

 

慌てて頭を下げる美南。

その耳に、呆れ気味な女の声が響いた。

 

『やれやれやな……だ~から言うたんや。追い返されるか、別の仕事押し付けられるでって』

「はぁ……リンは黙ってて」

『はいはい、ほなお口チャックしとくわ』

 

リン、と呼ばれたハスキーな関西弁で喋る相棒は、彼女の隣に浮きながら肩を竦めた。

 

『えんらえんら!マッチ、お前今回はかなり苦労させられそうだな』

「言うなよ相棒……。まあ、これも新作のネタになると考えるか」

 

一方、正親も耳元でケラケラと笑う相棒の言葉に、再び深く息を吐くのだった。

 




あとがき

今回登場の応募キャラは、

出雲 正親/仮面ライダー狼煙(黒崎光太郎さん 作)
緋山 美南/仮面ライダー炎輪(鎧大河さん 作)

でした。
ご応募いただき誠にありがとうございます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。