仮面ライダー妖   作:ちくわぶみん

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仮面ライダー妖狐。妖狐一族の仮面ライダーが、遂に目覚めたようだ。
しかも変身者は……うん、これもまた教え甲斐のありそうな子だ!

ん?ああ、君も居たんだったね。ごめんね、面白い事になってたもんでつい、はしゃいじゃったよ。

さて、それじゃあ続きと行こうか。

御景市立要石学園の高校生、篝火頼人は、ある日オカルト研究同好会の活動で、部員の春歌、鉄平と3人でコックリさんを行った。

現れた狐の妖怪コワポンに導かれ、学園を襲う怪異『ヤマノケ』と対峙した3人。
頼人くんは仮面ライダー妖狐へと変身、見事ヤマノケを撃破するのであった。

と、ここまでは聞いたよね。

実はこの後、更なる出会いが待ち受けているんだけど……気になるよね?気になるでしょ?

うんうん、それじゃあ引き続きこの僕が、君を闇の住人達が蠢く不思議な世界へ誘ってあげよう!

それじゃあ、そこに座って~。

これはヤマノケを倒した後、部室に戻って行った三人の話──


第二夜「夜叉、来たる」(1/3)

『汝、契約を結べ……』

 

目の前に現れたのは、身体を炎に包まれた狐の妖怪だった。

 

僕は確か、ヤマノケに襲われて……。

 

そうだ。コワポンに渡されたチャッカーを点火したんだっけ?

 

『汝、契約を結べ……』

「契約……?」

 

目の前に現れた狐の妖怪……おそらく狐火であろうそれは、さっきから同じ言葉を繰り返している。

 

コワポンから詳しい説明聞けなかったからなぁ……。一体何なんだろう?

 

狐……そういえば、あの夢に出てきたのも狐だった。

やっぱり、何か関係があるんだと思う。

 

でも、今は皆を守らなくちゃ!

質問するのは後からだ!

 

『汝の望みを言え。相応しき者ならば、我が力を貸し与えん……』

「僕の……望み?」

『さあ、望みを言え……』

 

僕の望み……。つまり、仮面ライダーの力をどう使うか、僕を試しているのか?

 

そんなの……決まっているじゃないか!!

 

「春歌を、鉄平を、皆を守りたい!!あの怪異達から、皆を守る力が欲しい!!」

『守りたい、か……。よかろう。その瞳に嘘はない……我が力、汝に貸し与えん。守る為の戦いである限り、我は汝の鎧となろう』

 

そう言って狐火は炎の鎧となって、僕の身体を包み込んだ。

 

そして目を開くと僕は、夢で見たヒーローとそっくりな姿に……仮面ライダーになっていた。

 

 

『着火!ヌリカベ!』

 

コワポンに言われた通り、腰のホルダーに挿さっていた『ぬりかべ』のチャッカーを着火し、壊れた壁へと妖火を吹く。

 

するとさっきの戦いで凹んでいた壁は、一瞬で凹みが塞がり、廊下は何事も無かったかのように元通りになった。

 

「凄い!!」

「塗り壁のチャッカーは、全ライダーに標準装備されてるコン。戦いで壊れた壁や道路は、これで全部直してるコン」

「つまり隠蔽用ってこと?」

「その通りコン。仮面ライダーの事は、誰にも喋っちゃダメコンよ?」

 

コワポンにそう言われ、春歌ちゃんと鉄平は揃って頷く。

 

「私達だけの秘密ってことだね!」

「人知れず人々を守るヒーローっスか……いいっスね!かっこいいっス!」

「そうと決まれば、取り敢えず部室に戻らない?多分、人来るだろうし……」

「あ、じゃあ私、あの子保健室に運んでから行くよ」

 

春歌が視線を向けた先には、先程ヤマノケに襲われていた女子生徒が気絶していた。

 

「わかった。じゃあ、よろしくね」

「アイアイサー!」

 

女子生徒を春歌ちゃんに任せ、僕らは先に部室へと戻った。

 

 

ガタンゴトン、ガタンゴトン、と一定のリズムで揺れる細長い通路。

 

どこまでも続く先の見えない暗闇の中を、不気味なオーラを放つ電車が走っていく。

 

古めかしく、時代遅れなデザイン。生温かい空気とがらんとした客席。

一定間隔で配置された電球の中で、青い火が揺れる。

 

そして、誰も乗っていない運転席。俗に言う幽霊列車である。

 

その幽霊列車を、一人の男が歩いていく。

 

上から下まで真っ黒なスーツ。のっぺりとした白い顔に、ありえないほど細長い手足。

 

オカ研の三人に、ヤマノケを差し向けた男である。

 

「あらスレンダーマン。随分と遅かったじゃないの」

 

男を呼び止める、艶のある女の声。

 

声のした方に顔を向けると、座席にもたれて脚を組む女が彼を見つめていた。

 

血のように真っ赤なトレンチコートに、腰まで伸ばした黒い髪。そして、顔の半分が隠れるほど大きなマスク。

 

その姿は、かつて日本の小学生達を恐怖のドン底に叩き落とした伝説の都市伝説──口裂け女。

 

「これはこれは、口裂け女さん。今夜もご機嫌麗しゅう」

「失敗した割には、随分と澄ました様子じゃない?」

 

今度は頭上から少女の声。

 

列車の天井から降りてきたのは、腰から下がない女子高生。

両腕を使って器用に歩き、その度にテケテケと音が鳴る。

 

彼女もまた、かつて子供達に恐れられた最恐の都市伝説の一体──テケテケ。

 

「テケちゃん、どうせこの人の事だから、何か企んでるに決まっているわ」

「おや、バレましたか」

「さっすがお姉様!何でもお見通しね!」

 

口裂け女に撫でられ、嬉しげに笑いながら彼女を讃えるテケテケ。

 

自分には懐かないのにこれか、とでも言うように、スレンダーマンは肩を竦めた。

 

「で、今度は何企んでるわけ?」

「それをこれから説明する所ですよ。リョウメンスクナ、あなたもそこに居ますね?」

「ウゥ………………」

 

スレンダーマンに呼ばれ、列車の奥に広がる暗闇から、赤く光る四つの目が現れる。

 

薄明かりに照らされたその姿は、顔が両側に二つ、腕が左右2本ずつあり、干からびたミイラのような奇形の怪異……。

 

名をリョウメンスクナ。口裂け女やテケテケと同様、日本全国にその名を轟かせる大怪異だ。

 

リョウメンスクナも居るのを確認し、スレンダーマンは語り始める。

 

「つい先程、我らが主の住まう御景市に、仮面ライダーが現れました」

「「ッ!?」」

 

口裂け女とテケテケが目の色を変える。

 

「へぇ……今度の失敗はそういうわけね」

「どうすんのよ。潰す?探してさっさと始末しちゃっていい?」

「いえ、暫く泳がせるつもりです」

「はぁ!?」

 

スレンダーマンの意外な答えに、テケテケは取り出した大鎌を取り落とす。

 

「これまではただ狩るのみでしたが、あの街となれば話は別です。彼らには私達が生み出す“怪異”達と、存分に戦ってもらいましょう」

「ふぅん……。目的は戦わせる事そのものってわけね?」

「察しが良くて助かります。しかし、これまで通り、人間達の恐怖を集めるという点は変わりません。我らが主はそれを何より望まれている……」

「よく分かんないけど、ライダーには手を出さずに、今まで通りやれってことでいいの?」

「お願いします」

 

口裂け女とテケテケ、両者にそう伝えると、スレンダーマンはリョウメンスクナの方を向く。

 

「スクナ。あなたの出番はもう少し後になりますが……」

「ウゥ……アァ……」

「ええ、その時は頼みますよ」

 

闇よりも昏い場所。沼の底のような悪の根城で今、闇の住人達による悍ましい思惑が渦巻き始めていた。

 

 

「それで、頼人はどこから『交霊紙の原典』を持ってきたコン?」

「交霊紙の原典?……って、コワポンが出てきたあの交霊紙?」

 

コワポンからの質問に、頼人は部室のテーブルの上に拡げられた古い紙を指さす。

 

「あれは日本全国に伝わるコックリさんの原典になった交霊紙だコン。見様見真似で作られたものと違って、ボクら『狐狗狸同盟』への直通電話みたいなものコン」

「これ、そんなに凄いものだったの?」

「そうだコン!この国にたった一枚だけの貴重品だコン!」

「つまり、レア度で言うとURくらい?」

「春歌先輩、ソシャゲで喩えないでくださいっス……」

 

予想以上の希少価値に驚く三人。

 

鉄平が春歌にツッコミを入れた所で、頼人は古紙の入手経緯を説明し始める。

 

「この前、葬式が終わった爺ちゃんの遺品を整理してたらさ、爺ちゃんの蔵で見つけたんだ」

「ココン?どうして頼人のお爺さんがこれを?」

「爺ちゃん、民俗学者でさ。妖怪とか幽霊の事、よく調べてたんだ。蔵の中も、古い文献とか、曰く付きの刀だとか、その手の物品が収められてたんだ」

「え……それ、怖くない?」

「いや全然。僕も爺ちゃんから妖怪の話聞くの、好きだったし」

「頼人先輩、昔っからこんな感じだったんスね……」

「なるほど……。持ち主を流れて、お爺さんの元に辿り着いていたものを、頼人が見つけたわけコンね」

 

と、ここで頼人が首を傾げる。

 

「そういやコワポン、さっき『狐狗狸同盟』って言ってたけど、何の事?」

「あ、説明してなかったコンね。コックリさんは妖狐族、化け狗族、怪狸族の三部族が大昔に結んだ同盟、狐狗狸同盟から来た名前コン。三家で助け合って仮面ライダーを支えるよう、誓い合ったんだコン」

「へぇ、コックリさんにそんな由来があったんだ」

「妖怪達の歴史……なんだか面白そうっスね~。気になっちゃうっス」

「春歌と鉄平に渡したチャッカーには、それぞれボクの仲間達が入ってるコン。大事にして欲しいコン」

「「そうなの!?」」

 

春歌と鉄平は、先程渡されたチャッカーを取り出して眺める。

 

青い狼の顔が刻まれた”送り狼“のチャッカーと、栗色の狸の顔が彫り込まれた”豆狸“のチャッカー。

 

2人はそれぞれ、チャッカーに彫り込まれたレリーフを指で撫でながら呟いた。

 

「よろしくね、狼ちゃん」

「豆狸、これからよろしく」

 

その時、部室の外から廊下を走る足音が聞こえてきた。

 

「ッ!?誰か来る!」

「コワポン、隠れて!」

「わ、わかったコン!」

 

咄嗟にコワポンは、部室のカーテンの裏へと滑り込んだ。

 

その直後、部室の引き戸がガラッと開けられる。

 

そして、茶髪ショートで気性の荒そうな女子生徒と、赤毛のツーブロックでブレザーの上からパーカーを羽織った男子生徒が顔を覗かせた。

 

「後輩ども、居るわね!?」

「お前ら大丈夫か!?」

「小百合先輩、優一先輩!?」

 

同好会の先輩2人は、血相を変えて頼人達の顔を見回す。

特に小百合と呼ばれた女子生徒は、片手に金属バットを握っており、頼人達も若干身構えていた。

 

「は~……どうやら無事だったみたいね」

「どうしたんですか、そんなに慌てて?」

 

安堵の表情を浮かべる先輩達に、頼人はキョトンとした顔で尋ねる。

 

「校内に牛のマスク被った奴らが来ただろ!?」

「アンタ達も襲われたんじゃないかって、心配して助けに来たのに……何呑気にお茶飲んでるわけ?」

 

小百合の視線の先には、コワポンが飲みかけていた湯呑みが置かれていた。

 

「いや、これは、その~……」

「わっ、私たちもあいつらから逃げて、部室に閉じこもってたんです!」

「そ、そうです!気が付いたらいつの間にか消えてたんで、お茶でも飲んで落ち着こうかと!」

「そ、そそそうっス!もうめっちゃ怖かったんスから~……」

 

まさか、自分達がやっつけた……と言うわけにはいかない。

慌てて誤魔化した3人だが、先輩達は気が動転していると捉えたらしい。

 

「そっか~……。あいつら、見るからにヤバかったもんな」

「ドッキリ番組にしては派手過ぎよね。テロリストか何かかしら?」

「中学生の妄想かよ……って、否定出来ない状況なんだよな……。何にせよ、もうすぐ警察来るだろうし、すぐに分かるさ」

 

よもや、あれが本物の魑魅魍魎だとは、オカ研の元部長・副部長コンビと言えど気づいてはいないようだ。

仮面ライダーに変身した頼人の姿も、春歌と鉄平を除けば誰も見ていないらしい。

 

「取り敢えず、今日はさっさと帰った方がいいぜ。警察も、生徒への聞き込みは明日にするだろうしさ」

「帰り道が怖いってんなら、あたしがボディーガードしてやるわよ?」

「い、いえ、お構いなく……」

「小百合先輩はそのバット、早く野球部に返して来た方がいいと思います……」

「それは俺も思ってた。鬼山に怒られるぞ」

「ちぇー。あいつらまだ残ってたら、小百合様のスーパー千本ノックを御見舞してやったのにな~」

「普通に過剰防衛だぞ、それ」

 

春歌と優一に言われて、小百合は肩に担いだ金属バットをそっと下ろした。

 

(この人、なんでオカ研の副部長やってるポン?)

 

あまりにも血の気の多い先輩の姿に、思わず心の中でそう呟くコワポンだった。

 

 

部室を後にしたオカ研の3人は、帰路に着いていた。

振り返ると学校の入り口には、警察が危険色のテープを張ろうとしている所だった。

 

明日には入れるようになっているだろうが、警察はどこまで手がかりを掴めるのだろうか?

 

そんな事を考えながらも、3人は家への道を歩いて行く。

 

「あ、コワポンどうする?」

「うーん……取り敢えず、頼人の家にお邪魔させてもらうコン」

「えー!コワポン、私の家じゃダメ?」

 

頼人の肩に乗るコワポンに、春歌は一気に不満な表情を見せる。

 

「交霊紙は頼人の持ち物コン。夜には一度、報告に戻らなくちゃいけないし、頼人の家の方が都合がいいコン」

「そんな~」

「春歌ちゃん、それはまた今度でいいかな?」

「仕方ないな~……コワポン、今度は家に来てくれる?」

「ん~……考えておくコン」

「やったぁ!」

「じゃあ、話の続きはまた明日っスね」

「うん、また明日ね」

 

そう言って三人は、それぞれ自分の家への道を進んで行くのだった。

 

途中で鉄平と別れ、暫く歩くと春歌とも別れる。

そこから更に少し歩くと、頼人の家はすぐそこだ。

 

大きな蔵付きの、少し広めな和風邸宅。

それが篝火家だ。

 

「ただいま~」

「おかえり、頼人ちゃん」

「婆ちゃんただいま」

 

茶の間でテレビを見ていた祖母が、温かく出迎える。

家族が学校や会社に出ている間に、掃除や洗濯を難無くこなす元気な祖母だ。

 

「学校、大丈夫だった?ニュースになっていたけど……」

「へ?あ~……うん、大丈夫。僕も、部活の皆も、怪我はしてないよ」

 

もうニュースになっているのか、と驚きながらも、心配をかけないように快く応える。

 

「そうかい?ならいいんだけどねぇ……」

「それより、今日の夕飯なに?」

「今日はねぇ、シイタケが安かったから炊き込みご飯にしておいたよ」

「ありがとう。じゃあ、味噌汁と……シャケの切り身が残ってたし、ホイル焼きにしようかな」

「すっかり秋だねぇ。楽しみにしてるよ」

 

そう言って祖母は、またテレビに目を戻した。

 

「ご飯、頼人が作ってるコン?」

「婆ちゃんと一緒にね。母さんは仕事で忙しいから」

「お父さんはどうしてるコン?」

 

コワポンの質問に、頼人の表情が少しだけ暗くなる。

その瞬間、コワポンは答えを察した。

 

「父さんは……僕が小さい頃に、ね……」

「……ごめんコン」

「ううん、コワポンは悪くないよ」

 

そう言って頼人は、コワポンの頭を指で撫でた。

 

柔らかな毛の感触が、指を包み込む。

それは、目の前にいる不可思議な存在が、確かにそこに居る事を証明していた。

 

「……それより、色々聞かせてくれる?」

 

頼人は自分の部屋に入ると、リュックを降ろす。

そして、机の上に降霊紙とアヤカシチャッカー、そしてキャンドライバーを並べた。

 

「何を聞きたいコン?」

「う~ん……取り敢えず、色々とね。でも、まずは……」

 

頼人の腹の虫が、ぐぅ……と空腹を訴える。

同時に、コワポンの腹の虫も愛らしくいなないた。

 

「夕飯、食べてからにしようか」

「腹が減ってはなんとやら、コン!」

 

お互い、空腹を訴える腹を抱えて微笑み合う、1人と1匹。

 

それから夕食の後、頼人は夜が耽けるまでコワポンに質問するのだった。

 


 

「さて、もう少し働いてもらいますよ」

 

スレンダーマンは、先程回収した黒いアヤカシチャッカーを点火し、点った妖火に息を吹きかける。

 

すると、紫色の妖火は吐息に乗り、やがて首のない人型のシルエットを形作る。

 

やがてシルエットは実態を持ち、白い肉体が地に足をつける。

それは先程、仮面ライダー妖狐に倒されたヤマノケの姿であった。

 

「新たな力を与えます。もう一度暴れて来てください」

 

そう言ってスレンダーマンは、懐からもう一つのチャッカーを取り出すと、それをヤマノケへと手渡す。

 

「ヘッ……待っていろよ、仮面ライダー。借りは返させてもらうぜぇ」

 

下劣な笑みを浮かべるヤマノケを、スレンダーマンは表情のない顔で静かに見つめていた。

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