落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 作:柳之助@バケつ1~4巻発売中
街の風景が流れていく。
「ぐ、あ、あ……」
痛みに顔しかめるバスの上でへたりこんだ。跳ね上がったバスの屋根前の部分に背を預ける。
「蒼一!無事か!?」
バスからキンジが出て、よじ登ってくる。そんなに慌てんなよ。
「よう、なんとかなったぜ? とりあえず」
「まだ終わってないし、どこか怪我は──!」
いやいや。無いわけないだろ。
「お前、腕が!」
そう。
今、現在俺の右腕はボロボロ立った。流れる血が雨に混じってバスから飛び散っていく。指は五本とも変な方向に向き、腕は裂傷でズタズタだ。拳士が手を潰すなんて、文字通り両腕をもがれたのに等しい。気を使っても完治に二週間はかかるだろう。それでも。コレですんだくらいでましかもしれない。
なにせ──
「──こんな場所でアンチマテリアルライフルの弾丸を叩き落とすのは無茶だったか」
「当たり前だろ!」
飛来した弾丸を平手で叩き落としたのだが。バスの上という場所が問題だった。単純な踏み込みの動作が出来ないからだ。もし本気で俺がバスの上で踏み込んだら、それだけでバスが壊れる。それゆえに足場の悪い時用の奥義『
「くそ、地面の上ならこんな怪我はしないんだけどなぁ!」
「負け惜しみかよ!」
負けてねぇよ。ていうか、こんなこと考えてる場合じゃあない。
「おい、ルノーは?」
ルノーは未だバスの後ろには張り付いたままだ。二発目が来ないとも限らないのだ。もう一回やれと言われればできないこともないが、できても一回だ。
「くそ、どうすれば──!」
キンジが顔を歪める。神崎も俺も負傷。おまけに
忘れてないか?
「おいおい、キンジ。人の嫁忘れんなよ」
橋にバスが入り。瞬間。
『ーー私は一発の銃弾』
突如、二発の弾丸がルノーの前輪タイヤを撃ち抜いた。
●
「ーー私は一発の銃弾」
ヘリの中でレキは言葉を紡いでいた。ドアは開かれ、立ち膝の姿勢でドラグノフを構えている。
「全てを撃ち抜く一発の魔弾」
スコープの中には負傷した那須蒼一が見えた。腕を負傷しているようだ。拳士の彼にとっては精神的にもダメージが大きいだろう。後でちゃんと看病しようと決めながらも更に言葉を紡ぐ。
「瞳は照準、指は引き金、意志を撃鉄に」
愛銃を構える。
ドラグノフ狙撃銃。射程距離は600メートルほどだがレキには関係ない。何故ならレキの
射程距離600メートルに
矛盾しているが----していない。
実際にレキがドラグノフ狙撃銃で限界距離の標的を撃ち抜くのを那須蒼一を初めとした何人もが見ている。それも針穴を通すような正確さ、でだ。
現時的にはありえない。先に言っておけばレキは超偵、いわゆるステルス持ちではない。特別な能力も無く、しかしそれらを実現させる。
それはもはや異常だ。
それが彼女の持つ
それが彼女の持つ
武器が何であろうと、自らの
その名も。
「心を弾丸に----『
引き金を引いた。 高らかに銃声が轟く。狙いはバスの下部に張り付いた爆弾。それを撃つ。
爆発せぬように、接着部分のみを撃ち抜いて!
バスから外れ、道路を滑った所でもう一発。橋から落とし、川の中へ落とした。着水、爆発。水飛沫が上がり虹がかかる。それを確認し、両足で立つ。
インカムに手を当て、
「何か言うことはありますか?」
『ありすぎて困るけどまず一つだ』
「なら、私も一言」
愛してるぜ、ハニー。
愛してます、ダーリン。