落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 作:柳之助@バケつ1~4巻発売中
機内を駆け抜ける。向かう先は峰だ。 その顔には勝ち誇るような笑みを浮かべていた。いや、実際に勝利を確信しているのだろう。 なにせ、この狭い機内では俺は本気を出せない。自身が編み出した奥義『蒼の一撃シリーズ』はこんな場所では使えない。発動の際にどれも強烈な震脚を必要とするからだ。さらに足場を必要としない『天蒼行空』もだめだ。あれは振りかぶった平手で、掴んだ風を対象にぶちまける奥義である。こんな密閉空間でつかったらどうなるかなんて考えたくもない。第一右手が使えない以上半分が使えないのだ。たがらそれ以外に頼らざるをえない。だから、峰も笑っている。『蒼の一撃』以外は決め手に欠けると認識しているのだろう。
だから俺も笑った。峰の懐に飛び込んでいく。右の脇を通り抜けるように。そして、一回転。回りながら、体を傾ける。右足を振り上げ、軸足の左は床を蹴る。そして、その体勢でぶち込むのは右足だ。
宙に浮きながら、右足を大太刀に見立てた飛び込み回転袈裟蹴り──!
「『快刀乱花』!」
オリジナル必殺技、『快刀乱花』!
それに峰は何の反応も出来ずに左肩から右の脇腹へと直撃する!
「が、あああああああ!?」
峰の身体がぶっ飛ぶ。
だか、
「……髪でガードされたか。直撃のはずだったんだけどなぁ」
神崎を戦闘不能にした自律する髪。技名とかあるのだろうか。……無かったら付けてみたいなぁ。
「どういう、ことだ!」
機内を転がっていった峰が起き上がり叫ぶ。信じられないものを見たように。
「そんな、そんな技は、『蒼の一撃』には無いはずだ!」
「ああ、無いよ。だってこれは『蒼の一撃』のなり損ないだからな」
「!」
おいおい、驚きすぎだろ。
「色々考えたんだから、ボツ案あるに決まってるだろ? 失敗作必殺技、全4種。まぁ、あと3つは手技だから見せれないけどな」
「っ!」
峰は顔を歪める。それでも、彼女の足は震えてるのだか。
「さて、キンジたちを待つまでもないな。理子・峰・リュパン・4世、殺人未遂やらその他諸々で逮捕させてもらうぜ」
そう言って、一歩踏み出した瞬間だった。峰が、僅かに笑った。
そして、
「なぁ----!?」
床が大きく傾いた。突然のことにより、姿勢が崩れる。それでも、すぐに体勢を立て直す。たが、遅かった。
「くふっ」
僅かな隙に峰は銃を構え、発砲していた。狙いは正確に俺の顔。
当たれば死ぬ。だから、反射的に
「あいたーーーー!」
思いっきり叫んだ。というか叫ばずにはいられない。めちゃくちゃ痛ぇ……。
「くふっ、形成逆転ってヤツだな。どうする?」
ぴーんち。峰はかなりいい笑顔で、銃とナイフをちらつかせる。輝いてるなぁ。どSだ。
「……どうするか、か」
脂汗が噴き出るのが分かる。こんな状況でなかったら痛みに悶絶しているだろう。
……しかたねぇ。
「俺も逃げるわ」
「くふっ?」
じゃ、と手を上げて。後ろへと走りだした。峰を置き去りにして。有り体に言えば逃走だった。だって、ものすごく痛いからな?
・・・・・・・・・・・・・・・
「あー、くそ。傷口が開いてんなコレ」
ひとまず峰が追ってこないことを確認して、廊下に座り込む。 脂汗は未だに止まらない。くそう。
「これじゃあ、帰ってレキのご褒美が無しに……!」
「やれやれ、相変わらずだな。蒼一」
「!?」
振り返ったそこにはキンジと神崎がいた。
だが、
「オイコラ、お前ら人が頑張ってる時になにしてたんだよ」
様子が明らかにおかしかった。神崎は顔が真っ赤。ブツブツとなにかを言っている。そしてキンジはすでに『
「ふ、悪いがそれは俺とアリアだけの秘密だ。な、アリア?」
「ふ、ふぁい!?」
……もうキャラ崩壊してるぜ。
「さて、蒼一が頑張ってくれたんだ。俺たちも頑張らないとな。なに、大丈夫だよアリア、俺と君なら、ね」
キンジよ、今のお前はウインク禁止だ。神崎が照れて使い物にならなくなるだろうが。