落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 作:柳之助@バケつ1~4巻発売中
まぁかけたので更新です。
「いいか! 今回に関しては! 本当に! 一切の! 一から十まで! 私に過失はなかった!」
「お、おう」
強く言い放つジャンヌに若干気圧されながらも頷く。真っ白な肌を感情で赤く染めている姿は、彼女からすれば珍しいがしかしこの場合は仕方ないのだろう。
一週間ほど前にも香港へ向かう為に訪れた成田空港。
その国際線ターミナル。
フランスでの補修修学旅行を告げられた二日後だ。通達からたった二日しか経っていないが、それでも武偵ならばこのくらい普通の間隔だ。その日のうちに日本を出ろなんて言われなかっただけ有り難いものだ。ちょっと前に香港に出ていたこともあって荷物の準備に手間取らなかったし。フランスの滞在期間は二泊三日ということになってるが、延長する可能性が高いだろうから普段着を三着、勿論『桜傾奇』や武器も込み。我が愛機『緋影』もまた飛行機に積まれていることだろう。
飛行機の搭乗時間まで大体一時間くらいはあるのだが、
「集合時間はもう三十分過ぎてるんだよなぁ……」
普通飛行機に乗る時は荷物検査やら機内持ち込み用の水分、また軽食を取るためにある程度の時間を空けるのが普通だ。実際俺たち武偵は武器の検査でそこそこ手間を取られる。だからこそ、その為の時間を作ったスケジュールだった。
それにも関わらず、
「己、夾竹桃に美咲め一体なにをしているんだ……!」
補修の原因になった問題児二人が未だに空港に現れていない。
「流石に驚きねぇ」
見送りに来ていたアリアも呆れ顔でぼやくがまぁ極めて同感だ。
「一応、理子が様子見に行ったらしいけど。まだ連絡ないのよね?」
「ない!」
本当だったら俺たちの見送りには理子もいたのだが。
来ることを熱望していた白雪やランスロットは新学期始まることもあって生徒会長や教員という立場のせいで時間が取れなかった。というかあの二人の場合無理して時間を作ろうとして仕事放り出そうとしたので止めたわけなのだが。軽く血涙流していたのは忘れたい。
『だ、駄目だよキンちゃん! ちょっと占ったらなんか私とキャラ被りぽいのが出るって……!』
等ということを身内の汚れ系巫女が供述していたがそれは無視した。
「ぐぬぬ……っ」
「どうどう」
唸るジャンヌを落ち着かせるが、正直焦っているのは俺だって同じだ。仮に二人を置いて俺とジャンヌだけで行っても補修にならないし、この位できなかったではRランク昇格の話もつらくなるだろう。校長先生たちが支援してくれるというのにそれは駄目だ。
「……ん」
「どうした遠山」
「理子来たんじゃないか?」
「……来るわね。もう少し」
言って俺とアリアが同じ方向を見る。
その直後、
「おーい、キー君ー! アリアー! ジャンヌー!」
「ふぅ」
「……あ、あひぃ」
理子、そしてその背後の夾竹桃と中空知だ。
「……何故解ったのだ?」
「いやなんとなく気配が」
「直観よ直観」
「……全くお前らは」
何やら呆れているが解ってしまうものは仕方ない。そもそも魂で繋がってるのだから近くにいれば解るのは当然だし、アリアの直観の方がずっこい。探偵や刑事もののドラマで登場人物全員揃った時点で犯人当てるのだがふざけてる。
しかし今はあの二人だ。
夾竹桃。
中空知美咲。
実のところを言えば、俺自身この二人とはあまり関わりがない。
そもそも夾竹桃は元イ・ウー所属の犯罪者で、間宮の一族の技を狙い間宮を狙ったが敗れ司法取引で武偵高に編入。詳細に関してはイ・ウー関連故に超法規的措置で俺も詳細は聞かされていない。そのあたりは仕方ないとして、俺が知っているのは簡単な能力と人格。
左手の爪に毒を仕込んでいること。イ・ウー残党の例に漏れず『言葉』を遣えること。正確に関しては他人の話を聞かない、武偵高の中でも飛び出るくらいに我が道を往くキャラ。
あと――百合好き。
そして中空知美咲。
こっちはまだそこそこの関係がある。通信科ではわりかし有名だし、任務の時はよくオペレーターを務めてもらっていた。それにレキや平賀とかと仲がいいのでそれ繋がりでも。特別だか異常だかは知らないが極めて耳がいい。ただしかなりの上がり症と男が苦手らしく、まともに会話したことがない。喋ろうとするとなにやら文法が目茶苦茶になっているのだ。ちょっと将来が心配になるくらいに。
そしてそんな遅刻してきた二人だったが。
夾竹桃は黒のセーラー服に煙管を口に咥えつつゆったりとした足取りで。
中空知は地味な茶色の鍔の大きい、麦わら帽子のような形の帽子、それにマスクとサングラスという姿でびくびくしながら。
ようやく現われた――けどこれは酷い。
遅刻してきたというのに呑気に歩いている夾竹桃は言うに及ばず、中空知の恰好もだ。 お忍びのハリウッドスターみたいな恰好だが狙いも当たらずとも遠からずなのだ。間違いなく他者からの視線を護る為だ。異常なまでの上がり症に、対人視線恐怖症故のあの装備なのだろうが、
「逆に目立ってるだろあれ……」
明らかに視線を集めている。空港であんな恰好であんなにびくびくしていたのなら当たり前だし、視線を集めてるせいでさらにびくびくしてさらに視線を集めという負のスパイラルを作りだしている。
理子か夾竹桃が教えてやれ。
どうせ面白がっているのだろうが。
そして辿り着いた彼女たち、理子は疲れたらしく大きく嘆息し、夾竹桃は煙管から口を外してから長く煙を吐いて、
「待たせたわね」
「待たせ過ぎだぁー!」
「ボディ!?」
告げた彼女の腹にジャンヌの拳が突き刺さった。
●
「貴様ホント何考えてるんだ! 仮にも司法取引で生徒やってるんだから行事くらいまともにやらんか! いや、お前がどうこうしようと勝手だが私を巻き込むな!」
「あ、ぐ、ちょ、変なとこ入った……吐く……」
「聞いてるのかァー!」
「おろろろろろろ……」
「ひ、ひぃ……あわわわわ」
白い肌を怒りで染めて叫びながら説教垂れる美少女と彼女の拳を喰らい吐きだし続ける美少女とそれらを見ておろおろする美少女たちがそこにいた。
非常に関わりたくないが、
「これがしばらくアンタのチームメイトなのね」
「バスカービルより問題があるチームがあるとかこのりこりんですら思いもしなかったよ」
「言わないでくれ頼むから……」
崩れ落ちたいのは俺のほうだった。
いやマジで俺らバスカービルより酷いんじゃないかこれ。足並み揃ってはいないというか好き勝手しているのは俺らも同じだが、目指していた先は一緒だった。でもジャンヌたちはなんかもう道のりもゴールも全部目茶苦茶だ。
数分蹲っていた夾竹桃だったがなんとか持ち直す。
「ふ、ふう……全くいくら何でも酷いわよ」
「こっちの台詞だ戯け! なんでまだ遅刻してくるんだ!」
「知らないのかしら? 飛行機というのは飛び立つ前だったら裏道とか使って都合してくれるのよ? それにほら、私たち武偵だからね」
「だからね、ではないわっー!」
「ちょ、危なっ!」
手に持っていたデュランダル――流石に鞘付きだが――を振るいだした辺りジャンヌも平静を失ってる。流石に拙く、アリアと理子が羽交い絞めになって彼女を止めるが荒い息は治らないままで、興奮も冷めていなかった。
しかし実際そろそろ時間がやばい。
「あーもう、いい加減しろ! ジャンヌも夾竹桃も一端落ち着け! 中空知は、あー、深呼吸しよう、ほら。吸って、吐いて」
「は、はひっ。ひ、ひっひーふっーぅ……」
「いやそれラマーズ……まぁいいや」
この際細かいことは置いておくとして。
「簡単にまとめるぞ。お前らコンスラテシオン三人とバスカービルから俺の合わせて四人でフランスへ修学旅行の補修に行く。向こうで何するかは今は置いておいておくが、言ったようにこれは補修だ。そのあたりちゃんと忘れるなよ、俺はお前らの監督役もやるんだからな。そのあたり意識しとけよ」
正直監督役に関してはどこまで務めを果たせられるか不安だが、少なくとも出来うる限りは行わなければならない。
いやまじこいつらは監督していないと不安だし。
「あぁ、解っているとも」
「面倒ねぇ」
「は、はいぃ……」
「キンジ、そろそろ行かないと拙いわよ。裏道云々使ったら評価下げないといけないでしょうしね」
「おう、そうだな」
元々遅れ気味だったのだ。いくら搭乗時間の為に余裕があるとしても、ここでだらだらする必要はない。
「――じゃ、行ってくる」
旅立つ側と見送る側に別れ、アリアと理子に告げる。
と言っても言葉を重ねるのは得意じゃない。だから、笑みを浮かべて少なくも想いを込めた言葉を伝える。アリアや理子も同じように薄い笑み。
それで十分――心は繋がっている。
「ん。頑張りなさいよ」
「おう、日本は任せたぜ」
アリアとハイタッチをし、理子にも手を掲げる。
「あんま皆をおちょくんなよ」
「大丈夫大丈夫、理子のこと信じてよぅ」
「信じてるさ。けど、それとこれとは別だ」
「ぶぅーぶぅー」
口を尖らせる理子だったが、いきなり一転して笑い、
「きぃーくぅーん! ――んちゅう!」
人の頬に唇を当ててきた。
「んなっ」
避ける暇もなかった。というか思わず避けようとしたら異常使って髪で拘束するまでの念の入りようである。見かけよりも用意周到な理子らしい。
いやこんなところで自分らしさを出されても困るが。
こんな人前で止めてほしい。
ジャンヌと中空知は顔を真っ赤に、夾竹桃は夾竹桃でノンケはねぇとか言ってるし。
そして一番問題なアリアは、
「やれやれ、あんま人前で止めなさいよ」
呆れの息を吐くだけで終わっていた。
「風穴じゃ、ないだと……これが正妻の余裕……」
「ふん、今更アンタが何しようとしても怒らないわよ。キリがないしね」
鼻を鳴らして、仕方なさそうに腕を組む彼女は本当に怒っていない。いやちょっと前だったら蹴りやらプロレス技やら銃弾やら小太刀やら色金の剣弾が飛んできていたのに。
結構出発前に大けがする覚悟だったのだが。
「まぁアレよキンジ――新しい女は三人までよ?」
「何言ってんのお前!?」
何やら嫁から凄いことを言われた!
俺としては大分一途だったのに!
「いや、別に浮気とかの心配じゃなくてね? アンタがアンタであるだけでも、他の女は勝手に寄ってくるでしょ? そうしたらアンタ拒否れないでしょ? んで結局周りに人増えるのよ? 女だけじゃなくて男もね? 否定できる?」
「……で、できねぇ」
こんなことを自分でいうのも何だが、否定できないのが俺こと遠山キンジである。性質含め実績含め。これで集まってくるのが女の子だけなら今時のラノベの主人公なのだが、結構な割合で野郎もいるのだから現実は上手くいかない。いや女の子が多ければそれはそれで嫁が怖いけれど。
「とにかく」
苦笑を消さないままアリアは俺の制服のネクタイを引き寄せる。俺は屈むことになり、アリアが背伸びをすれば、互いの距離はかなり縮まって――キスをする。
理子の様な頬ではなく、唇に。
「――行ってらっしゃい」
「――行ってきます」
次の更新は未定です。
アリスベルも新刊でるらしいですし。
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