落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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そろそろ更新再開できそうですねー


第3曲「貴方達みたいに気合いと勢いじゃ」

 成田空港からフランスの、シャルル・ド・ゴール空港に辿り着くまで実に十二時間以上も掛かった。乗り継ぎがなくただ鉄の塊に揺らされていただけだが半日間も同じ場所、同じ体勢でい続けるのは結構なストレスだった。

 というか尻が痛い。

 香港に行ったときはたった二時間程度、それもファーストクラスだったから問題なかったけれど、今回は普通にエコノミー席だったから色々窮屈だった。ジャンヌや夾竹桃は流石に慣れているのか普段通りだったが、中空知は居心地が悪そうだ。いや、彼女が居心地が良さそうにしている姿なんて見たことないが。

 そんな感じで映画を見たい、眠ったりしながら地球半周し、

 

「……ここが、フランスか」

 

 生まれて初めての欧州に降り立つ。

 武偵憲章には世界に羽ばたけなんてことがあるが、まさか香港行った後こんなすぐ早く別の国に降り立つなんて思わなかった。

 まぁ悪いことじゃない。

 これもまた経験だ。

 

「さて、まずはパリまで行くぞ。そこに私が使っていたアパルトマンがある。今日はそこで休んで、動くのは明日からだ。バスは手配してるあるからさっさと急げ」

 

「あ、俺のバイクは」

 

「それも既にバスに積まれてる。武偵用のバスを借りたからな。そこら辺は抜かりない」

 

 流石は地元人というべきかジャンヌが頼もしい。というかここでジャンヌぬ手間取られると非常に困るのだが。夾竹桃はそこそこ海外慣れしていそうだけど役に立たないし、俺や中空知の海外経験は少ない。

 そこからさらにバスに乗り込むこと一時間と少し。海外のバスに乗ったは始めてだが、日本の狭苦しい奴よりもスペースやリクライニングが良いのにも驚いた。文化差という奴だろう。最も香港でリムジンなんか乗っていた俺が言えたことじゃないが。『緋影』にしたって普通のバイクに比べれば大分乗り心地がいいし。

 そうして一時間後。

 花の都パリに辿り着き、

 

「……思ったよか汚いな」

 

 道の色んな所にゴミが落ちてるし、至る所に落書きはある。少し見た限りでもホーレムスらしき人は多い。創造していた華やかな街とは大きく違う。

 

「そんなものだ。パリの治安は非常に悪い。特に観光客に対するスリはな。ジプシーも多いしな。日本で言われてるほど華やかでもない」

 

「綺麗な華には棘だけじゃない。毒を含んでいることもあるし、華の下には汚い土だってある。見せる方は綺麗な所しか見ないし、見る方も綺麗な所しか見ようとしない。それで幻滅するのだから笑えるわ」

 

「そう言うな。いずれにせよ遠山はともかく、中空知は十分に気を付けろ」

 

「……は、はいぃ」

 

 そんな感じで予想と現実の格差に驚いたりしつつ、拠点となるジャンヌのアパルトマンへとたどり着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、少し休憩してから食事に行こう。部屋は人数分ちゃんと確保してるから好きに使え。あと、遠山はちょっと来てくれ」

 

 ジャンヌが用意してたアパルトマンは思ったよりも上品な部屋だった。日本でいうアパートよりも広いし、部屋数も多い。そのあたりのビジネスホテルを借りるよりもずっと良かっただろう。寝室が三つにリビング兼キッチンにシャワールームが一つづつ。

 そうして中空知と夾竹桃が寝室に向かい、俺とジャンヌが残される。途中で買った炭酸ジュースを開け、

 

「それで、何か用か? というか部屋が人数分あるって三人分しかなくね?」

 

「リビングで寝ろ。女子部屋に上がり込んだら折檻してアリアに告げ口する。っと、そんなことはどうでもいい」

 

 さらりと人の睡眠事情がどうでもいいと流されたがしかしジャンヌの顔が真面目なので突っ込めなかった。

 

「仮にも此方は敵地で、お前からすればアウェイだ。何時襲撃されてもおかしくない。だから、先にこっちの簡単な説明をしておこう。下手をすれば嵌め殺しにされかねんからな」

 

「……どういう、ことだ?」

 

「これまでお前が戦ってきた相手とは全く別ものというわけだ」

 

 よく聞け、と彼女は前置きし、

 

「そもそもお前を筆頭にしたバスカービルの面子や曹魏の連中、それに人工天才もだな。後カナや教授(プロフェシオン)も。お前たちの共通点が何か解るか?」

 

「………………無くね?」

 

 真面目に考えてみるが全く思いつかない。言われた範囲が広すぎるし、それぞれ個性が馬鹿みたいに強い。今でこそ曹魏は『師団』側だがサードたち人工天才やカナは無所属のままだし、シャーロックなんて故人だ。

 共通することないと思う。

 しかしジャンヌは呆れたように嘆息し、

 

「――渇望を力に(・・・・・)変えている(・・・・・)

 

「――」

 

 渇望。

 輝ける星のように命を燃やしたい。最低でも最高でありたい。愛する人と共に在る人間でありたい

。忠義を貫く騎士でありたい。愚かさを笑える自分でありたい。誰かと響きあえる旋律を奏でたい。

 愛する女を蘇らせたい。

 己の全てを曝け出したい。

 愛する主と共に在れぬ道理を認めない。

 振りかかる不条理を払いたい――皆の居場所になりたい。

 そういう、その身の魂を狂わせてでも叶えたいと思う祈り。

 自分を、世界を、己が望みで変革させる。

 あぁ、そう。言われてみればその通り。俺たちは自分たちの狂気を力に変えるという点では間違いなく共通している。

 

「お前たちはそういうもの(・・・・・・)だ。こうしたい、こうありたい。ただそれだけが異能の源だろう」

 

「……否定、できないな」

 

「されても困る。そして、いいか? 欧州圏に於いては全く違うんだ。真逆とさえ言っていい。お前たちが感情がものを言うのならば――此方は理性がものを言う」

 

「具体的には?」

 

「ヒルダを覚えているか? アイツの雷撃を」

 

「そりゃ、まぁな」

 

 『紫電の魔女』にして『吸血姫』ヒルダ。

 俺の仲間である峰理子を縛り続けていた鎖の半分。吸血鬼である異常な生命力、概念昇華された雷撃の操作。色金の気によってその本領を封じたにも関わらず苦戦を強いられ、理子の影に封印された吸血姫。

 いくら何でも忘れられない。

 

「アイツが此方側だな。そもそも奴は最初からああいう高レベルの雷撃を使えたわけではない。最初の時点では、超能力(ステルス)と確か電気ウナギの細胞だか遺伝子だかを体に取り込み、それで電気を発生させていたのだ。それを奴は長い年月を掛け、ただの動物の機能ではなく、魔女が使う術式(コード)としてあそこまで昇華させたのだ」

 

 ジャンヌが苦虫を噛み潰したような顔で言葉を連ねる。

 多分同じ超能力使いとして思う所があるのだろう。

 

「……つまり、白雪みたいなもんか? アイツも鬼道術と超能力組み合わせてたけど」

 

「近い。というより分岐したと言うべきかな。ヒルダが術式(コード)としての異能を高め、白雪は渇望としての異能を高めた」

 

「なるほどな、興味深いぜ」

 

 言われてみればヒルダの能力は微妙に感じが違った気がする。術式(コード)。なるほど言われてみればそういうのを考えているのは俺たちの仲間にはいない。

 

「ん、でもそんないう程の違いあるか? 成り立ちが別でも、結局同じようなもんになると思うけど」

 

「話は、最後まで、聞け」

 

 ちょっと睨まれた。

 

「ここからが大事な所だからな。言っただろう、嵌め殺しされかねないとな」

 

「と、いうと?」

 

「――貴方達みたいに気合いと勢いじゃ、この欧州は乗り切れないというわけよ」

 

「夾竹桃」

 

 夾竹桃が割り込んできた。気配は気づいたいたから別に驚かなかったが、ジャンヌは言葉を取られたからか半目で睨み付けている。最も睨まれた夾竹桃の方は煙管を加えたまま素知らぬ素振り。

 

「中空知は?」

 

「あの子なら疲れて半分寝てるでしょう。かいつまんで話すならさっさとしたほうがいいわよ? じゃないと本気寝し始めるだろうし」

 

「お前が止めたんだが」

 

「じゃあ続けなさい」

 

 ジャンヌの背後に般若が浮かんだ。

 

「お前……大変すぎだろ」

 

「イ・ウーにいた時から態度が悪いんだぞコイツ……!」

 

「どうどう」

 

 ジュースを飲ませてなんとか落ち着かせる。炭酸の缶の一気飲みという微妙に大変なことをしたジャンヌだったが一応落ち着いたらしく、長く息を吐いてから胡乱気に説明を再開した。

 

「……美咲のことに関しては一理ある。端的に、気を付けるべきことだけを説明しよう。こっちの一定以上の術式(コード)使いの場合、能力使用に厳密な条件が存在しているのだ」

 

 条件、つまりは制約か。

 俺の場合元々の異常である『性々働々(ヒステリアス)』は性的興奮が必要だったが、今では感情の高ぶりがなければ使えないという制約と言ってもいいのかどうか微妙な所。というか心を繋げた仲間の力を借りるのにはそれすら必要ない。

 多分これとは違うのだろう。

 

「ある能力Aを用いる場合それを発動するために条件Xが必要になる。そのXに何が入るかは個人によって異なるがな。当たり前のことながら条件Xが難しければ難しいほど能力Aは強力になっていく。だからいいか遠山。欧州出身の相手と戦う時はむやみやたらに突っ込むな。思考誘導などには特に気を付けろ。手順を必要とする分、その手順を踏んでしまえば異能から逃げられない」

 

 それは確かに俺の様な人種とは相性が悪いかもしれない。

 つまり、こっちは絡め手こそが基本であるということだろう。そして絡め手というのは俺には非常に効く。これまで色々な策に嵌められて、その度に乗り越えてきたが次やその次も大丈夫という保証はないわけだし。

 

「んじゃああのヒルダの『雷星(ステルラ)』はどうなんだ」

 

 ヒルダが使っていた雷の塊。あの時は緋の銃刃で切り伏せたが、まともに当たれば人間なんて消し炭だ。

 

「あれは大分単純だな。術式の中でも基礎の基礎。奴が『第三態(テルツァ)』になることくらいのはずだったな。忘れるなよ遠山。お前たちはあの吸血姫を打倒したがそれは色金の気によって奴のスキルの大半を無効化していたからに過ぎない。知らない私が大きく言えたことではないが、本来ならばもっと強力な術式(コード)があったはずだ……ブラド辺りは単純に舐めていたのだろうがな」

 

「……解ってる。自惚れはしない、油断も慢心もな」

 

「ならいい。残念ながら私も、夾竹桃もこの手のものは得意じゃない。イ・ウーではあまり重要視されなかったからな」

 

「なんでだよ」

 

「あそこは超人育成機関よ? 態々あの手この手脳みそこねくり回すような人間は必要とされなかった。いなかったわけじゃないけどね」

 

「そういうことだ。それに今にして思えば教授は異常や過負荷、術式超能力ではなく言葉(スタイル)の開発発展こそに力を入れていたからな。あれはそれらとはもっと違う何かだし、私たちだって使えるが、種自体は知らん」

 

「ふぅん」

 

 それは、俺も同じだった。

 元イ・ウー達が教授亡き後に身に着けた――或は表面化した――言葉。

 あのシャーロック・ホームズの遺産なのだ。ただの能力とは思えない。事実、今まで見てきた言葉という異能は言葉にできないが、それまで俺たちが使ってきた異常過負荷超能力それに術式とは決定的に違う。

 多分、蒼一は知っているのだろう。

 言葉――言魂遣い。

 

「ともかく、何してくるか気を付けろってことだな?」

 

「まぁ要約すればその通りだ。なるべく嵌らないように気を付けろ。嵌ったら知らん。まぁお前ならどうとでもできるだろ」

 

「そりゃどうも」

 

 投げやりなジャンヌに肩を竦め、視線を受け流す。

 

「一応明日メーヤや此方側の協力者と顔合わせする。彼女たちの方が詳しいからな、気になることがあったら直接聞け」

 

「というか那須遙歌からそのあたりレクチャー受けなかったのかしら?」

 

「受けたぜ? 受けたけどあれは何というか拷も……いじ……殲め……とにかく、スキル再現してくれた遙歌がありったけぶつけて来たのを対処してきただけだからなぁ。もう無我夢中で何がなんやら」

 

「意味無いんじゃないそれ」

 

 薄々そんな気がしていたが黙っていたことを口にされた。

 あの時のは正直思い出したくない。どうせ向こう行ったら昼夜逆転しますからねとか言われて大体徹夜もどきでやらされたのだ。しかしスキル封印していたのに単なる技術で異常やら過負荷なんかを再現できるあの万能妹はどうにかならんのか。

 ならんだろうなぁ。

 兄は匙投げてるし。

 

「ま、なんとかしよう。俺だけじゃなく、ジャンヌや夾竹桃もいることだしな」

 

「ん……」

 

 笑いかける。だってそれは本心だから。

 生憎一人では大したことができない身だ。誰かと心を繋いでいないとまともに戦えないし、歩くことすらままならない。だからこっちでもジャンヌたちに力を借りたいと思う。

 それにジャンヌは真っ白な頬を赤く染め、そっぽを向きながらも頷き、

 

「……」

 

 夾竹桃は、何も答えることなく目を伏せたままだった。

 荒野に咲く一輪だけ華みたいに。




唐突に生えた新設定術式(コード)
つまりは協力強制なアレ。

前書きにも書きましたがそろそろ帰国なので七月入ったら本格的に更新再開できると思います。
六月残りにどれだけ更新できるかは――感想とか評価(モチベーション)次第かな(

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