落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 作:柳之助@バケつ1~4巻発売中
『
後の親友であり戦友であり好敵手である男。肩を並べ、背中を預け、共に戦場を疾走する益荒男。遠山家の二男。だが、後に長男である金一が失踪するから、事実上の後継者。武偵ランク現在S、後にE。緋緋色金の巫女、シャーロック・ホームズの末裔、神崎・H・アリアの奴隷にして守護者。瑠璃色金の巫女であるレキとその従者であり守護者である俺とは似通った立場だろう。ついでに言えば変人誘発&フラグ製造体質。美少女をあっちからこっちから呼びよせ、俺の知る限りでも十数人は引き寄せて、多分これからも増えて、全属性をコンプリートしそうで怖い。妹がいないからそれは無理か。さすがに妹がいきなり登場するなんてことはないと信じたい。
まぁ、後に現れるんだが。
怖いね主人公体質。
フラグ立てるたびにアリアに風穴地獄だけど。
峰理子と戦い、ジャンヌ・ダルクを出し抜き、ブラドを退治し、パトラを退け、シャーロックホームズを打倒した。それから先も多くの敵と戦う俺たちは。
これまでで一度。そしてこれから一度。全霊を以て――激突することになる。
それは互いの魂に楔を打ち込み、後々に生き様にすら影響を与えるほどのものになるのだ。魂と魂、拳と拳、男の戦場。道理と不条理、瑠璃と緋緋。俺たちは対極で平行線だけど、隣り合って、共に歩いていける戦友。
それでもこの時は。
方向はてんでバラバラで、互いのことを見てすらいなかった。
戦友でも親友でも友達でも仲間でもなく。
他人でしかない、偶然同室になっただけの相手だった。
●
「……」
「……」
会話は変わらず無い。元よりする気も起きない。こんな機械染みた女と喋って楽しいことはない。まぁ、会話を楽しもうという自体俺には考えられないんだが。お喋りは好きじゃない。話題もないし、会話スキルだってないし。それは向こうも同じ様で、口を開く様子はない。
寮に辿りつく前にコンビニで夕飯を買った時も、俺が弁当を買った時もなにも言わずに後ろにいただけだった。食欲とか無さそうだが、さすがに霞みやねじ巻きで動くわけがないだろう。
まぁ、知らん。
飯の買い出しとかで離れてくれたらそれはそれでいい。
ともあれ、男子寮に辿りついた。寮に入って、誰かに注意されるとか期待したけど誰とも会う事無く部屋の前に。寮長も残念ながら留守だった。まぁ、寮長なんて顔も名前も覚えてないんだが。
「……おい」
「はい」
「ルームメイトの遠山にはなんて説明すんだ」
「ありのままに」
「さよけ」
ありのままに。
プロポーズされて決闘して俺が負けてパシリ契約されてつきまとわれてる。はっ、笑える。自分の事じゃ無かったら大爆笑してる所だ。
自分の事だから吐き気がするが。
どうにかならんのか。ならんだろうなぁ。今の所、この女から離れる手段が思いつかない。逃げればいい、というものでもないだろう。原則俺は武偵高から離れるつもりはない。半年前、もっと正確に言えば十カ月前の去年の年末に一通りの修行完了、免許皆伝を貰い師匠にいまさら高校に入れさせられたのだ。小学校も中学校も通ってない俺がいきなり高校に入れるのかは激しく疑問だったがどういう工作をしたのか、入れてしまった。他にも、いろいろ候補があったらしいが未だに武偵高である理由は不明だ。それを知るのはもう少し後のこと。
ともあれ、入れてもらったのだから逃げるのも癪だし、ちゃんと卒業しろと言われている。七年前に拾われて、六年間修行を付けてくれた人の言う事だったので反抗しにくい。これがもっとふざけたことだったら投げだすのだけど。
雪山で雪男倒せとか。
密林で巨大蛇倒せとか。
海辺の人食い鮫倒せとか。
どれもこれも一方的に命令されて来た。まぁ、結局は戦わせられるんだが。たまにガチの怪異とかと出くわすのでビビる。
そう、この女も怪異みたいなものだと思えばいいのだ。
この無感の人形。まともに相手なんてできない。決定的に噛み合っていないのだからどうしようもない。だから、人間というよりは人形、人形というよりは怪異として受け入れよう。
怪異と向き合うコツは考えないことだ。
思考停止というわけではなく、先入観を持たないということ。怪異相手に常識なんて通じない。怪異は化け物で化外で人間ではない。だから人間の常識を棄てて、そういうものだとして認識するべきなのだ。ものによってはこちらの認識で存在を変える現象のような怪異もいるが、最近の所謂妖怪はかなり人間社会に根付いているらしい。
だから、レキのことは
コレには感情なんてない。コレには意志なんてない。コレには魂なんてない。風とか言うわけのわからん存在に従ってるだけ。出逢ってから感じていたことを確定させる。人形で、怪異で、レキという現象。人間なんかでは決してない。
この認識を以て、俺はこの先の二カ月間を彼女と接した。つまりこの認識を取りはらうのにもまた二カ月を要し、思い知ることになるのだ。
――彼女は決して人形でも怪異でも現象なんかではない、人間であると。
●
「おい、遠山」
「……え、お、おう。どうし、た……?」
寮に戻り、遠山は先にいた。リビングで部屋着に着替えテレビを見ていた。まず、遠山は二つの事に驚く。まず、俺が帰ってきて声を掛けたこと。我ながら人間としてどうかと思うが、寮に戻って遠山に声をかけることなんてまずない。遠山から声をかけられる時もあるが、軽く相槌を返すだけで会話はほとんどない。ただいまとかおかえりとか。そういうことはこの半年口にしたことは無い。
だってそれは家族の言葉だと思うから。家族でもない赤の他人に返すのは嫌だった。
俺の家族は、この時、たったの
「どうも」
「え、レキか……?」
「はい」
俺の背後にいたレキの存在。
声をかけたということと彼女の存在に目を点にして、
「な、なんだ? お前ら友達だったのか……?」
「ちげぇ」
「今日から夫婦です」
「そ、そうか。夫婦か、それは知らなかった……夫婦!?」
「はい」
ソファから立ち上がって叫ぶほど驚くが、まぁ無理は無い。いきなりそれまで友達零であろうルームメイトがいきなり女連れて来て、夫婦なんて言い出したらそりゃあ驚くだろう。
「え、お前らそんな関係だったのか?」
「違う」
「違います」
「……ちょっと待ってくれ。一体どういうことだよ」
頭を痛そうに額を押さえるが、そうだろう。俺だってこんなことになったら意味不明だ。というか、この女説明する気が無いだろう。
「おい、説明しろよ。ありのままに言うんだろ」
「私が蒼一さんにプロポーズして断られたので決闘して私が勝ったので主従の契りを結ばせてもらったので今日から主従であり夫婦になりました」
「……おい、那須。どいうことだ。というか、負けた? お前が?」
「知るかよ。俺だって意味解らん。そして、負けたよ。あぁ、俺はコレに負けて、パシリされちまったってわけだよ」
「というわけで、今日から私はこの部屋で住まわせてもらいます。迷惑はかけませんのでご安心を」
「は、はぁ!? ちょっと待てよ、住むってどういうことだ!」
「そのままの意味ですが」
「認められるか!」
「認めてください」
「っ……!」
噛み合わない。
言葉を交わしているのに、まったく互いの意図が交わっていない。いや、遠山はマトモなのだ。いきなり言われたら戸惑うのは当然だ。遠山とレキがどれくらい接点あるかは知らないが、精々顔見知り程度であろう。そんなのがいきなり自分の領域に踏み込んでくれば、そう簡単に認められるわけがない。そんなのが出来るのはよっぽどのお人よしか食わせ者だろう。遠山はおそらくお人よしで、後々には結構な食わせ者になるけど、残念ながらこの時は俺もレキも含めてかなりの未熟者だった。
少なくともこの無感情に思わず気押されるくらいには。
「那須……お前からも何と言えよ」
「言っても無駄だろコレには。むしろお前がどうにかしてくれ」
「お前は……っ」
若干過剰反応という気もしなくはないが、遠山キンジという異常からすればむしろ当然だった。この時は知らなかったけれど、コイツは自分の日常生活に女を近づけるわけにはいかなかった。異性に興奮すると発動する異常。中学時代にはかなりいいようにされたらしく、この時から遠山は自分の異常を好んではいなかった。軽い女性恐怖症だったのだろう。そんな遠山が相部屋とはいえ女子の同居を認めるわけがない。
勿論この時はそんな個人情報は知らなかった。
●
「……」
「……」
会話はどうしたってない。
噛み合わない会話なんて意味がなく、レキもまったく退く気が無いので問題は保留。とりあえず遠山に近づけなければいいだろう。さすがに少しは悪いと思っているのだ。少しは。
だから、そうそうに自分の部屋に引きこもる。この寮は基本的に四人部屋だが今は俺と遠山の二人で使っていて、空き部屋も三つもある。そのうちの一つを占領し私室にしているのだ。
あるのは、テレビとパソコンにエアコン、それに本だ。漫画とライトノベル、有名文学作品、伝記等ジャンルはバラバラだが部屋の至ると事に本が在る。元々、那須の家で落ちこぼれ扱いの修練すらさせてもらえぬ俺には毎日が暇で本を読むくらいしかすることがなかった。任務の報酬もひたすら本に使っている。ゲーム類はこの時は一応やっていたけど、それほど熱心でもなかった。たまに峰あたりにお勧めを聞いてやるくらい。基本的に俺の部屋でやることは読書だった。コレが数カ月後にははっちゃけたレキのせいでライトノベルや漫画、ギャルゲーエロゲーアニソンに占められ、有名文学作品等は段ボールのに追いやられ、さらに数か月後に遙歌によって救いだされることになる。
「……」
「……」
だから俺が本を読み始めて黙り、レキも黙れば当然あるのは沈黙だ。俺は座椅子に座り手元の本に視線を落とし、レキは部屋の隅で肩膝を立てて座っている。ライフルは肩に担いだまま。視線は俺に向けられているだろう。
真っ直ぐに、ブレない照準のように。監視カメラで見られているかのように。琥珀色のガラスの瞳が向けらる。
それに反応なんてしない。
「……」
「……」
傍にあったコンビニ袋から弁当を取り出す。五百円程度の弁当だ。美味くもなく不味くもない平均の味。なんの感動もない。外食する金はもったいないので基本はこんなものだ。数分で食べ終わる。と、レキの方から物音、見れば、
「……」
「……お前、それが飯か」
レキがもっさもっさとカロリーメイトを齧っていた。
「はい」
「そんなんで身体動くのかよ」
「必要なカロリーは摂取できています」
コンビニ弁当とどっちがマシなのだろう。
どっちでもいいけど。
ぼっちーぼっちーぼっちー。
これしか言うことがない……!
ちなみに、過去編終わったらマジ恋クロスやろうとか思ってます。過去編書いてて鬱になったら挿入機能とか駆使してぶちこもうとか思ってます
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