落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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本編だと思った!?残念番外編でした!
唐突に愛が復活した。

本編書けよゴラァという人以外どうぞ


「アンタらみたいな百姓がいてたまるか」

 

「おーい、機嫌直してくれよ」

 

「……」

 

 視界いっぱいに続く荒野の中、俺は赤い背中を追っていた。丸みを帯びた背中は少女のものだ。白と黒のへそだしの服に褐色の肌とそれに刻まれた黒の刺青。彼女はこちらを完全に無視して荒野を突っ走る。荒野とはいうがあと一里ほど行けば森があって川も流れているのだから彼女はそこへと向かっているのだろう。

 十数年以上行き慣れた森ではあるものの、最近は黄色の布を巻きつけた賊が国中をうろうろしているらしいので心配だ。

 心配なのだが、

 

「おーい!」

 

「……」

 

 こちらに構わず彼女はどんどん先へ進んいく。たかが少女と侮ることなかれ。そこらへんの並の馬ならば並走できるような健脚だ。おまけに一日中走っても尽きることの無い馬鹿げた体力。当然ながら同等の速度で走っても中々差は縮まらない。俺たちの村からもう二里くらい離れたわけで、四半刻ほど走り続けている。

 

「いい加減機嫌をなおしてくれぇー!」

 

「……」

 

 叫ぶが反応はない。

 今回の一件は完全にこっちが悪かったのだから、強く言うこともできず追いかけるだけだ。速度に関しては俺の方が若干分があるので少しづつ距離は詰めつつある。森にはいられる前に捕まえないと困る。特技動物寄せといっても過言ではなく、森の動物たちは彼女の親友だ。足止めでもお願いされたらどうしようもないだろう。

 

「うぉーーい!」

 

「……」

 

 なのに中々止まらない。

 

「ぬぬぬ……」

 

 交渉は無駄だと悟ってとにかく走る。靴や服に走った際に巻き上がった砂ほこりが入ってきて地味に鬱陶しいのももう慣れた。この時代(・・・・)の物ならば着れるだけマシだろうし、十五年も生きているのだ。慣れない方がおかしい。女物の服装では随分と質が良かったり、世界観を間違えたようなものがあるが野郎の着る物なんて大差ない。寧ろこの時代にちゃんとした服を着れているということこそ幸せなことだと思う。

 思っていたらあと数歩分まで近づいた。この距離だと彼女が巻き上げた砂ほこりが俺の目に入ってくるくらい。近い。

 だから動く。

 倒れこむように体を倒し、同時に膝を曲げる。その上で地面に触れる直前で膝を爆発させることによって、

 

「とぉっ!」

 

 跳んだ。跳躍。大砲のような勢いで放たれた俺の体は寸分違わぬことなく彼女の背中、それも形のよいくびれの辺り。中空で腕を広げて、ついでに足の裏を合わせれば完璧だ。そのまま腰に抱き付いて動きを止めようと狙った。

 だが。

 

「……ん」

 

「よけたぁ!?」

 

 飛び上がって完全に空振りした。

 彼女の跳躍は邑の家くらいなら簡単に飛び越えられるので腰の辺りまで飛び上がるなんて容易いということを完全に忘れていたのである。当然ながら腕を広げて、両の足の裏を合わているという姿勢でまともな受け身など取れず、

 

「あべっべべべ!」

 

 もみじおろしに気分を味わう。すぐそこには森が広がっているとはいえ、俺が落ちたあたりはギリギリ地肌が石ころが多かった。というわけで顔とか袖無しの蒼い衣装なんかも盛大に地面に擦れる。

 

「ぬ、ふぐっ、うぐ……!」

 

 痛い。超痛い。いつだったか我が家の忠犬赤兎を怒らせて全力で噛みつかれた時並に痛い。あまりの痛さに起き上がれず痙攣するしかなかった。

 

「……」

 

 背後から恐る恐る近づいてくる気配。いや、恐る恐るというか警戒しているだけだろう。俺が痙攣しているのが演技かどうか。できることならばここで一芝居打って、涙ながらに俺の名を叫び近づいてきた彼女を捕まえたい所だが、それはもう何回かやったしそんな余裕もないのが現実だった。    

 というか本当に痛い。顔の血塗れじゃね? 大変なことになってね?

 若干の俺の焦りを彼女も感じたのか小走りで近寄ってきて、何か言おうと口を開いた瞬間――

 

「うおおお!?」

 

「きゃっ!?」

 

「……っ」

 

 森の中から奇妙な二人組が突然飛び出してきた。

 明らかにおかしい二人だった。一人は見るからに貧相な、そこらへんの盗賊が着ていそうなボロボロの服装に額に巻いた黄色の布。手にはそこらへんの盗賊が振り回していそうな貧相な剣。そしてこれまたそこらへんの盗賊のように目は血走り、頬は痩せこけ汚れだらけの男であった。

 というか。

 まんま盗賊である。

 だからこそ一緒にいるもう一人が不自然だった。随分小さな銀髪の少女だった。多分俺たちの胸くらいまでしかない。実際に男の空いている手で拘束されてるが、少女の体が野郎にすっぽりと覆われている。だが問題はそんなとこではなくて。その少女がまるで王族だか貴族様のように豪華な服装だったのだ。森の中を抜けてきたからか随分と汚れが目立つがそれでも遠目から見ても絹でできているであろうと解る服はどうみても高級品だ。頭につけているのもやたら豪華な王様とか貴族様が付けていそうな帽子だか冠だ。

 こっちもやっぱり。

 貴族か王族に違いない。

 明らかにおかしい組み合わせだった。視界が血に染まっているのにも関わらず、痛みとか無視して思わず凝視しちゃうくらい。

 

「に、逃げてください!」

 

「何だてめぇらは! って黙れ!」

 

「きゃっ!」

 

 男と少女が同時に叫んだが、少女の方が剣を突き付けられて悲鳴を上げる。なんだろうこいつら。よく見ればどっちもかなり血色が悪いし、服装もボロボロだ。森を抜けてきたくらいではなさそうだ。この森を抜けて二日くらい馬で行けば長安なのだがまさかそこから来たのだろうか。

 

「なんだてめぇら!」

 

「この近くの邑のしがない百姓だけど……そちらは?」

 

「あぁ!? 俺は! 俺は、俺は……」

 

 盗賊ぽいのが言葉に詰まった。そりゃあ自ら盗賊なんて言いにくいだろう。身分高そうな少女の方は眼前に突き付けられた刃のせいで口をきけない。微妙な空気が流れた所で、

 

「月!」

 

 さらに森の中から新たな人影が飛び出してきた。紫の髪に袴にさらし、羽織というやたら露出の多い服装の少女だった。露出狂の方だろうか。やはりというかボロボロである。手には堰月刀が。消耗が激しいようだが、それでも隙がない。どこかの武将だろうか。

 

「くそ、もう来やがった……!」

 

「月を離さんか!」

 

 盗賊っぽいのが呻き、武将っぽいのが怒りを込めて叫ぶ。振られた堰月刀は鋭い。武将っぽいのはかなり焦っているらしく、俺たちのことを見ていない。

 

「……」

 

 微妙に置いてけぼりになっているのだが一体どういうことだろうか。今見て、考えられるのはだ。

 どこぞのお偉いさんの銀髪の子をこの盗賊っぽいのがさらって、あっちの武将っぽいのが追いかけてきた、ということだろうか。

 なにやら大変なことになっているなぁ。

 さっき言った通りこちとらしがない百姓でしかないのであまりこういうことに巻き込まれたくないのだが。薄情だと言われても仕方ないが、この世界はそういう世界だ。このご時世治安は最悪なので、自分にとって大切な人を守れればそれでいい。

 とか思っていたのに。

 

「おいこら、てめぇら! 突っ立てねぇで、この女どうにかしろ!」

 

「怪我したくないら動かん方がええで!」

 

「……どーするよ」

 

「……」

 彼女の真紅の瞳に問いかけるが、彼女も迷い気味だ。この騒動のせいで先ほどの不機嫌を忘れているのか先送りにしているようなので、できればこのままおさらばして家に帰りたい。

 

「っておい、なのに寄ってくんなよ!」

 

 いつの間にか盗賊っぽいのが俺たちの方へにじり寄っていた。

 まぁそれだけなら叫ぶだけで済ませていたのだが、

 

「うるせぇ!」

 

 そう叫んでこちらに振り向きざまに剣を振って来たのだ。ここで思い出すべきなのは俺と彼女の姿勢だ。先ほど思い切り飛び込みを失敗した俺はもみじおろしになったままで、彼女はそんな俺の真横にいたことになる。そんな体勢で剣が振られたどうなるのか。

 

「……っ」

 

 当然彼女に軌道上に入ることになり――、

 

「――人の女になにしてんだぶっ飛ばすぞ!!」

 

「ふぼぉ!?」

 

 なにし、くらいでぶっ飛ばした。起き上がりながらの蹴りだったが、途中で銀髪の少女のことを思い出したので軌道をずらして盗賊ぽいのだけぶっ飛ばす。青あざくらい残るかもしれないが気にしないでほしい。蹴り飛ばされた盗賊ぽいのが森の中の木々を折りながら吹っ飛んで消えていく。だが、それにはまったく構わず、

 

「大丈夫か!? 怪我はないか!? 傷は、痛い所は!?」

 

「……」

 

「あ、あれ……? なんでそんな目を背けるんですか? え、もしかしたまだ怒ってるの……?」

 

「……」

 

「だから悪かったて。ホント、俺が悪かったから許してくれよこの通り! 絶対埋め合わせするからさ!」

 

「……ホントに?」

 

「ホントホントマジで! 俺にできることならなんでもするから!」

 

「……じゃあ許す。あとでご飯、食べさせて」

 

「喜んでぇえええええええええええええ!!」

 

「な、なぁ」

 

 歓喜の渦に包まれていた俺に武将っぽいのが声を掛けてきた。軽く幸福の絶頂だったので、声を掛けられてイラッとしたがそこは幸福の中なのでおいておく。

 

「なんだよ」

 

「アンタら、なにもんや? えらい強いけど……。どっかの武将か?」

 

「ああん? 何言ってんだ」

 

 そういえば自己紹介もなにもしていない。

 

「俺は那須という。字とかないからそう呼んでくれ。んでこっちは」

 

「……呂布」

 

「そっちの邑に住んでるごく普通の、しがない百姓夫婦だよ」

 

「アンタらみたいな百姓がいてたまるか」

 

 




HYAKUSYO最強伝説……!
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