落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 作:柳之助@バケつ1~4巻発売中
ちょっとすっきり?
「王よ……!」
緋色の弾丸に肩を貫かれた曹操。それに対する臣下たちの行動は即座だった。張遼が彼女の下に駆け寄り、夏候兄妹が警戒体制に入る。あの気だるげな夏候惇もやはり只者ではなく、その動きは迅速だった。
「元譲!」
「解って、る!」
夏候惇が抜き放った腰の長剣を振るう。
「イロカネか……!」
緋色の光弾。俺が瑠璃神之道理に光速機動という新たな力を得たように、アイツも新たな力を得ていた。異常の操作がソレだし、またイロカネを気を弾丸として形成することが可能になっているのだ。
当然――通常の弾丸の法則とは根底から違っている。
「んなっ、どこから撃って来てるのよ!」
飛来する緋色の弾丸は一つ二つではなく、雨あられと降り注いでいる。夏候惇が弾丸を捌き、夏侯淵が撃ち返し、肩を抜かれて動けなくなった曹操を張遼が庇い、零れ弾を処理するが弾幕は途切れない。彼らが座り込んで動けない俺たちから意識を外さずを得ないレベルにだ。
というかコレ、俺らにも当たるだろ。実際微妙に掠ってる。
「おい、待て、いや聞こえてないだろうけど、くそっ、あの野郎。今度会ったら」
言葉の最終に張遼たちをすり抜けた弾丸が俺が眼前へ来た。
後ろから来た別の弾丸による
「……キスしてやろう」
張遼に切り払われたが、それでも全体的に大きな隙が生じた。だから、
「ハイマキィィ!!」
それでも、ハイマキは尻尾を巻いて逃げたわけではなかった。
近づけるギリギリまで来て、俺たちを、レキを救うタイミングをずっと見計らっていたのだ。まったく、実にできた狼である。
そしてその機は緋色の弾丸による奇襲によって僅かだが、確実に生み出された。
それを忠実なる狼は見逃さない。
雄叫びと共に降り注ぐ弾丸にも構わずに俺たちの前に。可能なかぎり身を低くして
「頼んだ」
「がうっ」
レキを載せて走り去る。
「しまっーー!」
「残念、もう遅いなぁ」
ハイマキはすぐに消えていった。あの狼は言うまでもなく俊敏だ。そこらへんの車よりもよっぽど速く走るし、こういう不安定な足場では猶更だろう。例えレキを載せていようとも、最近ではDVDブルーレイボックスとか限定版の箱などを運搬するという狼にあるまじきスキルを身に着けているので心配ないだろう。
そしてレキは去り。
代わりに――遠山キンジが現れる。その姿は未だ遠く、森の向こうでしかないがはっきりと見えた。
「おいおい、いつからライダーにクラスチェンジしやがった」
馬鹿げたことにバイクに乗ってである。制服にノーヘルで。それこそ仮面ライダーが乗っていそうな前傾姿勢のバイクだが、車輌科の資料で見たバイクの種類とは微妙に違う。やたらに近未来的というかそれこそライダーバイクだ。夜の中でも解る緋色のボディは森の中という悪環境を無視して疾走しどういうわけかほぼ無音で走っている。片手で運転しているのにそれというのは明らかに通常のバイクではない。
アリアが呉で試乗していると言っていたのはこれか。
「遠山キンジ……!」
夏侯淵が狙撃銃の引き金を引く。連続して弾丸が放たれるが、半分以上はキンジの
「フッーー!」
キンジの後ろでタンデムしていたアリアが二刀小太刀で切り払う。その刀身にも緋色の燐光が。狙撃銃の弾丸を切り払うという埒外の行為を行いながらアリアもキンジも態勢は崩れない。
夏候惇が前に出た。
長剣を下段に構え、居合気味の待ちの姿勢。バイクで悪路を走っている以上細かい動作はできないと判断したからこその動き。迫る鉄の塊にも飛来する弾丸にも臆することのない背中はまさしく英雄のそれと言っても過言ではない。俺から見ても納得だったし、おそらく最善手。
相手が通常のバイクだったら。
キンジは夏候惇の待ちに寧ろスピードを上げ――長剣の範囲外ギリギリで直角に曲がった。
「――な」
驚愕はもれなく四人分。だって在りえない。この森の中で。視界は最悪で。速度は時速数十キロ、あるいは百キロを超えていたであろうスピードで。唐突に停止し、即座に直角にカーブするなんていうのを世のバイク愛好家が聞いたら激怒するに違いない。
現行科学よりも数世代分先に進んだ技術によって作成された科学武装の一種。夏に俺に妖怪首置いてけという強烈なトラウマを与えてくれたフルダイブ装置もその一種であり、今キンジが乗っているバイクもそれだった。
後聞いた話だが、それはレキの後輩であるというどっかの財閥の少女のツテをアリアが経由し、呉でキンジが借り受けた
ここで問題なのは
つまり今キンジが乗っているのは試作品であるが故に採算度外視した性能のみを追い求めた逸品物であり、現在最高水準の技術が用いられた実験機でもあるということ。
馬鹿げた話だと後に盛大に呆れ、同時に羨ましさに涙を流すことになるが――今はそれに救われていた。
「くそっ……!」
夏候惇を抜けた。
緋色の影はそのまま速度を落とさずに駆ける。夏侯淵を抜け、待ち構えた張遼をウィリー走行の要領で飛び越えて、
アリアが俺をひっ捕まえてそのまま立ち去った。
「え?」
「逃げるのそこ!?」
張遼の間の抜けた驚きも夏侯淵の突っ込みも最もでぶちゃけ俺も同じ気持ちだった。
「おーい、こんなあっさり退いちゃうの? 森の中でバトルしないのかよ」
「馬鹿? こんな状況だからこそ、さっさと退いて態勢を立て直すのよ」
「そりゃあごもっとも。だが一つ良いかお友達」
「なによ」
「――微妙に足が引きずられてタイヤに巻き込まれそうだからもっとちゃんと捕まえてて!」
助けられて文句言うのもなんだが首根っこを摑まえられて苦しいし、言った通り足がタイヤに巻き込まれそうで怖い。情けないことこの上ないが引っ張られるしかない。
バイクに三人乗りとか事故フラグ以外のなにものでもないし。
しかし一人引きずっているのは三人乗りになるのか。
ならないことを信じる。
「……追撃はないか?」
「みたいね」
両手で運転しだしたキンジが問いかけアリアが答えた通り追撃はなかった。諦めてくれたのか、撃たれた主を気遣ったのか、それともどちらもか。肩を抜かれたというのはそこそこに重傷だ。止血をすぐにしなかったら死ぬ確率も高い。だから、曹操の治療のために今夜の戦闘はこれで終わった。完全に俺とレキがしてやられて、キンジとアリアに助けられる形になったがそれでも今夜の戦闘は終わった。勿論前哨戦といった戦い自体は終わっていないにしろ、この場での戦いは終わったのである。
「きひっ」
なんて思考が勘違いであることをその嗤い声で悟ることとなった。
瞬間比喩でもなんでもなく森が吹き飛んだ。
●
「っおおおおおおおおおおおおお!?」
「きゃああああああああああああああ!?」
「まじかあああああああああああああ!?」
三者三様。間の抜けた、それこそ絶叫マシンにでも乗ったかのような悲鳴を上げながら宙を舞う。咄嗟にキンジがハンドルを切ったから
痛むが構っていられる場合ではなかった。
「きひっ! きひっきひっきひっ」
台風が通り過ぎたかのような森に嗤い声が響いた。幅十メートルほど、長さは少なくとも遠くに国道らしき整備された大地が見えるほどの範囲が抉れられている。
その中で聞いた。
「驚いたネ。反応できなくて、当たって、吃驚して動くのを忘れてたヨ。あぁ……痛いと感じたは久しぶりだたネ」
曹操だった。先ほどとは変わらぬ位置で
「驚いて力加減を間違えたネ。思わず環境破壊してしまたヨ」
つまりこれは。
キンジのイロカネの気を用いた弾丸を受けて無傷だったが痛みに驚いて動きが止まって我に返って時に思わず腕を振り上げたら力加減を間違えて森を引き飛ばしたと?
なんだそれは。
俺もキンジもレキもアリアも遙歌もシャーロックもあの人も理子も白雪も。それぞれがそれぞれ突出した力の持ち主であるけれど、いくらなんでもそれはない。いや、遙歌ならおそらくできるだろう。あの人もできてもおかしくない。
だが、それは那須遙歌であるか。握拳裂であるからこそ。二人のような比類ない存在であるからこそ納得できるのだ。
那須遙歌という存在は後にも先にももう存在しないだろうし。
握拳裂という人外も俺がその存在の継承しなかったからもう存在できない。
なのに曹操は。この少女は――あの二人と同等の存在であるというのか。
「うむ、今日は満足したネ。痛み――流石遠山侍ヨ、期待したのは間違いなかタ。今夜は満足ネ、追って使いを出すから……今日は終いヨ」
そう言って曹操は俺たちに背を向けて去って行った。張遼たちも何も言わずに彼女に追従していく。多分、奇襲されたことによる自責の念があるのか、無言の顔は険しい。それでも曹操が終いと言ったが故に疑問を挟むことなく彼らは撤退した。
そうして残されたのは抉られた大地に残された俺たち三人。
「なんか……お前やばいの目つけられたな」
「うるさい言うな。軽く鬱になってくる」
「あれは……参ったわね」
「なんとかしてくれよ仮面ライダー」
「あー、バイクも大丈夫か? 壊したら弁償ってことないよなぁ」
「だったら私たち一生ただ働きね」
高そうだなアレ。アリアって結構な金持ちだったが、あんな不思議バイクの弁償とかはさすがに無理だろうなぁ。
「はぁ……」
三人で同じように息を吐く。
解っていたこととはいえ――今回の相手も極めて大変そうだ。
「レキ、大丈夫かなぁ」
キンジは ふしぎばいく を てにいれた
しかし ざんねん!
ここ は ひどい ちーと だった。
おうごんいんし こわい!
めっちゃふしぎ。
全話のは完全ノリなので本編とはなんの関係ありません。機を見て、番外編まとめに移動します。
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