〜Elysion〜   作:楽園

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白金燐子:会いたいです……

 ある日私は夢を見ました。

 貴方が私を抱きしめて、悲しみにくれている夢でした。

 そんな貴方を慰めてようと手を伸ばそうとしました……その時、私は夢から目覚めました。

 目覚めた時私の頬には涙がつたい、夢じゃないみたいでした。

 

 私と彼はもう付き合って3年になります。彼と過ごした日々は、どれもが何よりもの至福の時間でした。この幸せが永遠に続きますように……

 

 この時が永遠に……もっと早く気づいていたら、何か変わっていたのでしょうか? 

 

 ある日、彼が風邪をこじらせました。私も付きっきりで看ていたけど、全然熱が下がりませんでした。

 

「病院に行って診てもらえば治りますよね……」

 

 その時私は物事を軽く考えていました。

 

 1週間経っても彼は退院できませんでした。ただ、大丈夫だよと言うばかりで。でもね、何となく気づいてました。

 私の両親までも毎日毎日彼の様子を見に来てくれました。

 

 彼が入院してから2週間が経ちました。

 彼の身体をを蝕んでいる病気の正体をお医者さんから聞きました。

 

「必ず治るからさ!」

 

 そう言って貴方は笑って私を抱きしめてくれました。

 不思議と涙は出なくて、貴方がいなくてなる事を無意識に拒絶して信じていませんでした。

 

 奇跡は誰にでも起こせるのでしょうか? お願いだから後もう少しだけ……私の思っていた以上に命の灯火は儚いものでした。

 

 私は貴方の隣にずっといられると思っていました。当たり前の毎日が、ありきたりな毎日がこれからもずっと続いていくと。

 それなのに、こんなに早く貴方から離れなきゃいけないのなら、出会わなければ良かった……好きにならなければ良かった……

 

 貴方が私だけに言ってくれる言葉。

 

『愛してる』

 

 その言葉は後 何回聞けますか? 彼の余命は幾日もないのに。

 最初はドラマみたいだなって思いました。それでも、余命三ヵ月とか半年とかならよく聞きました。でも、幾日って何ですか? 

 

 彼の病気はもー手を尽くす事もできないくらいに貴方の身体を蝕んでて……死を待つしかなかないみたいです。

 

 何で彼なのでしょうか? どうしてこうなってしまったのでしょうか? 駄々をこねる子供のように「なんで?」「どうして?」と繰り返す私。

 

 そんな事を考えたって全く意味が無い事だってわかっていました。泣き叫ぶ私に貴方は、

 

「大丈夫だよ!」

 

 って笑いながら励ましてくれましたね。

 1番辛いのは貴方のはずなのに……こんな時までわがままで自分勝手な私を許してください。

 それ程までに、貴方を失う事が信じられなくて、辛くて、恐かったです。

 

「結婚してください」

 

 私はそう言って彼に指輪を渡しました。

 本来ならば男の人からする行為だと思いました。私も出来れば貴方の方からしてもらいたかったです。でも、この状況で貴方が私にそんな事をしてくるはずがありません。

 

 優しい貴方はきっと私に、新しい相手を見つけるように促すと思います。そんな事はこちらからお断りします。私は貴方が好きです。貴方がいいんです。貴方以外あり得ないんです。

 

「これから旅立つ俺にはその指輪をはめる資格なんてない……」

 

「私には貴方がいなくなるなんて信じられないんです……だから、私に勇気をくれませんか? 貴方がいなくなっても生きていけるように」

 

 私の指に指輪をはめる彼の手は震えていました。ありがとうとごめんをずっと貴方は繰り返していましたね。感謝をしたいのは私も同じ気持ちですよ。

 

 そして、この時ほど奇跡を願った事はありませんでした。

 

 神様、あともう少しだけ、彼に時間を下さい。沢山の時間を2人で過ごしてきました。残りの時間もひとつひとつを刻みつけていきたいです。

 

「なぁ、燐子、2人が出会った日の事覚えてるか?」

「桜が本当に綺麗で、晴れた日でしたよね?」

 

 音楽室で1人ピアノを弾いていた私に 彼がが声をかけてきてくれました。少し強引な所もあり、最初は迷惑だなって思っていました。何度断っても諦めない貴方に 仕方なくアドレスを教えたのが私と貴方の始まりでしたね。

 

 何度も連絡を取り合い、会って行く内に、彼に惹かれていく自分がいて 気づけば貴方からの連絡を心待ちにしていました。

 何度もデートを重ねて行く度に私は貴方を沢山知りたいと思うようになりました。

 

 貴方からの

 

「付き合って下さい」

 

 って言葉がどれ程嬉しかったか貴方は分かりますか? 

 あの日の照れて真っ赤になった貴方の顔は絶対に忘れません。

 今でも、あの時と変わらず貴方の事が大好きです。

 

 今は一分一秒でも長く貴方と一緒にいたいです。愛してます。今でも変わらず貴方の事を。

 誰よりも何よりも貴方だけを愛しています。

 こんなに重たい私は嫌いですか? 

 こんな私でも貴方は好きでいてくれますか? 

 

『ずっと燐子と一緒にいるって約束したのに守れなくてごめんな……』

 

 貴方に出会って初めて人を愛する気持ちを知りました。人を愛する事がこんなに苦しい事も全部貴方が教えてくれました。

 

 私を愛してくれてありがとうございます。

 

 私に愛させてくれてありがとうございました。

 

 今までずっと側にいてくれて嬉しかったです。

 

 私を抱きしめてくれてありがとうございました。

 

 貴方には伝えきれないくらいの感謝でいっぱいです。

 

 だから、せめて天国でゆっくり休んで下さい。

 

 本当は私の手で貴方を幸せにしたかったです。でも、それができなくてごめんなさい。

 

 誰がなんと言おうと貴方が私にとっての一番でした。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 沢山の、彩りどりの線が彼の身体を繋いでた。

 

 私には彼を見守る事しかできなくて、それでも側にいたくて。

 

「燐子」

「……はい、なんでしょうか?」

「……燐子のピアノの音……聞かせてくれないか?」

 

 いたずらな顔でお願いする彼の表情はとても辛そうでした。

 私は、ピアノアプリを起動して、彼の為に音楽を奏でた。

 

「ありがとな」

 

 そう言って彼は微笑んで目を閉じた。

 

 彼との思い出が走馬灯のように駆け回る。

 

 貴方と過ごした日々、私は本当に幸せでした。

 

 私は貴方の彼女でいられて本当に良かったって思っています。

 

 沢山喧嘩もしました。でも、それ以上に、沢山笑い合えましたよね? 

 

 貴方の隣は本当に居心地がよくて幸せだと感じられる場所でした。

 

 貴方に愛してもらえた私はきっと誰よりも幸せだって思います。

 

 貴方が死ぬのは本当に怖いです。

 

 怖くて怖くて仕方ないです。

 

 眠ってしまったのでしょうか? 

 

 先程から彼の反応がありません。

 

 そして、病室に鳴り響く彼の命の終わりをつげる無機質な音。

 

 その音に私の奏でていた音色はかき消されていきました。

 

 次々ととお医者さんや看護師さんが病室に入ってきました。

 

「離れて下さい」

 

 彼は酸素マスクをつけられ、心臓マッサージをほどこされていました。

 

 その光景は本当にドラマを見ているようで私はただ動けずにいました。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 後日、彼の両親から私宛の手紙をもらいました。

 

 

 

 燐子へ

 

 燐子、俺はお前の事をずっと愛しています。

 

 燐子出会って、燐子を愛せて本当に良かった。

 

 本当にありがとう。

 

 俺は遠くに行くけど、さよならは言わないからな? 

 

 いつか燐子が、しわくちゃのおばあさんになって俺の所に来る時にまた逢えるからな。

 

 だからさよならじゃないだろ? 少しの間お別れだ。

 

 でも、燐子は幸せになってくれなきゃ俺が成仏できないからな! 

 

 だから俺を供養するつもりで 幸せになって欲しい。

 

 愛してる、愛してます。

 

 俺の最後が燐子で良かった』

 

 

 

 何度彼の名前を呼んでも返事は返ってきません。

 

 泣きわめいても叫んでも貴方は戻って来ないんですね……

 

 今はまだ貴方以外の誰かとなんて考えられません。

 

 貴方をまだ……こんなにも愛しいます。

 

 先に逝くなんて……私を置いて逝くなんてそんなのひどすぎますよ……

 

 私を愛してるなら戻って来てくださいよ……

 

 私を1人にしないでください……

 

 いつものように「愛してる」って耳もとで囁いてください……

 

 貴方がいない幸せなんて私にはまだ考えられません……

 

 もう一度会いたいです……

 

 私の最愛の貴方に……

 

 

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