〜Elysion〜 作:楽園
──街はクリスマス一色。
きらびやかに彩られたツリーや、道を歩く仲よさげな家族たち。そして、カップルたち。
アタシはそんなカップルたちを見つめていた。
「うらやましいなぁ……」
そんな呟きは街のざわめきに消えた。手を組みながら話をしているカップル。手を繋ぎながら恥ずかしそうに歩くカップル。アタシはただ、それを見つめているだけ。隣には誰も……いない。
……なんで、アタシは一人なんだろう?
そんなことを考えたら、瞳から涙が一筋、落ちた。
本当は……一人じゃなかったはず。前から、予定は開けていたの……あの人のために。なのに、ここに貴方はいない。そう思うと、涙がまた落ちる。
一筋、一筋……ついには止まらなくなってしまった。
別に、振られたわけじゃない。あの人が浮気をしたわけでもない。彼はバイトに行っただけ。なのに、こんなにも不安になるのはあの人がバイト先の人と一緒にいたからかなぁ……? クリスマス一緒に過ごそうね、って約束したのを忘れたわけじゃないと思う。ただ……頼まれただけ、そうでしょう?
アタシはそんなことを考えながら、一人で街を歩く。すると、頬に冷たい何かが触れた。何かと思い、上を見上げると…………雪。真っ白な粉雪。街中は雪が降り、盛り上がった。アタシもいつもなら盛り上がるだろう。でも……今はそんな気分じゃない。だって、泣いてるから。
「もう、帰ろ……」
空しくなるだけだから。踵を返そうとした刹那……後ろから暖かい何かがアタシに触れた。すると頭上から、
「リサ……」
っと聞き慣れた……愛しい声が聞こえた。
「大輔……」
……まさか、大輔がここにいるなんて。大輔はアタシの恋人。待ち侘びたあの人。
「ごめんな……」
「ううん……いいの……」
大輔が謝ってくれたからどうでもよくなっちゃった。
「バイトって言うのは嘘なんだ」
「……じゃあ、バイト先の女の人と?」
私がそう尋ねると大輔はわけがわからない、って顔をする。
「バイト先の女の人って……?」
「とぼけないで! アタシ見たんだよ!? 二人で仲良さそうに……」
つい、声を荒げるアタシ。
「……ああ、あれな。あれは……」
そう言いながら、ポケットを探る大輔。何、やってるの……?
「これのためだよ」
そう言ってアタシの目の前に小さな箱を出す。もしかして、これ……は……そして大輔は小さな箱をゆっくりと開けた。
その中身は、
「指輪……」
今にも号泣しそうな声で言うアタシ。
「リサに渡したくて……、嬉しくなかった?」
アタシを、心配そうな目で見つめる大輔。
「バカぁ……、嬉しいに決まってるでしょぉ……!」
アタシの涙腺はもう、崩壊していた。
「バイト先の先輩にいい場所教えてもらってただけだよ……」
「ごめんね、誤解しちゃって……」
バカだな、アタシって。勘違いなんかして。すると、大輔は、
「はめていい?」
指輪を手に持ちながらそう言った。
「もちろんっ!」
そして、大輔はアタシの指に指輪をはめた。
……はずだった。
だがその指輪をアタシの指にハマる事なく無慈悲にも地面に落ちていく。
「……夢か」
この季節になると思い出してしまう。
アタシに渡そうとしたであろう指輪を持ちながら交通事故に遭って帰らぬ人となった彼を……
そしてアタシは無自覚に作り上げてしまう。あの時の結末を変えたハッピーエンドの物語を……
そう、何年経っても立ち直れないまま……