やはり俺がデビルハンターなのはまちがっている。   作:推し鋸

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エイプリールフール大好き!


第3話 公安・ユキノ・猫

「比企谷くんこっちこっち!」

 

 案内されたのはめちゃくちゃTOKYOな建物だった。

 我ながら意味わからんな。でも、東京駅周辺にこんな感じのしっかりした建物多いよね。

 

「ここがデビルハンター東京本部だよ」

 

 ハルノさんに連れられて館内を案内される。

 思ったより公務員感強いな。皆スーツだし。若干引き締まった体の男が多い気もするけど。ここにいるみんなが悪魔と戦ってるとは想像できんな。

 

「ウチは基本制服だから。これ着てね」

 

 渡された制服に着替えると、次は同僚を紹介してくれるらしい。

 俺とバディを組んで働く相手だそうだ。

 嫌だなあ。いくつになっても初対面というものは緊張する。

 ハルノさんとは、出会いが特殊だったせいかあんまりだったけど。

 案内されたのは会議室だった。

 

「……俺、会議室に入ると死んでしまう病が」

「大丈夫だよ。きみは死んでもすぐ生き返るから」

 

 やっぱ怖えわ。わかった。緊張しないんじゃなくて、通り越して恐怖してるだけだわ。

 

「気をつけてね。彼女は魔人だから」

「魔人?」

「人の死体を乗っ取た悪魔だよ。頭の形状が特徴的なの」

「へえ」

「まあ、見ればわかるよ」

 

 ハルノさんはからりと戸を開けた。

 その会議室の端っこには机と椅子が無造作に積み重ねられている。倉庫として使われているのだろうか。

 そして、そこには一人の少女がいた。

 俺はいつかの光景を思い出す。

 

「雪ノ下……」

 

 思わず、その名を呟く。

 端正な顔立ちに流れる黒髪。あまりにもよく似ていて、でも違う。

 その頭には青く透き通る二本の角が生えていた。

 

「入るときにはノックするよう、言っていたはずだけど」

 

 声も口調もそっくりなのに。

 

「だってノックしても返事してくれないでしょ」

「そっちが返事する間もなく入ってくるんでしょう」

 

 ハルノさんに不満げな目を向ける。

 この二人の関係性はまあまあ良好っぽいな。

 俺ならハルノさんにこんな目向けられないもん。怖くて。

 

「それで、そのぬぼーっとした人間は誰?」

 

 今度は俺に目が向く。冷たい目立った。

 ほんとに出会った頃の雪ノ下みたいだな。

 いや、ほんと初期のんの冷たさはやばかった。雪女が裸足で逃げ出すくらい。

 

「彼は比企谷くん。今日から一緒に働くんだよ」

「……よろしく」

 

 軽く頭を下げる。

 

「断るわ。そこの男は下心に満ちた目でワタシを見てくる」

「誰がだ」

 

 ちょっと懐かしい気持ちで見ているだけだ。

 

「この子のことはユキノって呼んでね」

「ユキノっすか……」

 

 やっぱりか。

 

「ユキノちゃんは魔人になる前は『氷の悪魔』だったから水を使った戦いが得意なんだ」

「へえ」

 

 ユキノで氷ね。ほんとに雪の女王じゃねえか。姉でなく妹だけどな。

 

「魔人は悪魔と同じ駆除対象なんだけど、ユキノちゃんは理性が高いからデビルハンターの仕事を手伝わせてるんだ」

 

 たしかに雪ノ下に似ているなら理性は強いだろうな。

 

「これからは二人でバディとして働いてね。二人の活躍楽しみにしてるよ」

 

 じゃあ、後はよろしくとハルノさんはどこかに行ってしまった。

 ぽつんと取り残される俺。

 ま、ずっとハルノさんが傍にいるよりは動きやすいか。

 

「……」

 

 うーん気まずい。

 ほぼ容姿が雪ノ下の分なおさらやりずらいな。どんな距離感で接したらいいかわからん。

 えーっと雪ノ下との初対面はどんなだったかな……。

 たしか、どうしたらいいかわからず突っ立てた俺に座るよう促してきたんだったか。

 

「何か?」

「いや、悪い。どうしたものかと思ってな」

「そんなとこで突っ立ってないでひれ伏せば?」

「想定の一個下で来たな……」

 

 こいつ雪ノ下より冷たいかもしれん。雪ノ下の下だ。

 

「ひれ伏しなさい人間。ワタシの名はユキノ。あなたのような目の腐った人間がバディとは心外だけど、ハルノからは逃げられないから。嫌々仕方なくあなたの仕事を手伝ってあげるわ。感謝しなさい」

 

 こんのアマ……。

 あれ、俺って雪ノ下とはどうやって仲良くなったんだっけ?

 ハチマンうまくやっていく自信がなくなっちゃったよ。

 

 

 雪ノ下の下。角の生えた雪ノ下ことユキノと一緒にパトロールに出かけることになった。

 悪魔を探し出して駆除するのだ。

 

「人間。はやく何か殺させなさい。ワタシはのどが渇いているわ」

「……」

「ワタシはとても恐れられていた悪魔だから、ワタシの匂いで雑魚悪魔は逃げていくんでしょうけど」

「……」

「あら、ならあなたはなぜ近くにいられるのかしら。不思議ね雑魚悪魔くん」

 

 ……無視無視。

 こいつ、めちゃくちゃうるさいな

 しかし、ほんとに見つからんもんだな。

 こいつの話がほんとなら、こいつといれば悪魔除けになるということだ。つまり戦わなくて済む。わあ、シルバースプレーみたいで便利。

 

「血の匂いよ!」

「あ、おい!」

 

 あっという間に駆けていく。

 

「足速っ」

 

 ユキノは屋上から飛び降りる。

 左腕から水が飛び出し巨大な氷のハンマーを形作る。

 落下の勢いそのままに振り下ろされたハンマーが、道路にいた悪魔をぺしゃんこにした。

 

 

 俺とユキノはハルノさんから説教を受けていた。

 どうやら民間が手を付けた悪魔を公安が横取りするのは業務妨害らしい。まあ、人のシマを荒らしちゃダメだよな。

 

「ユキノちゃんはもうちょっと考えて行動しないと。……比企谷くんもちゃんと制御して」

「……っす」

「ユキノちゃんは氷の悪魔のくせに、すぐに熱くなるし負けず嫌いだから向いてないのかな」

「こいつが殺せと言ったのよ」

 

 俺を指さしてくる。こいつ擦り付けてきやがった。

 

「いや俺言ってないっすよ」

「知ってる? ワタシ、暴言も失言も吐くけれど、虚言だけは吐いたことがないの」

「いままさに嘘に嘘を重ねてますよね!」

 

 とんでもない虚言癖だ。

 

「悪魔は嘘をつけないわ。嘘を吐くのは人間だけ」

「それっぽい設定を勝手に足すな!」

「静かにできる?」

 

 ハルノさんの言葉にぴたっと空気が凍る。

 静かな口調なのに込められた殺気が半端ない。

 こわぁ。

 

「正直どっちが足を引っ張たかはどうでもいいの。私は二人の活躍をみたいんだ。私に活躍見せられそう?」

 

 眼光がえぐい。

 

「で、できるわ」

「はい。仰せのままに!」

 

 俺達は息ぴったりに返事をした。

 

 

 パトロール中、自販機を見つけたので小休止とする。

 やっぱマックスコーヒーはないなあ。地域か時代か。残念だ。

 そろそろあの甘さが恋しくなってくる。

 禁断症状で手が震え出してもおかしくない。マッカンは百薬の長。

 ユキノはどこで見つけたか野良猫をあやしている。

 そうして猫を愛でている姿は、俺のよく知る雪ノ下と見分けがつかない。

 

「ワタシが仲良くできるのは猫だけよ」

 

 ユキノが誰に言うでもない口調で語りだす。

 しかし、ここにいるのは俺と猫だけだ。

 猫に話しかけるときには猫語のはずだから、消去法でいくと俺に話してるのだろう。

 

「人間は嫌いよ。悪魔の本能のようなもので嫌い。そして悪魔も嫌い。悪魔はワタシの飼ってたカマクラを連れ去った」

「なんだって?」

 

 いまカマクラって言ったか?

 

「カマクラをとりもどす前にハルノにつかまってしまった。もしかしたらもう殺されてるかもしれないけど、あきらめきれない」

 

 野良猫を抱き締めながら、悲痛そうに唇を噛む。

 その表情は悪魔のものには見えない。血の通った人間そのものに見えた。

 

「もし、助けることができたら人間の味方でもなんでもするわ。どんな命令でも聞いたっていい」

 

 それは懐かしい響きだった。どんな命令でも、か。

 

「……俺は何をすればいいんだ」

「え?」

「手伝ってやるよ。ほら、俺達いちおう、バ、バディだし」

 

 肝心なところでどもってしまう。こういうのはいつまでたっても慣れないな。

 

「それに猫をひどい目に合わせるやつは許さん」

 

 俺も猫派だしな。名前がカマクラならなおさらだ。

 このとき俺はもしかしたら雪ノ下との関係のように、ユキノともここからはじめることができるんじゃないかと、そんな風に考えていたのだ。

 

 すぐに俺は、それが愚かな間違いだったと知ることになる。




雪ノ下パワー登場しました。
そのまま雪ノ下に角が生えた見た目でご想像ください。ちょっとロンと被りますが。
ちなみに現時点では、この物語のヒロインは雪乃予定です。

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