やはり俺がデビルハンターなのはまちがっている。   作:推し鋸

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雪ノ下大好き!


第4話 嘘・コウモリ・バディ

 事務の窓口で外出許可をもらう。こういうところ公安もお役所仕事なんだなあと感じる。あれ、気づけば俺堅実な公務員になっちゃってる? 仕事内容は悪魔を狩るという命懸けの安定とはほど遠いものだが。

 目的地へ電車に乗って移動する。

 

「外出に許可がいるんだな」

 

 少し距離を空けて座るユキノに話しかける。

 

「ええ。居場所がわかっているのに、人間に協力をお願いしなきゃならない理由のひとつがそれね。……もうひとつの理由は敵にワタシの姿を見られたらカマクラを人質に取られてしまうから。だから戦えるのはあなただけなのだけど……そもそもあなた、戦えるの?」

「まあ……経験は少ないけどな」

 

 刀を使えばそこそこ戦えるはずだ。一応、準備してきたものもあるしな。

 

「お前こそ強いのかよ」

 

 庇いながら戦うとなると難易度が上がる。

 

「いったい誰に言ってるのかしら」

 

 どうやら自信満々のようだ。

 しかし、ハルノさんから悪魔はその名前が恐れられている方が強いって聞いたけどな。こいつ、氷の悪魔だろ。氷って怖いか? つららに雹、氷山てなもんか。タイタニック号の船長なら氷山は怖いだろうけどな。

 まあ、いざってときに自分の身を守ってくれるならなんでもいい。

 

「それにしても許可がないと外出もできないなんて、お前友達いんの?」

 

 俺がそう聞くと、ユキノはふいっと視線を逸らした。

 

「まずはどこからどこまでが友だちなのか定義してもらっていいかしら」

「あ、もういいわ」

 

 そのセリフは友達いないやつのセリフだ。ソースは過去の俺。

 

「あなたこそ、その腐った目では友人なんていないでしょう」

 

 まあ、ちょっと前までの俺なら迷うことなく頷いていたな。

 話す相手なんて妹くらいしかいなかった。自他ともに認めるぼっち。一生それでいいと思っていた。でも、奉仕部に入って色んなやつらに出会って……。

 

「俺も、ちょっと前までは孤独だったけどな。一歩踏み出して周りを見てみたら、意外と近くにいろんなやつがいたわ」

 

 もう孤独なぼっちだなんて、口が裂けても言えねえな。

 

「……人間は嘘ばかりね」

「嘘じゃねえわ、というかお前にだけは言われたくないぞ」

「ワタシは嘘をついたことなんてないわ」

「その言葉が嘘だ」

 

 ダウト! 異議あり! 嘘だ!! 俺の中のあらゆる突っ込みが飛び出すぞ。

 

「まあ嘘でも可愛い嘘ならいいかもしれんが……」

「なら大丈夫ね。ワタシ可愛いもの」

「いやお前はただ可愛い嘘つきなだけで、ついてる嘘はまったく可愛くないぞ」

 

 腹立つ嘘ばかりだ。

 

「お前な……とりあえずその虚言癖を直さないと友達出来ねえぞ。嘘ってのはつく方は簡単だけどな……騙された側は結構ダメージ食らうんだぞ」

 

 信頼を裏切られるのは案外辛いものだ。それこそたった一度の裏切りで人格がひねくれてしまうくらいに。

 

「保護者のようなこと言わないでくれるかしら。私の家族はカマクラだけよ」

「そうかよ」

 

 そっれきり会話は途切れた。……なかなか分かり合うのは難しいもんだ。

 

 電車を降りて歩くこと十分。目的の場所に着いた。

 

「あそこよ」

 

 指さした先は丘の上にある一軒家。

 いよいよ戦闘か。

 

「あんまり悪魔の力を使わないようにしたいもんだ」

「悪魔の力?」

「ああ。俺の刀には悪魔の力が宿ってんの。でも、使うと内臓もってかれてしんどいからあんま使いたくない」

「……人間の冗談は笑えないわね。それともあなたが特別つまらない人間なのかしら」

 

 こいつ信じてねえな。まあいいけど。

 

「……なあ、こんなに近づいていいのか。お前が見つかるとカマクラを人質にされんだろ」

「……そういう設定だったかしら」

「設定?」

 

 一瞬、ユキノが腕を振るう。防御をする暇もなかった。

 氷のトンカチで叩かれたのだと、倒れてから気づいた。

 やべえ……頭蓋骨凹んだ。頭がくらくらする。視界の半分が赤く染まる。

 

「馬鹿なくせに勘も悪いのね」

 

 ぐいぐいと、家の中に引っ張られる。抵抗しようと思ったが体が動かない。

 意識にもやがかかってるみたいだ。

 家の中に入ると、巨大な影が待っていた。

 

「随分と私を待たせたな……氷の悪魔よ……逃げたのかと思ったぞ」

 

 影から野太い声が聞こえる。

 

「ようやく外に出れたのだから文句を言わないでくれるかしら」

 

 ずるずると影の目の前まで運ばれる。

 

「コウモリ……約束通り人間をつれてきたわ」

 

 巨大な影は、屋根まで届くほどの化け物コウモリだった。

 

「久しぶりの食事……! 若い男か。精力がつきそうだ……!」

「ぐあっ……!」

 

 巨大な腕に持ち上げられる。

 

「人間。この腕の傷をみろ!この私を隠れざるをえなくさせた忌々しい傷だ!」

 

 肘のあたりまでしかない右腕を見せつけられる。

 そんなん知るか。

 

「ぐき、ぐあああ」

 

 握る手に力が入り、猛烈な痛みとともに全身の骨が折れる音がする。

 コウモリは俺から出た血を口に入れている。

 くそ……いてえ……。

 床にたたきつけられる。また骨の折れるいやな音がする。

 

「不味い血で復活してしまったじゃないか……!」

 

 視界の端、コウモリが屋根を吹き飛ばし飛び出してくのが見える。

 家の中に光が刺す。

 その光の中心、ちょうどユキノが立っていた。

 ユキノは恐ろしいほど冷めた目で俺を見ていた。

 

「よくワタシの話を信用できたものね。やはり人間は愚かね」

 

 その顔で、俺をそんな目でみるんじゃねえ。

 怒鳴りつけてやりたいが、あまりの痛みに声も出せない。

 

「コウモリの悪魔! 約束は果たしたわ。カマクラを返しなさい」

 

 ユキノはコウモリに呼びかける。

 

「ん~~? ああ……そういう話だったか!」

 

 コウモリが鳥かごに入った猫を掲げて見せる。俺の血を飲んだからか右腕が再生していた。

 

「私に不味い血を持ってきた罰がまだだったな」

 

 コウモリは籠ごとカマクラを丸呑みした。

 

「カマクラ!」

 

 ゴクンと音が鳴る。

 その瞬間、いったいどれだけの絶望に襲われたのか。

 ユキノの表情には感情らしい感情は見えなかった。

 振り向き、横たわる俺を見つめてくる。

 

「騙されるのは傷つくと言っていたわね……」

 

 ユキノは下手くそな笑みを浮かべていた。

 

「あなたの気持ちわかったわ。酷い気分ね」

 

 そして、ユキノもガッと掴まれ丸呑みにされた。

 くそ! なんて顔してんだよ。俺は、なんて顔させてんだ。

 

「不味い! 不味い血ばかりだ! 子供の血でうがいをしなければ……!」

 

 コウモリが羽ばたこうとする。

 くそ……間に合えっ!

 俺は刀を掴む。

 

 飛び立った瞬間、ぎりぎりで足にしがみつく。

 あっという間に地面が遠くなる。

 

「前菜は生娘、スープは熟した健康な女がいい……」

 

 どうやら街に向かうつもりらしい。

 雪ノ下、由比ヶ浜、戸塚、平塚先生、みんなの顔が浮かぶ。

 俺は、ずっとぼっちでも平気だと思っていた。でも奉仕部に入って、みんなに出会って変わったよ。

 だって、いまこんなにもみんなに会いたい。

 ……ユキノはあの会議室で、依頼者も誰も訪れない部屋で、唯一の家族であるカマクラさえ失って、いったいどんな時間を過ごしていたのだろう。

 俺は刀を抜く。

 

「んん?」

 

 ようやくコウモリが俺の存在に気づく。存在感のなさが役立ったぜ。

 

「くらえ」

 

 ダイヤルNo.1ブラッドブレード。訳して……。

 

「血ー刃!」

 

 振るった刃が、翼を切り裂いた。




カマクラって名前は雪ノ下の飼いネコにぴったりですよね。
名前が恐れられているほど力が増す悪魔。
よければみなさんの考える「ぼくが考えた最強の悪魔」教えてください。

ここまでお読みいただきありがとうございます。
感想・高評価よろしくお願いします。
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