やはり俺がデビルハンターなのはまちがっている。   作:推し鋸

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ループもの大好き!


第7話 初対面・ユイ・ホテル

 

「……由比ヶ浜」

 

 会議室への訪問者はよく見知った人物だった。

 明るめの髪はくるっとお団子状にまとめられ、二つ三つボタンが開けられたシャツの胸元にはハートのチャームが揺れる。明るい性根がそのままにじみ出たような笑顔も声も、俺のよく知る由比ヶ浜結衣と同じだった。

 ただパンツルックなのと右目の眼帯だけが異質で、やはりこの由比ヶ浜もどこか違っていることを教えてくれる。

 ……ここまで続くと、いよいよ受け止めなければならんな。どうやらこの世界には俺の身近な人物が少し形を変えて存在しているらしい。こういうのなんていうんだっけな。集団転生? それとも俺の願望が現実を歪めているのか。俺に眼帯趣味はないぞ……。

 

「あ、あたしのこと知ってるんだ」

「……今回一緒についてきてくれる先輩……ですよね」

「あそっか。ハルノさんから聞いてるんだよね! 由比ヶ浜ユイです。よろしくっ」

「……うす。比企谷っす」

「うんヒッキーくん、だよね。……ハルノさんが言ってた通りだ」

 

 いったい何を言われてるんだろうか。というか今回もヒッキー呼びは不変ですか。

 

「あたしのことはユイ先輩って呼んでねっ」

「はあ」

 

 えらくグイグイくる。もともと高いコミュ力を持っている由比ヶ浜だが、実際に就職をして後輩に接するときにはこんな感じになるのだろうか。これくらいの方がコミュ障にはありがたいかもな。

 由比ヶ浜……もといユイ先輩は俺とのファーストコンタクトを済ますと、次いでユキノの方に向き直った。

 

「ユキノンっ!」

 

 がばっとユイ先輩がユキノに抱き着く。

 

「……誰だか知らないけれど、抱き着かないでちょうだい」

「ひどい! さっき自己紹介したばっかだしっ。何回も会ってるよ!」

「そうだったかしら……。あいにく類人猿の分類には詳しくなくて」

「あたしお猿さんじゃないよっ!」

 

 厳密には類人猿もお猿ではないけどな。……というかユキノの暴言は俺以外にも発動するんだな。

 

「あー、仲良いんだな」

「どこを見てそう思ったのかしら。不愉快よ」

「なんでなんで仲良くしようよユキノーンっ」

「……頭を叩けば少しは静かになるかしら」

 

 うーん大丈夫だろうか。チームワークに不安アリ。

 

 

 自己紹介を済ませた俺たちは悪魔が出現したというホテルに向かっていた。

 

「今回の任務は危険かもだから、どんどん先輩のあたしを頼っていいからね!」

 

 胸をぽんと叩く。その衝撃で胸部がぽよんと揺れる。

 

「不安ね」

 

 不安だ。……珍しくユキノと意見が一致したな。このユイ先輩が戦う様子が想像できない。緊張感がなくどうにも頼りなく見える。 

 

「今回活躍した人にはなんと! 先輩からのご褒美として手作りクッキーをあげまーす!」

「いらん」

「いらないわ」

 

 またしても意見が一致した。

 

「なんでよユキノン! ヒッキーまでっ」

「すんません。なんとなく……」

「もうっ。あとで欲しいって言ってもあげないかんね」

 

 そんなこんな雑談をしているうちに目的のホテルに着いた。

 

「うん。結晶が反応してる。間違いなくこの中にいるみたい」

「海の悪魔の本体がいる可能性はないんすか?」

「結晶が大きいほど反応も大きくなるんだって! これくらいの反応は違うかなあ」

「そうっすか」

「こんな町中に海の悪魔がいたらたいへんだよっ。みんな死んじゃうと思う……」

 

 そんなに手ごわい悪魔なのか。どうにも実感がわかない。

 

「ユイ……先輩は何の悪魔を使うんですか」

「あたし? あたしはねえ……これだよ!」

 

 ユイ先輩が右手を構えると、俺の頭がポンポンと叩かれる。

 

「うお」

 

 慌てて頭を払うが何も見えないし何も触れない。なのに間違いなく叩かれる感触がある。

 

「あたしは幽霊の悪魔と契約してるんだ。透明だし力持ちだしすっごい便利なんだよ」

 

 確かに。視認不可防御不能と考えるとかなり強力かもしれない。

 俺はユイ先輩への評価を改めた。

 

「それじゃあ……行こうか」

 

 俺たちは悪魔のいるホテルに足を踏み入れた。

 結晶の反応を頼りにホテル内を散策する。しかしホテル内には悪魔はおろか人っ子ひとりいない。……ダウジングでツチノコを探している気分だ。

 

「ヒッキーくんはどんな戦い方なの?」

「俺は、刀に入った悪魔の力を使います。能力は……まあ色々っす」

「ふうんすごいね。そうだよね……ハルノさんのお気に入りだもんね」

「はあ……そうっすかね」

 

 まったく自覚はないが。

 

「ワタシは氷を操って戦うわ」

「ユキノンのは知ってるからいいや」

「ちなみにワタシの氷はハルノや海の悪魔より強いわ」

「最強じゃんか」

 

 それが本当ならな。

 

「悪魔を見つけたらあたしが動きを止めるから、とどめは任せるからねっ」

「うす」

「大丈夫。どうなってもフォローするから」

 

 ……もとの由比ヶ浜を知ってるからか、どうにも先輩面になれないな。しかし、同じクラス同じ部活メイトとして接しているからポンコツなイメージが強いが、元来面倒見がよくコミュ力が高い気配り上手だ。後輩からしたら割と理想の先輩なのかもしれんな。ブラックな職場も明るく照らしてくれそうだ。

 

「ストップ!」

 

 廊下を歩いていたところで、ユイ先輩が手で俺たちを制した。

 

「来る」

 

 部屋の一室の扉が、静かに開く。

 

 出てきたのは一頭身のおっさんだった。人間の頭に手の平が脚みたいについている。

 こんな可愛くない一頭身初めて見たぞ。いやカ⚪︎ビィが奇跡のデザインなのか。一頭身界の星。

 おっさん型の悪魔は俺たちの姿を認めると、だっと飛び上がった。

 このままではぶつかるというところで、空中で制止した。

 

「捕まえた!」

 

 ユイ先輩が手を掲げていた。幽霊の悪魔の力か。

 

「戦闘ね」

 

 ユキノが手首から氷の刃を出し、一振り。

 おっさんは真っ二つになった。

 べちゃりと血が廊下に広がる。

 

「やったねユキノン作戦通り!」

「ワタシの立てた作戦だもの当然ね」

「うんうんユキノンはすごいなあ」

 

 ユイ先輩とユキノがゆりゆりと喜びを分かち合う。

 あれ、俺なんもしてないわ。

 ま、いっか。

 

「うーん。反応がないなあ。こいつじゃないみたい。……上の階に行ってみようか」

「比企谷くんはそこのゴミをちゃんと掃除しておいてちょうだい」

「俺はルンバじゃねえ」

「そうね……あなたが動きまわればそれだけ汚れが広がるようなものだものね」

「人を菌扱いするな。俺の綺麗好き知ってるだろうが」

「そうだったかしら。あなたがどれだけ綺麗好きでも、綺麗はあなたのこと嫌いでしょうけど」

「なんだよ綺麗に嫌われるって」

 

 斬新な悪口過ぎる。

 

「なんか二人は……すっごく仲がいいんだね」

「そう…すかね。ただのバディですよ」

「あら、今のはワタシの体を揶揄した発言かしら。セクハラ谷くん」

「自意識過剰だ」

 

 たしかにユイ先輩と並ぶと胸囲の差が明白になるけど。ユイパイ脅威の胸囲。まさにナイスバディ。

 

「そういえばハルノのこともいやらしい目で見ていたわね。ワタシも胸パッド入れようかしら」

「ヒッキーくん最っ低!」

「誤解だ誤解」

「もうっ……あたしの前ではセクハラ禁止だかんね」

 

 そんな風に緊張感のない話をしていたせいか、気づくのが遅れた。

 

「あれ?」

「どうしたのヒッキーくん」

「俺たち今……8階から9階へ行く階段を上ったっすよね」

「うん」

「ここも8階なんすけど……」

 

 数え間違いか? いや、間違いない。

 

「ユイ先輩。ちょっとダブルピースしててください」

「え、うん。わかった」

 

 俺は階段を下りる。

 たしかに下りたはずなのに。

 

「あれヒッキーくんが上から来た!」

「……どういうこった」

 

 俺が下った先にはダブルピースしたユイ先輩がいた。困り顔ダブルピース。

 あれ、俺ループしてね?

 

 こうして、俺たちは8階に閉じ込められたのだった。

 





結衣パイの見た目はそのまま由比ヶ浜+眼帯でご想像ください。
なんとなく雪乃よりも公安の制服が似合いそう。

ここまでお読みいただきありがとうございます。
どうぞ引き続きお付き合いください。
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