東方純愛小話   作:覚め

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頭悪いからを言い訳にする男
VS
お節介仙人、華扇
世紀の対決が、今始まる━━!


第147話

博麗神社

 

「貴方は何故いつもそうなのですか…いつ見てもお酒を口にしているではありませんか!」

 

「仕方ない…博麗の巫女に酒にならしとけって」

 

「お酒は慣れるものではありません!」

 

「そう言う華扇だってお酒強いじゃない」

 

「お酒の強さは慣れではありません!!」

 

…仕方ねーだろ、博麗神社に馬鹿が来たって特に何もないんだからさ。参拝客も訪ねる奴も少ないから結構寂しいけどさ、日当たりは良いのよね。気持ちがいいし。つーか、仙人様の説教は難しいんだよな。頭抱えるから聞き流してるけどね。

 

「お酒は自分の肝臓を痛めるだけでなんの利益も生みません!貴方のような人間であればなおさら」

 

「はーい、お酒はほどほどにしまーす、せんせー」

 

「馬鹿にしているのですか!」

 

「してないでーす、被害妄想でーす」

 

「何言っても無駄よ。そもそも説教を入れる頭がないんだから」

 

「ぐっ…」

 

「その通りでーす、先生。えーと…あの…あそこも見放した馬鹿ですから」

 

「あそこ?あそことは?」

 

「寺子屋じゃない?」

 

「…多分それだ」

 

「寺子屋の名前すら覚えられないのですか…」

 

「覚えても点と点が結べないもの」

 

さっきから巫女さんが入れる箱がないとか言ってくるが、それは勘違いだ。1ヶ月も同じ人間と過ごせば、そいつの名前か、あだ名くらいは覚える。ただ、この仙人様は1週間に一回来るか来ないかくらいだから、覚えられないんだな。

 

「私の名前は?」

 

「知らん」

 

「んふっ…即答ね。笑えちゃうわ」

 

「じゃあ博麗の巫女の本名は!?」

 

「えーと…確か、んー…れ…い〜」

 

「何故そっちは出てくるんですか…」

 

「待って、まだれいしか出てないんだけど?」

 

「むだ!れいむ!違うか?」

 

「正解よ!さっすが、私の同居人ね」

 

「…名前を覚えられてもいないなんて…これではダメですね。私の名前は華扇です。覚えてくださいね?」

 

「明日には忘れてるかもな」

 

「…霊夢」

 

「そんな『結構親密だと思ってた友人に名前も覚えられてなかった』的な顔で見られても…」

 

「彼をお借りしても?」

 

「すまん俺無理だな。生活環境が急に変わると適応出来ずに死ぬ」

 

「アンタは人里から逃げてきて生きてんでしょうが」

 

「言ってることが無茶苦茶ですね…」

 

「え、悪い?」

 

「悪いと思ってないから悪い」

 

「なんてことだ…」

 

「まさか名前まで覚えられていないなんて…そんな…」

 

「今日を除いて自己紹介一回しただけでしょうが。そんなんで覚えられる訳ないじゃない」

 

「霊夢は?」

 

「1ヶ月」

 

「先が思いやられますね」

 

博麗の巫女様は1ヶ月掛かったらしい。何が1ヶ月掛かったんだろうか。やはり、氷の妖精に勝つことだろうか。前、絡まれたがあいつにはビビった。寒くて身動きが取れない。死ぬかと思った。あんなことをされてしまったらもうダメだしな。

 

1ヶ月後

 

「私が誰だかわかりますか?」

 

「華扇」

 

「いよっし!」

 

「華扇、アンタはこんな事してていいの?」

 

「彼の記憶力の向上も仙人としての」

 

「嘘つき」

 

「うぐっ」

 

「私はあそこまで馬鹿じゃないわよ。嘘くらいわかる」

 

「巫女さん、お茶」

 

「ありがと。何しようが勝手だけどね、迷惑なことはしないでよ。面倒だから」

 

「霊夢…」

 

「?」

 

「純真無垢な人間にお茶を淹れさせていたのですか…」

 

「あっ」

 

「博麗の巫女としての自覚と!彼に対する申し訳なさを持ちなさい!」

 

「良いじゃないの、あいつが役に立ちたいからってやること聞いて来たんだから!」

 

「人の善意に漬け込み、その人を善意を悪用して良い理由にはなりません!」

 

「悪用!?」

 

「華扇さんも、お茶」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「…ほら」

 

「人の善意を無碍にしてはいけません」

 

「同じことやってんのよ、わかってる?」

 

「…いや、これとそれは別で」

 

「勢いが無くなったわね」

 

「ぐっ」

 

なんだかよくわからんが、言い合ってる。華扇と…えーと…巫女さん…だっけ?力のない細い俺にとってあの2人は化け物と言っても差し支えないので、言い合いにも参加したくないが。まあそんなこと言っても多分参加する権利はないけどね。

 

その夜

 

「どうした華扇、泊まるのか?」

 

「ええそうですよ。これで今日帰ったら忘れられてた、なんてことを起こさないように」

 

「…それ意味あるかな」

 

「ありますとも!!」

 

「ああそう…」

 

「華扇〜」

 

「!?」

 

「不純異性交遊はいけないんじゃなかったのかしら?付き合ってもない男女が同じ部屋で寝るだなんて〜って前言ってたじゃない?」

 

「わ…悪い…?」

 

「開き直るな、華扇。…巫女さんが困ってる」

 

「…退散!」ボフンッ

 

「あっ!…クソッ」

 

「何今の」

 

「華扇が反論できなくなったとき、たまに使う奴よ。煙幕だから煙ったいのよ…ぁあ!?」ゴンッ

 

「痛え…」

 

「痛っ…」

 

翌日 妖怪の山

 

「…なんだ…ここ…」

 

「私の屋敷です」

 

「華扇、か。お前の屋敷か…変な形だな」

 

「失礼ですね。まあ、それも良いですが。貴方には一つ信用して、信頼してもらうために言っておくことがあります」

 

「どんなことだ?」

 

「霊夢の件もあるのですが…実はですね、私、鬼なんです」

 

「ああ、そう」

 

「…分かってはいましたが、こうまであっけない返事ですかね」

 

今そんなことよりも大変なことに気がついたからな。右手の指がない。右手の指全てがない。左手の指はある、足も、足の指も10本揃ってる。ただただ右の5本指が全部ない。包帯で巻かれてるし痛みもないから大丈夫なのか?

 

「華扇、俺の指」

 

「ああ、それですね」スッ

 

「華扇、俺ははっきりと言ってくれないとわからないんだが」

 

「この汁が貴方の指です。いえ、貴方の指で作った汁なのだから、そういう意味では多分違いますね。美味しかったですよ」

 

「あ、んー…華扇、俺は冗談がわからないんだが」

 

「言ったでしょう。私は鬼です。とは言っても、今の私は鬼ではありませんが。まあ、今やってる行為は…こうやって、貴方の指で出汁を作って、飲んでいるだけですが」ゴクッ

 

「華扇?」

 

「とても美味しいんですよ。貴方からしたら気持ちが悪いでしょう。でも、それ以上に私は貴方のことが好きです。それにたとえ、貴方が私に向ける感情が気持ち悪いとか怒りだとか、そんなマイナスの感情でも私は喜んで受け入れます。貴方の他人に向ける感情の量が50Lあったとして、その1mlでも私は欲しい。一番怖いのは貴方が私に対して何の関心も寄せないことなんですよ。名前を覚えられず、『ただのうるさい人』止まりでは私に関心を寄せているとは言えません。だから名前を覚えてもらいたい。ですが、覚えられたら次はどうすれば良いでしょうか。忘れられないように毎日会いに行っても良いのですが、それでは少し物足りないんです。毎日の朝から毎日の夜まで。寝る間際までを貴方と共にいたい。ですが博麗神社に泊まったままでは霊夢に迷惑がかかります。霊夢に迷惑をかけず、貴方のその頭にいつでも私がいる。そんな状況にするにはどうするべきか。貴方に名前を覚えられていないことを知った時から1ヶ月、ずっとそれを考えていました。私の屋敷に、私と貴方の2人だけの部屋を作り、誰も入らず、ずっと貴方からの感情を受け取る。名案ですね。貴方もそう思いませんか?」

 

「待て、華扇」

 

「理解できない、と言った顔ですね。昨晩、貴方は霊夢の名前を言うことなく、巫女さんと呼ぼうとしただけで少し詰まりましたね。これは貴方が霊夢の名前どころか肩書きすらも忘れていると言うことです。違いますか?違うのであれば今ここで博麗の巫女の名前を言ってください。無理に言う必要はありませんよ。どうせ直ぐに忘れるんですから。さて、ここまでは別にいいのです。貴方がどう思おうがそれは私に対する感情。それだけで私は嬉しいのですから。では、貴方が何故理解できないのか。と言うことについて考えましょうか。そうですねぇ。私が鬼だと分かった時の僅かな動揺と、自分の指で汁を作られ、それを目の前で飲まれ、その人物の口から貴方の指の汁は美味しい、貴方のことが好きだ、と言われたからに違いないでしょう。大丈夫です。混乱することは必然、むしろ混乱しない方がおかしい場面ですから。まあ、ここで私を拒絶しても、受け入れても、どちらにしろ辿る道は同じです。深く考える必要もありません。まあ、貴方にそんな知恵はありませんが。貴方の小さな頭で考え、知恵から捻り出した考えを直接聞きたいものです。ですが貴方は自分の考えを出すことを躊躇う。今まで訪問した1ヶ月の間に、それはしっかりと感じ取れました。残念です。貴方にお茶を淹れさせることは出来ず、考えも聞けないだなんて。でも、大丈夫ですよ。目は口ほどに物を言う、とまでは行きませんが。私は顔を見れば大体の感情は見当が付きます。今の貴方は驚いて頭に余裕がありませんね。ゆっくりと自分の感情を出してください。いくらでも。時間はいくらでもありますから。元人間の貴方には少々耐え難いかもしれませんが、大丈夫です。私が支えになりますよ」

 

「おい、華扇、やめろ、それを飲むな、華扇」

 

「まあ、先ほど言ったように…とは言っても覚えていないかもしれませんが、貴方の感情なら私は何であれ嬉しいんですよ。私に向けられた感情なら。貴方が痛みに悶える感情でも、泣きながら嫌だ嫌だと言ったり、そこから動けず厠に行けず…なんてのも、想像するだけで心が躍りますよ」

 

「怖いぞ華扇。俺は人間じゃないのか?」

 

「覚えていたのですね。嬉しいです。ええ、貴方は妖怪となりました。私も妖怪です。指もその気になれば再生しますが、貴方のように元人間が妖怪になったとして、再生の加減が分からずに醜い指を再生してしまう、なんてこともあるのです。少しずつ、身体を妖怪に慣らしていきましょう。ゆっくり。私に憎しみの感情を向けるのも、愛の感情を向けるのも、何もかも、今はまだ一つのことで精一杯な貴方に余裕ができてからです。良いですね?」

 

 

 

 

 

 

 

 




華扇…好きな人の指、好きな人の顔、好きな人の(中略)、全てが大好き!!
馬鹿(主人公)…馬鹿というより考える頭がなく、記憶の容量は人の名前が2個入るかなくらい。
的な。
後半の仙人のお喋り2回で1500文字くらい伸びました。
長い、長い。
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