霧雨魔理沙ちゃん。
魔理沙宅
「うお、きったね」
「うるさいな。これでも今日は片付いてる方だ!」
「足の踏み場がないのは、箒に腰掛けてるから問題ないってか?」
「うっ…」
「やっぱり便利は人をダメにさせる。お前も怠けずに部屋の掃除くらいしろ」
「う、うるせー!お前なんかを乙女の家に連れてきたやっただけでもありがたいと思え!」
「おいおい、家がない奴にそりゃないぜ」
何を言おうとも俺には家がない。そんな俺と仲良くしている霧雨魔理沙は中々の奇人、と言えるのではなかろうか。どうも一般常識に当てはめるほどの常識がないように見える。まるで生まれてすぐに巣立った小鳥のよう…いや、そんな小鳥知らんけど。
「で、何?俺は今日なんでここに連れて来られたの?」
「あ、ああ。どーせ舌が煙草で味しないんだろ?そんな奴に美味いの一言でも言わせれば私の料理の腕前が上がると思ってな」
「クズだな」
「お前よりはな」
「…待てお前俺の何を知ってんだ?」
「さあ?」
「さあって…ていうかクッキー焼いたのかよ。視覚的に他が写りすぎて不味く見えるぞ」
「雰囲気に惑わされる味なんか本物じゃないやい!」
はは、こいつめ。美味い味は雰囲気も大切だ。そう思いつつ食う。うん、味はしない。煙草を吸ってはいないが、ここでは褒めておくのが吉か。うーむ、迷うな。ただ、味のしない謎の飯を食ってる感が俺の手を止めている。困ったな。
「…ま、不味い…か?」
「まずい…というより味がしないと言うか」
「ヤッ…煙草吸ってる?」
「葉巻どころか煙草も吸っとらん。辛いものも嫌いだしな」
「もしかして私の料理の腕前が圧倒的に低い…!?」
「それ以外にあるか?」
「お前の味覚が生まれつきおかしい」
「ははっ、馬鹿にしてる?」
翌日
「おお、これはこれは人形使いさん」
「私がクッキー作りのお手本を見せると言うことね」
「よろしく頼む!」
「こいつの腕前を上げてやってくれ」
「とりあえず、そのクッキー頂ける?」
「こいつか。どうぞ」
「ごめんなさいね」サクッ
「…お前変な魔法で味の後付けとかしてないよな」
「おかしいわね…味はしっかりするし、美味しい部類に入るとは思うんだけど…」
「ほら見ろ。お前の味覚がおかしいんだ」
「ば、馬鹿な…」
「とりあえず、私も作ってみるから。それで味がしなければおかしいのは魔理沙じゃなくて」
「お前だ!」
「二度も言うな、二度も」
うーん、とまた一つサクッと食べてみる。うーむ、でりしゃす…とは到底言えない。むしろ、吐き気がした。どうなってる?昨日は味がしないだけだったのに、今日になって吐き気?なんだ、人形使いさんは当たりを引いて俺はハズレを引いてるのか!?
「に、人形使い、さん」
「何かしら?」
「これ、これ食べて…」
「?食べかけじゃない。私ちょっと」
「それ、吐き気がするくらい不味くて…」
「え!?」
「え、そうなの?じゃあ反対側を…」サクッ
「魔理沙…お前ちょっとあれは」
「美味しいわよ?まあ、これは捨てておくけど」
「扱いが酷くないか!?」
「本当に大丈夫?演技には見えなかったけど」
「演技に見えたら永遠亭行けこの野郎…トイレ借りるぞ」
「あ、ま、待て!」
「吐き気が凄まじ」ガチャリ
「まだトイレは片付けきれてないから!!」
「…」
「魔理沙、なんでトイレに…いや、逆ね。なんで本の山の中にトイレを設置したの?」
「ぁぅ…」
「ん?あ、待て…この服…」
「あ、あー!あー!ま、待て!!あー!!!」
「…俺の服だ…」
「え…前ここに来たのかしら?」
「トイレには行ってないし…俺の服は全部持ってるんだけど、最近無くした服なんだなこれが」
魔理沙…とジト目とやらで見てみると、魔理沙自身は帽子を深く被っており、答えようとしない。俺より付き合いが長いであろうアリスさんもこんな姿は見たことがない、といった感じだった。とりあえず、おやつに取っておいた外の世界の缶詰を渡す。深く被っている帽子が少し上がった。ホッと一安心。
「そういうところはずるいんだよ」
「ずるい?まさか。用意周到と言って欲しいね。霧雨のお嬢さん」
「この…」
「魔理沙?」
「ようやく忘れかけてたのに、同じことしやがって…」
「…霧雨のお嬢ちゃん?」
「なんで同じことするんだよ!私は、私だって!なぁ!」ドンッ
「魔理沙、落ち着いて!」
「ごぶっ…仮にも吐き気がある人間を突き飛ばすなんて…」
「だから、クッキーで上手くやろうと思ってたのに!」
「え?」
「お前の記憶をいじって!私の苗字が霧雨ってこと忘れさせたかったのに!」
「ちょっと暴れないで、痛っ!?」
「なんだ?霧雨のお嬢さんが嫌だったのか?」
「そうだよ!だって、そうしないと媚び売られてる気がして…」
「理由しょーもな」
「しょうもなくない!お前が悪いんだ!お前が、勝手に忘れてるから!」
…あ、あっれー?金髪少女だなんて、どこで見かけましたっけ??お、俺は知らない、なー?…え、知らんよな?金髪の少女なんて、出会ったらもう忘れられんよ?金髪って、そんないないもん。見かけたとしても、ねえ。大方変な奴だし。なー?
「なんで、ほんっと、なんで!」
「魔理沙、本当に落ち着いて、後少しでクッキーが出来るから、それ食べて落ち着きましょ?」
「うるさい!」
「え?」
「マスタースパーク!!」
「ちょ」ギュォォォォォォ
「人形使いさんあれまみるみる飛んでく。次は俺?」
「やっぱり思い出させることにした!私の心にずっといやがって!」ゴンッ
「痛っ!」
「…魔法っていうのは、応用が効くんだよ。今すぐにでも、さっきのクッキーとは正反対のクッキーが作れるんだ」
「そ、そりゃあ」
「じゃあ、思い出してよ!」ブンッ
無造作にぶち込まれたクッキーは、舌に触れる暇もなく喉に当たった。痛い。
魔理沙…過去にやられたこともやってくれたことも覚えてるタイプ。そしてそれを美化しすぎるタイプ
主人公…そんな魔理沙ちゃんに優しく触れちゃった!その後そのことについて思い出す。思い出したからと言って、どうというわけではない。
的な。
的な!