東方純愛小話   作:覚め

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落ち着きましょう。
そう、呼吸をして。
疲れた?そうおっしゃらずに。
慧音先生ですよ。お世話になったでしょう?


慧音先生と仮面男

人里

 

「常々思うんだが、外来人が幻想郷の寺子屋で教えを説いて良いものかね」

 

「良いさ。幸い、寺子屋で習う範囲は外の世界で言う小学校、とやらの範囲なんだろう?」

 

「そうなんだがなぁ」

 

「そんなことよりも、こっちに来てから着けている仮面の方が気になる。いい加減取ったらどうだ?」

 

…やだねー。と小声で返しつつ仮面に触る。お顔が汚いとか、そう言うことはない。はずだ。しかし、なんと言うか。ここにきてから一年。外では感染症が蔓延していた。一年前。ここに来る一年前にはもう顔を出すのは恥ずかしかった。ならばもういっそ隠してしまえと道中買った仮面にチェンジしただけだ。

 

「まあ、それを取るのは嫌なんだろうがなぁ。教え子からずっと素顔を聞かれてるんだ。その度にどう返すか悩む私の身にもなってもらいたい」

 

「ハクタク殿が、可笑しいことを言う。一寸も可笑しくないけど」

 

「まあ、仕事はしてくれるから有難いんだがな?」

 

「うっせ。そろそろこの仮面にも飽きたし、お面でも買いたいんだが」

 

「ああ、それなら寺子屋の向かいにあるぞ」

 

「…子供に誘惑か…」

 

「?」

 

「今の真っ白な仮面では第一印象が悪いし」

 

「それで一年いた君はなんだ?」

 

いーじゃん。別に。図々しい部分は幻想郷みたいに一長一短で良いのだ。なんで医学がクッソ発展してんのに、人が少ないのか。妖怪という奴が人を食うからだ。しゃーないな、うん。全く、不便だなぁ幻想郷。三種の神器すらないとは。誰かが言うには人里の外に売ってる場所があるらしいが、残念電気がない。

 

「なんで天狗しか売ってないんだ」

 

「似合っているぞ」

 

「いつもの新聞屋のお姉さんに笑われちまうよ」

 

「お姉さん?」

 

「俺の中でのお姉さんはな。見た目が若くて自分より年上の奴だ。そうなると先生もお姉さんだな」

 

「お姉さんか…まあ、悪くは」

 

「そうなると妹紅さんはセンセイのお姉さんになるな。やめておくか」

 

「なんで妹紅が出て来るんだか。」

 

「出所不明、と言う奴ですな。で、いつ俺は眠れるんで?」

 

「君は君のタイミングで眠れば良い。私はその後に寝させてもらう」

 

「…もう月が頂点を下るんだが」

 

「フフ、君と寝ずにお月見、かな?」

 

「センセイと一緒にお月見?気が休まりませんよ」

 

「残念だ。じゃあ早く寝ることだな。そろそろ寝なければ明日に出る」

 

「是非ともそうしてくれ。俺を安心して寝させてくれ」

 

「…膝枕か?」

 

「なんで?」

 

という感じでお面を買い替えた後は翌日を迎えた。慧音先生と一緒に生徒へ教える。と、したいのだが生憎慧音先生が教えられるのは人心掌握と社会、それも歴史が中心、と言った感じだ。国語も多少。つまり俺は算数を教えれば良いのだ。英語とかいらないし、理科なんて一番いらないもんな。発明品言って終わりだ。

 

「また夜だぞ」

 

「全く。天狗のお面をつけたせいか、今日は一段と多く聞かれてしまった」

 

「そのうち爺さんになるから、その時には取る」

 

「生徒にはそこまで待っていろと。無理だな」

 

「無理でございますか」

 

「で、どうだ?今日は満月だし、月見とでも」

 

「今月が満月でしたか。では、失礼」

 

「ところで」

 

「ん?」

 

「今日は休憩中に随分と仲のいい女の人がいたな。あれは何だ?」

 

「俺にも春が来るんですよ。春告精よこーい」

 

「…それでは私も焦らなければならないな」

 

「おや、先生も私にご執心で?」

 

「バカを言え」

 

「ですよねー」

 

「執心、だけで収まるものか。私が言えたことではないのだが、顔を知らせぬ男に春は来ないぞ」

 

「老後に春が来るのか」

 

「…私だけにでも見せてくれないか?」

 

初めてだな。おい。先生が俺に対して仮面を取れと言ってきた。今までは取らなければ私がきついと言っていたのに、自分の欲を出してきよった。さては狸が化けているか。しかし、全然、全くそんな素振りはない。試しに俺が仮面の下に指を入れると写真を撮りたいと言ってカメラを手に持っている。場所を知っているということは、本物だ。

 

「…ほれ、どうだ…何とか言ってくれ。恥ずかしい」

 

「やっぱりだ」

 

「何が想像通りなんだか」

 

「やっぱり君の顔を見ても気持ちは変わらない!顔を知らなくても君を愛せる!」パシャッ

 

「は?」

 

「あぁ、直ぐに現像したいが、まだ夜だ。現像の液は丁度切らしている。全く、私の備えのなさは少し改善すべきかな。いや、君がこんな私を愛してくれるのなら、私も自信を持てるのか」

 

「せ、先生?」

 

「今日から私のことは慧音と呼んでくれ。なぁ、良いだろう?ワガママばかりかもしれないが、そうだ。君も私に何か我儘を言ってみてくれ」

 

「そうだな…落ち着け」

 

「え?落ち着け?何を言っている?私は落ち着いているぞ。この世に似た顔などない君の顔を何枚も撮っているんだ。落ち着いてなければ一枚撮ってまじまじと見ていただろうからな」

 

なんてことだ。やばいやつに素顔を晒してしまったのかもしれない。俺の顔があのカメラの紙にある。現像に期限はないのか。せめて1時間であることを祈りたい。いや、最悪6時間でも良い。月の逆光は期待できない。頼む。まあ、先生なら誰にも広めないだろう。妹紅さんくらいか?

 

「せ…慧音、あまり撮らないでくれ」

 

「あ、あぁ。わかった。すまないな、気持ちも考えずに。この顔は私だけのものだ。厳密には私の君だけだがな。まあ、君を除けば君の顔を知っているのは私だけだ。君の顔だ。ああ、早く現像したい。気持ちが抑えられないな。楽しい明日を前にした子供の気持ちというのを理解できた気がするよ」

 

「慧音…言っておくけど寝顔は撮るなよ。撮ったら出ていくからな」

 

「わ、わかっているとも!君に出て行かれたら私は一体…」ガチッ

 

「…今の何の音だ?」

 

「頼む、出て行かないでくれ。今の私は変だと思うだろうが、お願いだ」

 

「寝顔を撮らなきゃ良いだけだろ」

 

「あーそれもそうか。すまないな。少し取り乱したかもしれないな」

 

 

 

 

 




慧音…他の人が知らない、君のことを知りたいな。後、出来るだけずっと私のそばに居て欲しい。
主人公…みなさんご存知コロナのせいでマスクを外すのが恥ずかしい症候群を患った人。
的な。
ちなみにこの後は少し気まずくなりましたし、それも束の間ですよね。
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