…関係ない
行け
本日、私の夫である彼は寝込んでいます。何故?私を摂取できていないから…ね!家の中をチョチョイと片付けたり、整理していく姿はまさに通い妻。まだ彼は恥ずかしくて誰にも話せてないようだけれど、私は貴方の行動全てを愛する自信があるわ。だからちゃんと周りには言っておくのよ?
「…またか」
あら?通い妻のしたことに『またか』ってどういうことかしら?もしかして…寝てる間に帰っちゃったから?そうだったわ。彼は寂しがりやなのを忘れていた…けど、安心して!貴方は一人じゃないわよ!私がいるもの!正妻たるもの、陰ながら応援するのは当然ね!
「ずっと続くんですよ」
「そう言われてもねぇ」
あら?霊夢じゃない。霊夢が何しに来たの?…あ、そういうことね。彼は博麗の巫女から私に『今度来たら顔を見せてくれ』と伝えようとしているのね!でもごめんなさい、貴方と顔を向かい合わせるとなったら少し緊張が…いえ、夫の願い事なんだから!妻である私が叶えなくちゃダメね!
「…そこらへんにいたら、話は別なんだけど」
「何がですか?」
「こういうことできる奴って、結構幻想郷の中じゃ絞られてくるんだけど…」
無理ね。霊夢じゃ今の私の居場所なんかわからないわ。それに比べて彼は薄々気がついてるのね!キョロキョロしていて迷子みたいな、庇護欲をそそられるわね。だけど、今はまだダメよ。だって、まだ貴方の顔を見ることすら恥ずかしいんだもの…
「どうにかならないか?」
彼が軽い口調で話している相手は霧雨魔理沙。正妻である私のライバルと言ったところかしら…隙あらば自分の家に泊めようとする極悪非道な奴ね。惚れているだけなら見逃してあげるというのに。まあ私の夫が浮気なんかするはずないわよ!そもそもさせないし?だからさっさと諦めなさい。普通の魔法使い程度じゃ私と彼の婚姻関係は崩せないのよ。
「いやー!今回はこの魔理沙様でもきつい!…かな。そろそろどうだ?あの家が呪われてたってことで」
「あの家はあの家で気に入ってるんだ」
そうよ!私と貴方の家なのよ。そう簡単に他所の女と遊んで、しかもそのままお泊まりなんか許しません!彼の健気な抵抗は霧雨魔理沙に届いているのかしら?届いていなかったらもう魔法の研究をやりすぎた末路と言ったところかしら。そうね、彼と向き合えることだけは褒めてあげる。
「心当たりも何もないんだろ。じゃあどうしようもない」
「いや、手がかりみたいなのならあるんだが」
「ん?」
「…俺の家って、そういうことがあってからずっと結界張りっぱなしなんだ」
あ、そうだったわね。だから私は扉を開けて疲れ切って寝ている貴方に愛のダイビングが出来なかったのよ。扉を開ける工程を踏んでこその行為なのに…博麗霊夢も、ライバルかしら?でも霊夢は商売だから仕方のない部分もあるのでしょうけど。いや〜、そう考えてみると、霊夢はライバルじゃないわね。
「ってことは結界を抜けられる誰かってことか…ま、イタズラをしに来る猫とかは?」
「それならもっと荒らされてる」
「じゃあ…橙か」
「猫の妖怪か?」
「ああ。九尾の狐に育てられてるし、あり得ないってことはない」
そんなのだから彼に選ばれないのよ。普通の魔法使いに留まってるようじゃ、私の存在に気付くことも私から彼を奪い取ることも出来ないわ。全くこんなのをライバルとか言ってた自分が恥ずかしいわね。せいぜい彼に捨てられるまでの間を満喫すれば良いわ。
「…」
「すまんな。力になれなくて」
「いえ、慧音先生にはいつも助けてもらってばかりなので。」
「いやぁ…あの家が曰く付きとはなっていないし…驚きだな」
「はい」
人里の管理人に会っているようで何より。貴方は恥ずかしがり屋で、誰にも私のことを言いふらさないと思っていたらそういう感じで言いふらしているのね。流石の私でも気が付かなかったわ…やはり私ですら理解するのに時間をかけてしまったわ…流石ね!
「橙が?」
「はい…」
「あー…いや、多分違うぞ」
「え?」
「確かに結界のすり抜け方法は教えたが、実践はまだだからできる訳がないんだが」
藍にも言いふらしてる!もう貴方はどれくらい私のことを言いふらせば気が済むの?それとも式を挙げるときに全てが繋がるようにしてる訳ね!?策士すぎるわ…もう、ずっとみてる私でなきゃ気が付かないわよ!頭の回転が早すぎて本当に人間なのか気になるくらいよ!
「…巫女さん?」
「出てきなさい。紫」
あら、気付かれちゃったわね。まあこの際博麗神社で式を挙げるから…許可でも取ろうかしら?
「紫。アンタでしょ。こいつの家具の場所を勝手に変えたりするの」
否定する意味がないわね。まあ当然正妻だから隠す意味もないんだけど。
「正妻?なに言ってんの?」
そのまま、私は彼の妻、彼がどこに行こうと私のもとに帰ってくるの。霊夢には難しかった?
「コイツと婚約してるの、魔理沙なんだけど」
…それが?正妻の余裕って奴ね。一人くらい妾がいたって別に構わないわ。
「巫女さん…あの人は…誰、ですか…?」
は…?誰って…あなたの正妻だけど?まさか忘れたの?人里で出会ってそこから仲良くなったのに?
「いや、そもそも…見かけたことないし」
なんで?なんで嘘を?私が何かしたの?彼の逆鱗に触れるようなことしたかしら?
「だから、誰だって」
聞きたくない!なんで私が忘れられるの!?なんで婚約者が私ではなくあの魔法使いなの!?
「…なんだったんだ…」
「さあ?さ、アンタは魔理沙と結婚するんだから。ああいうのは全部捨てときなさい」
紫さん…一人相撲
魔理沙の婚約者…魔理沙好き!困った時は巫女の次に頼るくらい頼れるし、可愛いし!
的な。
こういう紫さんはいてもいなくても変わらないけどいない方がいいというような感じでいてくれると助かる。