ぇ…?
守矢神社
「神奈子様〜これどうにか」
「しない。外したらお前逃げるだろ」
「いや、逃げるんじゃなくてトイレに…」
「それは問題だな…そうだ、厠まで私がついていけば良い」
この女はいつからそんな変態趣味に目覚めたんだ。小さい頃から知ってるからとかそう言うことはない。ないはずなのだが、何故か俺の幼い頃の写真があるし、それと遊んでいる緑髪の少女まで写っている。何かがおかしい。
「…」
「かわいらしいな」
「流石に恥ずかし」
「恥ずかしいか?でも、私は嬉しいぞ。一柱の神が、1人の人間を愛することができているんだ。それだけで嬉しい」
「…神奈子様…腰に手を当てないでください」
「何を言ってるのかわからないな。小便は終わったか?それじゃあ戻ろうか」
「うす…」
「お前は私が目を離すと直ぐにどこかへ行ってしまうからな…全く、手のかかる人間だな。」
「神奈子様」
「神奈子と呼びなさい。いや…呼べと言うべきかな?何せ、手のかかる人間だからな」
「…神奈子」
「それで良い。それで、なんだい?」
「あの、俺って家には帰れない…ですか?」
「家?どうして?」
話が通じない、と言うのはこんなことだろうか?それとも話は通じているのだろうか。だから聞き返しているのだろうか。そもそも、家に帰らせる気はあるのだろうか。俺は一体どうすれば良いんだ。この女は神様なだけあって力は強い。手首を絞めている紐を軽く引っ張っているような素振りで、全体重をかけても抵抗し切れない。
「…っ!」
「おいおい、どうした?そんなに強く引っ張らなくても良いだろう?」
「こ、ここの巫女さんはっ!?」グイッ
「…おかしいな。私は今お前と話している。お前も今私と話している。そのはずだ。なのになんで巫女だとかそう言う言葉が出てくる?」
「だっ…て…ここ…2人くらい」
「ああ、居たな。それが?」
「どこに…?」
「フフッ。言わせるのか?全く恥ずかしい奴め。引っ越しをさせたんだよ。2人とも、すんなり引っ越して行ったさ。」
「じゃあ…ここって」
「私とお前の家だ。あー、でもお前は私と違って寿命があるんだったな。」
「え、待って、待て、離して、っ!」
「なぁ…今のがお前の全力なら、全然意味がないぞ?」クイッ
「痛っ!」ドンッ
「…私はな。お前を傷つけることになんの躊躇いもないんだ。何故かわかるか?お前が好きだから、なんだ。」
…何を言ってるんだ。この女は。好きな奴の顔なんて、喜んでる顔だけで良いだろうに…傷つけるなんてとんでもない。後ろで手を縛られてるから立てないし。誰か助けて欲しいな〜、なんて。そう思ってたら床ドンされた。壁ドンの床版、床ドン。顔が近い…
「なんだか心底驚いた顔をしているが…当たり前だろう?」
「怖い、です」
「怖いか…そうか。怯えてる顔はこれか。楽しいな。好きな人のことは全て知りたいだろう。身長体重から始まって、髪の毛の長さだったり、腕の長さだったり」
「何、するんですか」
「次は痛がる時の顔だな。さっきは見逃してしまったんだ。すまない」パチンッ
「っ」
「…やはり叩くだけでは見る時間が少ないか。つねるぞ」ギュッ
「〜…!」
「あんまり顔を動かすな。見えないだろう?」
「い…っ!」
「痛いか。痛いよな。うん。これが終わったらご飯を食べようか。家族で食卓を囲むのは良いぞ…親のいないお前にとっては初めてだろうがな」
「な、んで…」
「なんで知ってるか、か?私はな。お前がいるから幻想郷に来たようなものだぞ。信仰が薄れて行く時期だったのもちょうど良かった…お前は私に愛される為だけに生まれてきたような存在だよ」
何があったのだろうか。この女はなんなのだろうか。こいつにとって俺はなんなのだろうか。俺をなんだと思っているのだろうか。だったら、他の2人はなんと思っていたのだろうか。なんとも思ってないんだろうが。どうしたら良いのだろうか?
「じゃあ、他の2人は」
「他の2人にとっても都合が良かった。そもそもここは私がお前と暮らすために見張っていた土地なんだよ」
「…」
「黙ってしまったか…まあ、良いさ。じゃあご飯にするか。とは言ってもまだ作ってすらいないんだがな」
「なんで」
「なんで?何がだ?」
「なんで家に帰してくれないんですか…?」
「ああ、そう言うことか。そういえば言ってなかったな…そうだ。神隠しというのはどうだ?まあ、表向きの理由がないと心配なのはわかるさ」
「そうじゃなくて」
「なんだ?そんなに必要か?…いや、好きだからとしか言えないが…」
「そんな…」
「いやあ、意外と恥ずかしいな。さ、ご飯を作るぞ。何が良い?これでも外の世界の料理は網羅しているんだ。和洋中全て作れるぞ。なんでも言ってくれ」
「…」
「黙ってたらわからないだろう。それとも、作って欲しいものが多すぎるのか?それだったら心配することはない。お前の寿命を取っ払った後でずっと作ってやる」
顔に両手が添えられる。恐ろしい。料理だご飯だと言っても、俺はそもそも飯の種類を知らない。小さく、魚と言ってしまった。顔に添えられた手を離されて、紐を家の柱に括り付けてどこかへ行った。どうすれば良いのか。どうもしないのが正解なのか。
「神奈子、様」
「様をつけない。まあ、お前が意地でもそう言いたいなら構わないが。ほら、魚だ。味噌漬けだから美味いぞ?今紐取ってやるからな。」
「…」
「ん?いや…私がお前の口に料理を運べば万事解決だな。まあ、熱いだろうが…ふーっ」
「ん…」
「おお…美味しいか?いや、答えなくて良いぞ。大丈夫。大丈夫さ。ちゃんと食べさせてやる。ただ…お前がここから出たらどうなるかはわからないがな。ほれ、あーん」
「んっ…っ!」
「ああ、骨があったか?すまないな。ほら、口を開けて…」
「んぁ…」
「そう…あった。次からは全部取り除くから、安心して食べてくれ。」
「うん…神奈子様」
「なんだ?」
「家にある…お気に入りの服があって」
「!ここから出る気は無くなったか!?」
「うん」
「そうか。わかった。ご飯を食べ終わったら取りに行く。教えてくれてありがとうな」
神奈子様…神様。母様。貴方のためだけに幻想郷に来たの。
主人公…親がいないので親みたいな接し方をされると落ちる。
的な。
なお主人公は親がいなかったので親みたいな接し方を1ミリも理解していない。
実質ご飯を作ると落ちる人