東方純愛小話   作:覚め

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捨てられる典ちゃん、拾う主人。
捨てられないように振る舞う典ちゃん、かわいいね


捨てられた狐とご主人

ある日。狐を拾った。その日から僕は変な世界に来た。いや違うな。この狐の言い分では、僕がこの世界に来て狐を拾ったようだ。まあどっちでも変わらないかな。外から来た人間に排他的な里に住むのは諦めたほうがいい、とその狐に言われる。この世界に明るくない僕は、その狐の意見に従う。

 

「ご主人様!ここでは妖怪が来てしまいます!」

 

「そう?まあ、もうちょっと里に近づいても良いか」

 

今は狐…もとい、典とともに家を建ててる。そこら辺の木からだ。僕は眠れれば良いし、典も同じような感覚なので共に雨風を凌げるだけの家を建てる。典は妖怪という種族らしい。昔話などによく出て来る、アレである。まあそれはどうでも良いが、典は妖怪であるから力が僕より強いらしく、せっせと働いてくれた。僕は人里に行くことにしよう。道中出会った変な生き物の肉を売りに。

 

「これだと…こんくらいだね。ところで兄ちゃん、見ない顔だね?」

 

「そんなのどうでも良いじゃないですか。数週間引きこもってたんです」

 

「へぇ…ま、それもそうだな。じゃあな」

 

「は〜い」

 

意外と良い雰囲気だけれども。やっぱり外の人間ってバレると当たりもキツくなるのだろうか。まあそれはそれで良いんだが。典のためにご飯を買おう。妖怪って何食べるんだろうか。あ、でも狐だしお肉かな?まあ生肉と畑関係のものを少々買っていこうか。

 

「典!」

 

「ご主人様!!ど、どこへ行っていたんですか!?わ、私、心配で心配で…!」

 

「人里だよ。それで、家は出来た?」

 

「はい!バッチリです!」

 

…僕には雨しか凌げない家が見えるけども、嬉しそうな顔で報告する典には言わない方がいいか。撫で回して、今日のご飯を見せる。典、ほらお食べ!と言うと、何やら説明したがっている様子。何だろうか?やっぱり妖怪とただの狐では食べるものが違うだろうか?

 

「あの、出来れば、ご主人様の唾液を」

 

「ぇ…」

 

「そ!そうすれば、ご主人様の健康状態も知れるんです!」

 

「あ、なるほど。じゃあ…」

 

お肉に唾液を垂らして、はいおしまい!流石に大量にかけるのは、違うじゃん。恥ずかしいし。買ってきた布団を敷いて、さあ寝よう。典の分もあるぞ!と言うと、これまた。僕と同じ布団で寝るというのだ。まあ仕方ない。僕もこの風がよく通る家では寒くて眠れないだろうし。

 

「ご主人様、朝です」

 

「ん、本当だ。畑でもやるか!」

 

「流石ですご主人様!えーと…この辺りとかはどうでしょう。かなり栄養ありますよ」

 

「おー、本当だ。…今気づいたんだけどさ。お風呂どうしようね」

 

「んー…私めにおまかせを!」

 

そう言って典はどこかへ走って行った。その間に畑をするとしようか。いやぁ、里の外で畑仕事なんて。僕以外にしてる人いるのかな?僕と同じ状況の人とか、いてもおかしくはないんだけどなぁ。まあ、いないなら仕方ない。僕が1番目だったというだけで。

 

「…んー、出来てきてる、のかな?」

 

「ご主人様!お風呂の件ですが」

 

「お、五右衛門風呂か」

 

「流石に外の世界のようなものはありませんが」

 

「良いよ。ありがとう、典」

 

「はい!」

 

水に関しては、近くに湧水があったのでそれを使うことにした。見たところ汚くないし、典も綺麗な水と言っていたので良しだ。しかしまあ。今更ながらも周りを見渡してみれば、大きい山だったり崖だったりと色々なところに色々なものが。小さい頃であれば冒険しに行ったのだけれども、畑仕事でダウン。というより、限界かな。

 

「お風呂出来てますよ」

 

「おー、さすが典。じゃあ入るか…」

 

「私もご一緒します!」

 

…疲れてて頭が回らなかった、と言えば犯罪は逃れられるのだろうか。典は僕と同じ風呂に何を言うわけでもなく入った。うーん、人肌が暖かい。典の場合は人と呼べるのかな。わかんないけどね。典はこっちに抱きついて尻尾を気持ち良そうに振っている。狐の尻尾は犬と同じような動きをするのか気になるなぁ。

 

「うわ!え!?」

 

「おろ?」

 

「あっ!?」

 

「アンタ、こんなとこで何やってんのよ…しかも妖怪と一緒にこんなとこで風呂って」

 

「失礼な!忠誠を誓っているのですよ!わたしがご主人様を食べるなんて!」

 

「いやぁ、いつの間にかここに来てね。君は…見たところ、巫女?奇抜な服だね」

 

「そうだけど…あんた、外来人なのね?じゃあなんで人里行かずにそこにいるのよ。神社に来れば元の世界に戻してあげるのに」

 

「ありゃ、そうなの。でもあんだけ買ったしやっちまったしなぁ」

 

「畑…別に帰らなくても良いけどね。外来人は食べて良いって言われてるのよ。さっさと帰ることをお勧めするわ」

 

…なんだか、難しい話を聞いた。風呂を上がって服を着替える。しかし、帰れる手段があるとは。典がそれを知らないのは、妖怪だからかな。まあ良いけど。今日の晩御飯はよくわからない生き物。典が喜んで持って来たものだ。変に臭みがないし、血抜きも必要ない。本当によくわからない生き物である。太古の絶滅種、かな?

 

「ご主人様」

 

「何?」

 

「も、元の世界に帰るなんて言いませんよね?ここで暮らしますよね!?」

 

「歳取った時までここにいるわけじゃないけど、典が選んだ場所だし。そう簡単には帰らないと思うよ。」

 

「…良かった」

 

翌朝。典が寝ながら泣いていたので涙を拭って抱きしめてあげる。したら、もっと涙を流してしまった。そもそも、拾った時にあんなに汚れていた理由とか聞いてなかったな。まあでも、トラウマかもしれないから聞くのはやめとくか。流石に、僕にそんな趣味はないしそんな度胸もないからね。

 

「…典。起きて」

 

「ぁ、はい」

 

「ご飯にするよ」

 

「はい!」

 

「何、あんたはまだやってんのね」

 

邪魔、という気はないが。巫女装束の女の子だ。それを見た瞬間典があまり良い顔をしない。何かあったのだろうか?少なくとも僕は知らない…はず。それで、この狐は人を唆すとか言ってどこかへ消えた。僕からしたら君が唆す立場なのだが、どうもそれは聞かずに少女は飛んでいってしまった。

 

「…典?」

 

「ご主人様、あの、どうか」

 

「何?どうした?」

 

「す、捨てません…よね?」

 

「当然。というか、こっちの世界をあんまり知らないからね。少なくとも多少は知りたいのさ」

 

「そ、そう言ってましたもんね!では、ご飯にしましょう!」

 

最近、と言うほど時間も経ってないが。あの少女が警告しに来てから。何やら典の様子がおかしい。何もない時は此方を見つめるばかりで、両手を広げればゆっくりとした動作で懐に。文字通り懐に入って来るので、素肌が触れ合う。こちらでは常識なのか、よくわからない。が、見た目の犯罪臭が半端ないので出して抱える形で放置している。

 

「ご主人様!畑のことなら風見幽香という妖怪がよろしいかと。植物を大事にする方には優しいと聞きます!」

 

「マジか。どこ?」

 

こうして話を聞きに行くことになったり。右往左往しながらも、典と共に歩き回り畑や幻想郷そのものに対する見識を深めていく。ずっとやることがなければ典と戯れるか農業の本を読み漁る以外にすることがないこの世界で、僕はこの瞬間が一番楽しい。知らぬ人と出会い、その人から何かを教わるのは気持ちが良いし、言ってはなんだが典がいると安心するようになって来た。

 

「…貴女が、風見幽香さん?」

 

「そうだけれど…何故そんなに遠いの?」

 

「聞けば、人間には容赦しないとか」

 

「ご主人様!それは植物を雑に扱う人間だけです!」

 

「心当たりは?」

 

「…多少。ですが、最近農業を始めたので、これを機に自然とやらを大事にしようかな、と。」

 

「自然に反してる貴方達が、ね。わかったわ。どこに?」

 

連れて行く。風見さんは畑を見た時に『素人にしては』と言っていたので、改善点はあるものの妥協はしよう、と言った具合らしい。そうすると、僕に対して振り返り、改善点を述べる。何やらわからない単語も多々あったが、メモ帳を取り出してメモしていく。途中、書くものがなくなったので里へ買いに行った。

 

「ふぅー…明日から実行して行くか。風呂だな」

 

「ご一緒します!」

 

「…典、本当に良いのか?」

 

「はい!少なくとも私は構いません!」

 

なんだろうか。この、悪い男に絶対引っかかるなっていう確信は。まあそれは置いておき。風呂に入る。五右衛門風呂だ。髪の毛は熱した水で流す。タオルもこの世界にはあり、ちゃんと水分を拭き取る。典の分も忘れずに、髪を丁寧に手入れして行く。この瞬間のために生きていると言うように、典は体を震わせる。

 

「じゃあ、寝るか」

 

「はい。おやすみです」

 

最近の日常である。典が此方を見続ける以外には普通の日。何か、何か。おかしいと思いつつも。可愛い子供を見ているような。そんな気持ちになる自分に驚く。疑心と親バカのような感情が混じって、本当によくわからない。そんな考えを感じ取られたのか、朝起きた時。近くに妖怪がいた。人の形をしていない、典が言っていた、人を食う妖怪。確か、どこかに。警告しに来た巫女からもらった御守りがあったはず。こんな時に頼るのもなんだけど、典は寝ているから頼れない。相手の目から視線を外さず、御守りを─

 

「ぁっ?」

 

「ん…ご…ご主人様!!」

 

簡単に食われてしまった。面目ない。意識から遅れて痛みが襲う。典には情けない姿を見せていることになるのかな?まあ、どっちでも一緒だけど。痛いのに頭は冷静。変だなぁ、なんて思っていると。典の様子がおかしい。それに気付いた妖怪がそっちを向いて威嚇を始める。それに飛びついて、なんとかしようとする。残念ながら僕は、妖怪とはいえ慕ってくれる子を見捨てることができない。

 

「ご、ごしゅっ…」

 

「典、逃げて」

 

上手く言えたかな。食われなかった部分で妖怪に突撃しても意味がなく、妖怪は典の場所に向かう。そのまま、僕は。

 


 

「…あれ」

 

「ご主人様!」

 

「?だ、誰?」

 

「その妖怪に感謝することね。その妖怪がここに貴方を運んで来なかったら死んでたわよ。まあ、他の要素もあるけど」

 

「他…それより、典は?」

 

「わ、私をお呼びですか!?」

 

「え、典…?」

 

それから。どうやら僕はあの時意識を失ったらしく。倒れたところを見て典の尾が増えたのだとか。7本に。本人は九尾が良かったと嘆いているがラッキーセブンじゃないかと慰めつつ。7本の尾が生えた典はまず妖怪を蹴散らし、僕を抱えたままこの病院へ、ということだ。それはそれとして、なんだろうか。典の服がかなりパツパツのように見える。

 

「あぁ、これはですね…成長、です。妖怪はこのように急に成長するんです」

 

「へぇ?」

 

家に戻った僕たちは直ぐに片付けに移った。どうやら妖怪が派手に荒らしたらしい。これは風見幽香さんが怒るのではなかろうか。しかし。それよりも問題なのがある。風呂。典はいつもと変わらず入って来るのだろうか。しかしあの風呂に今の、大人な典では厳しいものがあるのでは…?

 

「典。風呂だな」

 

「はい!ご一緒します!」

 

やはりだ。人肌が温い、と前言った感じがするが。柔らかい部分が当たって煩悩が溜まっていく。僕としては、前の典の方が可愛らしかったのだが。今の典は何やら、美しい方面なのか、セクシー方面なのかわからない。胸も大きい。向き合って入らないだけマシ、だろうか。

 

「…ご主人様」

 

「何?」

 

「このお風呂、少し狭くなりましたね」

 

「典が大きくなったしなぁ。ま、それはそれとして。上がるか」

 

風呂あがって寝る時。典は今までのように入ってきた。抱きしめようとすると、身長が典の方が大きくなっているらしく。逆に抱きしめられている。

 

「ご主人様、ご主人様は今私が押し倒せば何も出来ないんですよ」

 

「ん?そうだねぇ…典には命を助けてもらったし、力も…抵抗出来ないね」

 

「じゃあ!」

 

抑え込まれる。典が何をしたいのか、理解に一瞬苦しんだが、少し予想がついた。このまま甘える形で眠るのではないだろうか。急に姿形が変わって典も情緒が安定しないのか、涙が流れている。典の涙を拭う。

 

「ご主人様」

 

「何?」

 

「…どうして、あの時、私を拾ってくれたのですか?」

 

「一つは、かわいそうだったから。裸足で山の麓に汚れた衣装で置かれてる子を見逃せる人間じゃないからね。二つ目に、そろそろ寂しくなって来たから、かな。長い間一人でね。寂しかったんだ」

 

「あはは…嬉しいです。これからはずっと私が一緒です。だから、ご主人様も離れないで。どうか、ご一緒に」




典…好きすぎて強くなった。七本が本人の才能的に限界。大天狗に捨てられ、大天狗の友人にも石を投げられた末に山の麓へ。ご主人様に捨てられたら次はないことを恐れており、好きな人と主人が重なった上に捨てられるのがとても怖い狐。
主人公…外来人。典のことは元気な娘、と思っている。思っているだけで、共に風呂に入ろうとした時はビビったしデカくなった時も入ってきてビビった。つまりはそれくらい常識がある。
そのほか…背景。

久々の投稿で中身うっすい奴出してすまねえ。
何人見てるかは知らねえけどなぁ!!
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