黄泉戸喫のことを知った時、あの世の食べ物食べるのかよ、と思いました。
墓荒らしっすね。大体
ここは冥界。そして俺は生きてる。何で俺ここにいるの?疑問符でいっぱいだが、なんか寝て起きたらそうなった。ここに住む人からの説明通りであれば、俺は生きてる。そんで、冥界だからといってめちゃくちゃ急いで帰らなきゃいけないと言うわけでは無いらしい。マジかよ冥界最高だな。
「お客様、ご飯の用意ができました」
「はーい」
「妖夢の作るご飯、美味しいでしょ?私のお気に入りなのよ!」
「美味しいですよねぇ」
妖夢さんと幽々子さん。それがこの場、と言うか冥界で唯一(らしい)話すことのできる人達。そして、毎回ご飯をいただくときに恒例となっていることがある。
「はい、あーん」
「幽々子様、おやめください」
「何でよ、美味しいから良いじゃない!」
「俺も別に良いと思うけどなぁ」
「ダメと言ったらダメ!さ、ご飯を食べますよ」
なんでも幽々子さんのご飯は別に作っているらしく、どのような味がするのかを教えようと幽々子さんは『あーん』をしてくれるのだが、全て妖夢さんに遮られている。幽々子さんと『ざんねーん』と言って各々のご飯を食べるのが恒例。俺はあのごはんがどんな味をするのか知りたいのだがなぁ。
「あー、食べた」
「そうねぇ」
「まだ食べるんですか?」
「私は胃が大きいから。」
どう反応すれば良いのかわからないが、まあ苦笑いでもしとくか。目の前を見れば庭師らしい妖夢さんが庭師らしく庭の木を整えていた。幽々子さんの趣味として、盆栽もあるらしく。盆栽も整った状態で置かれていた。管理は妖夢さんらしい。
「…ほぼ丸投げじゃないですか」
「どれもこれも、妖夢がやると言ったからやらせてるのよ?」
「ほな丸投げちゃうか…」
「あ、そうだ。小さいお団子、食べる?」
「いやぁ、流石に入らなさそうです」
「そう、残念」
「幽々子様!!ダメと言っているでしょう!!」
「ごめんなさ〜い」
…しかし。どうしてこうも妖夢さんは遮るのか。絶品だから?客人と出す料理は区別しているから?それとも、別にあるのかな。だとすれば、主人に出す食べ物だから…いや、主人に出す料理だからと言って客人に出してはいけないと言うのはおかしいな。その主人が差し出してるんだし。
「良いですか?お客様も、けっっっして!幽々子様が差し出した食べ物を食べてはいけませんからね!!」
「あ、はい」
「…本当にわかってます?」
思わず生返事をする。でも、その食べ物とは別に、気になることがある。最近の幽々子さんだ。『あーん』までは良い。ご飯の時以外にやって来たことはなかった。でも最近、幽々子さんはお菓子も分けてこようとしている。もてなし、かな。
「ねえ、現世に未練とかはあるの?」
「いや、特には」
「…そう。ないの。」
「これと言って特には、ですね。場当たりな人だったので」
「あら、素敵」
しかしまあ、やはり。冥界からは帰ったほうが良いのでは。妖夢さんに打ち明けると、何処か睨みつけるような視線をこちらに向け、何かを言いたそうにしている。
「…何か?」
「いえ。今更か、と」
「今更?」
何かを察せそうな、察せなさそうな。そんな言葉を受け、幽々子さんにも伝える。実を言えば幽々子さんから、『冥界に住むつもりはないのか』と誘われていた。流石に誘われている状態で何も言わずに帰るのは失礼だろう。
「…そう。寂しくなっちゃうわ」
「そう言ってもらえて何よりです」
「ていっ」
閉じた口に何かが入れられる。反射的に飲み込んでしまい、何を入れられたのかわからないが、多分食べ物。
「…何、を?」
「こっち♪」
今度はキス。幽々子さん何してんだ。力で離そうにも、幽々子さんは意外に力持ち。そうしてる間に、幽々子さんが咀嚼したであろう食べ物を口の中に流し込んで来る。本当に何をしているのか。ようやく離し、少し幽々子さんから離れる。
「な、何するんですか!?」
「何って…なんでしょうね?」
「はぁ?」
ドタドタと足音が聞こえれば、素早く襖が開く。妖夢さんだ。何処か怒ったような、しかし諦めのついていそうな顔だった。それでこっちを見て、溜め息。
「妖夢さん、俺って、何されたんですか?」
「…黄泉戸喫、と言うものを知っていますか?」
「何、それ」
妖夢さん曰く。黄泉戸喫とは、あの世の食べ物を食べることらしい。それで、何回も食べたら最後、俺はあの世の人間になる…と。妖夢さんは、それが起きないように俺のご飯を別に作り、幽々子さんから食べ物を貰いそうになるたびに注意していた、らしい。
「…なんで、そんなことを」
「なんでって…貴方が寝て、起きたらここにいた。そんなこと、偶然起きると思う?」
「は…?」
「全部私がやったの。全てはあなたが好きだから。貴方が欲しかったから。」
「とうしてですか、何で俺なんですか!」
「…理由は忘れたわ。私の生前に好きだった人と似てたのかも知れないし、貴方を観察してて好きになったのかも知れない。」
「今の口移しとかって」
「何回にも分けて、流し込んだでしょ?貴方はもう、こちら側の幽霊。現世に帰れず、ずーっとここで暮らす。」
「…申し訳ありません。旦那様」
「は…い、いや、こっちの人間でも、お盆とかさ、帰れますよね!?」
「それは正しく死ねた者だけ。貴方のように、黄泉戸喫でこちら側の人間になった幽霊は、もう帰れないのよ」
途端に、幽々子さんが怖くなる。恐ろしい。どこかフラフラとした性格も、その性格がよく表す声も、何処か恐ろしく。妖夢さんに目を向けても、目を伏せる。旦那様、と言うのはそう言うことだろうか。俺は客人ではなく、幽々子さんと過ごすから?
「良いでしょう?どーせ、やり残したことのない人生。場当たり的人生で、満足出来てたでしょう?」
幽々子…殺したら記憶を失うかも知れない。だったらそのまま死者にしよう。
主人公…黄泉戸喫しちゃった人。帰れないねぇ。
妖夢…黄泉戸喫はダメでしょ、やめましょうね?とかやってたけど止めれなかった人。