人里
「…んー、すごい落書きの量」
「そうだろ。俺だって信じたくない気分だ。大体事実書いたってなんの面白味もないだろ」
「事実?私の目に写ってるこの人殺しって奴?」
「おう。危うく死刑になるとこだったが、槍で刺されても矢で射抜かれても死ななかったから不思議だ!」
「…あんた妖怪だろ」
失敬なただの人間だぞ。とは言え死刑に失敗しまくって殺せないじゃん!殺さなかったらお金あげるよ!って言われて解放されましたとさ。
「…て言うか、これじゃあ近所の人からの評判悪くなっちまうよ」
「私が消しとくよ」
「お、ありがと蛮奇さん」
「…いや、家の裏面まであったとは」
「不思議だろ?描いてる時誰にも見つからねえのさ」
「笑い話で済めば良いけどな」
翌日
「何奴!」
「げっ!?」
「人殺しの家に入る馬鹿がいるか!」
「クソッバレた!」パリーン!
「窓を破るなぁー!」
数時間後
「…ってことがあってよ」
「そりゃ誰だって泣きたくなるでしょ」
「俺、どんなに頑張っても強盗には負けるんだよなぁ」
「負けの基準は?」
「家に入られたら」
「一生負け続けてろ」
…酷くないっすか?いや、負けの基準を言っただけじゃん。強盗は強盗だし窃盗は窃盗じゃん。て言うか待て家の中に落書きない?
「…あいつ家の中に落書きして行きやがった!」
「ははは笑い話にもならんな」
外!
「…どう考えてもみたらしだろうが」
「私はどっちでも良いけどね」
「…みたらし一つ」
「三色団子三つ」
「わかりました」
「…お前しれっと3個頼んでんじゃねえよ」
「料金はあんた持ちだから私は払わないよ」
「クソが」
「…でも、気にならないの?」
「何が?」
「何がって…あれだよ。家の落書き」
「落書き…ああ、あれね。気になりはするよ。ご近所さんに迷惑かかるし」
「いやそう言う意味じゃなくて」
「んー…最初の頃はちょっと傷付いたね。正当防衛で殺したから…」
「…どう言う感じに殺したの?」
「近くにあったレンガを頭に何回も叩きつけてな」
「団子です」
「…あざます」
と言うよりなんであんなこと思い出してるんだ俺は。大体、急に酒瓶でぶん殴られてやり返しただけなのに。色々とおかしかろう
「ふーん。なんで殺したの?」
「そんなこと言う場所じゃないでしょここは」
「…そう言えば人里も最近物騒になってきたねぇ」
「まさかとは思うが俺疑ってんじゃねえだろうな」
「いや?まさか」
「洒落にならん」パクッ
「それに…私、あなたのことが心配だし」
「俺のこと?心配してくれてんの?独り身だから付き合ってくれたりすんのか?」
「…良いよ?」
「!?」
「ま、その代わり色々とさせてもらうけどね」
「冗談のつもりで言ったんだが」
「…は?」
「は?って言われても」
おや…蛮奇の姿が…?おめでとう!蛮奇さんは俯いてボソボソと喋る人になったよ!怖いよ!助けて!
「…ば、蛮奇さん?」
「なんでそう言うこと冗談で言うの?」ギロッ
「ヒェッ…いやぁ、だって心配してくれてるからさ。こんなこと言っても良いかなーって」
「は?どこからその自信が湧いてくるの?殺して良い?」
「いえ…その…」
「ねえ、なんでそんなつまらない嘘吐いちゃうの?」
「あ、あはは…今心に余裕がなくってさ…少し冗談を」
「そ。それなら仕方ないか。ごめんね、私が察せなくて」
「いや、別に良いんだけどさ…」
…何、今の。怖すぎんだけど。蛇に睨まれた蛙だっけ?そんな諺に載るよ絶対。女に責め立てられる男って。怖い怖い
「…と、とりあえず今日は解散で!」
「うん、わかった。それじゃ」
「ま、またいつか…」
できればもう会いたくはないかな…
二日後
「…んぁ?」
「ふんっ!」グサッ
「ぶっ!?」
「…良し、逃げろ!」パリーン!
「ゴフッ…少し辛いな」
「大丈夫!?」パカッ
「待て今どっから入ってきた?」
「え?普通にドアからだけど」
「嘘つけ屋上から飛んできたろ。さながら外の世界のヘリから縄伝って降りてくる人間みたいだったよ」
「褒められるのは嬉しいな…」テレッ
「褒めちゃいねーよ」
永遠亭
さて、問題です。僕は今どうなっているでしょうか?シンキングタイム、終了!正解は…赤蛮奇さんに全力介護されてる、です。
「…いや、あの、別にそこまでしなくても…」
「え?もっと?欲張りさんめ」
「え、いや、もう流石にいらないって!もう嫌だって!痛え!?」
「…ねぇ」
「おうふ…ん?なんか言った?」
「一昨日私に言った言葉、覚えてる?」
「知らん」
「…私に付き合ってくれるかって聞いたの!」
「あ、ああ。覚えてる」
「よかった!」
えぇ…っと。何がよかったのでしょうか。何かお気に召したのでしょうか。でなければ…帰れ!
「だって、あなたの家は危険だから、この際付き合って同棲しようって」
「???」
「あなたのご両親にはもう説明してあるから。ほら、行こ!」
「え?いや、まだ傷が」
「?もう治ってるけど?」
「え?…あ、マジだ」
「ほら、早く!」
蛮奇宅
「これといって特にないけどどうぞ!」
「…むっちゃ綺麗だから自分の家掃除したくなってきた…!」
「まぁ今日は遅いし、寝る?」
「待て、なんで布団がひとつ?」
「急なことだったからさ…ご理解とご協力を」
「お前情緒不安定だな」
「あなたもよ」
HAHAHA!笑えんしごめん助けて。なんか俺悪いことした?神様に向かってしね!とか言った?
「…さ、寝るよ!」
「うぇ、ああ…女と寝るって結構緊張するな」
「…ちなみに私ろくろ首だから」
「首を長くできるとか」
「頭が何個かあるんだよね。少し、味わう?」
「え?」
その日、蛮奇宅を通りかかった寺子屋の教師はこう語る。
「…人の断末魔はかなり聞いてきたが、きっと生涯で一度きりだろう。笑い声と泣き声となにかを叩く音が混ざった断末魔は」
絶対聖さんってあの体で布教無理だよね。