月
「…静かだなぁ。それこそ眠気を誘うくらい静かだ」
「…何者」
「俺が聞きてえ」
「…何奴」
「知るか」
「ふむ…消すか」
「待ってくれよ」
「…じゃあ何者か答えろ」
「その前に体起こしてくれ。俺がなんでここにいるのかは知らんがあそこにいたはずだ」ユビサシ
地球<え、あ、俺っすか?
「ほう。つまり貴様は穢れを持った人間というわけか」
「穢れ?ってのは知らんが…とにかく返して欲しいんだなこれが。死ぬのは御免だし」
「お前面白いな」
「何言ってんだこいつ」
…いや、ほんとなんなのこいつ。いつその口調消えるの。その口調だと喋りづらいからタメ口で良いのに。ていうか俺殺されるんですか。抹殺されるんですか?え、ちょっと冗談きついなぁ…流石に色々と問題があるよ。両津勘吉という月を開拓した奴に知らせるぞ
「…てかここどこ?」
「月だ」
「…え?」
純狐宅
「急に倒れるから驚いたぞ」
「急に酸素ないところ連れて行かれてピンピンしてるんだけど俺何人?」
「…私の家には一応空気があるから安心して欲しいが」
「本当か…すぅ…はぁ…ほんとだ!」
「そんなに嬉しいのか…」
「地上では空気が美味いとかいう言葉もあるくらいだしなぁ」
「空気が…美味い…?」
「空気が綺麗ってこと」
「…?」
ダメだ全然理解してねえ。そもそも空気の概念があるかどうかも怪しい月で空気が美味いとか説明しても無駄か。ところで私の家って言ったよね。ってことは俺女の人の部屋に入ってる?そう考えると何故か恥ずかしくなってきた…
「…女の人の家にお邪魔してるとか思うと申し訳ない」
「別に気にしなくて良いんだがな。私が好きでやっていることだし」
「…そういや名前とか聞いてなかったかな」
「純狐だ。お前は」
「俺?俺は鴨島(かとう)!鳥の鴨に島って書いて鴨島!わけわからん!」
「鳥か…知っているか?鳥は狐の餌だということを」
「え?」
「私の名前に狐が入っていてな。つまり名前通りに行くならば…」
「え、何?俺食われるの?」
「なんてな。ただの冗談だ気にするな」
すげー気になりますお嬢様!いえ、お姉様!と言いたいが色々と情報量が多くて処理できん。もう一回寝よう。そうしないと明日から色々と保たない気がする。というかいつ帰れるんだよ。できればアポロ11号にでも乗って行きたいよ地球。
翌日
「…地上の人間は飯が必要と聞いてな」
「ああ、ありがとうござます」
「食べると良い。栄養は偏っているが」
「すげえ肉がない」
「…やはり欲しいか?」
「いや、今まで肉ばっかだったからこっちも良いかなって」
「そうか。それは良かった」
…噛み付いたは良いものの、そうジーと見られていると食べづらいというか…ていうか何これ美味すぎん?新種の野菜?野菜炒め?味が口の中でメガンテしてるよ。ハーモニー奏でながら自爆スイッチ起動したよ。美味いよ!
「美味い」
「…久しぶりの料理だったから自信はなかったが、美味しいのなら良かった」
「そういえばこれなんの野菜?」
「気にしない方がいい」プイッ
「え」
…あ、もしかしてカニバリズム的なアレだったりする?
「ま、食材なんていちいち気にしてたら食いきれんか」
「ああそうだとも」
数分後
「ごちそうさまでした」
「お粗末様でした」
「…ところでいつ俺帰れるの?」
「さあ?」
「…そっか」
多分これは自力で帰る策を考えないと脱出できないなこれ
一週間後
「美味しいか?」
「…肉」
「ああ。肉だ。栄養を考えて作ったんだ。食べてくれ」
「肉も美味いんだが…食べたことないなぁって」
「知らない方がいい」
「それもそうか」
「…あと、聞いておきたいのだが」
「え?」
「貴様は…鴨島は帰ろうとしているのか?」
「え、いや別に」
「そうか。それは良かった」
…!?!?!?!?何、考え読まれてた!?え、やばい今ものすごい焦ってるし動揺してるよ絶対!?やだこわい!助けて神様仏様女神様ぁ!
翌日
「おはようござます」
「ああ、私戦争に行ってくるから」
「はい?」
「停戦の約束をしようと思ってな」
「そりゃ良いことで」
「じゃあな」
月の都 お偉いさんがいるところ
「…いたっ。矢に紙くくりつけてるとか原始人かな?」
「姉様、開けてください」
「ひらりと…純狐から。停戦の申し込みにそちらへ行きます」
「嘘つけぇ!」
「心外ね」
「あ」
「…停戦の申し込みに?」
「ええ。色々と事情がありまして」
「フフ…深くは詮索しないであげるわね。正式に停戦ってわけで」
「ああ」
戻って純狐宅
「…よくよく考えりゃ月の重力って地球の6分の1なんだっけ」ビョーン
「ただいま」
「はやっ」
「…お帰りは?」
「え?あ、おかえり〜」
「よろしい」
…何故よろしいんだ…わからん。乙女心というやつか。乙女要素を聞きたいが口に出さないでおこうなんかすごい睨まれてる怖い怖い。知らぬが仏、触らぬ神に祟りなし。逃げる姿に追う悪魔有り…やめとこ。
「…あったときに言ったな」
「何を?」
「名前についてだ」
「…あ、鳥は狐の餌だっていうあれ?」
「ああ。まあ私は純粋な狐と書いて純狐だが…な。私は餌を絶対に逃さないタイプでな」
「食い物の恨みってのはすごいらしいからね」
「私は鴨島が気に入った。お気に入りの餌だ」
「え?」
…ちょ、ちょっとやだこの子ったら何を言ってるのかしらウフフ〜…え、まじで何?俺これで『餌はお前だぁ!』って言い返せば良いの?え?やだわかんない
「そもそもおかしいとは思わないか?通りすがりの、いきなり倒れた男を女が介護するなど」
「そ、そうだけど…お、お前が餌だー!」
「やはり面白いな!」ガシッ
「わわっ」
「ますます離したくないな!月の都から蓬莱の薬を持ってくるとしよう!」
「え?え?」
「そうすれば私はお前と一緒になれるんだ!お前は浮気なんかしないよな?」ギュッ
「う、浮気も何もまだ付き合ってすらいないんだけど」
「は?」ボキッ
「しないよ!」
「そうだな!これで一緒に…」
地雷原踏んだ主人公と面白いから介護したら面白すぎて独占欲が働いた結果浮気しないようにした純狐さん。
鴨島と書いてかとうはやりすぎたと思っている。反省はしない