次は何時になるのやらぁ……
―――――――弐
「久しぶりだな。元気だったか?春秋」
一夏のISを学ぶ為の学園……つまり、IS学園への入学が正式に決定して1週間。
俺は5年ぶりに盟友と再会を果たしていた。
「あぁ。……なぁ、聖。
気になってたんだけどさ、俺たちはISが使えるんじゃなかったのか?」
ガブリエルはそう言っていた筈なのに……実際、俺はISを起動する事は出来なかった。
お陰で俺は、第二回モンドグロッソで苦渋を飲まされる羽目になった。
聖と一緒に一夏を救う事自体は出来たが……結果的に因果律は変わらず、千冬姉はドイツに借りを作り、家から離れた。
その時の一夏は本当に酷かった。
激しい後悔と自責、恐怖と悲しみに彩られていて、今にも消えてしまいそうな雰囲気を醸し出していたのだ。
なんとか立ち直らせる事は出来たんだが……まぁ、その話はまた別に機会があったらで良いだろう。
今は、現状を確認しないといけない。
「俺たちはもう、普通のISは起動出来ないな」
「普通……?」
俺たちはもう、とはどういう意味――
「お前の持ってるネックレスと俺の指輪、実は俺たちが作ったISなんだよ」
シリアスが一気にぶっ飛んだ気がした。
「…………は?」
「我が姉曰く、異世代型ISに定義されるらしいが」
「異世代だって?それに、俺たちってどう言う事なんだ!?」
「俺とゼウスとその他大勢」
「関わってんの神かよっ!?」
「搭載した機構は概念制御システム……」
うわ……普通に無視ですか……
「フォーマットはそうでも無かったが、フッティングにかなり時間が掛かってな。一昨日の昼前に終わったからお前のも終わっただろうとな。起動するぞ」
「ちょっ!?展開が速すぎてついていけないんだが……ええっと、ログ見ても構わないか?」
「黙れksg」
「まさかのネット用語での批判!?」
この世界にいる人たちには説明出来なさそうなのが歯痒いが、君たちなら分かってくれる筈だ!俺はおかしくな――
「……あれ?俺は一体、誰に言ってるんだ……?」
「さっさと起動しろ。起動パスワードは――
まじまじマジカルまーじかる
リリカルリリカルまりりかる
さぁ、変身だよ!
ぶーとまーじかる!!
――にしておいたが」
「もう色々と突っ込み所が多過ぎて突っ込みきれんわっ!!」
俺の渾身の突っ込みを聖はひらりと躱しやがった。
くそぅ……にやにやしやがって……!
「冗談だ。……半分はな」
「半分は本当だったのかよ!?」
「後半部分は本当だな」
「むしろそっちが嘘であって欲しかった!!」
「まぁ、それすらも嘘な訳だが」
「…………はぁ」
突っ込み疲れている俺を余所に、いつの間にか聖はISを装備していた。
漆黒と純白と言う相反する二色に彩られた機体には特出する点は無いように見えたが、背中に携えたそれぞれ色の違う二対四辺のフィンビットが異様さを醸し出していた。
しかもそのフィンビットは、まるで意志があるような動きで旋回を始めた。
「これが俺の力……四聖武神だ」
四聖武神と呼ばれたそれは、肯定するようにフィンビットが輝きを増す。
「俺は――」
聖と同じような力を持てるのだろうか?
強くなれるのだろうか?
少しでも、悲しむ人を救う事が出来るのだろうか?
――肯定。
「え……?」
何かが聞こえたような気がした。
機械音のようで機械音でないその声は、優しく……だがしっかりと応えてくれた。
「名前を呼べ。お前の力であり、己自身でもある其の名を」
ゆっくりと息を吸い、遠い昔から知っていたかのように懐かしい名を――
「天継禍衝地(あまつまがつち)」
――俺は、確かに呟いた。
―――
さんざん長い前振りは終わりだ。
俺は……俺たちは、IS学園に入学した。
――いや。自分でも話がぶっ飛んでるのは自覚してるよ。
でもさ、その理由を話すとまた時間が掛かるんだぜ?
だから今回は三行で説明しようと思うんだ。
聖がISを起動させてテンションが上がった束さんが俺やクロノまで巻き込んで全国中継で晒しやがった
つー訳で、俺と聖とクロノは一夏と一緒にIS学園に入学した。
え?クロノって誰かって?
その内に番外編ででも回想するから今はスルーしてくれ
全世界で4人となった男のIS操縦者は、一応安全の為に1つのクラスに集められている。
……なんで本題にいかないのかって?
女子からの視線が凄まじいんだ、現実逃避ぐらいさせてくれよ
なんだか長ったらしく思考していたが、結局の所、今はなにが行われているのかと言えば、自己紹介と言う晒しと言う訳だ。
しかも、俺の前に自己紹介した一夏が名前だけ言って終了したからその手が使えない。
いや、使えるには使えるとは思うが、女子たちからの異常な視線に耐えれる気がしないんだよ
マジで精神を破壊するレベル
「えーと……。一夏の兄の織斑春秋だ。適度によろしくなー」
完璧だ。
この……こう、大した事なんか全然言ってないのに印象が良くなりそうな感じで実にパーフェクト
これはこのまま座っても許され――
「なん……だ、と」
これで終わりだと言わんばかりに座ろうとした俺は辺りの空気に愕然とした。
なんだよ……その、もっと色々喋ってよ的な視線
なんだよ……その、それで終わりじゃないよね的な笑顔
正直、足がガクガク震えて止まらないんだが
「……し、篠ノ之とハラオウンとは幼なじみなんだ」
俺が呟くような声で放った発言に、教室内は一気に騒がしくなった。
そして視線は俺から逸れていって、その隙に俺は着席する。
聖とクロノは、俺に見せ付けるように溜息を吐いていた。
すまん、マジですまん。
「クロノ・ハラオウンだ。適度によろしく頼むよ」
「篠ノ之聖だ。
お前たちに2つだけ言っておく……俺の邪魔をする奴は容赦なく潰すから覚えておけ
あと、俺の妹は可愛い」
やはりクロノはクロノだった。
こんな空気でも事務的とかマジでKY
管理局ナンバー1KYの名は伊達じゃない。
あと聖、最初から喧嘩を売ったら険悪気味な雰囲気に――
――キャーーッ!!快活系な双子の兄弟にクール系に俺様系よ!!
――全員幼なじみらしいし、きっと酒池肉林よ!!
――に、にーさん……。か、可愛いだなんて……
どうしてこうなる。いや、どうしてそうなる。
あと、箒ちゃん性格変わったね。
昔はキリッとしてて格好良い感じだったけど、今の君の表情はデレデレで放送禁止一歩手前だよ
「鎮まらんか馬鹿ども」
喧騒だらけで山田先生も半泣きのこの教室に、小さいが威圧感に優れた声が響くと同時に――
「ごふっ!?」
「春あ――ごふぉ!?」
――俺と一夏の頭に爆撃(出席簿による打撃)が降り注いだ。
少し離れた場所にいるクロノは静かに十字架を切っていて、聖は必死に笑いを――あ、千冬姉に殴られた。
「あ、織斑先生。もう会議は終わられたんですか?」
「ああ、山田君。クラスへの挨拶を押しつけてすまなかったな」
不条理に俺の頭を爆撃し、何か余計な事でも言ったであろう聖を現在進行形でアイアンクローしている俺の姉は聞いた事もない優しげな声で山田先生を労っていた。
「い、いえっ。副担任ですから、これくらいはしないと……」
「あぁあ゛ぁ……」
「あぁっ!?に、にーさん!?」
さっきの涙声はどこへやら、副担任こと真耶は若干熱っぽい声と視線で千冬姉へと応えてはにかんでいる。
逆に聖はびっくんびっくんしている。
「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は弱冠十五才を十六才までに鍛え抜く事だ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな」
なんという暴力宣言。間違いなく俺たちを育て上げた俺たちの姉、織斑千冬……
千冬姉の暴力宣言に教室には困惑のざわめきではなく、黄色い声援が響いた。
――キャ―――!千冬様、本物の千冬様よ!
――ずっとファンでした!
――私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!北九州から!
――あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!
――私、お姉様のためなら死ねます!
きゃいきゃい騒ぐ女たちを千冬姉はかなりうっとうしそうな顔で見ていた。
そして聖は一瞬の隙をつき、千冬姉のアイアンクローから抜け出したかと思ったら、箒ちゃんの方へとゆっくりと歩み……
何故かやたら格好付けながらぶっ倒れた。
なにこのカオス
「毎年、よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か?私のクラスにだけ馬鹿者を集中させているのか?」
「……あのさ、千冬姉。いくらなんでもそれは言い過ぎ――」
「そうだよ千冬姉、俺も――」
パアンッ!パアンッ!本日二度目の爆撃。一度目と全く同じ場所に寸分狂わずにとかなんなの?馬鹿なの?
いっつ~……理不尽な打撃じゃないからギャグキャラ補正が掛からないじゃないか……
「お前ら、織斑先生と呼べ」
――と、このやりとりがまずかった。つまり、姉弟かなにかかが教室中にバレた。
「え……?織斑くん達って、あの千冬様の弟……?」
「じ、じゃあその幼なじみのハラオウンくんと篠ノ之くんも千冬様の関係者!?」
「世界中で4人だけ男がIS使えるっていうのも、それが関係して……」
全く関係ないと思うが、一応言っておこう。
前も話した通り、一夏は今、世界で唯一(彼女たちからしたら唯四?)『IS』を使える男としてここ、公立IS学園にいる。
IS学園と言うのは、
ISの操縦者育成を目的とした教育機関であり、その運営および資金調達には原則として日本国が行う義務を負う。ただし、当機関で得られた技術などは協定参加国の共有財産として公開する義務があり、また黙秘、秘匿を行う権利は日本国にはない。また当機関内におけるいかなる問題にも日本国は公正に介入し、協定参加国全体が理解できる解決をすることを義務づける。また入学に際しては協定参加国の国籍を持つ者には無条件に門戸を開き、また日本国での生活を保障すること。
……って、目の前の協定に関する教科書に書いてある。
平べったく言うなら、お前らジャポーネが作ったISのせいで世界は混乱してるんだから責任もって人材管理と育成機関のための学園作れや。技術よこせや。あ、運営資金は自分で出してね……ってことだろう。
そして残りの俺たちが何故、学園にいることになったのかと言えば、片や神様たちが創ったIS擬きを起動させられているのが全国に流れ……片や天文学的数字の奇跡が連続して起こり、魔法の存在がバレそうになったからである。
前者は俺と聖。後者はクロノな訳だな。
一夏は藍越とISを間違えて試験会場でISを起動させたからとか言う笑い話にならない笑い話に続けられる訳だが。
俺が小さく溜め息を吐くと、チャイムが鳴った。
「さあ、SHRは終わりだ。諸君らにはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう。その後実習だが、基本動作は半月で体に染み込ませろ。いいか、いいなら返事をしろ。よくなくても返事をしろ、私の言葉には返事をしろ」
鬼教官っぷりを発揮している千冬姉を一夏はじっと見ていた。
少なからず、このIS学園で教師をしているのを確認して安堵しているんだろう。
「席に着け、馬鹿者」
変わらないなぁとでも言いたげな一夏は小さく苦笑して席に座った。
そして盛大に溜息を吐いたクロノは刹那の間に千冬姉にアイアンクローされて人類が宙に浮くと言う歴史的快挙を再び俺たちに見せ付けてくれたのでした、まる。