不慮の事故で行方不明になったPが記憶喪失になってまったくの別人としてアイドルの前に現れる話   作:草葉 ヤス

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 2話続けてこんばんわ。えぇ、まだ寝ていないからおはようではなくこんばんわです。

 今話ではようやくアイツが登場します。そして一気に時間が飛びます。まぁアイツを出すにはさっさと時間進めないといけないのでね・・・。

 それと今話からオリキャラが登場します。出てくるのは精々2~3人程度ですが。

 そんなこんなで第3話、どうぞ



第3話

 =黛 冬優子視点=

 

 あいつが消えてから半年たった。この半年間、何も無かった訳が無く、一部のアイドルはショックを受けたようで仕事にも影響が出る人も出た。しかし皆あいつが持ってきた仕事をやり遂げるという気持ちが強かったのか、今は何とか持ち直して全国ツアーに向けてレッスンや宣伝を中心に仕事を行っている。

 それは勿論ふゆたちも例外ではなく、数か月前からはメディアへの露出を半分程度に減らし、ユニット毎のレッスンや283プロ全体での合同レッスンを行っていた。近々283プロ全体での強化合宿も予定されている。

 

 そして今日のレッスンを終え、事務所に戻って曲中のパフォーマンスについて話す予定なのだが・・・

 

「愛衣、あさひどこ行ったか知らない?」

 

 ユニットメンバーの一人、芹沢あさひが行方を眩ませた。レッスン場から事務所に向かい、事務所の扉を開けるところまでは確かに一緒にいた。問題はその後、事務所に入ってからあさひを見た記憶が無い。

 

「あれ?いなくなってるし!」

 

 愛衣にも心当たりが無いらしく、こうなると探すのも骨が折れる。とりあえず事務所内で事務作業を行っているはづきさんに確認を取ってみる。

 

「あの~、はづきさん。あさひちゃん見ませんでしたか?」

「えっ?あさひちゃんですか?事務所内では見かけなかったような・・・」

「そうですか~。わかりました!ありがとうございます~」

「またいなくなっちゃったんですか?良ければ探すの手伝いましょうか~?」

「いえいえ!大丈夫です!きっとその内帰ってくると思いますから!お忙しいところ失礼しました!」

「いえ、大丈夫ですよ~。早く見つかるといいですね~」

 

 はづきさんに礼を言ってから愛衣の元へ戻る。愛衣はスマホであさひに連絡を取っているみたいだが、表情からして恐らく連絡は取れてのだろう。

 

「愛衣、あいつ多分事務所にはいないわ。諦めましょ」

「えっ!?諦めるって、どうする感じ!?」

「あいつ無しでパフォーマンス決めるわよ。どうせいたってもっとグワ~とした方が良いっす!とかここはギュギュッとかした方が良いっす!位しか言わないんだから、後で確認すればいいでしょ」

「あはは・・・。確かに・・・」

 

 結局、あさひの事は諦めて事務所のソファに座ってスマホで撮ったダンスの動画を見ながら、二人で相談することにした。

 

 

 

「あの~、ちょっとお願いしてもいいでしょうか~?」

 

 愛衣と二人でダンスの振付について話していると、ふとはづきさんが話しかけてきた。両手でファイルと財布を抱えており、先ほどまで頭につけていたアイマスクを取っている。

 

「はづきさん?どうしたんですか?」

「ちょっと外に出ないと行けなくて、良ければ留守番をお願いしたいんですか・・・」

「全然大丈夫ですよ~!行ってきて下さい!」

「すみません~。30分位で戻ってくると思いますので、それまでお願いしますね~」

 

 そう言ってはづきさんがぺこりと頭を下げると事務所の外へ出て行く。スマホの時計を見ると、動画を見始めてから約1時間程立っていた。

 

「もう1時間も立ってたのね。ちょっと休憩にする?」

「ん~、そうしよっか!あんまり根を詰めてもいい案出ない気がするし!」

「そ、ちょっと飲み物取ってくるけど、愛衣は何かいる?と言ってもコーヒーか麦茶ぐらいしか置いてないけど」

「じゃあ麦茶お願いしてもいい?」

「わかったわ」

 

 そう告げて給湯室へ向かう。

 というかすっかり忘れていたが、あさひの奴は何処に行ったんだろう。失踪してから1時間ほど立っているわけだが、未だに連絡が帰ってきていない。

 

「あいつ、まさか何かに巻き込まれたんじゃ・・・」

 

 給湯室で冷蔵庫から取り出した麦茶をコップに注ぎながら、良からぬ事を想像してしまう。あんなのでも一応アイドルだし、顔も整っているし、もしかしたら変な奴について行ったりしたんじゃ・・・。普通ならついて行かないようなシチュエーションでもあさひならホイホイとついて行ってしまう可能性もある。

 最悪の場合、もしも攫われてたら?もしも事故に巻き込まれていたら?もしも、命の危険があるような事になっていたら・・・。

 あいつがいなくなってからこの手の話題に敏感になっているせいか、悪い想像がドンドン膨らんでいく。

 

「流石にちょっと、連絡した方がいいわね・・・!」

 

 ただ何かに夢中になっててスマホを見ていないだけならいいが、そうでないなら・・・。

 

「愛衣、ちょっとあいつにもう一度・・・・・」

「ただいまっす~!!」

 

 電話してみて、と言おうとしたところで、事務所の扉が勢いよく開き、あさひが大きく手を挙げてズカズカと入ってくる。あさひの様子を見てみれば、手が土で汚れていたり、裾に土汚れがついているのが見え、更に掲げた右手にはこれ見よがしにセミの抜け殻が握られていた。

 ・・・あいつ、ホント一回痛い目見せた方が良いわね

 

「ちょっとあさひ!あんたどこ行ってたのよ!電話にも出ないで!」

「あ!冬優子ちゃん冬優子ちゃん!友達が出来たっす!」

「はぁ?友達ってアンタ何言って・・・」

「コンニチハ!ここがニポンのアイドルのいる場所デスカ?」

 

 あさひの後ろから女の子が飛び出してくる。金色の髪に青色の瞳。彼女の服もあさひと同じように土で汚れており、高級そうな服には明らかに似つかないセミの抜け殻がブローチのように飾られている。

 あさひから目を離して1時間。たった1時間でなんでいつもこう想像もしないような事を起こせるんだろう。1時間目を離しただけで明らかに日本人ではない、外国人と友達になって、そして何故事務所へ連れてくるのだろう。歳はあさひと同じ位に見えるが、一応部外者になる。それを簡単に事務所にあげるなんて・・・。

 

「あ、あさひちゃ~ん?ここ、一応お仕事場だからお客さんを呼ぶならせめて事前に連絡してほしいな~?」

「アイラって言うらしいっす!アイドルが好きらしいから、冬優子ちゃんに会わせてあげようと思ったっす!」

「あなたがフユコさん?アサヒさんから聞きました!スゴイアイドルって!」

 

 あさひの隣に立っている金髪幼女がやたらキラキラとした目で私を見上げてくる。

 そりゃふゆもアイドルだし、小さな女の子に憧れの眼差しを向けられるのは悪い気がしない。ただ問題なのは「あさひさんから聞きました」の部分だ。あさひがこの子に一体何を喋っているのかでどこが凄いと思っているのかが変わる。あさひが普通の話をするとは思えないけど・・・。

 

「アサヒちゃんの言った通りスゴクカワイイデス!それにダンスもメイク?も得意って聞きマシタ!」

 

 少女、アイラと言う名前だったか。アイラの口ぶりでホッと胸を撫でおろす。どうやらあさひは余計な事を喋っていないみたい。って言うかあさひの奴、案外ふゆの事高く買ってるのね。普段から訳が分からない行動を続けてるけど、根は良いやつ・・・。

 

「それと、ワタシもマホーショージョ好きです!フユコさんも好きなんですよね!?オソロイです!」

 

 前言撤回、ちょっと痛い目を見せよう。

 

「あさひちゃ~ん?ちょっと二人でお話ししたいなぁ~?」

「?いいっすよ!」

「アイドル秘密会議デスカ?ワタシもオハナシしたいです!」

「ごめんねアイラちゃん?ふゆはあさひちゃんとお話ししないといけないことがあるから、愛衣ちゃんとお話しして待っててくれる?」

「愛衣サン!聞きマシタ、愛衣サンもスゴイアイドルって!」

「あ、あはは・・・。じゃあアタシと喋ろっか」

 

 愛衣が気を利かせてアイラを引き取ってくれたのであさひを連れて一度事務所を出る。外に出てから周りをキョロキョロと見渡し、辺りに人の気配が無い事を確認する。

 

「話ってなんすか?あ!もしかして面白そうな物を見つけたんすか!?」

「そんな訳ないでしょ!このバカあさひ!アンタ見ず知らずの子に何教えてんのよ!」

「?アイラちゃんアイドルが好きって言ってたから、冬優子ちゃんの事教えたっす!」

「そこは良いわよ!なんで私のオタク趣味の事言ってんのって事!」

「?でも冬優子ちゃん好きっすよね?」

「それは周りに秘密にしてるんだから余計な事教えんなって言ってんのよ!」

「あ!わかったっす!恥ずかしいんすね!」

「芹沢あさひ~!」

 

 言葉で何を言っても意味が無い事を確信し、あさひの頭をわしづかみにして引き寄せ、両拳を頭の左右に押し付けてグリグリと押し込む。

 

「イタイイタイイタイっす!」

「アンタ次余計な事言ったら痛い目合わせるからね!」

「もう痛いっすよ!ごめんなさいっす!」

 

 ある程度やったら反省したようで拳の力を緩める。するとあさひがさぽんと抜け出してその場にしゃがみ込む。頭を摩りながら口を尖らせて文句ありげな表情でふゆを見上げてくる。

 

「・・・なによ?」

「冬優子ちゃん、力強くなったっすね。学校の体育教師みたいっす」

「・・・もう一回やられたいみたいね」

 

 こいつには一度しっかりとわからせないといけないらしい。そう思ってあさひの頭に再び手を伸ばしたところで、事務所の扉が開いた。

 

「ちょ、ちょっと冬優子ちゃんヘルプ!」

「な、なんだ愛衣じゃない・・・。驚かせるんじゃないわよ・・・って何をそんなに焦ってんのよ?」

 

 事務所から出てきた愛衣の右手にはスマホが握られていて、何やら声の様なものが聞こえてくる。電話でもしていたのかと思ったが、愛衣のスマホには色々と装飾がついているはずなのに今持っているスマホにはそれらが一切無い事に気が付く。よくよく見れば色や機種も違う。

 

「アイラちゃんのスマホに電話かかって来てさ、アイラちゃんが近くにいる人に代わるって言って渡されたんだけど、何を言ってるのかわかんなくて!」

 

 そう言ってスマホの画面をこちらに向けられる。通話画面には『Souffle』と表示されており、聞き覚えの無い喋り方が聞こえてくる。ところどころ知っている単語が出てきているため、恐らく英語だろう。

 

「アンタ、英語わかんないの?」

「ちょ!冬優子ちゃんだってわかんないっしょ!聞いてみてよこれ!スッゴイ早口で聞き取れないから!」

 

 愛衣がそう言ってスマホを押し付けてくる。スマホを耳に当て、相手に声を掛けてみる。

 

「あ~・・・」

『*****?******,*********?』

 

 愛衣が手を上げるのも納得した。かなりネイティブ気味の発音だ。その上かなり早口で喋っている。学校の授業で行うような英会話ではなく、本場の英語って感じ。何とか聞き取ろうと努力してみるも、部分部分の単語は聞き取れても全体が聞き取れない為結局何を言っているのかがわからない。帰国子女らしい八宮めぐるや、なんとなく何でもこなしそうな気がする有栖川夏葉なら聞き取れるのかも知れないが・・・。

 

「ねっ!?何言ってるかわかんないっしょ!?」

「・・・そうね。ってかこれアイラって子のスマホでしょ?あの子何処にいるの?」

「それがアタシにスマホ渡してトイレ行っちゃって・・・」

 

 なるほど、自分じゃ聞き取れないし、はづきさんや社長も今は事務所にいないから頼れるのがふゆかあさひしかいなかったのか。

 

「って言ってもふゆもこれじゃわかんないし・・・」

 

 そう言って再びスマホを耳にかざすと

 

『もしもし?聞こえていますか?あれ?もしもし?』

「え、日本語?」

 

 さっきまでの英語とは打って変わって、スマホから聞こえてくるのはハッキリとした日本語だった。ふゆのつぶやきが聞こえていたのか、愛衣がスマホに耳を近づけてくる。それを見ていたあさひも何か面白がって顔を近づけてくる。

 

『あぁ、よかった。申し訳ありません、連れは日本語が苦手で・・・』

「あ、いえ!大丈夫です。こちらこそすみません、英語ちょっと苦手で・・・」

『いえ、日本にお住いの方でしたら当然ですよね、申し訳ありません。それで、そちらにアイラ様・・・、えっと、金髪で、青い瞳をしていて、髪の長さは腰ぐらいまである少女はいらっしゃいますか?』

「はい、ごめんなさい。どうやらふ・・・私の友達が勝手に連れてきちゃったみたいで~」

『そうですか!良かった・・・!』

 

 とりあえず日本語が通じるなら問題は無い。通話の内容から恐らくアイラちゃんを探しているのだろう。でもこの声、何処かで聞いたことがあるような・・・?

 

『そちらまで迎えに行きたいのですが、宜しければ住所などお教え頂けないでしょうか?あ、もし自宅を知られるのがアレでしたら近くのコンビニとかでも』

「あ、いえ~大丈夫ですよ。ここは事務所なので、問題ないと思います、場所は東京都○○市○○ー○○です」

『事務所?もしかしてお仕事場でしょうか!?申し訳ありません!すぐに向かいます!』

「いえいえ、大丈夫ですよ~」

『ありがとうございます。それでは向かいますので、のちほど』

 

そう言うと通話が切られ、ツー、ツーと電子音が流れてくる。耳からスマホを離すと、顔を近づけてきていたあさひと愛衣も顔を離した。

 

「やー、日本語通じる人いてマジ助かったじゃん!あのままずっと英語で喋られてたわアタシも冬優子ちゃんでもお手上げだったし!」

「バカ、最悪アイラちゃんを待って通訳してもらえばいいだけでしょ。まぁ相手にも日本語が分かる人がいて助かったわね。アリアちゃんも、通話先の相手も明らかに外国人だったし」

 

 ふゆと愛衣が話していると、あさひが両手をだらんとぶら下げながらジッと床の一点を見つめている事に気が付く。

 

「?あさひちゃん、どうかしたの?」

「・・・何か今の人の声、どっかで聞いたこと無いっすか?」

 

 愛衣があさひに声を掛けると、急に顔をグワッと上げて、こちらを見上げる。

 

「声?確かに何だか聞いたことあるとは思ったけど・・・」

「・・・あさひも愛衣も感じたのね。確かにふゆも聞いたことある声だとは思ったけど・・・」

 

 そう言って3人で考え込む。ふゆ一人が感じただけなら勘違いの線もあったかもしれないが、愛衣やあさひにも引っ掛かったらしい。こういう時のあさひの勘は鋭い。あさひが気になってるって事は何かあるんだろうけど・・・・・。

 

「愛衣サン!スフレは何て言ってマシタカ!?」

「うわっ!」

 

 ふゆ達の思考は扉を開けて顔を出したアイラちゃんによって妨げられた。もっとも、あさひはずっと考え込んでいるが。

 

「あ~、スフレさんって女の人?ちょっと英語がわかんなくって、でもその後に男の人が出て、ここに来るって言ってたよ?」

「男の人?サンですね!サンが言ったならダイジョーブデス!すぐに来ると思いマス!」

「そっか!それは良かったし!」

 

 愛衣はそう言ってアイラちゃんの頭をグリグリとなで回す。アイラは気持ちよさそうに目を細める。

 

「それじゃアイラちゃん?事務所の中でまとっか!ほら、あさひちゃん、行こ?」

「・・・っす・・・・・」

 

 とりあえず外で待つわけにもいかないため、事務所の中で待つように促す。あさひは相変わらず考え込んでいるようで、軽く手を引っ張ると小さく返事をしてついてきた。

 

 




 前書きではついにアイツが登場しますと言いましたが、なんと通話場面だけです。直接の再会は次話になりそうです。ごめんなさい。
 
 でも仕方が無かったんです。まさかこの話に6000文字を必要になるとは思わなかったので。
 
 次こそは出ると思うのでお楽しみに
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