【完結】ハンターハンター世界で転生者が探偵()をする話   作:虫野律

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※14話~22話まで連続投稿です。
※オリジナル解釈と設定がかなりあります。

お久しぶりです。
「駄文でも完結させないよりはマシ」の精神で投稿します。私自身「ないわー」と思う箇所が結構ありますが、これが私の実力()です。
ですので低評価はお気軽にどうぞ笑
また、ご助言やご指摘をしてくださいますとうれしいです。



機械仕掛けのティンカー・ベル [壱]

 最近、ベーカー探偵事務所に可愛い系(?)グッズが散見されるようになった。

 なんだよ、このやる気のなさそうな猫のぬいぐるみ(「二度寝コ(にどねこ)」って名前らしい)。これのどこに魅力があるんだ? 流行ってるってマジかよ……。

 

 俺が世の不条理について思案していると、不条理(ぬいぐるみ)の提供者──ルビーがはしゃぎ出した。

 

「ねぇ! 見て見て!」

 

 どうやらオーラで似顔絵を作ったみたいだ。

 これはまさか……。

 

「俺、なのか?」

 

「うん! 上手くない? すごいでしょ」

 

「おー、すごいすごい」

 

 たしかに上手い。似ているかもしれない。さりげなく絵心を見せつけよる。

 

 ここまで細かい形状変化ができてんなら。「変化系修行はもういいんじゃないかな」

 

「はーい。次はー?」

 

「そうだなぁ……」

 

 教え方なんて分からないから俺も手探りだ。

 どうすっかねぇ。ルビーは戦闘能力を極めたいわけではないらしいし、次は……。

 ここで静かな事務所を震わす音。

 

──prrrrrrrrrprrrrrrrrr……。

 

 電話だ。受話器を取り、耳に当て──。「お前は騙されている。真実を見つけろ。これは依頼(・・)だ。ジン・フリーク──っ! ちぃっ!」ガチャリと切られてしまった。

 

「……は?」

 

 なんだ? イタズラ? いやしかしこの声は……。

 

「どうしたの?」

 

 ルビーの心配そうな顔。

 

「ああ、変態のイタズラだったよ」

 

 安心させるような顔を作る。しかしルビーは腑に落ちないのか、ジト目である。

 

「な、なんだよ」

 

「怪しい。いつもはそんな顔しないじゃん。何か隠したいんでしょ」

 

「……」

 

──『信じる者は救われない(ラッフィング ライアー)』発……え? あれ?

 

 発動しない? 依頼自体は成立しているよな? どういうことだ? 

 

嘘つきは探偵の始まり(ライアーハンター)』の制約と誓約上、依頼承諾の意思表示を明示的にしなくても俺が内心で同意の意思を持っていた場合は、原則として有効な法律行為、つまり探偵業業務請負契約が成立したものとして扱われる。

 加えて、いつもなら制約と誓約の「『依頼達成に必要な範囲』で全ての発が使用可能」の「依頼達成に必要な範囲」は広めに解釈される。だから「依頼に関して誤魔化すため」というのもその範囲に含まれるはずなんだ。

 けれど現実はそうなっていない。ということは……。

 

「もー! なんか言ってよー」

 

 ルビーがむくれ出した。

 

「ごめんごめん」とりあえず謝る。「実はちょっと厄介な依頼が入ったんだ。だから悪いけど今日の修行は終わりだ」

 

 正直に白状するも、しかしルビーはむっとしたままである。

 

「えー、さっき来たばっかじゃん」

 

「この依頼が片付いたらちゃんと付き合うって」

 

 俺の勘が正しければ尋常の依頼ではない。おそらくヤバいやつだ。だからルビーにはさっさと帰ってもらう必要がある。

 

「今度、二度寝コ(にどねこ)グッズを買ってやるからさ」

 

「……ふーん。そんなに危ないんだ」ルビーは察しのいい子だ。「仕方ないのう」

 

 ルビーがソファに置かれたバッグを手に取り扉へ向かう。が、開ける前にクルリと振り返った。「二度寝コ(にどねこ)忘れないでね」

 

「ああ、分かってる」

 

 うむ、と鷹揚(おうよう)な頷き1つ、俺ではなくルビーが。

 

「お仕事頑張ってね。バイバイ」

 

 扉が開けられ、そして閉められる。

 ルビーの気配はすぐに俺の感知範囲外へ。

 

 さてさて、どっから手をつけようかな。

 

 

 

 

 

 

 

 携帯のリストから目的の人物を探し、電話を掛ける。

 1コール、2コール、3コール──出てくれた。

 

「……貴方から掛けてくるなんて珍しいじゃない。どうしたのよ? →治験希望?」

 

 チードルは相変わらずだな。良くも悪くもはっきりしている。

 

「実はジン・フリークスに用があってな。紹介してくれないか?」

 

 先程の電話でジンの名が登場していたから、まずは彼を当たろうかなってね。

 しかし。

 

「それはできないわ」チードルがあっけらかんと言う。「あのバカがどこにいるかなんて分からないもの」

 

「そう、か。やっぱチードルでもそんな感じなのか」

 

 ワンチャン知ってるかも、とか思ったけど、そんなことなかったわ。原作通りなんだな。 

 

「誰か仲介してくれそうな奴はいない?」

 

「そんな人いt……あぁ、一応いるわね」

 

「お」

 

「ジンと同じ遺跡ハンターのサトツなら、もしかしたら何らかの情報を持ってるかもしれないわ」

 

「おー、なるほど」

 

 流石はチードルさんやで!

 

「ただ、私はサトツの連絡先を知らないのよねぇ」

 

 流石はチードルさんやで!!

 

「大体の居場所も分からないのか?」

 

「待ってね」

 

 カタカタと、おそらくは打鍵(だけん)音。わざわざ調べてくれてんのかな。

 1分も経たずにチードルは答えを得たようだ。口を開く。

 

「サトツは少し前に遺跡への挑戦許可申請手続きをしたみたい」

 

「つまり?」

 

「オチマ連邦北西部にある遺跡群『悪魔の(ねぐら)』にいるはずよ」

 

「……」

 

 遠すぎぃぃ!

 

 

 

 

 

 

 

「流石はミザイ。どこぞの雌犬とは格が違った」

 

「雌犬? 何を言ってるんだ?」

 

 電話越しでも困惑してる顔が容易に想像できる。

 

 いきなり海(メビウス的サムシング)を渡りオチマ連邦まで行くわけにはいかないから、なんとか事前に連絡を取れないかと今度はミザイに訊いてみた。すると「サトツの番号なら知っている」と返ってきた。ありがてぇありがてぇ。

 

「紹介すればいいのだろう。訊いてみるから一旦切るぞ」

 

「頼む」

 

 数分待つと電話の呼び出し音。ミザイだ。

 

「どうだった?」

 

「ああ。何やらあちらも『丁度よかった』と乗り気だったぞ」

 

「ん?」

 

 どういうことだ?

 

「詳しくは直接聞いてくれ」

 

「まぁそうだな」若干の不安はあるが、とりあえずは。「助かったよ。サンキューな」

 

「構わんさ」

 

 

 

 

 

 

 

 チードルが言ったとおりサトツはオチマ連邦の「悪魔の塒」をハント中らしく、現在、最寄りのホテルに滞在しているそうだ。ちなみに最寄りと言っても遺跡から30キロメートルほど離れている。

 

 電話の向こうのサトツは、原作のイメージに違わず落ち着いた紳士といった感じだ。

 

「ジン、ですか」

 

「ええ、私の仕事の関係で会う必要があるんです。何か知らないですかね?」

 

 短い沈黙。

 

「……申し訳ないですが、私が持つ情報は大半のプロハンターが知るものと大差ありません。有益な情報は提供できないかと」

 

「そう、ですか」

 

 うーむ。「ジンを見つけるのは難しい」。そんなことを弟子のカイトが言ってたな、そういえば。

 チードル、ミザイ、サトツ。ここまで全滅。ガチレアキャラじゃん。どうしたもんかなぁ。

 

 しかしサトツには何か手段があるのか、魅力的な提案をしてくれた。

 

「エヴァン君がよかったらですが、私からの依頼を受けていただけませんか? その報酬としてジンへの手掛かりをお渡しできるかもしれません(・・・・・・・)

 

 ただし、やや引っ掛かる妙な言い回しで。

 ……報酬は確定していない、ね。

 

「……ご依頼の内容は?」

 

 正直、なんとなく予想はついている。

 遺跡で仕事(ハント)中のプロハンターがする依頼、かつその報酬が未確定──確定に至らない程度の情報しかない等──となると……。

 

「ミステリーハンターのエヴァン君には『悪魔の塒』攻略──(れきし)の解明を手伝ってほしいのです」

 

 ですよねー。知ってた。

 

「なるほど。つまり遺跡内にジンさんへの手掛かり又はその入手に繋がる何かがある可能性が高く、それを依頼の報酬にしたい、ということでよろしいでしょうか?」

 

 未確定ってこういうことっしょ、多分。

 

「ご明察。その通りでございます」サトツの声音は弾んでいるように聞こえなくもない。「お願いできますか?」

 

 そうだな。他に当てもない。

 

「分かりました。ご依頼お受けします」

 

「おお、それはよかった。では早速飛行船を手配いたします」

 

 お、おう。

 手配ってチケット代を出すって意味だよな? まさか俺を呼ぶために一(せき)丸々用意するんじゃないよな? 

 

「現在、貸しきれるのはホワイトホエール号しかありませんが、構いませんかな?」

 

「……大丈夫です」

 

 この金銭感覚よ! 常識人ぶっててもやっぱり変人(プロハンター)だわ。

 

 それはそれとして拙者には言わねばならぬ事がある。

 

「サトツさん」

 

「? なんでしょうか?」

 

「私はミステリーハンターではなく私立探偵です。探偵なのです。いいですね?」

 

「……承知しました」しかしサトツが何やら呟く。「(ハンター専用サイトを見せてあげたいですね)」

 

 知らないほうが幸せなこともある。俺はそう信じている。 

 

 

 

 

 

 

 

 飛行船の旅は快適だった。

 外野に煩わされることなく静かに小説を読むことができた。とてもいいと思います。

 飛行船を降りた後は、列車に乗りサトツが滞在するホテルに向かった。長い旅路だったよ。

 

 そして現在。

 

「遠路はるばるご足労いただき、ありがとうございます。はじめまして。遺跡ハンターのサトツです」

 

 ホテルにてサトツが迎えてくれた。

 よく磨かれた内羽根式のプレーントゥとシワのない燕尾服が、英国紳士然とした風情を際立たせている。

 

「私立探偵のエヴァン・ベーカーです。こちらこそ急なお願いに応えていただき、ありがとうございます」

 

「お噂はかねがね。期待していますよ」

 

「尽力いたします」

 

 挨拶もそこそこに本題に入りたい。こちらから切り出す。

 

「……道中『悪魔の塒』について調べました。『知恵』『慧眼(けいがん)』『暴力』『欲望』『無』『人間』の6つの遺跡があるとか」

 

 それぞれ試練が課され、それをクリアしないと色々と大変らしい(俺が知り得た情報では「大変」の内容は濁されていた)。ただし、試練の全てが珍味(理不尽)珍味(理不尽)を重ねて作られた極上の料理(ただのイジメ)という点に争いはないようだ。

 まぁ、やるんだけどさ。

 で、問題はサトツがどこをハントしているのかってことだ。

 

「ええ。今回お手伝いしていただきたいのは『慧眼』の遺跡第四層『確率の悪魔』以降の攻略です」

 

 “確率の悪魔”……? 遺跡で“確率”?

 

 あまり結びつかなそうなワードにやや首を傾げる。

 サトツが()もありなんと頷き、続ける。

 

「時にエヴァン君は、数学は得意ですかな?」

 

「……私は文学部心理学科でした。数学は基礎の基礎しか分かりません」しかも大分忘れてる。「本格的な数学の知識が要求される試練なんですか?」

 

 そうだとすると俺は役に立たないぞ。

 

「いえ、数学自体は中学校(ミドルスクール)レベルです」

 

「? それならば何が問題なんですか?」

 

「問題は2つあります。1つは数学的に正しい選択をしても正解ではないこと」

 

「……なるほど」

 

 つまり試練の本質が数学ではないということ。

 

「もう1つの問題は、挑戦回数制限とペナルティです」サトツがやや視線を下げる。「1つの遺跡における一連の試練パターン(・・・・・・・・・)につき挑戦可能回数は3回。一度に入れるのは2人まで。3回目に失敗すると以後100年間は遺跡に立ち入ることができなくなり、時が経ち漸く入ることができるようになっても試練の内容が一新されていて最初から攻略し直さなければいけません。加えて、3回目の挑戦者が失敗した場合は(わざわい)が訪れてしまうのです」

 

「禍?」

 

 サトツが革ベルトの腕時計を撫でる。そしてゆっくりと口を開いた、泥水の中を進むかのように、多大な労力を要するかのように。

 

「……2年ほど前『人間』の試練に失敗したプロハンターがいました。彼女はクリアを確信していたようでしたが、現実は違っていました」

 

「……」

 

「彼女の名はジュリア・メルシエ。あの『骨抜きのジュリア』です」

 

「!」

 

 こいつはビッグネームが飛び出してきた。彼女も「悪魔の塒」に挑戦していたのか。

 

“骨抜きのジュリア”

 

 ミンボ共和国の犯罪史上、最も残酷な猟奇連続殺人犯の1人とされている。彼女の主な(・・)殺害方法は、2つ名のとおり生きたまま骨を抉り出すというものだ。ただし、すぐに死なないように末端の小さな骨から少しずつ時間を掛けて抜いていく。中には数日に渡り苦しみ続けた被害者もいたそうだ。

 ただ、彼女には不可解な点があった。それは彼女の人間性。当時の報道によると、彼女は、プロハンターとして活動しているころは孤児院や慈善団体に多額の寄付をしたりと、猟奇殺人鬼とはある意味真逆の行動を取っていたらしい。所謂人格者に見える人間がある日を境に残虐な行為に手を染める。ない事例ではないが、少し違和感がある。

 加えて彼女はシングルの星持ちハンター。つまり成功者だったんだ。そんな人間が犯行に及ぶというのは、まぁこれもなくはないが、彼女の場合は人格障害、特殊な家庭環境その他犯罪心理学上の犯罪者の特徴を全く備えていなかった。

 以上からジュリアの精神性に関しては様々な議論がなされた。しかし有識者が明確な答えを得ることはなかった。

 なぜならブラックリストハンターが彼女を追い詰めた時、大規模な爆発を起こし死亡したからだ。その時のブラックリストハンターは全滅。周囲にいた人間も巻き込まれてしまった。こうして合計で267名もの人間が彼女により殺害される結果となった。

 さらにもう1つあり得ないとさえ言える事態が起きていた。彼女の6親等内の血族(親戚から「自分の夫や妻」と「血のつながりのある親戚の結婚相手とその親戚」を抜いたものと概ね一致する)も同じように連続殺人鬼となり最期には爆死したんだ。この人たち全ての犠牲者は合計で1000を越える。もはや自然災害クラスだ。

 

 話を戻そう。

 彼女の不可解な変貌は悪魔による禍が関係しているということだろうか。そうであるならば「人間」の遺跡における試練失敗のペナルティは「挑戦者及びその6親等内血族が猟奇殺人鬼になり、捕まりそうになったら爆死すること」であると言える。

 

 サトツが解を示す。

 

「彼女が凶行に及んだのは、悪魔による人格と肉体の改竄が前提にあったと見られています。その精神を殺人鬼に、肉体を爆弾に、です。そして親類にまでその呪いは及んでいたようです」

 

「……疑問なんですが、それは『人間』の遺跡のペナルティですよね? 『慧眼』だとどうなるのですか?」

 

「それは分かりません。ですが、同程度の悲劇が起きると考えられています」サトツの表情に変化はないが。「……やはり依頼の契約を解除しますか?」違約金はいりませんよ、と。

 

「ふ」

 

 思わず笑ってしまった。

 だってそうだろ? 探偵として依頼を受けた以上、俺が引き返すなんてあるわけがない。そんなのプライドが許さない。

 

「何か可笑しなところがありましたか」

 

 少し気分を害したのか、僅かに刺のある口振り。

 

「私が一度受けた依頼を破棄することはあり得ません。そのようなお気遣いは無用ですよ」

 

 今度はサトツが小さく笑う。「それは失礼しました」

 

「それではもう少し遺跡のお話を聞かせてください。クリアの確率(・・)をあげましょう」

 

「ふふ、そうですね。『悪魔の塒』は──」

 

 こうして夜は()けていく。

 静かな星空だ。悪魔は夢を見ているのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝、俺たちは早速遺跡へと出発した。移動手段は車だ。サトツが運転している。  

 

「……エヴァン君はジンとは面識がないのですよね?」

 

 不意にサトツが言った。

 

「ですね。有名人ということしか知りませんよ」

 

 ちょっと嘘。

 

「そうですか」静かな相づち。

 

 そういえば原作ではサトツの憧れの人(?)だったか? あんまり記憶にないから違うかもだけど。

 

 ブレーキ。車が停まる。

 

「ここからは歩きです」

 

「了解です」

 

 まさか原作ハンター試験みたいにとんでも競歩じゃないよな?

 

 

 

 

 

 

 

 サトツによると「慧眼」の試練は、悪魔が出す問題に潜む嘘を見つけることが必要らしい。回数制限とペナルティを考えるとテキトーに「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる作戦」を実行するわけにはいかない。

 どうしたものか、と思案している時にハンター専用サイトで俺の「とある噂」を知ったそうだ。要は、連絡を取ろうとしていたら逆に俺からコンタクトがあったわけだ。

 

 ……それはいいんだ、別に。ただ、嘘発見器(笑)がまともに機能するか、だよな。

 昨日の打ち合わせの時、サトツに「私は女である」と発言してもらった。そしたら嘘発見器(笑)が発動していたから多分大丈夫だとは思う。ただし、ルビーの時みたいに発動しないとも限らないから油断はできない。

 ルビーに対して機能しなかった理由を普通に推測すると「依頼内容が抽象的すぎて『依頼達成に必要な範囲』を念が定義できなかったから」又は「たとえ内心でその意思を有していたとしても、ごく短い時間でしかなかったため、依頼承諾の意思表示とみなされず請負契約がそもそも成立していないから」辺りが有力だと思うんだけど、微妙に納得できない。

 というか依頼主の声に引っ掛かりを覚える。でもイマイチ何が起こっているのかが分からない。そこが解消しないことには理由を断定することもできない。んー。

 

 現時点ではいくら考えても無理か。

 

 道なき道というほどではないが、十分には整備されていない道を歩くこと1時間半。それらしき建造物(石で造られているのだろうか?)が見えてきた。

 

 サトツが視線をそれに向ける。

 

「あれが『悪魔の塒』です。何も知らなければ、ただただ美しいと思いませんか?」

 

 正直、遺跡とかの歴史的意義のある物を美しいと思う感性はない。でも、ま、今それを伝える意味もない。

 

「ええ、そうですね」薄っぺらい嘘だ。「ですがそれよりも……」

 

 凝をしなくても分かる。複数の遺跡が濃密なオーラに包まれているんだ。

 はっきり言って怖い。生物の1個体が纏えるレベルとは次元が違う。デカイ建物だから当たり前っちゃ当たり前だけどさ。

 

「やめたくなりましたかな?」

 

 からかいを含んだアルカイックスマイル。

 

「冗談」こちらも口角が上がってしまう。「ワクワクしてますよ」

 

「結構。それでは悪魔に会いにいきましょう」サトツが真っ直ぐに丸い遺跡に歩を進める。

 

 人間のほうが嘘と仲良しだって悪魔に教えてやらないとな。へへ。

 

 

 

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