今日の世界は、何色?   作:Cross Alcanna

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どうも、Cross Alcannaです。
  
さて、今話から個別(アンケート)編に移行します。ここらでは、日常の1ページをより多く覗く事が出来ます。本編程、堅くはないと思います。今回は前話にも登場した美竹 蘭の回ですね。どんな絡みをするのか、お楽しみに。

では、物語へご案内しましょう。



10.トゲのある綺麗な想い

「サビ前、少し音程を外したでしょう?自分でも分かったかしら?」

 

 

「今のところ!また音の芯が弱いわよ。」

 

 

「…はい。」

 

 

「両立が難しいのは、私も分かるわ。でもね?貴女が決めた事だから、覚悟を持って臨む事。細かい事ばかり指摘している事は、私も申し訳なく思っているわ。だけど、いずれこうなる以上は、ここである程度克服しないと、私が教える意味が無いわよ?」

 

 

「…はい!」

 

 

某日、CiRCLEにて。私はこの前会ったばかりの蘭ちゃんに指導をしている。この日はアフロの練習は休みなので、所謂自主練である。

 

何故こうなったのかについて、何時ぞやの練習まで遡る必要がある。なので、Let's タイムスリップ〜。

 

 

 

──────────────

 

 

 

『蘭ちゃんについてだけれど…正直、直す所は他の子よりも多いわ。』

 

 

先日の、ある練習日。

他の子の指摘も終わり、最後に蘭ちゃんの指摘に入る。私が一言目にそう言うと、アフロの皆、特に蘭ちゃんがより一層緊張した表情になる。私の言い方が、今までよりも少し尖り始めたのも、そうなる要因の1つなのだろうか。

 

 

『まず、一番目立っているのは自分が出すギターの音と歌声の不調和。分かり易く言うと、その2つを同時に出す時の不安が、演奏に出ているって事よ。』

 

 

それを聞いた蘭ちゃんは、言い得て妙と言いたげな表情をしながら、私の言葉を待つ。…厳しい指摘をしっかり聞けるのは、バンドマンとして良い事ね。

 

…口に出して聞いたりはしないけれど、彼女はとても仲間想いな性格とみれる。不器用も重なっているので、それを外に出す事が苦手になったのだろう。

 

信頼はあるけれど、それが思うように外に出ない。うん、思春期の子(或いはツンデレ)の典型例ね。何となく、彼女の事が分かりつつあるかもしれない。

 

 

『確かに、並行して何かをやるのは難しい。でも、それを選んだのは貴女よ。選んだからには、やらなければいけないの。バンド結成の目的抜きに、バンドの担当だもの。』

 

 

事実、ボーカルの音程を違わず、且つギターも間違えないよう弾かねばならない。女性は並行して物事をするのが男性より得意だという話も出回っているけれど、それでも難しい事には変わりない。私だって、最初は苦労していたわけだし。

 

……と言うより、私ってば、今日も先日も同じような事を言っていたのね。…口説いって思われたかもしれないわ、反省反省。

 

それから練習をして、リサが迎えに来て、私は軽く言葉を交わして帰ろうとしたのよね。で、その時に蘭ちゃんが……

 

 

『あの……私を鍛えて下さい!』

 

 

 

──────────────

 

 

 

って、頭を下げてきたんだよね。あの時の気迫は凄かったなぁ。少し驚いちゃったもの、私。誰かに頼み事をされるのはしばしばあったけど、あそこまで真剣に頼まれたのは数回あったかなかったかだと思う。

 

いつまでもあのメンバーで集まりたい、この5人の集まれる場所が欲しい、って想いから作られたバンドとは聞いていたけど、想いの強さ故か責任感故か。並のバンドよりも努力しているし、絆がある。それに、互いを思いやれる。

 

 

「……羨ましいわね、本当に。」

 

 

ふと、そんな言葉がポツリ。無意識だった。

この身体になってから、誰かと青春を過ごすなんて事をしようという想いが薄まった。どんな事をするにしても、必ず誰かに迷惑がかかるんじゃあないかと思ってしまう。

 

「そんなの気にしなくて良いのに〜!」とリサに言われた事はあるけれど、そんな訳にはいかないの。本人側は、そういうのに敏感になっちゃうのよ。一度私の様な立場になった人なら、この気持ちを理解してくれる人がいるんじゃあないかしら。

 

……誰に語ってるのかしら、私は。

 

 

「蘭ちゃん、そろそろ休憩にしましょう。沢山練習するのは良い事だけれど、練習のし過ぎはかえって身体に悪いわよ?」

 

 

「…はい。」

 

 

少し不服そうな表情を浮かべつつも、蘭ちゃんは休憩に移った。余程練習したいのだろう。けれど、練習のし過ぎは身体に良くないし、健康にも悪い。蘭ちゃんは現役の学生だから、その影響をまともに受けるからね。私が監視してるうちは、無理なんてさせないわよ?

 

さて、蘭ちゃんの修正箇所について考えないといけないわね。ボーカルとギターの両立については双方の切り替え等のもたつきは大分良くなってきた。ボーカルとギターを別個にして考えると、大きな問題は無い。言うとするなら、細かいミスの訂正くらいだと思う。元々、沢山練習してきたのもあるのでしょう。

 

ただ、蘭ちゃんの個人練習に付き合ってる上でこんな事を言うのもどうかと思うけれど、個がどれだけ伸びても、それをアシストするだけの周りの力が伴っていないと、演奏として完成しない。

 

だから、もし蘭ちゃんが良い所まで行けたら、次は他の子の指導をする必要がある。あの子達が自分で蘭ちゃん程に練習したり、別のコーチを付けて練習しているなら、この問題は杞憂に終わるんだけれどね。今度の合同練習の時にでも、判断するとしましょうか。

 

 

「……月代さん。アタシ、もっと上手くなれますか?」

 

 

「どうしたの?蘭ちゃんらしくないわね。」

 

 

私の思考を他所に、蘭ちゃんからそんな言葉が飛んで来る。普段の蘭ちゃんは見栄っ張りなのか自信家なのか、皆の前で弱音を吐く事はしない。ひまりちゃんがリーダーとしてどこか抜けてる分、自分がしっかりしないととは思ってそうね。

 

だからこそ、こうして弱音を吐いてくれるのは嬉しい。私の性格上、人に無理やりそういう事を聞く事は好きじゃないけれど、そういう面があれば助けてあげたいのも、また事実。

 

 

「…月代さんの指導を受けてるうちに、私はまだまだなのかなって思うようになっちゃって……。」

 

 

()()()()()()()()()()()()。」

 

 

「……えっ?」

 

 

蘭ちゃん、それは当然よ。

音楽に携わる人達っていうのは、全員が完璧ではないのよ。音楽に正解は無い。その人が、何処をゴールにするかで、その人にとってのゴールは変わる。それに、概念的な目標は何を以てゴールとするのか、曖昧。

 

蘭ちゃんが何を目標にしているかは分からないけれど、きっとまだゴールには辿り着いてないのでしょう。だからこそ、ここでまだまだから脱してはいけないわ。()()()()()()()()()()()()から。

 

 

「まだまだって事は、まだ伸び代があるって事よ。それはそれとして、少なくとも今はまだ止まる時じゃないわ。今は耐えて。その後に反省会しても、まだ間に合うわよ。」

 

 

言いたい事は色々あるけれど、そうしてしまうとアレなので、どうしても言いたい事だけを蘭ちゃんに伝える。後の事は……未来の私に任せるとしましょう。頑張ってね、私。

 

 

「それに、そんなしょげちゃうなんて蘭ちゃんらしくないわ!もっと自信持って良いのよ。お世辞無しに、レベルはとても上がってるわよ。」

 

 

「……そうなんですね。ありがとうございます、また前向きに頑張れそうです。」

 

 

「良かったわ。程よく頑張りましょうね。」

 

 

何事も程よく、そしてひたむきに。蘭ちゃんは強い子だから、きっと結果が着いてくるわ。根拠は無いけれど、大丈夫。

 

 

 

──最後に報われるのは、心を貫いた人だから。

 

 

 

──────────────

 

 

 

「……ふぅ。」

 

 

「お疲れ様、蘭ちゃん。ここ最近で大分成長出来たと思うわよ。」

 

 

「月代さん……ありがとうございます!」

 

 

ふむ、元気で何より。蘭ちゃんくらいの年齢の子は、健康に過ごして色んな事を経験するのが1番よ。リサを近くでみてきてるから、そういう子は応援したくなるのよね。

 

 

「帰りは大丈夫?結構遅くなっちゃったけど。」

 

 

「はい、親には説明してあるので。」

 

 

こんな遅くに帰る事に慣れてる蘭ちゃんも、それを了承しちゃう親も、ちょっと心配ね。私が言えた義理はないし、子供を縛りたくないからそうしているのかもしれないから、深くは言えないけれどね。

 

逆に蘭ちゃんから心配されたけれど、終わる少し前にリサに連絡を取ったから大丈夫。……唯一あるとすれば、毎回誰かに迎えに来てもらうから、とても申し訳ないのだけれどね。

 

 

「じゃあ蘭ちゃん、気を付けて帰ってね。」

 

 

「はい、月代さんも気を付けて。」

 

 

今日もありがとうございました!と元気な声を最後に帰路に経つ蘭ちゃん。遠くなる足音を聞いて、私はリサを待つ事に。これくらいの時間になると、CiRCLEも人が減っていき、まりなさんも(暇になったからなのか)私に話しかけてくる事もしばしば。

 

たまに、まりなさんが外で待ってる私に温かい飲み物をくれる事がある。寒いのがあまり得意じゃない私にとっては、大変有難い。リサの事でも蘭ちゃんの事でもお世話になってるから、何かの形でお礼をしたいわね。今度、お土産でも持ってこようかしら。

 

 

「お姉ちゃ〜ん!」

 

 

「リサ、いつもありがとう。」

 

 

これぐらい良いよ☆と言ってくれる辺り、気遣いが出来る良い子に育ったわね、と母親目線になってしまう。母は健在だし、私がリサを育てた訳でもないけれど。

 

恐らくまりなさんがいるであろう方向に向かってお礼を言いつつ、私達は帰路に経つ。

 

蘭ちゃんこれからどれだけ成長するのか、今からとても楽しみね。頑張ってね、蘭ちゃん。

 




と言う事で、10話が終わりました。

現在、プロセカの小説を書いていますが、そちらに合わせてこちらの小説の書き方を今話から変更致します。少し文の堅さが顕著になりますが、出来るだけかつてと同じような雰囲気のまま書けるよう尽力します。

後、更新に長い時間をお掛けしまして、大変申し訳ございませんでした。

では、また次回。
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