今回も予定通り、バンド総当たり編(みたいなもの)となっています。それが終了し次第アンケート回を書いていく予定となっています。因みにアンケート結果でのキャラ決定についてですが、上位2,3キャラを採用する形となります。
そして、☆9評価:奈鬼羅さん、お気に入り登録:水仙卵華さん、nesutoさん、バンドリーマー[ハクア]さん、神威結月さん、評価及びお気に入り登録ありがとうございます。
では、物語へご案内しましょう。
[商店街]
「ふぅ~、沢山買ったなぁ~」
「後は……山吹さんの所で終わりかしら?」
某日、母に頼まれて(半ば無理やり行きたいと懇願して)2人で買い出しに。外に行ける機会が少ないのだから、外に出れる時には出たい。元々、アウトドア寄りな人間だったのもあって、長い間外に出られないとうずうずしてしまうのだ。…女らしくないって思った人、前へ。
「…ん?あんなに人が……人気にしろ、あそこまでは少し変だなぁ…」
「…リサ?何かあったのかしら?」
「うん、ちょっとね。でも、そこまで気にする事でもないかも」
「そう。じゃあパパっと行っちゃいましょう」
そんな私の一言に、うんと言ってリサは車椅子を動かしながら、山吹ベーカリーへと向かった。……今更、山吹ベーカリーの説明は要らないわよね?
[山吹ベーカリー]
──いらっしゃいませ~!
そんな元気な挨拶が聞こえてくるので、私はその声がした方に軽く会釈をしておく。普段なら変な方向に会釈した際に奇怪な目で見られる事もあるからしないのだけれど、ここ周辺の人達は私の事情について理解してくれているので、気兼ねなく会釈も出来る。…ホント、この町から出たくないわね。何かと便利なのよ、この町は。
それよりも、意外だったのが1つ。ここの看板娘である
「…あれ?カメラ?……まさか」
ここで、リサの様子が変わる。とは言っても、言う程悪い方の意味ではなさそうだけれども。…確かに、いつもより人が多いのは、体感で何となく分かったけれど、まさかのテレビ撮影?それは人も増えるわね。
「あ~!リサちーだ!!」
…と、聞き覚えの無い声が1つ。その声の主を止めようとする声がもう1つ。…ん?この声、散々テレビで聞いたような……
「…もしかして、
っとと、小さいながらも心の中にしまおうと思っていた一言が漏れてしまった。「相変わらず、お姉ちゃんのソレは凄いね~…」と言われる始末。…仕方ないでしょう?相手の顔が分からないのよ?声で覚えるしかないでしょう?そのおかげで、一度聞いた事は何となく覚えているのよね。月日が経つにつれて忘れるけれども。
「……るんってきた!」
突如放たれたそんな一言が、誰に向けて言っているのか分からない言い訳をする私を、現実に戻す。…るんて。私は何となく分かるけれど、他の子は分からないでしょうに。…何で分かるかって?私もそっち側の人間なのよね。…こういうタイプって、結構疎まれたり理解してもらいづらかったりするから、少し心配ね。……誰かも知らないのだけれど。
「あのあの!名前教えて下さい!」
「日菜ちゃん!?すみません、ウチの日菜ちゃんが…」
「いえ、お構いなく。グイグイ来られたので、少し焦ってしまっただけですので」
別に、嫌という訳ではない。私らしくもなく、少し戸惑ってしまっただけで。…この様子とさっきの会話から察するに、恐らくるんっときた子はリサの知り合い?…いえ、友達かしらね。愛称めいた呼び方されていたものね。
「リサの姉の今井 月代です。宜しくお願いするわね」
「えぇ~!?リサちーにおねーちゃんいたの~!?言ってよ~!」
「言ったら無理言って来そうじゃん!」
ぶーぶーと言いながらリサにあーだこーだ言う日菜ちゃんに、それに対して色々言い返すリサ。うんうん、良い距離感ね。友達として色々言い合えるのは友情関係が著しい証拠ね。リサは人付き合いが上手いから、その辺りはそこまで心配していないけれどね。
「…日菜ちゃん?テレビの撮影中よ?」
…私は今まで生きてきた中で、ここまで明確に鋭い殺意紛いのオーラを出せる人を知らない。ただ、殺意程敵意らしきものは感じない。…殺意は盛り過ぎたか。
それはともかくとして、声の主である千聖…ちゃん……で良いのかしら?が、スタッフ(と思われる人)に休憩する事を提案しに行き、休憩となった。どうやら日菜ちゃんはリサの方に行ってるようで。…大方、どうして私の事を話さなかったのかについての続きだろうか。
「…少し、宜しいでしょうか?」
「…千聖ちゃん?どうしたのかしら」
少し千聖ちゃんがビクついた…気がする。いきなりちゃん付けは良くなかったかしら。
「あら、ごめんなさい。年下の子をちゃん付けで呼ぶ癖が出たみたいで。気に障ったのならさんにしますけれど…」
「…いいえ、そのままの方が私も良いので。それより、貴女の事を聞きたいのですが、良いですか?」
「良いわよ。ただ、そこまで畏まらなくても良いわよ?何だったら日菜ちゃん…だったかしら、あの子ぐらいでも良いのよ?」
流石にそこまでは…と、苦笑いしているような感じでそう言う彼女。…少しは緊張もほぐしてもらえたかしら?と、そんな事はお構いなしに、彼女は意外にもグイグイと私について聞いてくる。…結構来るのね。
「…それじゃあ、私が訳アリなのも…」
「……リサちゃんから聞いてます。あの時の顔は、思い出したくない位重い表情でした」
リサがそんな表情を…?表情云々に詳しい彼女がそう言う以上、嘘ではないだろうし、本当なのだとしたら意外も意外だ。正直、リサがそのような顔をする事が想像つかない。…いや、よくよく考えるとリサは身近な人の苦しい所を見るような立ち位置にいるわ。…私が思う以上に、そういう事には縁が深いのかしらね。……この年になっても、学ぶ事は多いわ。
「…思っていたよりも、リサの根本は嫌な方向に根付いてるのね」
「……あの」
私がリサの心をどう変えていこうかを考え始めようとしたところで、千聖ちゃんが申し訳なさそうに私に尋ねる。
「あんまり知られたくない事でしたか…?その……体について」
「…あら?別にそんな事ないわよ。とやかく悪態をついてくる人ならともかく、こうして私に気を遣ってくれるなら、別に気にしないわ」
もう知られた事についてどうとも思わなくなったけれどね、と付け足しておく。これは口から出まかせとかではなく、本心そのもの。これからもそんな機会は沢山あるのに、それを気にしていたらキリがない上に気が滅入るわ。慣れるに越したことはないのよ、こういうのはね。
「あまり気を使われ過ぎるのはあまり良い気がしないから、いつも通りで良いわ。第一、そっちも疲れるでしょうし」
「…大人なんですね。少し達観し過ぎてる気もしますけど」
「最近自分でも自覚しているのよ。少し年老いた思考になっているんじゃないかって」
自嘲気味に私は笑う。自分に何か悩みはないかと聞かれたら、コレを挙げる程には悩みの種になっている。ただ、あまり取り乱さなくなったのは良い事ではあるけれど。
「…その、大変ではないので?」
「まぁ…否定はできないわ。したい事が、したい時に出来ないし、見たいモノは、もう二度と私の目には映らない。これ程大変な事は無いかもしれないわ」
でもね、と続ける私を見て、彼女は少し疑問を抱いているような顔をしているのが感じてとれる。
「私は別に、この体を恨んだ事はないわ。自分の境遇も。だってそうでしょう?私がこうならなかったら、もしかしたらリサがこうなっていたのかもしれない。……はたまた、この世にはいなかったのかもしれない。私が死なずに済んだのが結果論だとして、結果妹が救えたのだから、私は構わないの。この体は、言ってしまえば
誇らしい体なのよ、と更に付け足すと、彼女は言葉を発さなかった。…それもそうだろう、普通このような体になってしまえば少なからず誰かに対する不満を露わにしてもおかしくはない。それを名誉の傷等と笑顔(私はそのつもりだった)言い切ってしまう人間は、殆どいないのではないのだろうか。良く言えば前向き、悪く言えば……狂った奴、だろうか。
「…それは、リサちゃんには言ってあるんですか?」
「勿論。しょげる度に、これでもかと言う程に言うわよ。…本人が良いって言ってるのだから、早いとこ吹っ切ってもらいたいのが本音なのよ」
「……近くにいた人程、辛いと思いますよ」
「知ってるわ。それを承知の上での話よ」
私のその一言を機に、私と彼女一帯の空間は、静寂に包まれる。
一方で、リサと日菜ちゃん…あれ?色々と人が増えてるような……まぁ、置いておきましょう。あの2人+αの空間は賑やかさを保っている。
…聞く事を聞き終えたからか、千聖ちゃんは少し気まずそうにしている。初対面だものね、私達。
「千聖ちゃん、あっちの方に行ってあげて?リサもあの人数は捌ききれないと思うから」
「…お気遣いありがとうございます」
そう言って、彼女も喧騒に紛れていく。因みに、何故私が人数を把握しているのかについては、音からの推測と勘。別に、特別な能力がある訳では無い。
「月代さんも、あっちに行ったらどうですか?初めての人もいるでしょうし、リサ先輩がいるので、1人よりは良いと思いますよ」
「相変わらず、若いのにしっかりしているわね。私も見習いたいわ」
月代さんには勝てませんよ、と沙綾ちゃんが言ったところで、私もリサ達の方へと向かっていった。…忘れないうちに、パン買っておこうかしら。
[帰り道]
「全く……忘れてないかどうか心配だったから先にパンを買ったけれど、まさか本当に忘れてるとは思わなかったわよ?」
「アハハ……ゴメンなさ~い」
あれから私もリサ達の喧騒に混ざり、色々と話をした。何でもあの子達、アイドルバンドなる類いのグループとの事で、先程はアイドルの方の仕事だったようで、取材番組だったらしい。…何気に凄い場面に居合わせた気がする。
「…そう言えばリサ、あの子達とは初対面じゃないのね」
「うん、バンド繋がりだけどね~」
「…大ガールズバンド時代なだけあって、人脈が広いわね」
芸能人の家族の気持ちってこんな感じなのかしら、なんて思った瞬間だった。
「リサは、明日バンド練習よね?」
「うん!…でさ、1つお願いがあるんだけど……」
珍しく、リサがどもる。…大方、練習に来て欲しいとかかしら。一応、前回でバンドの演奏は体に悪影響が無さそうだった事が分かったからだろう。
「その…練習に来て欲しいなぁって……」
「そうね……私も前々から行きたいとは思っていたし、良いわよ」
「ホント!?やりぃ!!」
そう言って、ガッツポーズする妹。…一応道のど真ん中な事は自覚しているのかしら……?まぁ、辺りに人はいないから、こうして声をかけないでいるのだけれど。
「じゃあ明日は私も色々準備しないといけないわね」
…さて、あの子達に渡すお菓子でも作ろうかしら。
という事で、4話が終わりました。
今回はパスパレ回でした。この字数だと話をまとめるのが少々大変です。かといって字数を増やすと、恐らく投稿頻度が激減しそうですので、折り合いが厳しい次第です。
そして、少々投稿が遅れました事を、お詫びします。一週間以内は中々大変ですので、一週間から二週間の間に一話投稿する形を取ろうかと検討しております。決定し次第お伝えします。
次回『5.盲目の才能』