今日の世界は、何色?   作:Cross Alcanna

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どうも、Cross Alcannaです。

さて、前後編の後編でございます。「Roseliaだけ優遇してる?」とかいう声が飛んできそうな気もしますが、私自身Roseliaが一番詳しく知っているので、長く書きやすいという事もありまして、優遇しようといった意思はありません、欠片も。
寧ろ、短くなっている他のバンドのキャラに申し訳なく思っている次第です。勉学や生活との両立は本当に厳しいモノでして何とぞ目を瞑って下さると、助かります。

そして、お気に入り登録:鬼縞龍二さん、黒鳳蝶さん、魔星アルゴールさん、Back_ONさん、喰鮫さん、n-y-xさん、Raven1210さん、ポテトヘッダーさん、ワッタン2906さん、焚未さん、1タマさん、とろとろトマトさん、deportareさん、栗んとんさん、ありがとうございます。

では、物語へご案内しましょう。



6.盲目の才能(2)

『…精神論?』

 

 

「そう、精神論。多分貴女達とはかなり縁のない要素ではあるけれどね」

 

 

非難の声を実力で黙らせ、更には歓喜の声に変えてしまう彼女ら(主に友希那ちゃんや紗夜ちゃん)にとって、果てしなく繋がりが見えないモノ。そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。彼女らにとって一番の難敵であり、最も挫折するであろうソレは、今の彼女らに一番必要なモノでもある。いきなり放たれた音楽と乖離したその言葉に、首を傾げる彼女らがいる現状に、私は特段驚きを覚えたりはしない。

 

 

「…音楽と、関係あるのかしら。それは」

 

 

「えぇ、大いに。裏を返せば、それさえおさえていれば、プロ顔負けになると思うわ」

 

 

自信に満ちた表情(をしているはず)の私を見て、友希那ちゃんは更に猜疑のオーラを増させる。…正直、想定の範囲内過ぎて、少し面白い。私は彼女の音楽に向ける情熱も、そうなった経緯も、把握済みだ。それを彼女も察しているだろうから、それを含めてのこの態度だろう。「私の事を知って尚、そう言うのかしら」とでも言いたげなのは、視界が閉ざされていても解る。

 

ただ、他の子達が私に未だ猜疑のオーラを出しているのは、友希那ちゃんの境遇を知っているからか、はたまた純粋に繋がりを見出せていないのか。私には、そこまで推測する事は叶わない。

 

 

「そうね……例え話で考えてみましょうか。貴女達は恐らく、まだ上に行ける、もっと上達しないとなんて考えていると思うわ。ソレに後押しされて、練習をする。そして上達する。ここまでは納得出来るわよね?」

 

 

私がそう全員に問いかけると、声を出してうんうんという声がチラホラ。恐らく、ここまでは問題ないはず。あくまで理屈に沿っていて、合理的な考えだから、彼女らも納得がいくのだろう。そんな事を無意識の中で思考しながら、私は次の言葉を紡ぐ。

 

 

「ただし、そこまでなら誰でも到達出来るし、その要素で()()()()()()()()は殆ど出し切れないわ。そうして、スピリチュアルな要素がここから重要になってくるのよ」

 

 

「う~ん、解るような解らないような……」

 

 

ここで、あこちゃんが混乱し出す。他の皆も、どうしてそこから急にそうなるの?等と言いたげな表情を浮かべる。…スピリチュアル要素に極力頼らなかった者は、ほとんど必ずここで躓く。理解する事にも、実践する事にも。寧ろ、始めから出来ていたりする事の方が稀だったりする。ただ、無意識下でしていた、というケースはたまにあったりする。

 

ここまでつらつらと事を述べてきたのは良いものの、ここで躓く人は、そんなにいなかったりする。最近ではネットなり実物なりで小説等を見る事が出来るからこそ、バンド活動においてそうした事にぶつかるという描写はよく見る上に、もとより目的を掲げる事も、ざっくりとして考えるとスピリチュアル要素の1つだったりする。別に、上手くなりたいならそれに目掛けて精進すれば良いだけの話。

 

何はともあれ、この点で躓くところを見ると、このバンドは中々にレアな状況だと思う。(一部の子だけとはいえ)ここまで上達にストイックで、精神論を度外視してきたこのバンドは、素人の私からしてもそうそうないという事が、今日で解った。取り敢えず、彼女らには精神論の重要性を知ってもらう事にしましょうか。

 

 

「…貴女達なら、言葉で聞くよりも音で聴いた方が早いかもしれないわね。……燐子ちゃん」

 

 

「は…はい……」

 

 

「キーボード、使っても良いかしら?後、良いならキーボードの所まで連れて行ってもらっても?」

 

 

わ…わかりました、とだけ言い、燐子ちゃんは私をキーボードの前まで連れていく。私はすぐ、鍵盤の位置を確かめる為に、少し音を出す。……こんなものかしら、凡その位置は把握した事だし、そろそろ始めようかしら。

 

 

「それじゃあ、最初は特に何も考えないで弾いてみるわ。恐らく、よくある普通の音楽に聴こえるはずよ。二回目と比較してもらいたいから、しっかり聴いてちょうだいね」

 

 

全員が頷いた事を確認して、私はピアノ伴奏を始める。本当はボーカルを交えて行った方が良いのだけれど、単体の音でも出来る、という事も知ってもらいたいからこそ、今回のようにキーボードだけにした。…別に、やろうと思えばキーボードとボーカルの両方を並行して出来るのだけれど、ミスした時が嫌なので、却下。

 

彼女達が何と反応を示しているのか、今の私にはそんな事を推測及び想像する余裕はない。流石に、そのレベルの並行は脳が追い付かない。視界さえあれば、表情から読み取る事は出来たのだろうけれど。

 

そんな他愛も無い思考を遥かな彼方へ捨て去って、私はもう終盤に差し掛かっている事に気付く。ミスは……してないと良いのだけれど。

 

 

 

 

 

「ふぅ……こんなところね。じゃあ、間髪入れないで、次行くわ。分かりやすくする為に、先程と同じ曲にするわ」

 

 

私は休憩する事も無く、続けて演奏する。さっき練習してみて思った事が、数曲程度なら続けても問題無い事と、ブランク云々はそこまで気にしなくても良い事。ブランクがさほど無い事について、自転車と同じ原理と思う事で、これ以上の思考を止める。

 

……にしても、結構体力使うわね、相変わらず。単純に弾くだけならそこまで消耗する事も無いのだけれど、私の場合、感情や想いを乗せながら弾くと、体が過剰に動いてしまう癖がある。どうやら、その癖は前から治っていないみたい。…どうせなら治っていて欲しかったわね。

 

ただ単純に抑揚を付けるだけなら、技術さえあれば誰でも()()()()()()し、()()()()()()()。そこでプロとの境界線が敷かれる事は、まずあってもゴマ粒程の可能性くらいだろう。上に、頂点に登り詰めるのなら、その何ステップも上の段階を見ないといけないし、()()()()()()()()()

 

 

「…何、これ」

 

 

「レベルが……違う」

 

 

ふと、私の思考の幕間に、そんな言葉が聞こえた。当然私の心の声とかではなく、その声はリサと友希那ちゃん。今の貴女達がそう感じるのも無理は無いし、咎めたりする気は毛頭ない。

 

けれど、心配ではあるわね。ある程度彼女達の本当のレベルを知れたからこそ思う事ではあるけれど、頂点に立つと意気込んでいた事もあって、私自身少し期待値が上の方にあった。しかし、敢えて厳しく言うと彼女らの反応は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。

 

彼女らに自覚させておかなければ、一体どうなっていただろうかと考えると、こうしておいて正解だったのかもしれない。彼女らにとって、今日の事を成長の糧にしてくれると嬉しいのだけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…一先ず、これで終わり。貴女達の感想を聞く事はしないわ。それは貴女達の胸の中にしまっておいてちょうだい。…それで、私から言える事は1つ」

 

 

そこで私は、一旦一呼吸置く。目の前の彼女らも、いつもとは違うピリついた雰囲気にあてられ、私にまで唾を飲み込む音が聞こえる。

 

 

「自分達がどの位置にいるのか、しっかり理解する事から始めましょう」

 

 

「位置……ですか?」

 

 

「えぇ。分かっているとは思うけれど、物理的な意味ではないわよ。技術や方向性、クオリティ諸々を含めた意味でね」

 

 

彼女らは、確かに底知れない程研鑽を重ねたのだろう。ソレは、あの音源を聴いて分かる。並の努力では辿り着くに難い領域ではあるし、才能もあったのだろう。

 

ただ、彼女らは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。……精神論から少し逸脱している気もするけれど、まぁ良いわよね。最後に付け足せば良い……はず。

 

兎も角、バンドの自己分析は、上手くなる為に必須。注意すべきなのは、自分達()()()()()()()()、バンドの自己分析である事。どんなジャンルの曲をメインに据えているのか、どんな技術を多く用いているのか、そういう意味での分析。意外としていない人が多いコレは、結構重要な意味を持つ。

 

 

「貴女達がまずやるべき事はソレ。そして、それが及第点まで行ったら精神論よ」

 

 

「…1つ、聞きたいのですが」

 

 

ここから精神論について本格的に説明しようと思っていたところで、紗夜ちゃんがそれに待ったをかける。やはり、実力至上主義者にとって、精神という不確定且つ不安定な要素に何を見出すのか、些かの疑問符が残るのだろう。その証拠に、彼女と友希那ちゃんは未だ納得のいかない表情を浮かべる。

 

そんな彼女らの意思を汲み、私は小さく頷く。すると、それを是の意と判断したのか、彼女の口が動いた。

 

 

「音楽をやるにあたって、精神論は重要なのでしょうか?()()()()()()()()()()()()()()()()…論とまで行くと、少し繋がりを持てないのですが……」

 

 

そう、彼女は分かっているらしい。()()()()()()()()()が。一文字違いではあるけれど、その意味合いは違ってくる。精神とは所謂、上達しなくても折れないとか、アンチによって叩かれても諦めないとか、そのような時に自身の目標なりを保つ力。バンドだけに限らず、世間の目に晒される人には必要不可欠なモノ。恐らく、彼女らもその身で味わったのだろう。或いは、これから知る事になるのか。

 

 

「あら、貴女達も精神論に頼ってるわよ?」

 

 

「…そんな事はないわ。私は根拠のないものはあてにしないもの」

 

 

…やはり、知らないだけか。それにしても、この2人はかなり実直な芯の持ち主のようで、それ自体は構わないのでけれど…今回のようなケースに陥りやすいのが、玉に瑕。

 

等と、要らない考えをついしてしまうのは、相も変わらず私の悪い癖なのだろう。脳は疲れてないのだろうか。相変わらずのブラック企業具合だと考えながら、私は次の言葉を放った。

 

 

「頂点に登り詰めるという思い、Roseliaだからこその音律、誰にも負けたくないという意思…それら全部が、精神論そのものよ」

 

 

そのカミングアウトに、一同(主に例の2人)が驚きの表情に豹変。自身もそんな思いを抱いた事があるのだろうか、何やらブツブツと呟き始める。それを私は気に留めず、続ける。

 

 

「とは言っても、大雑把に見ての話。たまにいるでしょう?どうしても負けたくない、より上の実力を発揮したいと思っている人が、論理では説明がつかないような急激な変化を遂げる状況。漫画とかによくある話だけれど、バンドでもそういう事は見られるのよ」

 

 

最後に、人と競う事においては特にね、とだけ付け足す。…さて、私から言える事は凡そ伝えきった…つもりだ。これで、彼女らが何かを掴めると良いのだけれど。ただ、形に現れにくい面もある問題であるのも事実なので、中々結果が伴わないのも仕方ない事。…それでも、期待してみたい。あの時私があてられた頂点を目指すという飢えた精神。それを上手く扱う事が出来たら、彼女らは化ける。

 

私が言葉を言わなくなって少し無言が続くと、友希那ちゃんは練習を再開すると言った。…早速練習するのかしら。彼女らはきっと、王者にふさわしい風格を持ち合わせるだろう。……視界が閉ざされている事がここまで悔しいなんて思ったのは、一体いつぶりだったろうか。

 




という事で、6話が終わりました。

長くなりましたが、Roselia編が終わりました。次回と次々回(ハロハピとアフロ)で終わろうかとも考えていますが、RASとモニカを書くべきかを今検討しています。今の段階で書かないにしろ、後に書く事にしそうな気もしますが。次話辺りまでには決めておきます。

次回『7.ココロからの笑い』
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