ロクでなし魔術講師ととある特殊部隊員 remake   作:藤氏

23 / 25


大変、お久しぶりです。

仕事が忙しく、それに追い打ちをかけるかのようにパソコンの調子が悪かったので、遅れに遅れてしまいました。

それでは、続きをどうぞ。

更新速度は、仕事の関係上、亀になると思われます。ですので、投稿できるときに投稿する感じになります。




22

 

 

 

 

 魔術競技祭、午後の部が始まった。

 

 午前同様、学院生徒達で賑わう魔術競技場――その観客席を通う通路の一角にて。

 

 紺を基調とした揃いの軍服とロングコートに身を包む、奇妙な二人の女性がいた。

 

 二人とも二十代前半で、一人は腰まで届く長い黒髪に、小麦色の肌の、女性的で豊満なスタイルの女性。もう一人は、セミロングの茶髪で、スレンダーな肢体を持つ女性。

 

 二人とも軍服を着ているあたり、堅気の人間ではない。現に、学院の生徒達で賑わうこの観客席において特に異彩を放っているし、身に纏う雰囲気が明らかに違う。

 

 だが、奇妙なことに、その二人に対して奇異の視線が集まることはない。まるで二人が道端に落ちている石であるかのように、その存在が気に留まらないようだった。

 

「――あれが『愚者』ね」

 

 ぼそり、と。茶髪の女が呟いた。

 

「そうそう。あの男が『愚者』と呼ばれていたそうよ」

 

 それに応じるように、黒髪の女も呟きこぼす。

 

 二人の視線が注がれる先には、盛り上がる生徒達とは裏腹に、何か考え込んでるような、上の空になっているグレンの姿があった。

 

「魔術師としては三流だけど、現役時代の異様なまでの格上殺しをやってのけた魔導士……魔術師としては異端中の異端児ともいえる彼がこんな所にいるなんてね」

 

 茶髪の女がグレンの姿を見ながらそう言うと、黒髪の女は別方向の観客席に目を向ける。

 

「そして、別方向に二人……帝国軍がいるわ」

 

 黒髪の女の視線の先には、黒を基調とした揃いのスーツと外套に身を包む、こちらも堅気の人間とは思えない雰囲気を纏った奇妙な男女がいた。

 

 二人と同年代と思われる青年がジョセフとアリッサと同年代と思われる少女の後ろ髪を容赦なく掴んでいる姿が目に入っていた。

 

「あの二人はなにやってるのかしら?」

 

「……任務、じゃないの?」

 

 そのなんともいえない光景に二人は押し黙る、二人の間に沈黙が訪れる。

 

「……私達と同じ任務?」

 

「どうかしら?あの二人の様子を見る感じ、王室親衛隊の方を見ている感じだけど」

 

「それだけじゃないでしょう?」

 

「ええ、もう一つは恐らく私達と同じだと思う。彼らが来ているのだから」

 

 また、二人の間に沈黙が流れる。

 

「そう言えば、異能者差別に対する新しい法案が帝国の円卓会で閣議されてるらしわよね?」

 

「そうよ。それ以降、右派の筆頭である王室親衛隊の動きが不穏らしいのよね」

 

「ここでは、異能者は悪魔の生まれ変わりだと信じれているからね。そして、法は女王陛下の名の下に発令されるもの。つまり、異能者を女王の名の下に法的に保護する事は王室の威光に傷がつく、と考えているらしいわよ」

 

「そのお陰で、女王陛下は娘一人を手放す羽目になった……母親としては経験したくないものよね……」

 

 さらに、二人の間に沈黙が流れる。

 

「だからなんでしょうね。可能性は低いけど、今回の女王の学院訪問を機に、何かしらの行動を起こすかもしれない王室親衛隊をあの二人は監視している……はずだと思うけど……」

 

 二人の視線の先には、再び歩き始めた少女の後ろ髪を、青年が容赦なく引っ張っている光景があった。

 

「……本当になにしてるのかしら?」

 

 呆れる茶髪の女。

 

「ねぇねぇ、そえれよりもさっきのジョセフ達、凄かったわよね?ね?」

 

 そんな茶髪の女に対し、黒髪の女は先ほどのジョセフとアリッサの試合のことを話し始める。

 

「そりゃ、あの二人ならあそこで勝たなきゃおかしいでしょうよ。他の子達はプロじゃないんだから」

 

「それでも、凄かったわよ!いやぁ、やはり私の弟と妹は優秀だわ~」

 

「……始まったわよ、惚気が」

 

 突然始まった惚気話に、茶髪の女は顔を引きつらせる。

 

「まぁ、それはそう――」

 

「でしょでしょ!貴女もそう思うでしょ!?私は、あの二人なら――」

 

「…………」

 

 あ、これ、一時間は終わらないわ……と、茶髪の女は悟る。現に、止まりそうな気配が全然ない。

 

「――それにあの二人、中々イイ感じだし?アリッサはノリノリだったし?」

 

「……そのおかげで、ジョセフがいろんな意味で苦労していると思うのは私だけかしら?」

 

 過去にジョセフからそのことで愚痴を聞かされたことがある茶髪の女は、ジト目で黒髪の女に言う。

 

「だって、ジョセフったら本人は自覚がないようだけど、女の子にモテるんですもの。だから、アリッサには誰よりも早く既成事実を作ってデキてしまえば――」

 

「待て待て待てッ!?貴女、アリッサにそこまで言っちゃったの!?」

 

「……言ったけど?」

 

「言ったけど?じゃないわよ!よしんば既成事実はともかく、デキるのはまだ早いでしょ!?まだ十五、六なのよ!?十八からでもって付け加えたほうが良かったんじゃなくて!?」

 

「……アリ。女は好きな人のためならばなんでもするものよ」

 

「なんだろう、ジョセフがものすごく苦労しそうな気がするわ……」

 

 そう言って茶髪の女が観客席の方に見やると、そこにはジョセフとアリッサが話している姿があった。人目もあるのだろうか、いたって普通なのだが、二人きりの時のアリッサの攻め具合にジョセフがタジタジになる姿は想像に難くない。

 

「……これ、近いうちにマジで一線越えそうな気がするわ……うん」

 

 この時、茶髪の女――アリと呼ばれた女は、アリッサ()()で済めばいいけど、と内心思っていた。

 

 アリッサ”だけ”済めばいいと思ったのは、他にもジョセフを狙っている女子生徒(モデル顔負けのスタイルの持ち主)が一人いることに気づいたからである。

 

「紫色の髪の女の子もジョセフのこと狙っているわね……うーん、これは凄いことになりそうね」

 

「凄いことというか……ジョセフの体力保つかしら、これ……?」

 

「保つんじゃない?それになんやかんやでジョセフは女の子を大事にしそうだから、そこから……ね?」

 

「そこから……ね?じゃないわよ、ダーシャ!?貴女、奔放過ぎるでしょ!?」

 

 色々な妄想をし始める黒髪の女――ダーシャに、アリは頭を抱えてそう突っ込むんだ、その時。

 

「……嘘でしょ?」

 

 今まで妄想を羽ばたかせていたダーシャが、強張った声色を発した。

 

「……?どうしたのよ?」

 

「王室親衛隊が――動いたわ」

 

「……ッ!」

 

 ダーシャのその短い言葉で事態を察したアリは、遠見の魔術を起動する。

 

「王室親衛隊は、武力をもって女王アリシア七世を本格的に自身の監視下に置いたわね。これは事実上の軟禁状態よ。しかも、末端の暴走じゃなくて総隊長ゼーロスの命令で」

 

「もしかして、例の法案の件で?」

 

 にしても、ここで事を起こすか?っと、二人は首を傾げる。

 

「王室親衛隊は女王に最も忠誠を誓っている組織。直接的な危害を加えるつもりはないのでしょうけども……この行動の意味はなんなのかしら?様子を探ってみた方が――」

 

「必要ないわ、ダーシャ。動きがあったわ。連中の一部が誰かを探しているかのように学院敷地を回っている。誰を探しているのかしら?」

 

 すぐに機転を利かせ、遠見の魔術で王室親衛隊の一部の動きを追うアリ。

 

 学院敷地内を動き回る親衛隊を見る。学院校舎本館、西館、東館の周囲を一回りし、学院付属図書館と図書館前広場を見て、迷いの森入り口付近、薬草農園、魔術実験塔周辺……。

 

 無駄に広いと内心悪態つきながらも親衛隊の動きを追う。

 

 そして、学院敷地の南西端、学院を取り囲む鉄柵のかたわらに、等間隔に植えられた木々に向かって親衛隊は一直線に向かい始めた。

 

 その先にはグレンとこの学院の生徒と思われる金髪の少女の姿があった。

 

「……?」

 

 総勢五騎の衛士達が足早にグレン達に向かう姿に、アリは首を傾げる。

 

 一体、彼らはグレン達に何の用があるのだろうか?意図が全く読めない。

 

「あの子って確か……」

 

 確か先の学院爆破未遂テロで誘拐された生徒じゃ……とアリが物思っていると、衛士達はグレンと金髪の少女を囲むように、音もない足捌きで素早く散開する。

 

 そして、次の瞬間、弾けたバネのように一斉に抜剣し、その件の少女にその剣先を突きつけていた。

 

「……ダーシャ、ジョセフ達に連絡して。問題が発生したって」

 

「ええ、それと私達も動いた方がいいわね」

 

「ええ、決まりね」

 

 遠見と使い魔を使っての情報収集していた二人は、事態の深刻さを考え、通信機でジョセフに連絡しながら、競技場をさるのであった。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。