ロクでなし魔術講師ととある特殊部隊員 remake 作:藤氏
非常にお久しぶりでございます……
パソコンがお逝きになりましたので、一年近くも開けてしまいました……
あと、十九、二十巻が出ましたので、読んでどういう風にしていこうか色々考えていました。
これからも不定期ではありますが更新していきますので、よろしくお願いします。
一方、競技場では。
(……まずいわ)
アリッサは危機感を感じ取り、焦燥に身を焦がしていた。
といっても、競技場では一見、何か異常が発生したりとかはしてない(裏ではグレンとルミアに危険がせまっているのだが、その事を今のアリッサは知らないのだが)。
じゃあ、何をそんなに危機感を感じているのかというと……
(まさか、ジョセフに近寄る女がまた一人追加されるなんて……ッ!)
とまぁ、なんとも個人的なことなのであった。
"ジョセフに近寄る女"とは誰のことなのかというと、リンのことを言っている。
昼休みにジョセフがリンに声をかけているのを目撃したアリッサは密かに使い魔を放ち、その後の一部始終を見ていたのだ(といっても、中身は相談みたいなもので、近寄ってるとは限らないのだが)。
(ここに来て、急にライバル増えすぎでしょ……)
連邦にいた頃にはなかったこの事態に、アリッサはため息を吐きながら向かい側で話している二人の少女を見る。二人とも相棒の幼馴染であり、アリッサの友人であり――同時に脅威(恋愛面で)になりえる二人であった。
(一人はまだ気づいていないとして……あと一人がヤバいのに……)
そう思いながらアリッサはモデル顔負けのスタイルを持つ、大人びた少女を見る。
(そうよ、ウェンディはまだしも、テレサの近づきっぷりが何気にヤバいのよ……ッ!)
この学院に留学生として編入された後のことを思い出すアリッサ。
今はまだ脅威(恋愛面)が表面化していないとはいえ、普段はジョセフとウェンディが二人で漫才やらなんやらが繰り広げられているのだが、時たまジョセフとテレサで話しているところも見かける。
ウェンディの方はまだしも……特に二人きりになっている時のテレサの距離ときたら――
(……近すぎなのよ、距離が!幼馴染として考慮したとしても、よ!)
もうあれ、テレサにある二つの果実がジョセフの腕に当たっているんじゃないのか?っていうくらいに近い気がする(実際はどうなのかはわからないのだが)。
(胸か!?やっぱり胸なのか!?一番デカい胸を持つ女が取ってしまうものなのか!?)
と、アリッサはテレサのとある部分を見る。制服越しでも豊満だとわかる二つの丘陵をガン見する。
アリッサも胸はルミアとほぼ同じぐらいにはある。
あると自認もしているが、やはりテレサには負けているような気がする。
それだけじゃない。
残りの二人――ウェンディもリンも、制服越しではわかりにくいが……けっこうある。二人とも着やせするタイプだが、発育が良いのは着替えとかでこれでもかというほど見ている。
(うぅ……なんで……なんでジョセフの周りには胸のデカい娘ばかりが好意を持つのよ……ッ!?しかもスイッチが入ったら激しそうな娘ばかりだし……ツ!?スイッチ……?そうだわ、だったら――)
ジョセフも他の三人娘もそうだが、アリッサももうアレができる年頃。しかもまだ三人娘にはその気がない。
(こ、こうなったら、ヤられる前にジョセフを――)
心臓が早鐘を打っていて目をグルグルさせている中、アリッサがそんな暴挙を考えていると。
「……おい、アリッサ」
「……ッ!?」
不意に隣からジョセフが誰にも聞かれないような声をかけ、アリッサの肘を小突く。
(え、ちょ……変なことを考えているときに……)
子供の教育上よろしくない大人の運動会を妄想していたアリッサは、甘く高鳴る鼓動を感じてジョセフを振り向くが……ジョセフの問題発生したような表情を見てそんな妄想は見事に吹っ飛んだ。
「……何かあったの?」
「姐さん達が正門近くに来るようにだってよ」
「!」
”姐さん”から呼ばれた。これの意味することを瞬時に理解したアリッサはジョセフと共に誰にも気づかれないように競技場から去る。
やがて、正門前に到達すると、そこには黒髪で小麦色の女性と茶髪でスレンダーなスタイルの女性がいた。
二人とも紺を記基調にした軍服とロングコートに身を包んでいる。
ジョセフもアリッサも二人の女性もお互いに面識があるのだろう、普通に、しかし周囲を確認しながら接触する。
「問題発生って何?何があったのよ?」
開口一番、アリッサが茶髪の女にそう言うと女の口から事態が想像以上に深刻な状態になっている言葉が飛び出してきた。
「貴方達のクラスにいる女の子――ルミアという娘が王室親衛隊に狙われているわ」
「……は?」
茶髪の女――アリからのあまりにも突飛すぎて、アリッサは目を瞬かせる。
そんなアリッサを他所に。
「彼女が王室親衛隊に狙われているって、どうしてそうなった?」
「わからないのよ、ジョセフ。王室親衛隊は突然女王を軟禁状態にした後、ルミア=ティンジェルの元へ向かって殺害しようとしていたわ」
「はぁ!?女王を軟禁状態にしてルミアを殺害しようとした!?なんだよ、その無茶苦茶な展開!?」
小麦色の女――ダーシャから発せられた王室親衛隊のとんでもない暴挙に、ジョセフとアリッサも唖然とするしかない。
「それで、ルミアは?彼女は無事なの?」
「ええ。幸いにも傍にこの学院に勤めている魔術師がいたから、その人と現在逃走中よ。あの魔術師が貴方達が言っていた『愚者』よね?」
「ああ、そうそう。そういやあの時二人の姿を見なかったんだけど……とりあえずは首の皮は繋がっている状態か」
ダーシャからルミアの無事を聞けて、胸を撫で下ろすジョセフとアリッサ。
だが――
「安心するのはまだよ。その一方で厄介な連中も動いてる」
「おいおい、王室親衛隊だけじゃないのかよ……」
どうやらこの一件、王室親衛隊だけの暴走じゃないらしい。
「その厄介な連中って?」
「特務分室……女王の懐刀よ」
「「……!?」」
その名を聞いたジョセフ達の目が一瞬、見開く。
「なんでそいつらが……ッ!?」
特務分室がどんな連中なのか、ジョセフもアリッサもアリもダーシャも知っている。
アルザーノ帝国には、帝国宮廷魔導士団という帝国最強クラスの魔導士達が集まっている精鋭部隊がある。
オーシア連邦特殊作戦軍とは違い、完全に独立したこの帝国軍の組織の中でも魔術絡みの案件・事件を専門に処理する秘匿性の高い特殊部隊がある。
それが特務分室だ。
正直相手にしたくない。
何せここに所属する魔導士は最強クラスが集う宮廷魔導士団の中でもさらに最強クラスの魔導士が所属しているのだ。
そんな連中とこんな真昼間の、しかも市街戦での交戦なんて御免蒙りたかった。
「女王というよりは王室親衛隊の方を監視している向きもありそうだったけど……正直、確信は持てない。最悪、敵側になっている可能性もある」
「だよなぁ、クソッたれ」
とは言え、ルミアのところに行かなければならない。
行かなかったら……ルミアとグレンが死ぬだけだ。
今回の事件、どうも単純に王室親衛隊などが暴走している……なんて単純な事件ではないような気がする。
「……あの二人が狙撃で援護できそうな所にいることを祈ろう」
「ええ、そうね。行きましょう」
そう言って四人は動き出す。
まずはグレンとルミアの居場所を特定し、王室親衛隊と特務分室から守らねばならない。
ジョセフとアリッサが瞬時に制服から軍服に着替え、四人は守衛に気づかれないように気配を消して正門から出ていくのであった。
男は既成事実に弱い
by アリシア七世