ロクでなし魔術講師ととある特殊部隊員 remake   作:藤氏

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 それでは、どうぞ。


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 学院から出て、グレン達を追い立てる王室親衛隊を密かに追跡しながらジョセフ達は複雑に入り組んだ裏通りを右に左に駆け抜け、魔術学院と学生街のあるフェジテ北地区から、一般住宅がある西地区へと至っていた。

 

 王室親衛隊の命がけの鬼ごっこは、どうやら地の利でグレンが勝ったらしい。王室親衛隊は見失ったグレンを血眼で探し回っていた。

 

 ジョセフ達は、そんな王室親衛隊を他所に人気のない路地裏を中心にグレンを探していた。地の利があって追っ手を撒いたのなら路地裏にいる可能性が高かったからだ。

 

 果てしてその予想は見事に当たった。

 

 ジョセフが路地裏を見下ろせるように建物の屋根伝いに駆け抜けている時、向かい側の路地裏にグレンとルミアを見つけたのだ。

 

「……見つけた」

 

 ジョセフは通信機でアリッサ達に小声でそう言うと、改めてグレン達の様子を見る。

 

 グレンは何かを耳に当てて何事かを言っているようだ。おそらく通信で誰かと通話しているのだろう。

 

 そして、そのグレンの様子は、あまり良い方向に流れているとは言い難い様子であった。

 

「姐さん、確か女王陛下のところにはアルフォネア教授がいたはずだと思うんだけど……あの人は何していた?」

 

『女王の傍らに変わらずいたわ。でも、連中が動いてからもまったく動く様子はないわね』

 

 なるほどね、と。ダーシャの答えにジョセフは納得した。

 

 恐らく、グレンが通話している相手はセリカだ。この状況を打破するためにセリカに助力を乞おうとしたのだろう。

 

 そしてセリカが動く様子がないということは、きっとそういうことなのだろう。

 

 これはこっちが動かないと完全に詰むな(すでに詰んでいるかもしれないが)とジョセフが動こうとした、その時だ。

 

 ジョセフ向かい側の建物の屋根からただならぬ気配を感じた。

 

(――殺気!?)

 

 ジョセフに直接向けられたものではないが、慣れ親しんでいるその感覚に、ジョセフは殺気を感じた方向へ目を向けた。

 

 すると、そこには二人の男女が立っていた。その二人組は紛うことなく、グレンのことを真っ直ぐに見下ろしている。

 

 ジョセフはこの男女とは直接会った覚えはなかったが……その身にまとう特徴的な衣装には見覚えがあった。

 

「特務分室の人間!?マジで帝国宮廷魔導士団も動いていたのかよ!?」

 

 ダーシャからの情報が本当だとジョセフが確信した瞬間。

 

 青い髪の少女が弾かれたように屋根を蹴り、建物の壁を駆け下りた。

 

 着地の瞬間、少女は何事かを口走りながら両手を地面につく。

 

 すると魔力が紫電となって爆ぜると共に、少女の手には十字型の大剣(クロス・クレイモア)が瞬時に生み出され、代わりにその場にあった石畳がごっそりと消えた。

 

 石畳を鋼の大剣に作り変えた少女は、そのまま剣を担ぐように構え、グレンに向かって弾丸のように突進してくる――

 

「今の錬金術!?【形質変化法】と【元素配列変換】を応用した、高速錬成だって!?しかも早い!」

 

 あまりにも見事な手並みに驚いている暇もなく、ジョセフは狙撃銃を出して構えた。

 

 もう疑う余地もない。特務分室は――グレンがかつて所属していた古巣は――敵だ。王室親衛隊と同じように、敵としてグレン達を狩りに来たのだ。

 

 最悪だ。ジョセフは舌打ちしながら少女に狙いを定める。

 

(しかも、よりによって、この二人かよ……ッ!?)

 

 ジョセフは会ったことないが、この二人のことは中央情報局から聞いたことがあった。

 

「くそ、止まれッ!止まらねーなら、撃つ!」

 

 グレンは突進する少女に鋭い一喝を入れるが……駄目だ。まったく怯む様子もなく少女が突っ込んでくる。

 

 みるみる彼我の距離が消し飛んでいく――

 

「≪白銀の氷狼よ・吹雪纏いて・疾駆け抜けよ≫ッ!」

 

 迷わずグレンが三節ルーンで呪文――黒魔で軍用の攻性呪文【アイス・ブリザード】を撃つが、全然足が止まらない。怯む様子もない。

 

「うっそだろ――ッ!?」

 

 確かに凍気は黒魔【トライ・レジスト】があるならそれで凍らずに済むが、物理的な打撃攻撃でもある氷の礫弾まで喰らったら、流石に足が止まるはずだ。しかし、それを耐えきっているということは、この少女が見かけによらず並外れた屈強さと、馬鹿さ加減に他ならない。

 

 しかも、早いから狙いがつけづらい。狙いがつけられないんじゃ、撃ちようがない。

 

 その間にもグレンがあの少女に圧倒されまくっている。あれでは勝負がつくのも時間の問題だ。

 

(話は聞いていたけど、ここまでなんて……ッ!?しかも、こいつの後ろには一番ヤバい奴が――ッ!?)

 

 遥か遠く屋根の上から鷹のような鋭い目でグレンの様子を窺う青年のこともジョセフは知っている。

 

 その男は魔術狙撃の名手だ。いかなる混戦にあっても味方を避け、敵だけを正確無比に狙撃する神業を持っている。しかも一度の呪文詠唱で二度の魔術を起動する二反響唱と呼ばれる超高等技法まで習得している。

 

 正直、狙撃戦で勝てる保証はない。ジョセフも一流の腕前を持っているが、射程距離ではこの男と比べると一段と劣っている感も否めない。

 

 それでこの猪女だ。この少女の攻撃をかわしながら、あの男の二発の狙撃を回避できるなんて不可能だ。

 

 そんなことを考えていると、青年が指をグレンに向けて構えているのが見えた。

 

「――しまったッ!」

 

 ジョセフが気づいて狙撃中を青年に構えた時には時すでに遅し。青年の指から黒魔【ライトニング・ピアス】の呪文が放たれる。

 

 超高速で飛来する稲妻の力線が、真っ直ぐグレンを目指して飛んできて――

 

「きゃん!?」

 

 黒魔【ライトニング・ピアス】が、グレン、ではなく、少女の後頭部に刺さった。

 

 途端に少女はどさりと倒れ伏し、地面でびくびくと痙攣し始める。

 

「……はい?」

 

 あまりにも予想外の結果に、ジョセフは目が点になる。

 

 それはグレンも同じで、呆然としている。

 

 それもそうだろう。誰がどう見ても、グレン達が始末される結末を予想していたのだから。

 

 目を点にしていたジョセフだが、直接向けられた殺気を前に我に返り、照準を青年の額に定めた。

 

 青年がこちらに指を構えていたのだ。しかもいつの間にかグレンの近くに着地しており、距離がかなり近くなっている。

 

「…………」

 

 場に張り詰めた空気が流れる。この距離だとお互い避けられない。少しでも遅れたら死ぬ距離だ。

 

 ジョセフは青年の、青年はジョセフの額に照準を定めている。引き金に指をかけたら、呪文を唱えるような素振りを見せたら、撃つといわんばかりの空気が流れる。

 

 そんな空気をグレンとルミアも感じたのだろう。こちらの方に目を向けているのがスコープの端からでもわかった。

 

 そして、この空気を破ったのは、いつの間にか青年の背後に立っていたアリッサだった。

 

「今すぐその指を下ろしなさい。アルベルト=フレイザー」

 

 青年――アルベルトの後頭部に回転式拳銃を突き付けたアリッサがそう言い放つ。

 

「貴方が既に予唱しているのはわかっているわ。でも、この距離ならどうかしらね?貴方よりも早く引き金を引ける自信はあるわ。ましてや、()()()()()()()()()()()()貴方は私達全員を殺すことができるかしら?」

 

 現に左右の建物の屋根には、アリとダーシャがライフルをアルベルトに向けていた。

 

「貴方が私の相棒を殺すことが出来たとしても、残りの私達が貴方を殺すわ。そこに横たわっているリィエル=レイフォードとは違い、地獄行きでしょうね。一人殺して、私達に殺されるか、指を下すか。どちらが今の貴方にとって最善なのでしょうね?執行官ナンバー17≪星≫のアルベルト」

 

「……ふん」

 

 やがて、不利だと悟ったのか、アルベルトが指を下した。指を下すのを見たジョセフも狙撃銃を下す。

 

「まさか、貴様らがここまで動くとはな……オーシア連邦軍特殊作戦軍デルタ分遣隊所属、ナンバー7≪メリーランド≫の()()()()()()()、ナンバー5≪コネチカット≫のダーシャ=クリシュナ、ナンバー9≪ニューハンプシャー≫のアリ=デシャネル、そして――」

 

「……は?」

 

「……え?今、なんて……?」

 

 聞いたことある少女の名前を聞いたような気がしたグレンとルミア。

 

 一方のアルベルトは、向かい側の建物の屋根に立っている少年に鷹のように鋭い眼差しで見て、こう呼んだ。

 

「ナンバー6≪マサチューセッツ≫、枢機卿殺しの()()()()()()()()()()

 

 アルベルトがそう言うと同時に、ジョセフが地面に着地してベレー帽を脱いだ。

 

「……どうも」

 

「え!?ジョセフ君!?」

 

「ちょ!?はぁ!?」

 

 魔術学院に通う連邦の留学生という顔しか知らなかったルミアとグレンが驚愕する。

 

「ぴ、ちょっと待て、これはどういう事だ!?しかも枢機卿殺しって、お前が――」

 

「その話は後ですよ、先生」

 

 ジョセフに問い詰めようとするグレンを制止するように、ベレー帽を脱いだアリッサが声をかける。

 

「ア、アリッサ……ッ!?」

 

「それよりも……場所を変えたほうがいいんじゃない?」

 

 地面に着地したアリがアルベルトに目を向ける。

 

「場所を変える。俺について来い」

 

 アルベルトはリィエルを引きずりながら路地裏の奥へと歩いていく。

 

 それに続く、ジョセフ達連邦組。

 

 状況がさっぱり読めず、グレンとルミアは顔を見合わせて、素直に頷くしかなかった。

 

 

 

 





 久しぶりに書くと、なかなか文が出てこないorz
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