5週目ヒロインは今度こそ添い遂げたい   作:四週目のヤンデレちゃん

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「はい」以外ありえない

「嫌いです。付き合ってください」

「……は?」

 

初夏の夕暮れ。

高校二年生ともなると、そろそろ彼女が欲しいとか欲しくないとか男女共に話の種となるこの季節。

体育館裏に呼び出された俺を待ち受けていたのは、あまりにも予想外なものだった。

 

 

 

高校一年生 桃月(ももつき)のん。

彼女はこの学校では有名な女子高校生で、教師とわいせつ的行為に及んで成績を繰り上げて貰っているだの、二股している、処女は小学生の時に喪失した、ピンク色の髪はエロすぎて変色した地毛である、その他様々。いわゆる問題児(ビッチ)として知られる存在だ。

 

冴えない男子高校生の俺がそんな彼女に呼び出されて真っ先に頭の上に浮かんだのは『カツ上げ』の四文字。

彼女の整髪に関しておとがめがない事からご察しの通り、この学校はあまり治安がいいとはいえない。

彼女の噂が本当なら下半身に正直な男達のことだ。喜んで下僕やボディーガードの物真似ぐらいするだろう。

そして、その集団に放り込まれた俺は瞬く間に身ぐるみを剥がされてぼこぼこにされるのは予想がつく。

 

だけど、もしかしたら…もしかするんじゃないかと、浅はかな男心という期待と財布を膨らませて体育館裏に来れば、だ。

 

「え、ちょっと……待って。俺のことが嫌い?」

 

「はい!先輩の顔を見ると吐きそうです!だけど付き合いたいです!」

 

これでも中の上ぐらいだと思っていたが、桃月のんという上の上の人間からして見れば下の下。まさに吐き気を催す醜悪とは俺のことを指すらしい。

これで付き合いというのだから、彼女は余程のキワモノ好きか、若しくは世の恵まれないブ男達を救う慈善団体にでも所属しているのか。顔を見るだけて吐きそうと言われて砕け散った硝子の心は、学校一のビッチと付き合えるかもしれないという希望の光明に急ピッチで復元を開始する。

 

「でも勘違いしないで下さい。先輩と付き合うのは先輩が卒業するまでの二年間だけです。

それだけの期間が経ったらきっぱりと私のことは諦めて、適当な女でも探してください」

 

どうにも嫌悪感を隠そうとしない彼女の表情は置いといて、高校卒業まで彼女持ちという身分になる。つまりそれは無色透明だった俺の高校生活はピンク色一色になるということだはないだろうか。

 

それはなんと、素晴らしいことなのだろうか。

彼女持ちというだけでステータスになるというのに、学校一のビッチ……下品な話になるが童貞を卒業させてくれる可能性が高い。

ビッチと言われるだけあって経験人数も豊富だろうし、きっと通常の初体験とは一線をきす天にも昇るような快感が得られ……。

 

 

思わず桃月の提案に頷いてしまう。その時、俺の脳内電流が走った。

 

――いや待て、冷静になれ木崎 公則(きさき きみのり)(17歳)

 

そんな都合のいい話があるわけがない。

プラスの面ばかりに目を向けるな。学校一のビッチが冴えない男子高校生と恋仲になるなんて、ライトノベルじゃあるまいし天文学的な確率から言って先ずあり得ないだろ。

 

桃月には何か理由がある筈だ。

俺と付き合っても釣り合う対価か、それとも付き合わざるおえない状況なのか。

 

「あの、返事は「はい」以外あり得ないと思うんですけど早くしてくれないですか?

私も暇じゃないで、この後友達と化粧品買いにいくんですよ」

 

踵をコツコツとならし、うんざりとしながらスマホを弄り出した桃月。

 

……なんだろう。此方は一ミリも悪くない筈なのに待たせて申し訳ない気持ちになる。

 

ほんと、この顔なら男なんて選び放題だろうに俺なんかを選ぶ理由がわからない。

一時の熱が冷めてしまえば、後に残るのは深い不信感だ。

 

だいたい時間がないと相手を焦らせるのは詐欺師の初歩的なやり口だ。本当に時間がないというなら別にここで答えを聞き出す必要はないのだし、「はい」以外はあり得ないと思い込むほどの自信があるなら日を改めればいいではないか。

 

何故桃月は俺を逃がさないように立ち塞がっている?

それにスマホに集中しているようで、半目で俺を見ている?のか試しに横にズレたら、合わせるように瞳も揺れた。

 

「明日にするというのは……」

 

「は?なに訳の分からないことを言ってるんでありますか?

先輩は一言。私と付き合うという意味で「はい」と言えばいいんです。それぐらいクレヨンしんちゃんのひまわりだって出来ますよね?

先輩は0歳児に出来ることが出来ないんですか?」

 

ダメ元でいえば、桃月は俺に詰め寄って伏し目がちな顔を下から覗き込んだ。

 

「いや、その……あの」

 

「いや、その、あの、じゃなくて「はい」」

 

目があって初めて分かったが、桃月の眼力はヤバい。まるでライオンに睨まれているようだ。

一歩、二歩、それに耐えかねて後ろに下がってしまう俺を追い込むように桃月も歩み寄ってくるのだから高まる圧迫感の何のかんの。

 

「……あ」

 

背中に当たる硬質な感触に、壁際まで追い詰められてしまったことを知った。

 

「もう逃げられませんよ。さっさと「はい」って言ってください」

 

 

 

 

 

「は、は…………ひぃ」

 

 

 

根負けした俺は桃月と付き合うことになった。




木崎 公則 (ギャルゲーの主人公)
前髪が長い。
髪がどことなく緑ぽい。
得意な教科は英語。
押しに弱い。
「いいえ」と答えると偶然聞いていた幼馴染(バスケ部)の好感度が1上がる。
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