死ぬなよ、絶対に死ぬなよ! ※コレは、フリではありません。   作:リゼロ良し

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天使に会わせてくれてありがとう

 

 

フェルトは、涙を流し恥も何もかも晒しだしながら、例え無様だと思われようが関係なく大声で叫び続けた。

 

 

助けを求めて走り続けた。

 

 

でも、この貧民街の住人は誰一人として耳を傾けようとはしない。

それはフェルト自身がよく知っている。

余計な被害を被りたくない、余計な問題を重ねたくない、日々自分の事だけで精一杯。他人に干渉出来るだけの余裕などない、と拒絶をされてしまう。

 

 

フェルトは知っていた。曲がりなりにも自分自身も同じだから。

 

 

ここの住人が助けてくれる事なんて無い。

自分自身の事しか考えてない連中だと言う事も知っている。

 

 

そう、それはフェルトとて同じ。

貧民街(ここ)では、それが常識であると認識している。

 

 

スリを生業として生計を立て、夢を追い求めているフェルト。

他人を蹴落とし続けてきたのだから。盗んだ相手がどうなろうと知らない、どれだけ大切なモノだろうと知らない、盗まれた事で相手に様々な不幸が降りかかろうと知った事ではない。

 

 

世の中は不公平で、クソったれだから、その理に従って懸命に生きる。それだけだ。決して変わることの無い認識だと思っていた。

 

 

だけど、そんな少女の価値観を変えたのがスバルと言う男だった。

見た目 誰よりも弱く、誰よりもビビりだった筈なのに、身体を張り、囮となって命懸けで自分を逃がそうとした。

 

 

 

 

――自分ではなく、赤の他人を優先しようとしたのだ。

 

 

 

 

家族なら別。

フェルトにとってのたった1人の家族であるロム爺なら解る。クソッタれな世界の中で、家族の絆だけはフェルトは信じていた。例え命を賭けてでも、と。

 

だけど、スバルは違う。

 

今日初めてあっただけだ。

突然割り込んできただけの赤の他人。他人の筈なのに……。

 

 

そして、更にもう1人。

 

 

「大丈夫か!?」

 

 

そんな馬鹿みたいな男がいた。

 

 

《誰か助けて》

 

 

その声に、誰もが耳を塞いでいたその声に答えてくれた男が。

フェルトの中の小さな世界が今、変わろうとした瞬間であり、――世界の運命の歯車を動かした瞬間でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、修羅場である盗品蔵にて。

 

 

乱入したのは、勿論精霊クルルとツカサ。

 

決して狙ったわけではないが、絶体絶命、後ほんの少しでも遅ければ、腹を裂かれスバルは絶命していたであろう刹那の時、召喚獣……基 精霊を使った? 攻撃炸裂。

 

高質化した頭蓋で敵を打ち砕く強烈な頭突き、必殺の一撃! ……の様には見えないが、兎に角殺人鬼を牢籠がせるだけの一撃にはなった。

 

 

ただ、問題なのは助けを呼んだフェルトの声に従い、駆けつけたのだが、その殺人鬼の特徴を聞いてなかったと言うところだろう。

 

結構、いや かなり慌てて駆けつけたから。

 

 

フェルトの願いも勿論あるが、他に勿論自分のためでもある。

もう4度目はゴメンなのだ。

 

 

そして、一通りのメンバーを確認。

 

該当者である性別女性はこの場では2人。

見抜くのは困難か? と思った矢先だ。

 

 

「あらあら、ダンスに割り込む無粋な子がまだいたなんて。いけない子ね?」

 

 

 

特徴的な刀剣を器用に回しながら、頬に着いた血を舌舐りをし、向かってくる女性が1人。

まるで、《私がそうよ》と挙手してる様にも見える。

 

そして、もう1人の女性は何も言わない。

明らかに疑ってる、信用できない、疑心暗鬼。そんな眼をしていた。

 

 

「(大体判明。……どっちも(・・・)。だけど一応 )」

 

 

ツカサは視線を迫ってくる明らかに悪い顔してる女から外し、後ろにいる女性を、そして男を見た。

 

 

「殺人鬼はこっちで正しい? 多数決になるけど」

「ばっ!! 何を呑気な!! あぶねえ!!」

 

 

女の身の熟しは、数度の接近戦で何度も見てるし、何度も裂かれてる。

そんなスバルだからこそ、身体能力はこの場で最弱でも女の初動は見逃さず、叫んだ。

 

それを合図にすると言わんばかりに、刀剣を持った女が恐るべき速度で急接近。懐深くにまで入り込み一閃。

 

 

「正義の味方ごっこをしなければ、怖い女に狙われずに済んだのにね? あなたの腸を」

 

 

真一文字に切り裂いた。

後はいつも通り、慈しむ。愛を育む。……紅潮する。

 

外側には感じられない内側の愛しさ、血と贓物を。

 

 

ただ、それだけの筈……だったのに。

 

 

 

 

「腸って……想像の斜め上を行った単語だ、正直」

「ッ!!?」

 

 

 

 

ゾワリと寒気が走った。

確かに切り裂いた、腸を狩った。

その瞬間を見た筈だったのに、男の身体は眼前には無く、側面へと回り込まれていた。

 

そして、その掌を脇腹に押し当てられ……。

 

 

「テンペスト」

「!!!」

 

 

次の瞬間、何かが起こった。

 

 

何か、そう 何かだ。

 

 

 

どう表現すれば良いのか解らない。

 

女には解らない。

 

ただ、解るのは理解するよりも先に意識してしまうのは、脇腹への強烈な衝撃と……空高くと打ち明けられた事。

 

 

 

 

 

そして、その後の光景。

 

 

 

 

もう日が沈みかけており、空の全てが黄金色に染まる。

自身の身体もその太陽の光に包まれた。昼の太陽光よりは光度が低いが、その分長くみられた。

 

その光を、温かな光を全身に浴びながら、女は まるで幼い少女のように顔を紅潮させて、呟いた。

 

 

 

 

「……………綺麗」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

残された盗品蔵は天井にでかい風穴を開けた、雨の日確実にずぶ濡れ、快晴の日は星空満天、劇的なんちゃらな空間へと早変わり。

 

側であの女の超速を見ていた筈の2人でさえ、一瞬何が起こったのか解らず、ただ、言葉を失い口をポカン、と開けていたが。

 

 

「スッゲエエエ、なんだ今の!? いきなり暴風竜巻波浪警報発令&直撃とか、一体どーすんだよ、備えとかできねーじゃん!? 一体ナニしたの??」

「それは、オレの方が聞きたい。……やり直してた(・・・・・)のは、君……っっ」

 

 

最後まで聞くことができず、そのまま足の力が抜けたせいか、座り込んでしまった。

 

 

「あ、ちょっと!」

 

 

比較的、一番側にいた少女が先に駆けつけて身体を支えた。

 

 

「もう少し、警戒するかと思ったけど……安心して良さそうだね」

「確かに、貴方の事は知らないし、精霊に乱暴した所を見ちゃって、正直悪党だとすごーく思っちゃったけど、貴方が私たちを助けてくれたのは間違いないから。助けてくれた人を警戒するなんて、ヘンテコな感じだし。それで、どこか怪我した? 見せて」

 

 

身体をぱっぱ、とまさぐる。

ペタペタと触られるのは正直くすぐったいのと恥ずかしい。

 

 

そして、恥ずかしい想いをするのと同時に、後の男、スバルがだんだん怒り顔になってきていた。

 

 

「そーーれーーでーー?? 君はどこのだーれ? フェルトが呼んでくれた助っ人って事は解ったけどーー!」

 

 

ぐいぐい、と2人に割り込む。

少女の方はぎょっとしていた。

 

 

「とりあえず、色々言いたいことと聞きたいこと盛りだくさんある。特に黒髪の君」

「ほーほー、これは奇遇。実はオレの方も……」

 

 

と賑やかになってきたその時だ。

 

 

「ッ!? 危ない!!」

 

 

最初に気付いたのは、2人の会話に眼を白黒させていた少女。

困ったちゃんね、とだんだん呆れて、視線を外した時、偶然、本当に偶然上を見た。

 

 

空気を裂くように、飛来する流星の様に……巨凶が落ちてくるのが見えた。

 

 

咄嗟に、頭上に魔法を放とうとしたそのとき。

 

 

 

 

「ありがと、助かった」

 

 

 

 

そう言われた気がした。

ほんの一瞬の刹那の時に確かに聞いたのと同時に、後方へと弾き出される。

ついでに、スバルの方も。……こっちは前蹴りで。

 

 

「きゃっ!」

「っいって!? コラ、オレの扱い雑か! ってのはこの際良い! 助けてくれてあんがと! それよりなんで、お空の彼方から降ってくんだよ! 腸好きサディスティック女が!! 普通お星様になって、最後は自分のお家に突き刺さるってのがお約束だろうが!?」

 

蹴られた腹の痛みは対したこと無い。

寧ろ何度も斬られた部位だから比較に出来る強烈な痛みを覚えてるから、尚更無視できた。

 

 

なにか言ってるのは解ったが、今の女は、スバルには目もくれず、空からの一撃をあの精霊を使って防御した男に釘付けだった。

 

 

「あなた素敵、素敵だわ。天使に会わせてあげるのは私の役目なのに、私の方が会わせて貰った気分ね。ありがとう、会わせてくれて」

「それは良かった。その対価は、投降して払って貰いたいもんだけどね。と言うか、会った気分(・・)じゃなかったのかよっ!?」

 

 

ギリギリ、と鍔迫り合い。

本来は、攻撃よりは守りの召喚獣である精霊クルル。堅牢な盾で確実に攻撃を防ぐことが出来たが、解せない点もある。

 

 

「あれだけ、吹っ飛ばしたら、身体にかかる負荷は相当な筈。結構衰えてる(・・・・)とは言ってもね。気絶して受け止めて縛り上げて、って所まで道筋見えたって言うのに。まったく」

「あら。優しいわね。そこまで優しく丁重に扱われるのは久しぶりなのだけど。残念、私は他人より頑丈な身体だから」

「そっか、ならこれから参考にさせて貰おうか」

 

 

クルルの一撃。

《きゅう!!》と額の紅玉を角にして頭突き。

 

女もそれを身体を捻りながら跳躍し、躱した。人体位は容易に突き破ってくるだけの威力を感じた。

 

 

「ちょっと、あの人の精霊の使い方、間違ってない?? 君のパックはあんな風に武闘派じゃなかったよね? ジャンジャン氷出してたし」

「うん。それは私もすごーく思う。パックにあれをやって、って言ったら絶対すごーく嫌がって怒るから。でも、一見雑、酷いって見えても、彼とあの精霊()はしっかり信じあってる様に見えた。だから、アイツの攻撃を防いでくれたんだと思う」

 

 

少女は、一連の攻防を見つつ、倒れてる巨人族のロム爺と呼ばれた男を見て気を伺った。

 

早く治療をしなければならない。でも、そんな隙を見せて良いものか? と。

 

そんな少女の心配をまるで見越していたかのように、ツカサの声が場に響いた。

 

 

「こっちは大丈夫だから、その人をお願い。多分、その人がロム爺なんだろ? その事も念を押されててね」

「あらあら、余所見とは連れないわ。最高のダンスなのに、最後の最後まで、貴方の腸を開くまで付き合ってちょうだい」

「ご生憎。今のオレは(・・・・・)時間稼ぎは大得意。このまま長引くとダンスどころじゃなくなるぞ」

 

 

剣を躱し、時には一撃を入れ、合間を見て会話を挟む。

まるで本当に息のあった妖艶なダンスのよう。

 

 

「あら? どうしてかしら?」

「助けを呼びに来て、戻ってきたのはオレだけ。フェルトは戻ってきてない。考えられる理由は?」

 

 

一度離れると、クルルの四方八方の障壁を展開。光の壁で対象を包み込んだ。

 

 

「そっか! なるほど! フェルトの奴が援軍を連れてきてくれる、ってことだな!?」

 

 

いよーし! 言わんばかりに、スバルは拳を付き出した。

ツカサはそれに大きく頷く。

 

 

「そう言うこと。頭の回転が鈍くなってるんじゃない? 空高く飛び過ぎたせいで」

「いいえ。うっとりとしてたの。貴方をみて。貴方の腸はとても良さそうだな、って。これまでで最高のモノだって。見るだけじゃなく、持って帰りたい。ずっと温かいままで手元に置いときたいって。あああ、素敵だわ。ゾクゾクしちゃう」

「なるほど、……うわぁ、ほんと物凄い告白もあるもんだ、一番驚いたかも。ビクビクしちゃうよ、こっちは

 

 

さすがに平静を保ってたツカサも表情が崩れる。

あまりにも着いていけないから……(当然だ)

 

 

そして、2人は交わる。

 

 

 

 

「一世一代の告白よ、受け取って頂けるかしら?」

「謹んで遠慮しておくよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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