Re:ゼロから苦しむ異世界生活 作:リゼロ良し
今年もよろしくデス!
ペテさんに会える様に、ガンバルマス! (*´▽`*)
説得&宣戦布告
「ほのかに香る甘い匂いがオレのヤル気を増進させられる―――」
「うん。何だか凄く変態の様に見える」
「はっ、汚らわしい」
「大丈夫です。変態なスバル君でもレムは愛せます!」
「スッゲー―辛辣!! 冗談に決まってるじゃねーか! それにレムはレムで しれっとオレの事ディスってるよね?」
スバルがもったいぶりつつも、取り出したる秘密兵器。
それは、今スバルが着こなしている白いローブ―――エミリアの私物だったモノ。
「認識阻害の術式で編みこまれているらしいし、エミリアさんと顔合わせにくいスバルにとっては、確か必須かもしれないけど……、どう? パック」
「う~~ん。娘の私物を羽織ってクンカクンカしてる姿見ちゃったらねぇ。娘、やれないかな?」
「だぁぁぁ!! はい、もうやめます! ふざけるの止めます! 早速準備開始で!!」
親? であるパックの実に心に突き刺さる一言。
何せ、これまでは普通にふざけたやり取りの中で、愛娘であるエミリアはやれない! と言うセリフが決まっていたのだが、今のは普通。普通なやり取り上だった。
だからこそ、スバルの心にドストレートに突き刺さったのである。
「兎に角、エミリア安全対策(スバルpresents)その①だ!お前にも芝居とあと、全部片付いた後の説明とかフォローとか協力してもらうからな、パック!」
「お芝居は兎も角として、仲直りは自分で頑張りなよ。そもそも、スバルが一方的に考えすぎって感じがするけどね」
「ぐぬぬ……。あ、じゃ エミリアたん怒ってなかったりすんのか? パックが見てても!?」
「ん――――。怒ってないと言うか………無関心?」
「それはそれで嫌だ!! もっと嫌だ!!」
怒られるのは当然嫌。嫌われるのなんてもっと嫌。
だけど、怒りもせず、何も無く無関心。
それこそが地味に一番傷つくのだ。
「――――――ん」
パックと遊んでるスバルを他所に、ツカサは再び探索用のテンペストを発動させた。
周囲のマナの僅かな動きを察知したのか、或いはツカサ自身とかなり近くにいるから察知する事が出来たのか、パックはピクリ、と耳を動かしていた。
「成る程。ああやって、周囲を探索してるんだね。ボクから皆を護ってたのとはまた違う。風のマナの応用? あ、感覚をリンクさせてるみたいだから、ネクトも、かな?」
腕を組み、ツカサの術を解析―――と言うより考察しだしたパックだったが、流石の何百年を生きる大精霊であっても、知らない事は知らないし、理解出来ない事だって多くある様子。
そして、何よりも頼りになり過ぎる男、色々パックにとってもミステリアスな男ではあるが、それを考慮したとしても……、鬼姉妹の1人を籠絡
「はぁ~~、やっぱツカサの方が娘預けるの安心するんだけど?」
「しみじみ言うなよ! 確かに兄弟はやばスゲーヤツですけれども! 兄弟にはエミリアたんじゃない、愛妻がいるんだ!」
パックの小言に、盛大に喚き散らすスバルだった。
「……愛妻。まだちょっぴり気が早い、かな」
もう今更なのだが。
白鯨戦では散々ラムに言い切って、ラムからも惚れ直した、と言わせて。
終わった後は、
盛大に喚くスバルの声はバッチリ届いていたらしく、顔を赤くさせていた。
「時間の問題、だと思うわ。ラムはいつでも良いもの」
「!」
小さく独り言を―――のつもりだったけれど、ラムにはしっかり聞かれていた模様。
ラムのツカサにしかほぼ見せない ニコッ、と屈託のない笑顔。……だが、それはちょっとした悪戯っ子の様な面もあったりする。
ツカサの事をラムが知らない訳はないので、今の心情も手に取る様に解る。解った上での事、なのである。
「そうですよ。ツカサ君。全部終わったら婚礼の儀。白鯨討伐の時に約束をしたじゃありませんか」
「あははは……。そう、だったね。全部終わったらきっと。……あ、でも、レムはスバルの傍に居なくて良いの?」
「はい。レムはスバル君から村人を聖域までお送りする役目を頂いております。……その、離れ離れになってしまうのは寂しいですが。いつもスバル君の事を想ってますので、レムは大丈夫なんです」
レムのスバルへの愛情の深さもきっとラムのツカサへの愛情に負けてない。
それが解っているからこそ、相手を選べ、と言いたい気分なラムも口を噤んでいる。
勿論、スバルが一緒に居たら、盛大に毒を吐くのだが。
「―――どこが良いのかしら。あんな男」
「やっぱり辛辣だね。好いた惚れた、は自由だし、スバルは良い男だって、オレも思ってるよ」
ツカサの言葉を聞いても、ラムは、フンッ、と鼻息荒い。
最愛の妹の相手ともなれば、当然厳しい視方にもなるのだろうが……一応訂正をしよう。
やっぱりラムはラム、である。
そんな話をしていたのは露知らず。
スバルはスバルで、パックと重要な話を続けていた。
エミリアとの仲持を断られ悔し気に唸るスバルだったのだが、ならばそれ以外の事でパックには協力を願うまでだ、と。
「パック。あと1個だけだ。頼みがある」
「んー? 何かな?」
「これは、オレら2人の頼みだって思ってくれ。―――屋敷に残ってる、引きこもりの説得だよ」
この場所から脱出させる者。
それはベアトリスも勿論含まれる。
制約が色々とあり、複雑極まりないのはスバルとて、解っている事だが、禁書庫から一切出られない訳じゃない事も解っている。
魔獣騒動の時も、雪祭りの時も、ベアトリスは外に出てきてくれたのだから。
ただ、今回は規模が大きいお出かけになるから、一筋縄ではいかないのだが。
そして―――場面は不可思議な空間。
無数の書棚とその書棚を埋め尽くす本に支配された空間。
間違いなくアーラム村にはそぐわない。……いや、アーラム村には無かった筈のロズワール邸の禁書庫が、アーラム村の……ペトラの家の扉と繋がったのだ。
無論、一瞬、一度切りとは言え、家主にはしっかり了承を取った後、ではあるが。
「―――クルル、久しぶりなのよ」
「きゅきゅ♪」
邂逅一番、ベアトリスの表情は如何とも形容し難い……、敢えて言うなら【無】に近しい表情だったのだが、ツカサが一緒に連れてきていたクルルを、その胸に抱かせると、表情が和らいだ。
クルルを一緒に連れてきたのは正解の一言だ。
だが、だからと言ってベアトリスが言う事を聞くと言う保証は一切ない。
クルルも、それを理由に説得するつもりは無い様だ。……ベアトリス自身の問題でもあるから、それに土足で踏み荒らす様な真似はしないらしい。
―――
もう、厳密に言えば別の存在なのかもしれないが、何時アレが顔を出すのか解らないから、あまり気を緩めてはいられないのが心情。
「すっげーな。まさかペトラん家がベア子の寝室になっちまってるのは。お手軽リフォームだぜ」
「………その腑抜けた顔した男が一緒なのは誤算だったかしら。にーちゃのお願いの中にクルルが居たから我慢してやるだけなのよ」
ラム以上の毒を吐くベアトリスは、クルルを腕に抱いたまま、向き直った。
「クルルとそっちの男。2人だけで十分だったんじゃないかしら。お前まで来る必要ないのよ」
「ヒデェな! そこまで堂々と仲間外れにすんじゃねーよ。オレ、泣いちゃうぞ!」
「用が無いならさっさと出てくのよ」
「だーもうっ。オレが出てくときは兄弟は勿論、クルルも一緒だからな! 本題に入る前のちょっとした和やかなやり取りを理解してくれよ。堪え性の無いヤツだな、おい」
いつも以上に辛辣なコメント。
それだけでも解る。ベアトリスをいつも以上に、クルルが居ると言うのにいつも以上に不快にさせる原因が迫っていると言う事に。
「……ベアトリスさん。もう、解ってるんですよね? 外で何が迫ってきてるのか」
「………………」
その人のモノではない瞳を真っ直ぐツカサに向けて、軽くため息を吐くとポツリと告げた。
「魔女教」
「! マジかよ。知ってたのか。ってか、聞いてたのか?」
「別に。誰からも聞いちゃいないかしら。元々、屋敷の連中と親しく話す関係でもないのよ。ただ、あの不埒な連中が、屋敷の周りをうろついているのは知ってるのよ」
魔の気配。
それを察する事が出来たのか。
それなりの大人数である筈なのに、ラムの千里眼を用いても、ツカサのテンペストが無ければ発見に至らなかった、と断言できる程、隠密に行動してきているあの集団をベアトリスは禁書庫内に居ただけで、察知した、と言う事なのだ。
やはり……ベアトリスは強大な力を持つ。
それはツカサは勿論、スバルだって解っている。
あのラムを連れ帰ったループの時、ロズワールとぶつかり、ラムから身を護ろうとしてくれたベアトリスをスバルは見ているから。
変人ではあるが、王国筆頭魔導士であるロズワールにも勝るとも劣らない……、態度だけを見れば、ロズワールよりも上だ、と思わせてくれる程の力を持つベアトリスを見ている。
――――でも、力だけじゃない。それ以上に見ている事があるのだ。
「そこまでわかってんなら話は早いぜ。とにかく、お前の言った通りの状況だ。エミリアにも色々小細工打ってる。パックだって協力してくれてる。だから、後はお前も一緒に……」
「ベティーはいかないのよ」
「ッ………」
「あ?」
スバルの申し出に、間髪入れずに返答したベアトリス。
拒否と言う返答をしたベアトリスに呆気にとられるスバル。
ただ、ツカサだけはただ苦虫をかみつぶしたような表情をしているだけだった。
「ベティーはいかない。そう言ったかしら? いくら理解が追いつかないお前の頭だったとしても、言葉は解る筈なのよ。ベティーは、ここに残る。この屋敷、禁書庫からでていくつもりは毛頭ない。それだけでも理解して、とっとと出ていくかしら」
ベアトリスはそう言うと、……クルルでさえ、解放した。
突き放す、様なやり方ではないが、抱きしめていた腕から、クルルを解放した。
こんなに早く、解放されたのは初めてだったので、クルルも心配そうにベアトリスの顔を覗き込んだ。
その時だけ、ベアトリスは笑みを浮かべた―――気がした。
「まて、まてまてまてまて! お前、やっぱ状況が見えてねぇんだな!? ここはヤバイ。連中が何をしようとしてるか、お前は知らねぇんだよ!」
「あの不埒な連中が何をしでかそうと、ベティーには関係ないし、自分の身くらい自分で守れるかしら。ベティーはここに残る。これ以上議論するつもりもないかしら」
ぴしゃり、と言ってベアトリスは解放したクルルを再び優しく触ると、ツカサの方へと向けた。
「行くが良いのよ。…………」
最後の方は、極めて小さな声だった。スバルには勿論、ツカサにも聞き取れない程消え入りそうな声だ。だが、傍にいたクルルにはハッキリ聞こえていた。
【また、会えたら……】
とベアトリスは呟いたのだ。
「ベアトリスさん」
「……誰がなんと言おうと、お断りなのよ。もうこれ以上は禁書庫も開かない。そう、誰がきたとしても、この禁書庫には立ち入らせない」
「―――オレは何ひとつ納得しちゃいねぇぞ。ベアトリス、ツカサ」
スバルは一歩、前に出る。
ツカサが何処か仕方ない……とんな様子、風貌だったからこそ、スバル自身が前に出たのである。
「オレは何だろうとお前を連れて行く。それだけだ!」
「……まだそんな事を。ただのニンゲンが何ほざくのかしら。守って貰わないと直ぐ消し飛びそうな貧相な分際で」
「それは否定しねぇ。だがよ。それでもお前は、どんなに強くて、どんなに可愛くても、オレの眼には、小さな女の子なんだよ! そんな子を、こんな危ねぇ所に残したくなんかない! 他にいらねぇ!」
幾度もベアトリスには吹き飛ばされた。
マナを徴収された事で、身体をメチャクチャにされた事だってあった。
ベアトリスの強さは、それなりに知っているつもりだ。
だがそれでも、圧迫感で気圧されそうになってでも、スバルは踏みとどまる。
ベアトリスは、それを聞いて思わず痛みをこらえる様な顔つきで目を瞑った。
あの表情―――スバルは見た事がある気がする。
何度目のループだったか、定かではないが、それでもこの顔は覚えている。
「……ベティーはいかない。これ以上何も惑わすのは止めて欲しいかしら。お前は強情で、何よりも傲慢。大罪の名、それが今のお前には相応しいのよ!」
「強情だろうが傲慢だろうが、関係ねぇ! オレは間違っちゃいない。お前は間違ってる!」
「スバル!」
ツカサは、スバルを手で制する。
「ッ……そうだろうがよ! 何で、今にも泣きそうな面してる子を、駄々こねてるだけの様な小さい子を危ない場所に残していけるんだよっ!! お前だって、ツカサだって解ってるだろっ!?」
「解ってないのはスバルの方だ。ベアトリスさんを、更に苦しめてるのもスバルだ」
「ッ―――! 苦しめる? どう言う事だよ」
ツカサは、真っ直ぐにベアトリスを見た。そして、その瞳を数秒間見た後……スバルに向き直す。
「もう、忘れた訳じゃないだろ? ―――……契約」
「ッ―――」
「あの巨獣の言葉。全てを滅ぼし、終焉を齎すかの様な巨獣の存在。あの時の事―――もう、忘れたのか?」
ツカサの言葉を聞いて、スバルは目を見開いた。
それは、スバルだけじゃない。ベアトリスも同様だ。……だが、そんなベアトリスの顔は見えない。
「契約に従う。契約を破る。……その重みをオレ達は知っている筈だ」
「ッ、だ、だからと言って!」
「そうだよ。だからと言って、ベアトリスさんを1人に残していけないのはオレだって同じだ。……だけど、何も知らない状況で、何も契約の事を知らない状態で、
「ッ!」
巨獣を相手にした時、アレは世界を滅ぼすまで止まらない勢いだった。
一体なぜ、そうするまでに至ったのか? その原因は?
直ぐにハッキリした。
エミリアが――――……。
だから、戻ってきた。
エミリアを失う事を拒絶するのは当然だが、結果として、あの時の巨獣の契約を護らせる為にも繋がった。
契約の重さ。それは大なり小なりあるだろうが、最大級を自分達は味わった筈なのだ。
全てを犠牲にする。世界をも喰らう程、重たいモノだと。
「ベアトリスさん」
「―――――」
ベアトリスの顔はツカサは視ずに、続ける。
「貴女が何に縛られているのか。貴女の契約の根幹は何なのか。オレ達は知りません。
そう言うと、振り返って告げる。
「でも、忘れないで下さい。オレか、スバルか。……絶対に、貴女を解放して見せるって」
「―――要らぬお節介、かしら」
「駄目です。もう。……もう――――」
――――貴女が悲しんでる顔を、見てるから。
ツカサはそうとだけ言うと、再びベアトリスから背を向けた。
そして、クルルはその肩に乗った。
スバルの肩をそっとツカサは叩き、横切るって、禁書庫の出口、アーラム村に繋がる扉の方へと向かった。
「―――ああ、そうだよ。オレは行き当たりばったりで、ただただ感情に流されるだけで、だからと言って兄弟みたいな力もない。我を押し通すだけの力も持ち合わせていない」
スバルは拳を握り締める。
ベアトリスを連れて行く。それが無理だと解らされて、押しつぶされそうな気分になる。
ベアトリスに吹き飛ばされた時よりよっぽど痛く、辛い。
そして、それはツカサ自身も同じ気持ちだと言う事も、解っている。
駄々こねるだけの子供である事は、もう止めたから。
愛する人が出来た。愛してくれる人が出来た。
ならば、大人にならなければならない。
無論、スバルの出来る範囲内ではあるが。
「ベア子。オレからも言う。これだけは覚えとけ」
「…………」
ベアトリスは視線を逸らせる。
ツカサとはまた違うその雰囲気。
特に、惑わされる気分になってしまうから、直視に堪えなかった。
「スゲー力を持つ兄弟が。ベア子やパックでさえ一目置いて、……それ以上な男ツカサが。お前を解放する男の中に、このオレの名を言った」
「――――たまたま、ここにいる男がお前だけだった。それだけの事なのよ」
「んなもん知るか! 兄弟が、自分かオレか、どっちかがお前を連れ出すって言ったんだ。―――オレの名も、言ったんだ」
小さい自分の力を、また信じてくれた。
「精々カクゴしとけよベア子! お前をいつかそこから連れ出して――――、その綺麗なドレスが泥まみれになるまで、遊び倒してやっからな!」