Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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純粋無垢な優しさ

 

 

 

「―――よろしくお願いします、お姉ちゃん」

 

 

それは、ツカサ達が見た光景。

エミリアが驚いた理由。

 

ぺこり、と頭を下げる赤みがかかった茶髪の少女に対して、である。

竜車はあと1台しかない。他の竜車はもう出て行ってしまっている。だが、目の前には子供たちが取り残されている。

親御さんはいったい何処にいるのか? 何をしているのか? と様々な思考で頭の中がいっぱいになってしまっていた。

 

幾ら、それなりに見知った相手で、名前もわかっている相手だとは言っても、それはあの(・・)ローブを使っていた時の事だ。

認識を逸らしていた。自身がハーフエルフだということを隠して付き合ってきた。

もう、全てがわかった今――――。

 

 

「えっと、これって何かの間違いじゃない? 変よ」

「いいえ。変ではありませんわ、エミリア様。……厳正なる話し合いの結果、この様な割り振りとなってしまいましたの。王都へと向かう組も相応に警戒をしておかなければなりませんし、人数制限の兼ね合い状、この子たちと一緒に乗ってもらうしか無いのです」

 

 

不安に駆られるエミリアに対し、淡々と説明を続けるのはフレデリカ。

本当に何でもない、いつも通りな雰囲気で、何も特別めいた事ない、と言わんばかりに。

 

だが、幾らフレデリカがいつも通りの雰囲気だと言っても、エミリアはそうはいかない。

彼女にとってはいつも通り(・・・・・)じゃないのは明白だからだ。

 

王都まではそれなりに時間がかかる。以前、少ない人数で相応の走力を持つ地竜に引いてもらった竜車でも、時間はかかった。

 

それはつまり、この子達と数時間共に過ごすという事に他ならない。それも竜車と言う密室で。

 

エミリアの驚きは、自分の事よりも子供たちに対してのものでもある。

自分と一緒に居る事、同乗すること、それはこの子達やその親御さんたちへの配慮に欠けているのではないか? と。

 

如何に頑張れる! と今朝言っていた通りだとしても、それは自分の範囲内しか無理だ。他人を不快に思わせないように頑張る―――事は出来ない。

 

嫌な思いをする事。……自分は耐えれるかもしれないが、この子達が可哀想だ。

 

 

「今からでも、他の竜車に分けてのせてあげられない? その方がこの子達だって……」

「―――誰だって、自分と一緒に乗るのは嫌がる筈、ですか?」

「っ………」

 

 

エミリアが、なるべくその言葉をはっきり言わない様に、遠回し、遠回しに告げようとした時、まるでそれを見越していたかの様に、内心を先読みされてしまった。

 

それは、屋敷から一緒に来た隊員の1人。

 

今朝、屋敷へとやってきた老齢の男性は、当初、初めて出会った時は御者をしていた男。

クルシュ陣営に所属している部隊の隊長、ヴィルヘルム・トレアスだった。

森に潜む大犯罪者集団を追って、ここまで来たとの事だ。それは親書にも書かれている内容と一致しているから、疑ったりしてないが、急を要したのは、今まさに内心を読んで見せた彼の登場によってだ。

 

 

 

―――曰く、森に奇妙な動きがあったらしい。

 

 

 

もう、一刻の猶予もない、と思わせるには十分だった。

クルシュ陣営に、クルシュにばかり頼ってられない、自分も残って対応を、と思っていたエミリアだったが、その時間も惜しい。

 

今もそうだ。押し問答している間に、もしも―――誰かがケガをしたら? 自分の領地で、領民を守り切れなかったら? と思ったら、即断即決すべきだと思うが、こればかりはなかなか頷けない。

 

これまでの長い長い歴史が。―――決して浅くない傷が、心に深く浸食し、蝕んでいるのだから。

 

だが、そんなことは関係ない、と言わんばかりに、彼は続ける。

 

 

「それ、この子達に確認した事がありますか? 嫌われてるんだって、嫌がられるんだって、勝手に思い込んでしまっているだけでは?」

 

 

村で一緒に遊んだ時、最近では雪まつりを盛大に行った時。本当に楽しそうだった。

でも、それは自身を認識していなかった為だから……。

 

 

「……そんなこと、聞かなくてもわかってるの。だから、それがお互いの為だって」

 

 

改めて、確認することを恐れてしまう。

 

パックがいった通りだ。解っていても、言われると解っていても……実際に言葉と言う刃で切り刻まれるのは、痛い。……とても。

 

そんなエミリアの葛藤を一笑するかの様に、彼はさらに告げた。

 

 

「ここにいるのは子供6人、竜車は1台。……こんな所で躓いてちゃ、君の願いをどうやって叶える?」

「っ――――。あ、あなたは」

 

 

エミリアは、彼は自分の事を知っているのか? と問おうとした。

話しぶりを聞いていて、エミリアはそう感じたからだ。

背を押してくれている様にも見えた。

 

そんな人―――初めて会う(・・・・・)人の中では、彼だけだったから。

 

 

続いて、彼はエミリアから視線をそらせると、ペトラの前に片膝をついた。

少女の視線に合わせて、静かに問いかける。

 

 

「どうだ、ペトラ。君はあのお姉さんと、一緒の竜車はどうしても嫌か?」

「っ――――」

 

 

解っていたって痛い。

そんなわかり切った事を、どうして彼はいうのだろうか。どうして意地悪をするのだろうか。

 

ただただ、傷つけられる質問の答えを――――。

 

 

「そんなことないよ?」

 

 

向けられるのは、傷つけられる筈の言葉だった。

だが、おかしい。いつまでも痛みが来ない。言葉が刃となって来ない。

 

 

「わたし、お姉ちゃんと一緒なの、嫌だなんて思わないよ」

「………え?」

 

 

空耳だったのだろう、聞き間違いだったのだろう。

次にこの少女が言葉を発する時が……と身構えていたエミリアだったが、それは来なかった。

ただただ、言葉の意味をしっかり把握するのに時間を要した。痛みのない言葉。いや、その逆だ。

温もりがそこにはある。温かくて、心地よくて………、だが、驚きを隠す事が出来ない。

言葉の意味を理解し始め出したら猶更だ。

 

そんな驚きのあまり、硬直しているエミリアに、ペトラは、はにかむように微笑んで告げた。

 

 

「お姉ちゃん、お芋のハンコのお姉ちゃんでしょ? いつもスバルと一緒に、朝のラジーオタイソー見に来てくれてた」

「それ………は……」

「えっと、後はほら! ちょーっと……変わったが猫ちゃんの雪の像、作ってたのもお姉ちゃん、だよね? あはっ。ツカサが教えてくれなきゃ、わかんないよー、って楽しそうにしてたのも、わたし、覚えてるよ」

 

 

アーラム村での恒例のラジーオタイソー。

スバル主催で始めた朝の日課。エミリアの付き合う様になって結構長い。

 

そして、自分達の事情でみんなに迷惑をかけた……雪祭り。その事情、詳細は省くが、その時も皆で楽しく過ごす事が出来たと思う。

話しかける事は出来なかったが、傍にいて、みんなの楽しそうな姿を見て、それだけで満足だった。

その時の自分を―――目の前の少女は見ていてくれた……。

 

 

「いつもお顔は見えなかったけど、お姉ちゃんが楽しそうにしてたの、わたし知ってるよ? スバルも、ツカサも、すごく楽しそうだった。お顔見えないし、何を話してるのかはわかんないけど、あんなに楽しそうに話してるお姉ちゃんを、わたしは怖いなんて思わないよ?」

「………ぁ」

 

 

続けて出てくる少女の言葉は、凍てつかせたエミリアの心をまるで溶かしてくれるかの様だった。

空元気だった。無自覚のつもり―――だったのだが、その深奥ではしっかりと理解していた。凍った心を、空元気で覆い隠し、無理やり動かしてるだけに過ぎなかった。

 

不意に、目の奥に熱いものがこみ上げてくる。

のどが詰まる。

耳が燃えそうに熱い。

 

 

「だから、お姉ちゃん。一緒に乗ろ? みんなが、お姉ちゃんを一人ぼっちにさせようとしてるって言われてたの。でも、わたしは手を繋いでて上げるから。お姉ちゃんは、一人ぼっちなんかじゃないんだよ」

「――――ぁ、う、うん。……うんっ」

「もう、さみしくないよ。皆と一緒にいれば、さみしくない。しなくていいんだよ」

「うんっ……」

 

 

無邪気で無垢。

こんな子に、どうして自分は決めつけてしまったのか。悪意や理不尽の思いを強制してしまっていたのは自分の方だ。

 

その純粋なまなざしに、心から救われる。

胸が苦しくなってくる。

 

自分を知っていて(・・・・・・・・)……こんな風に言ってくれるのは、初めての事だから。

 

 

「オレもっ!」

「おねえちゃんといっしょにのる!!」

「はやくいこーぜー!」

「りゅーしゃだよ、りゅーしゃ! すっげー、かっこいーー!」

 

 

他の子供たちも騒ぎ出した。

少女だけじゃない。この場の子供たち全員の総意だったことが解る。好き放題駆け回っていて、落ち着きがない様子が、本当に心地よい。

 

 

「もー、みんなってば、はしゃいじゃって。……あはは、ごめんね、おねえちゃん。皆うるさくしちゃって」

「……ううん。大丈夫。へっちゃら、です。嬉しい、嬉しい気持ちが大きいから。それに―――」

 

 

いつも、隣にいてくれた人の事を思い出す。

村へと手を引っ張って行ってくれた。この少女……ペトラの記憶に、思い出に残る様に、きっかけを与えてくれた。

 

そして、もう1人。

村を命がけで守ってくれた。

味方だと言ってくれた。

 

2人の男の子たちを思い出して、エミリアは更にはにかんだ。

 

 

「騒がしいのは、慣れっこだから。この2ヵ月で、特に―――ね」

「えへへ。だねっ」

 

 

繋がれた温もり。その心地よさがすぐそばにあることをエミリアは実感する。

 

 

「我儘だったのは、私……だった。ごめんなさい、フレデリカ。えっと、聖域の方は……」

「大丈夫です。エミリア様。順次抜かりなく行っておりますわ」

 

 

王都行に関しては問題ないが、聖域となれば、地理に詳しいものがいかないと案内ができないだろう。あそこは、メイザース家が管理している場所。王国きっての変人……ではなく、筆頭魔導士のロズワールもおらず、諸事情で聖域に赴く事が出来ないフレデリカもいないとなれば……と、心配をしていたが、フレデリカは首を横に振った。

 

手配をしている、と。スカートを摘まみ、丁寧にお辞儀をするフレデリカ。

心配は皆無だ、と言って良い。

 

 

「あなたにも、ありがとうってお礼を言わなきゃ………あれ?」

 

 

 

そして、続いて―――最後に、このやり取りの最大の功労者に感謝を―――と視線を向けようとしたが、彼はどこにもいなかった。

白いローブを来た少年だ。それなりに目立つ色の筈なのに。

 

 

「どこに、いっちゃったの?」

 

 

 

取り残された様なエミリアの声に、フレデリカはため息を吐く。

 

 

「(殿方としては、減点―――ですわよ? スバル様。……致し方なしとはいえ)」

 

 

フレデリカは、自身の右肩を見た。

そこには、半透明……いや、ほとんど透明。そこにナニカが居る事を認識した上で、目を凝らして視ないと、間違いなく視逃してしまう程の存在感が薄いナニカが居た。

 

それは、額に紅玉の宝石があり、緑の身体を持つ……。

 

 

 

「後は、よろしく頼みましたわ。ツカサ様」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――枝木をかき分け、草地を踏み、駆け足で森の中をかける。

 

隠密行動が原則だ。存在をなるべく隠して行動を―――としていたのだが、今はそれどころじゃない。

 

 

「なぜだ。なぜ、もう出発を……? オレも、オレの竜車もここにあるというのに」

 

 

住人を避難させる為の誘導が行われているのは当然知っていた。

その行商人に紛れていたのだから、当然だ。

 

試練から逃れる為に、この場から逃げる。

 

そんなことはあってはならない、許されない事だ。だからこそ、時間はしっかりと確認し、裏も取り、信用も得てきたつもりだったというのに。

 

その焦燥感が、他にも伝わったのか、無数の黒き存在が一同に集った。

もう、目立つなどと言ってられない。逃すわけにはいかないからだ。

 

 

「……馬鹿な。少な過ぎる」

 

 

だが、ここで違和感を覚える。

事前配置していた筈の信徒たちの数が異様に少ない。

臨機応変に、勤勉に遂行するために、幾重の策を施していた筈なのに、いつの間にか存在が掻き消えたかの様に姿を消していた。

 

 

 

だが、だからと言ってすべき事は変わらない。

焦燥感もある。驚きも隠せれない。だが、すべき事は変わらない。

 

たった4人であっても、行う。

狼煙を上げるには、聊か不足だと言えるが、それでも足止め程度なら十分だ。

予定を前倒しする事になるが、これもすべては尊き意向に従うため。

 

 

その旨を伝えようと、懐に手を入れ、取り出したのは掌に収まるサイズの手鏡。

単に化粧を整えようとする為に取り出したのではない。

それは単なる手鏡ではあらず、俗にいう【ミーティア】。

 

その名も対話鏡。

 

 

遠方の対になる鏡と言葉を交わす為の魔法道具。

希少品なミーティアではあるが、この手の道具としては数が多くあり、入手しやすい。

それでも、持たされるものは、信徒の中では限られている。……信仰心を認められ、その上で、司教様の腹心―――【指先】に選ばれたものだけの栄誉。

 

 

「――――――」

 

 

彼は、手鏡を使用、起動させようとした。

今しがた、数刻前に同志たちに伝えた情報とこの供物たちの行動の大きく食い違った事実を伝えんがために。

 

 

だが。

 

 

「なるほどな。周りとの連絡手段だけが謎だったけど、つくづくミーティアってやつは便利なもんだ」

「スバルのけーたい、ってヤツは もっと凄そうだけどね。なんせ白鯨の出現時間まで解るんだし」

「はっはっは。格が違うってヤツよ。……んでも、道具にばっか頼るってのはいただけねぇな。目の前にいない相手に話すだけじゃなく、こうやって相手の顔を見てコミュニケーションを図る。連絡確認・報連相、企業じゃ重視されてる事だろうぜ。ま、オレまだ学生だけども」

 

「―――!??」

 

 

慌てて後ろに飛びのいた。

丁度、竜車を背にする様に。背後を取られない様に。

 

 

陽気な声が届いてくる。村とは正反対の方角から、黒い霧に紛れて。

 

 

「このローブ必要なかったかもな? 兄弟の隠れ身の術! いや、お見事」

「白鯨の時は白い霧。ここでは薄暗い森。条件が一致しないと、最大の効果は得られないよ。過信する訳にもいかないし」

 

 

まだ、陽気な声が響いてくる―――かと思いきや、突如姿を現した。

黒い霧に覆われていて、わからなかった男が2人。

 

 

「さて、オレとエミリアの感動の再会を邪魔してくれた罪は重いぜ、お前ら」

 

 

それも―――最大要注意人物の一人が。

無論、それは軽薄な戯言をいう方の男ではなく、その隣の――――

 

 

「お前は―――」

「お前()だろうが!」

 

 

行商人に紛れていた魔女教徒―――ケティ。

メイザース陣営での最大最強戦力であるツカサの超接近に、直ぐに臨戦態勢を取る。

 

明らかに無視された感覚満載なスバルが何かわめいているようだが、それどころじゃなく――――。

 

 

「――――遅い」

「!!」

 

 

来ていたのはツカサだけじゃない。

 

後3人いた同志たちは、瞬く間に殲滅されてしまった。

絶命を確信できるほどの血しぶきを上げながら、地に倒れ伏すのをはっきり見たからだ。

 

 

「はいはーい。フェリちゃんの可愛い~手でしっかり隅々まで確認してあげちゃうからネ~」

 

 

続いて、要注意人物が一人。王国で青の称号を持つフェリスも現れ、その傍らには……。

 

 

「フェリス。こちらはすべて片付いた。……が、油断はするなよ」

 

 

王国騎士団、最優の騎士ユリウス。

 

最大戦力のすべてがこの場に集った、と言って良い。

 

 

「抵抗するのはお勧めしない。もうこの場にいるのは君だけ。無用な苦しみを与えるような趣味はない」

 

 

完全に機先を潰されてしまった。

 

 

「こらぁ!! てめー、この期に及んで、オレの事カウントしてねーだろ!!」

「日々精進しないといけないね。君も」

「うっせーーー! 今は修業期間中だって言ってるだろっ!!」

 

 

ユリウスなりの気遣い? なのだが、スバルにとっては火に油だ。

そんなやり取りが続いて、ようやくケティはスバルの方を本当の意味で見た。

軽薄で品がなく、そんな男だが 間違いなく主導者なのだから。

 

 

「グ……、ナツキ・スバル」

「ようやくだな。疎外感バッチリなボッチ気分だったぜおい」

 

 

 

その後、ヴィルヘルムは流れるような動きで、ケティの手を縛り、そして、ご丁寧に竜車を持ってきたようなので、その支柱に縛り付けた。

フェリスもしっかり身体を確認。

 

 

 

「にゃる程。……さっきの奴らには無い術式が刻まれてる。この役者っぷりを考えても、ケティが指先である事は間違いにゃし」

「ぐっ………!」

 

 

男とは思えない愛らしい笑みを浮かべるフェリス。

クルシュに褒めて貰う事を原動力に頑張っているのだろうか。……だが、その愛らしい笑みや優しい手も、一度牙を向けば凶悪極まりないモノになるが。

 

 

指先の一人である事は判明出来た。

足の指はおそらくないから、10本。

内、先ほどの作戦で2本失っているから、後7本。

 

ケティを見下ろしながら、ツカサは告げる。

 

 

「害虫駆除に、大分気を使ったんだ。……よくやってくれた、と褒めて貰いたいもんだ。ケティ」

「なぜ、なぜ……」

「なぜバレた? か? 早い話、お前がスパイだってのは、兄弟やオレがフレンドリーに話し始めた時からバレバレだったんだよ。見つけた方法は企業秘密。……んで、その上でお前を今の今まで泳がせた。その理由……無ぇ頭だったとしても、わかんじゃねーか?」

 

 

スバルは、今の今まで無視されてた勢いだった意趣返しなのか、頭に人差し指を向け、嘲るような顔つきで、見下した。

 

 

「村に行商人に紛れて堂々と入ってくる魔女教。その役割は? ………村の子供たちでも分かりそうなものだけどな」

「っ―――――! 貴様ら、オレを……!?」

 

 

直ぐ横で控えているツカサも嘲笑……ではなく、心底嫌悪し、憤怒もし、今にも殺しそうな雰囲気を出していた。

完全に拘束しても尚、向けられている底知れない殺意。常人であれば、それだけで意識が昏倒しそうなものをさらされ続けるが、腐ってもケティは魔女教、怠惰の指先だ。そこまでの無様は晒さないようだ。

 

 

「そう、そのとーり。そんな大間抜けがいるんだ。折角だから、罠に使ったんだよ。……2時間だ。お前は、2時間遅れのスケジュールを仲間に報告したんだ。……もう、逃れられないぜ。何もかも先回りされて潰される。――――その恐ろしさ、今度はお前らが知る番だ。………お前らに殺された人たちの分まで、覚悟しろよ。破滅まで、待ったなしだ」

「ッ――――――………」

 

 

この時だ。ケティからの表情が消えたのは。

 

驚愕していた筈だった。

混乱し、まだまだ定まっていない筈だった。

 

だが、その表情は消え失せた。

 

一瞬、まるで表情が闇に消えたかの様。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――もってきた(・・・・・)

「あん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スバルは、ケティに睨みを聞かせる。

竜車にガッチガチに縛りつけられ、このまま市中引き回しの刑でも、と思っていたその時だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――破滅をお前らに(・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目をむき出し、歯を見せながら邪悪な笑みを浮かべ―――やがて、スバルの意識が真っ白に染まった。

 

 

 

 





村の外のケティ。
村の中、行商人モードなケティなら、痴話げんかすんな~と割と話してくれるケティだけど、一度魔女教モードになると無口。

でも、漫画版のケティさんは流暢にしゃべってたり(笑)


(∩´∀`)∩
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