Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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捕虜=友達

真っ白。

それしか言えない。

 

ただ、一瞬―――ほんの一瞬、身体が熱く感じた。

それ以外はまるで痛みもなく、苦しみもない。

 

 

―――……ああ、コレが安楽死(即死)なのか。

 

 

何が起きたのか理解していない筈なのに、スバルは本能的に自身が死んだと結論付けた。

 

今、何処か浮遊感を覚える状態なのは、これまででは初めての事。だから、死を意識しつつも、自分がどうなってしまっているのか全く分からない、とも思っていた。

 

この世界に来て、楽な死に方は……あまり考えたくはないが、ロズワール邸で呪殺された時だろう。眠っている間に命を落としたのだから、苦痛も痛みもない。ただ大きな混乱は伴ったが。

 

 

 

―――これからも、どうせ、死ぬならコレが良い……。

 

 

 

スバルはそうも思う。

弱く非力で、他力本願上等でなければ、このファンタジーな異世界転生モノで生きていけない。

これからも、そう言う場面()を避けるのは難しいだろう。

 

そして、いつも通りあの闇の手が自分を迎えに来る―――、そう感じていたその時だ。

 

 

 

 

【死んだら絶対許さない。死ぬ手前まで何度も殺すわ】

 

 

 

 

真っ白な世界に声が、……そして桃色を見た気がした。

そして、次第に白の世界に色が生まれていく。

 

 

 

 

 

 

【オレの手の届く範囲で、―――誰かを、失わせてたまるか】

 

 

 

 

そして、あの男の……誰よりも信頼出来る男の声が耳に届いてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――っっ!!?」

 

 

そして、スバルの意識は覚醒する。

先ほどまでの浮遊感はもうなくなっており、自分の足で立っていた。

あまりの事に、バランスを崩してしまい、思わず倒れてしまったのが、取り合えず大丈夫だ。

 

辺りを見渡してみると、白は何処にもない。世界は色で埋め尽くされ――――軈て、目の前の光景もハッキリと映し出しはじめた。

 

ただ、理解が追い付かない。

 

 

 

 

「な、に、……が……ッ!?」

 

 

 

ただ、見たままを言うとするなら、魔女教の間者だった行商人ケティが、その竜車ごと氷漬けにされている。

 

顔部分だけは、凍らされておらず、会話する事は出来そうだ。物凄く寒そう、生きている方が拷問だと思える氷漬けの刑。

 

 

 

「残念だったな。オレには、騙し討ち(それ)は通じないんだ」

 

 

 

誰もが困惑し、混乱している中で、あの男だけは動いていた。

いや、あの男こそが、ケティを氷の中に閉じ込めた張本人、と言って良いだろう。

 

そう、ツカサだ。

 

 

 

「オレの手の届く範囲で、もう誰も傷つけさせない。誰も死なせない。殺させない。――――だから、お前はここで終わりだ。……直に、残りの指、それだけじゃなく、身体も全部そっちに逝く。先に逝って待っていろ」

 

 

 

ツカサがそういうと、ケティの顔が一瞬で凍った。

 

何が起きたのかわからないまま、彼は氷の彫像となり―――軈て、竜車共々粉雪の様にはじけ飛んだ。

 

 

人も竜車も木々も、全てが同じように粉雪の様にはじけて宙を漂う。

一見すれば、冷酷とも言える場面だが、それ以上に不可思議な事が起きたという事が皆解った様だ。

 

 

「ごめん、フェリス。……捕虜として捕まえておかなきゃいけなかったかもしれないけど」

「にゃ!? い、いや、それは構わない……っていうか、一体にゃにが起こったの!??」

 

 

人の命を救う側の人間であるフェリス。

無論、時と場合もあり、更に相手は魔女教。やりすぎるという言葉自体が無い相手。

 

だが、それでも本来ならば、ケティに関しては拘束・捕縛、色々と使い道は考えられていたのだ。

 

事前に打ち合わせをしていた事柄でもあり、それを破って始末した事をツカサは詫びたのだが……、そんな事はどうでも良い。

 

 

「今、間違いなく爆発した! みんにゃ、吹っ飛んじゃったよね!? 1回死んじゃった、って思ったくらいなのに、一体にゃにがどーにゃったら!? 白昼夢!?」

 

 

フェリスは覚えている。

ケティの邪悪な笑みと、全てを滅ぼす爆炎の閃光を。ゼロ距離でそれを受けたスバルは勿論、ヴィルヘルム、ユリウス、そしてツカサに自分。

誰もが、五体満足でいられるわけがない距離での爆発、大爆発を受けた筈だった。

アーラム村をも飲み込む勢い、小さな集落くらいなら、吹き飛ばす程の大爆発を。

 

 

「―――私も、覚えている。あの朱に染まる視界を、その熱を、覚えている。故にフェリスがいう白昼夢の類では……」

 

 

ヴィルヘルムも困惑している様だった。

 

そして、ただ一人――――知っていて、尚且つ一番早くに理解していた男がユリウスだ。

 

 

「今のは、ツカサ。君が助けてくれたのだろう?」

「!!」

 

 

確信をもってユリウスはツカサの名を出した。

フェリスも、フェリスで、説明がつかない現象を受けて、いまだ混乱の渦中だったが、それを起こした者の名を聞いて、改めて驚愕し、その名を持つ者……ツカサの方を見た。

 

確かにこの超常現象を起こした者、と言う事でその候補では頭の中で上がっていたが、それでもありえない光景だったから、早々口に出したり出来なかったのである。

 

 

「やっぱり、ユリウスには解っちゃう……かな」

 

 

ツカサは肯定する様に苦笑いをした。

 

 

「君と剣を交わした間柄だ。……あの時の違和感の正体、凡そあり得ない戯言だと思えてしまうが、最早疑う余地はなく、確信に変わった。……ツカサ。君は未来視が出来る。そして、それをある程度共有する事も出来る。……違うかい?」

「――――その通り、だよ」

 

 

ツカサは頷いて見せる。

厳密にいえば、ユリウスの解答は不正解だが、起こった結果としては、その答えもある意味正しい。

数秒先の未来を見せ、甚大なる被害が起きる事を確信。そして、それを未然に防いだ。

 

未来視を剣術に応用させれば―――と考えれば、ユリウス自身があの模擬戦で受けた違和感の正体も説明がつく。

 

 

ただ、ツカサが行っているのは、記録(セーブ)読込(ロード)の超高速使用。

その副作用? なのか、自身だけでなく、相手も認知してしまう。

だが、認知した所で直ぐに理解できるわけもなく、種を知らなければただただ混乱してしまうだけだ。

 

故に、相手をからかう(・・・・)事が出来る、と言うわけで、ツカサの中に居る、クルル(ナニカ)は、その力を揶揄者(ザ・フール)と呼んでいるのだ。

 

 

「ただ、連続使用するのは無茶だから、こういう場面に限り、だけどね」

 

 

そして、付け足しも当然怠らない。

揶揄者(ザ・フール)は、起きた後に回避する力だ。でも、ユリウスが導きだし、そしてツカサも頷いた未来視。

それは常にしておかなければ、今のような場面で回避するのは難しいだろう。

 

 

「だから、そんな大したことじゃないよ」

「い、いやいやいや、そんにゃ能力聞いたことにゃいよ! 大した事ない訳にゃいから! 破格すぎるから!」

「わわわわ、わかった! わかったから! そんな揺らさないで」

 

謙遜するツカサを見て、フェリスは大憤慨?

ツカサの襟元をもってガクガク、と前後に揺らした。

驚くのも解るし、全員にもれなく揶揄者(ザ・フール)の影響がいく事まで考慮してなかったツカサの落ち度もあるが、そろそろ離してもらいたい、とフェリスを宥めた。

 

 

 

その後、ユリウスは勿論、ヴィルヘルムからも感謝の意を伝えられて……最後に尻もちついてるスバルの元へ。

 

 

 

よくよく考えたら、共有読込(シェア・ロード)は何度も一緒に行っているが、揶揄者(ザ・フール)は初めてだったかも、と思いツカサは手を差し伸べる。

その手を見て、スバルは漸く色々と理解が追い付いた。

 

とてつもなく遠い背中を再確認すると同時に、あの白の世界でラムに怒られた事も再確認。

安易に死を考えた事もそうだ。

 

 

 

「ほら、スバル。まだまだ死ねない。ゆっくりしてられないよ」

「!! あ、ああ。だよな? (………当然だよな。そりゃ、ラムにも叱られるってもんだ。……つーか、マジギレ?)」

 

 

 

(それ)をわかっていたのか、ツカサも片目をぱちんっ、と閉じながらスバルに笑いかける。

スバルも、このまま座りっぱなしで良い訳がない。盛大にしっぺ返し食らった形にはなるが、ここからだ、と奮い立たせ、立ち上がるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――あなたたちに、精霊の祝福がありますように」

 

 

 

それは避難用の竜車に乗り込んで、アーラム村を離れるエミリアが討伐隊に残した祈りの言葉だった。

スバルも、認識阻害のローブに身を包み、その祝福を賜った。エミリアの加護、愛情の加護。なんだって出来る気分になる。

 

 

スバルは、エミリアの加護を堪能していた時、ツカサは。

 

 

「我が願いを叶えてくださっただけでなく、この命まで救って頂きました。―――返しても返しきれない恩情に、今こそ、報いましょう。この命賭して」

「ヴィルヘルムさんも必ず無事で。……恩情と言ってくれるのであれば、必ず生きて、必ず生きてまた会いましょう。―――約束です」

 

 

エミリア達の護衛についていくヴィルヘルムと約束を交わしていた。

この命を賭けてでも、とヴィルヘルムは言ってくれている。あのケティの自爆から救った後も、言われた。

 

だが、ツカサは命などいらない。

繋がった大きな輪を、その繋がりを、大きく、大きくなったその繋がりが無くなってしまう事こそが、ツカサにとって何よりの苦痛なのだから。

 

ヴィルヘルムも無論、それを知っているつもりだ。

故に、大きく頷くと、最早恒例となっている拳合わせをツカサと交わした。

 

 

「ヴィルヘルムさん」

「―――スバル殿も、ご武運を」

 

 

エミリアの加護を存分に堪能したのだろう。

スバルもヴィルヘルムの元へとやってきた。エミリア達を守る最高戦力である彼に、全てを託す。

無論、心配などしていない。

剣鬼を穿つような者がいるとすれば、それは悪魔だ。

平気で相手を騙し、背後から突き刺す、武士道からはかけ離れた悪魔。

 

 

そう、あの魔女教以外にはない。

 

 

その魔女教は、……怠惰は今日をもって滅びる。その為に自分が出来る事、なんだってする。スバルは決意を新たに持った。

 

 

「エミリアはもう大丈夫だ。ペトラ達がしっかり見ていてくれる。……1人にしないでくれる」

「うん。間違いないね」

 

 

チラリとペトラと目が合った時、彼女はとびっきりの笑顔で答えてくれた。

その笑顔を見たら、もう安心しかない。

 

 

「それにしても、人の心を弄ぶような外道になっちまったよな、オレ。空気読めない、人の心も気持ちも読めない、って言われてた頃が嘘みてぇだよ」

「ははは。そんな事ないよー、って一応言っておくね。……ラムがここに居たら、毒舌100%待ったなし、だから」

「……いなくても、言われなくてもわかっちまうよなぁ。王都ん時、散々言われたし」

 

 

スバルは、王都でのラムとのやり取りを思い返した。

惚れた女と世話になってる男の両方を困らせてしまったあの時の事。

 

更に言えば、ツカサよりも先に、ラムのツカサへのプロポーズを聞いた事も。

 

 

 

――――それを考えただけで、想像上のラムから特大のテンペストを受けたので、決して口には出さない。ツカサの前では言わない、と心に誓う。

 

 

 

「それに、スバルだけじゃないよ。オレも思った。仮に、エミリアさんが魔女教に気付いて、原因が自分だ、って分かったら……考えるまでもない。彼女なら踵を返す。間違いなく。――――でも、今は傍に子供たちがいる。家族と離れ離れになってる子供たちが」

「………ああ。間違いなねぇ。それに逆にあいつらがエミリアを引き留めてくれそう、って打算もある。………いや、マジで後で知られたら軽蔑されそうだ」

「共犯だから。オレからは言わない様にするよ。……ラムはわかんないけど」

「ラムだったら、めっちゃ言いそうだよっ! エミリアに軽蔑されるとか、イヤだから内緒にしてて、って頼んでくれよ兄弟!」

「あははは。そうだね。考えておくよ」

 

 

もう、皆が合流して、そんな楽しい事になっているのを想像できるスバルの頼もしい事。

スバル自身も、この戦では大変な役割を担っているというのに。

 

 

……散々、ラムに釘さされ、レムにも釘さされ、と大変なご身分なのに、やはり精神面はとんでもなく図太い。

 

 

 

「エミリアさんは絶対大丈夫。ヴィルヘルムさん達もいる。子供たちもいる。それに、片時も離れない精霊(パック)もいる。この場所よりも遥かに安全だ。保証するよ」

「ルグニカの英雄からの保証か。何よりも安心できる、ってな」

英雄(そこ)までくるんでしょ? スバルは。……のんびりしてらんないよ」

 

 

ニヤッ、と笑うとそれに同調するかの様にクルルも現れて、スバルの肩に乗った。

いけるいける、とうなずいている様に見える。

 

 

「果てしなすぎる道のりだよ。目指せ英雄! ガキの夢って感じなのもまぁ、辛ぇな。……でも」

 

 

直ぐ傍にいるのだ。

掛け値なしの英雄が。

 

その背中は忘れないし、追いかけ続ける―――とスバルは思っていたその時だ。

 

 

 

「――――おーー、村の連中と半魔の嬢ちゃんは出たみたいやな。うまくやったやないか」

 

 

 

野太いカララギ弁が投げかけれる。

大鉈を担いだリカードだ。その鉈には夥しい血痕が付着していた。ズボラっぽい所のあるリカードは、武器の手入れを豆にするとは思えない。

仕事を熟し、直ぐに帰ってきたのがよくわかる。

 

即ち、仕事は果たせた、と言う事なのだろう。

 

 

だが、それよりも。

 

 

「オレの可愛いエミリアたんを半魔とか呼ぶのやめろ、半犬」

「……まぁ、オレも好ましくない、かな」

 

 

ハーフエルフと半魔を混合するな、とスバルはにらみつけた。

無論、ツカサも睨みこそはしない。あまりにも根深すぎる歴史があるからだ。多少なりとも仕方がない面はあるのだ。

それは、アーラム村の皆を見てもよくわかる。

 

でも、その歴史等は知らなくても、エミリアの事は良く知っているつもりだ。

だからこそ、ツカサも不快感があったのだ。

 

スバルは、単純に惚れた女を侮蔑するような発言は許されないだけだろう。

それに、ツカサがもしも―――鬼族のラムを侮蔑されたとすれば? 間違いなくスバルと同じ態度を取る。

 

 

リカードもそれはしっかり感じ取ったようで。

 

 

「おお! なるほどなぁ、その半犬ってので分かったわぁ! そんなんで呼ばれるとか意外と屈辱的やな。勉強になったわ!」

 

 

皮肉を盛大に笑い飛ばす豪快さ。

そこには、悪意の類は一切ない、ただ侮蔑、差別の歴史、習った単語がそのまま口に出ただけ、と言うのが解る。

 

あまりにもあっさりとしていた為、さしものスバルも毒気を抜かれたようだ。

 

 

「どうだった? 魔女教の連中。オレのテンペストとユリウスのネクト、最初はラムの千里眼。全部合わさって、大体は把握できてたと思うけど」

「あのなぁ、兄ちゃん。あっこまで敵さんの事丸裸にしといて、ありえへんぞ? お嬢とちゃうけど、兄ちゃんの事、喉から手ぇ出る程欲しいってもんや」

 

 

敵の位置を大体把握。

それも、ラムの千里眼まで一緒となると……。

 

「戦場を素っ裸で闊歩しとる連中、仕留めれんか? って聞かれてるも同然や。そんなもんしくじっとったら、傭兵引退もんや」

 

 

熟せない方があり得ない、とリカードは大いに笑った。

 

 

「おお! 流石だぜリカード! んで、奴らの連絡網の件はどーだった??」

 

 

 

スバルも、先ほどのエミリア侮蔑の件は置いといて、成果についてリカードに聞く。

 

 

「そっちの兄ちゃんも、かなぁりツキ回っとるなぁ。一発や一発。こいつが一発目の奇襲で、見つけといたで」

 

 

対話鏡をスバルに投げ渡した。

ケティから奪ったソレと同種のモノだ。

 

 

「これで、奴らの連絡網は 潰れたって判断して良いかな。……もちろん、他にも複数あるかもしれない、って可能性は捨てきれないけど」

 

 

ツカサは、手を掲げて、再びテンペストを発動させる。

今回は傍にユリウスはいないから、全員に感覚共有する事は出来ないが、それだけでも十分だ。今更、ツカサのテンペストを疑問に感じる者は誰もいないから。

 

 

「動く気配は全くない。あの洞窟周辺もそう。……一切伝わってないよ」

「っしゃあ!! 計画通り、ってヤツだな」

「やな。つーか奴らは、計画的で几帳面なんやな。ハッキリそれが今回裏目ったわけや。お手柄やで」

 

 

 

 

そして、そのほんの少し後。

リカード以外の鉄の牙の面々が飛び出してきた。

 

誰一人欠けていない。間違いなく。全員がライガーにまたがり、広場を元気に駆け回る。

ライガーたちにもケガは無さそうで安心できた。

 

 

「ひゃっはー! みなごろしだー!」

「ちゃんと捕虜も取りましたです! お姉ちゃんは人聞き悪い事言わないですよ」

 

 

 

微笑ましい―――とは言えない血なまぐさい。

容姿からはかけ離れた会話が飛び交う姉弟たち。あの2人も無事な事に安堵を覚える。

 

 

 

「捕虜……大丈夫? それ」

「ああ、それだ。オレも思った! オレらん時、自滅カクゴ! 死ぬ間際の最終攻撃(ファイナル・ディスティネーション)かけてきやがったヤツがいたんだ」

「ふぁいな、あ?」

「大爆発しようとしたんだ。道連れ狙ってた。……そんな連中だから、危険は無いかな、って。鉄の牙の皆を疑ってたりはしないけど、ちょっとね」

 

 

目の前で仲間たちが吹き飛んだ光景を、一度目撃しているツカサにとっては、そう危惧するのも仕方がない事だ。

 

だが、そんな心配を他所に、リカードは笑って言う。

 

 

「大将らが、そない不安しとったらあかんやろ! 大丈夫や。あー、連れてきたら解るか。おーい、ちょい、さっきの奴連れてきてんか!」

 

 

リカードの大声に反応して――――いや、反応するよりも前から、既にここに連れてくる予定だったのか、それはやってきた。

 

それは丸太に縄で縛られた1人の人間。

 

 

「~~~~~っ!」

 

 

その人物を見て……唖然とするのはツカサだ。無論、スバルも同じく。

しっかり縛られて、丸太に括られ、今にも火をくべて、炙られそうな……そんな男。

 

 

「魔女教のねぐらの奥におってん。たぶん、運悪く連中に取っ捕まっとっただけや思ぅねんけど――――」

「リカード、ありがとう!」

「お、おうっ!?」

 

 

空いた方の手を、ギュっ、と握りしめ、ぶんぶん上下に振るツカサ。

ツカサの、その慌てた行動は 予想してなかったようで、リカードは面食らっていた様だ。

 

ツカサは、直ぐに離すと、捕虜の方へと駆け出した。

 

 

 

「大丈夫、オレが保証する。彼は友達だ」

 

 

 

ライガーたちを含めて、鉄の牙の面々に深々と頭を下げた。

 

 

 

「皆! 友達を、助けてくれて本当にありがとう!」

「ふぐぅ~~~~~~、つか、つかささぁぁぁぁぁぁぁんっっっっ!」

 

 

 

感慨極まったのか、丸太に括られたままで大泣きを始めたのは、オットー・スーウェン。

 

前回のループでは、メイザース領土にまで共にきて、直ぐに分かれた。

無事である事は疑ってなかったが、それでも心配だった。

 

 

今回は、何をどう行動したのか、あの魔女教の連中につかまっていた様だ。

 

 

 

「だーーーーーっはっはっはっは! お前、つかまってたのかよ、オットー! あいつらに捕まって無事とか、運が良いのか悪いのか! いやー、アレだ! 悪運強いよなぁ、互いに!」

「いだ、いだだ、痛い痛い!! 何すんですか、ナツキさんっっ!!」

 

 

その後、スバルからも、バシバシバシバシ、と激励に激励をされて―――――、そのスバルの激励があまりにも長すぎて、痛みを訴えるオットー。何せ身動きとれない状態なのだから。

おまけに、なかなか拘束を解いてくれない。

 

バシバシ、と叩く強さが結構重く感じてしまうのは、それだけスバルも心配していたのだ、と言う事がオットーにも伝わってくる。

 

 

だが、それはそれ、これはこれだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「わか、わかり、わかりましたから! 早くほどいてくれませんかねーーーーー!!!?」

 

 


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