Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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ペテさん会いたかったぁ(⋈◍>◡<◍)。✧♡
そして、サヨナラw って感じでしょーかな。


怠惰⑥

 

スバルからの発案だった。

 

当初は、直ぐに臨戦態勢に入る。あまり時間をかける必要はなく、即座に殲滅する。

魔女教大罪司教……即ち、魔女教の幹部連中を生け捕りなどと、考えた事も無い面々からすれば、即座に滅する事が盤上一致だった筈なのだが、スバルだけは違った。

 

 

【エミリアの為にも。……今後、連中が上等かましてくる事を考えても、付け狙う理由を吐かせたい】

 

 

試練と称してエミリアを襲っているのは解る。

だが、その試練とはいったい何なのか? 

 

連中に話が通じないのはこれまでで、よく解る事で、性質が悪い事に死を一切恐れてない配下を常に従えているから、直ぐ自爆・自害してくる。

だから、知りたかったとしても、実際無理ではないか? と言う意見も多々あった。

 

 

だが、スバルの言う事も最もであり、必要な事だと判断したツカサは賛成し、問題ない事も皆に伝えた。

 

 

【スバルは、魔獣に好かれる体質みたいだから、魔女教の連中も向こうから寄ってくるんだ。前は連れてかれそうになっただけだったし、即座に殺されるって心配はなさそうだから、話す分は大丈夫】

 

 

魔獣やら男、それもイカれた連中に好かれてうれしくない! 好かれるのはエミリアやレムだけで十分! と言うスバルの慟哭が場に響いたが、ツカサが問題ない、と言うのなら誰もが問題ない、と思ってくれた。

 

改めて、皆に信頼されている事が嬉しくなるというものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、作戦は伝えた通りに。雌雄を決する時は上空に合図送るから、それまでに殲滅してくれてると助かる、かな? まぁ、待つのも全然問題ないけど、あんまし対面したくない相手だから」

「やから何べんも言うとるやろ? 敵さんの位置がモロバレ。万全での奇襲。これ出来んとか、どんな傭兵やねん。その辺は信頼してくれや」

「信頼してない訳ないじゃん。――――一緒に白鯨倒した間柄なんだよ?」

「ははっ、なんやむず痒ぅなってくんな、兄ちゃん!」

 

 

それは、スバルが狂気の男、ペテルギウスと対面を果たす少しばかり前の事。

ペテルギウスからある程度の情報を得る為の作戦を皆に伝え、改めて傭兵団、鉄の牙、そして討伐隊の皆に説明をした。

 

テンペストとネクトのコンボで、改めて敵の位置を再確認させた上での殲滅作戦だ。

リカードが言う様に、この条件下での敗北はありえない。敵もそれなりの強者がいるようだが、何ら問題なし。

 

 

「ミミもすごーー頑張る! おにぃに、ナデナデしてもらう為、頑張る!!」

「あ、あははは。そのくらいなら何時でも大丈夫なんだけど」

「頑張ったごほーびが一番おいしく感じるの! だから、おにぃ!」

 

 

ミミは、ビッッ! と親指を立てて前に出した。

 

 

「まじょきょー、幹部、ぶっ倒して来てネ! やっちゃったら、もっともっと惚れちゃうゾ!」

「鉄の牙、副団長からの熱烈なアピール、ほんと光栄極まれり、だよミミ。――――任せといて」

 

 

同じく親指を立ててミミに答える。

そして、直ぐ傍に控えているティビーの方を見て。

 

 

「ティビーも宜しく頼むよ。ヘータローの分も。上手くいった暁には、報酬の件、ロズワールさんに直訴するから、期待してていいから。もちろん、自分達の命は最優先してね?」

「愚問なのです。いざとなったらお姉ちゃん担いで離脱するですから。――――でも、とても気合の入る魅力的なお話を聞けたのです。僕は、実際にこの目で見て判断する派。お兄さんの実力を目の当たりにした訳では無いですが、この探索能力や他の皆評価を聞いても、もう疑ってないのです」

 

 

ティビーは、ツカサに頭を下げた。

 

 

「後ろは任せるです! 期待に応えてこその【鉄の牙】なのですから!」

「ん。すごー、期待してる」

「あー、おにぃがミミの真似した! してくれた! うおーーー、ティビー、ミミすごー気合入った!!」

 

 

ミミが大きく手を回す、ミミのこの士気? が他の団員達も士気が連鎖していく。

 

 

「行くですよ、お姉ちゃん」

「あいあーーい!」

 

 

そう言うと獣耳姉弟は去っていった。

リカードはやれやれ、としながらも大鉈を担ぐ手に力が入っているようだ。

即ち、やる気ゲージはMAXだという事。

 

 

「銭、たんまり貰える未来が、こないハッキリ見える仕事は久しぶりや。――――稼がせてもらうで、兄ちゃん」

「よろしく!」

 

 

獣人の大きな拳とツカサの拳が重なり、互いに勝利を約束し合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

万全な体勢で、静かにそれでいて確実にペテルギウスの指先を狩っていく。

 

スバルも事前に、それを確認しており、ちょっとした連絡係にしている半透明化クルルを通じて、ツカサにも伝えていた。

 

 

そして、今―――かの狂人と対面。

 

 

「おお、良き日デス、素晴らしき日デス! まさか試練のその日に、こうして新たな愛の寵児を迎えられようとは! 感涙、感動、感激でワタシの胸は張り裂ける寸前なのデス!!」

 

 

盛大に唾を飛ばしながら喚き続ける。

一体この痩躯な身体の何処にそんな力があるのか……、本当の意味で初めて会った時のあの光景、部下の顔を握りつぶして見せたあの光景がスバルの脳裏によみがえり、イヤな汗が出てきたが、お構いない。

 

ただただ、作戦通りに決行するだけだから。

 

 

 

「――――お初にお目にかかります、大罪司教様!」

 

 

 

初めて出会った時。

お世辞にも、ペテルギウスが言うような良き出会いではなかった。

 

他人には見えない不可視の妙な手で引きずり回された挙句に、トラウマレベルの光景を見せつけられたのだ。

だから、今回もある程度はカクゴしていた。速攻で戦闘開始、となり情報も何も得られない事をカクゴしていた。

 

だが、それこそ気味が悪いくらいに大歓迎っぷりに拍子抜けしてしまう、と言うものだ。

 

 

後は、自分の演技力、大俳優ナツキ・スバルを演じるだけだ。

 

 

 

「此度の試練、直前での合流になり、誠にお恥ずかしい次第! ですが、この身、この魂! 何卒、教徒の末席に、司教様の【指先】に加えて頂きたく、馳せ参じました!」

 

 

いっそ大袈裟にする勢い。

と言うより、ペテルギウス自身が大袈裟極まってる対応をしているから、何ら違和感がない。新人だろうと中途採用だろうと、配下に加わり、魔女や魔女教に尽くす~一面を上っ面だけでも見せれば、この狂人は狂喜乱舞なのだから。

 

―――まぁ、ここに来る時点で、並みの人間はすでに狂気の分類に入っている事間違いなく、上っ面だけの付き合いなど出来る筈もないだろうが。

 

今回のスバルの一番の幸運。――――あまり、幸運と呼んで良いのかわからないが、やはり自身の身体に深く纏わりついている《魔女の残り香》の存在だろう。

これがあるからこそ、ある程度正気を保っていられるのだ、と自覚している。

 

力なくとも、与えられた理由が解らず意味不明だとしても、自分でも力になれる、エミリアの為に動ける。……親友であり兄弟であり、心の友でもある兄弟と共に戦える。

 

ペテルギウス程ではないが、スバルにとっても歓喜の瞬間だと言える。

 

 

「――――――おぉ、おおぉぉ!! なんと、なんとなんとなんと!! 初々しく情熱的な信仰なのデスか!!」

 

 

 

そう、ペテルギウス程ではない。

これは真似できない。……とスバルに一瞬で思わせる程の狂乱ぶりだった。

 

全身を震わせて、感激に涙し、喜びをあらわにする。いろんな性質に目を瞑れば、ひょっとしたら理想的な上司トップクラスに入るのかもしれない。

 

いろんな、たくさん、ものすごく、目を瞑れば、だが。

 

 

「なんと澄んだ目で、その寵愛を一身に浴び、愛を叫ぶ―――。なんとなんと、これほどの信徒を、ワタシはこれまで見逃してきたというのですか!? これほど、わが身の怠惰を呪った事は記憶にないのデス! アナタの、アナタ程の! 敬虔な愛の寵児を!! 見逃した我が身の不徳を! どうか、我が怠惰を許してほしいのデス!!」

 

 

狂乱が過ぎて、自傷行為にも走る。

出会った時も、爪を全部食いちぎって血涙流していたな、とまた嫌な記憶が蘇った。

爪の痛みは、古来から拷問の類で利用されていて、神経がかなり通っていて、滅茶苦茶激痛な筈なのだが、狂喜狂乱のままにしてるペテルギウスを見ていると、自分の方が痛くなってしまう。

 

何せ、今回は岩肌に躊躇いなく何度も何度も額を打ち付けているのだから。

頭突き、岩と頭、どっちの強いか勝負でもしているというのか、これでもか、と打ち付けている。

 

ペテルギウスが異常者である事は重々承知しているし、何があっても驚かないだけの心構えはしている……が、流石に自傷行為が行き過ぎて死なれでもしたら困る。

指先が死んでる事に対して、気づいた様子はないが、それでもまだ死んでいない指先に乗り移りでもされれば、皆が危ない。

ペテルギウスの攻撃手段(見えざる手)を看破できる人材のすべてがここに集中しているのだから。

 

 

「おやめください! 司教様! そのような行い、魔女様もお喜びになりません!」

「嗚呼、しかし、しかししかししかししかししかしぃぃぃっ! ワタシは、自らの怠惰を! 大罪を! 愛に報いれぬ不実を!! 他に贖う術を持たないのデス!!」

「そんなことはありません! 魔女様ならば、愛すべき信徒が傷つく姿より、寵愛に報いようとする懸命な在り方に、試練を遂行する意思に、その全てに対し、お喜びになるはず! 貴方様を失ってしまう事こそが、一番の悲劇だと感じるはず!」

 

 

今日ほど口から出まかせを言った事はないな―――、とスバルは内心毒付く。

だが、思いのほか効果はあった様だ。

ペテルギウスは自傷行為をピタリとやめて、大きく目を見開いてこちら側を見てきたから。

 

視線が合う、大きく頷く、(上っ面な)意思が伝わる。実に嬉しくない。エミリア、レム、2人に取っておきたいモノばかりだ。

 

 

そう毒づいている事は露知らず、ペテルギウスは憑き物の落ちたような顔で涙を流し……。

 

 

「―――――すべて、アナタのおっしゃる通りデス」

 

 

異常に穏やかに言われた直後―――最悪に見舞われる。

 

 

「ッ~~~」

 

 

なんとなんと、ペテルギウスに強く抱きしめられたからだ。

野郎に抱きしめられて喜ぶ気は無い。100歩譲ってフェリスならまだ良い。

そしてそして、変な意味ではないが、番外編的に言えばすべて乗り越えた先の男同士の友情に花咲かせる~と言う意味でのツカサとのスキンシップだけが許される。変な意味ではないが。

 

このペテルギウスに対しては、生理的嫌悪感しかない。思わず合図(・・)を送りたくなる衝動に苛まれた。

そんな思考は通じないのがせめてもの救いか。ペテルギウスはスバルの心情には一切気付く様子なく、並みだを流しながら凄絶に嗤った。

 

 

「嗚呼!! ワタシは間違っていた! 誤っていた! そう、そうなのデス!! そう、試練! 試練! 今のワタシに求められているのは、自罰でも自裁でも自決でもなく、試練なのデス!! それらを忘れて自傷の悦に浸るなど、なんたる怠惰!! アナタの言葉で目が覚めたのデス!! 感謝! 感謝ぁぁ!!」

 

 

思う存分この野郎にボディブローをかましてやりたい。

クルルの風を借りて、風神剣ならぬ、風神拳で地の果てまで吹っ飛ばしてやりたい。

 

だが、生憎自分にはクルルやツカサの魔法を借りたとしても、そんな威力は無いし、出来ない。運がよかったな、ペテルギウス、と内心何度目かの毒を吐く。

 

 

 

「怠惰なるワタシに価値など皆無!! 勤勉であることこそがこの世で最も尊き事! 怠惰なるワタシはこの世で最も唾棄すべき悪徳! ならばワタシは勤勉さを以て、報いる事、そう、この己の宿業である怠惰との決別! そうデス、そうなのデス! あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、愛に、愛に、愛愛愛愛愛愛愛愛あいあいあいあいあいあいあいあいあぃぃぃぃぃぃぃにぃぃぃぃぃぃ」

 

 

 

言論に一貫性がない。

元より、そんなもの求めていないが、それにして無茶苦茶だ。清々しいとある意味思う。

この支離滅裂どころか壊滅状態な論理、一体何処に泣き所があるのか、狂ってしまっている涙腺。次には笑い出して、怠惰を捨てるという。

怠惰担当とはそう簡単に捨てれるものなのか? と深く考えない様にする。

 

頑張ってする。

 

 

狂喜的な人間に接していたら、こちらの思考回路がどうにかなってしまいそうだが、今のスバルにはそれは無い。皆無だ。

何なら何度でも頭の中で毒づきながら会話を続ける事だって出来る。……無論、武力に物を言わせるような肉弾戦ではなく、悪口合戦なら、の話だが。

 

 

 

でも、今重要なのはその試練だ。もう何時でも良いという合図(・・)もその手の中で示している。

後は自分が試練を聞き出すだけだ。

 

 

 

「司教様。試練の話をしていただけませんか?」

 

 

ここからが核心であり、最も慎重に言葉を選ぶべきポイント。今の今まではいわばウォーミングアップでありお遊びだ。

 

 

ペテルギウスは、怠惰は、――――魔女教は試練と称してエミリアに何をしようとしているのか。

かの規模が解らない今、エミリアとの因縁が続く可能性は大いにある。

だからこそ、聞いておかなければならない。他ならぬ本人の口から。

 

 

「司教様との合流にあたり、是非、此度の試練のことをお聞かせ願いたいのです」

「試練――――、そう、試練デス! 試練なのデス! 試練を執り行い、試さねば! 此度の半魔が器に足るか、魔女を降ろすに足るか、試さなければならないのデス!!」

 

 

裏返った奇声、生臭い息。すべてに嫌悪と唾棄を覚える。

ついに核心部分をつく事が出来た……が、想像の何倍もの嫌悪に思わず立ち眩みをしてしまうが、何とか堪えた。

 

 

「魔女を降ろす……器?」

「合えば擁し! 合わねば排し! 半魔として生を受けし、その器! 魔女に相応しからんや否や、魔女の愛を封ずるに能うか否か! 試練を以て試すの、デス!!」

 

 

目的が、これでハッキリした。

相変わらずの無茶苦茶さだが、言葉の符号を合わせていけば、見えてくる。

 

 

「試練の結果、器に相応しいなら、その体に魔女を降ろす……」

「いずれ来る運命の日に、魔女はこの世に再誕せり――――デス! その瞬間に立ち会うために! そのために【指先】と共に万全を期す。……それがワタシの愛なのデス!」

 

 

言い切った、出し切った、感無量。

と言わんばかりの晴れ晴れとした顔、感涙するペテルギウス。自分の世界でこの上なく幸福に時を過ごしている事だろう。

 

心底吐き気がする。

毒を考えるのも思考するのもやめた。ただただ胸糞悪い。

 

 

つまりアレだ。

こいつは、こいつらは、あれほどの残虐行為を行い、あれほどの虐殺をもたらし、皆を苦しめ、世界をも巻き込み――――。

 

 

「エミリア自身には、何の価値も見てないのか」

 

 

魔女と言う不確かな存在。何百年も前の厄災であり、見たこと等あるはずもない連中が、想像上の魔女を勝手に信仰し、数多の悲しみと憎しみを生み出し続けた。

 

何よりも、エミリアを全く見てない。

 

彼女の存在に心を揺すられるナツキ・スバルにとっても耐え難い屈辱だ。

 

 

 

「――――ここで終わりだ、怪物め」

 

 

 

口に出すつもりはなかった。

だが、出てしまった。

止められなかった。

 

他力本願ゆえに、甘えて偉そうに胡坐をかいて、そんなのは本当と書いてマジと呼んで……本当(マジ)で恥知らずだ。

 

背中を、英雄を目指すと愛してくれる人に誓った以上、そうなりたくはない。だからこそ、負担になるような真似だけは回避するつもりだった……が、今回に限っては無理だった。

 

後で、謝罪の意を伝えておこう、と思う。……無論、伝えられる側は、何も思わない所か同調して一緒に怒ってくれそうだが。

 

兎も角、ペテルギウスには全く聞こえていない、耳に入っていないようなので、続ける。

 

 

「………司教様、ご高説拝聴いたしました。魔女教の理念、聞きしに勝るそのご覚悟、まさに感服の至りです。此度の試練、必ずや成し遂げましょう」

「おお、おおおぉぉぉぉ!!! やはり、やはりアナタは素晴らしい! そうデス! そうなのデス! 我々は一丸となり、一心不乱にこの身を投じて本懐に臨むのデス! 寵愛を受けたその日から、ワタシという存在は全霊を以て愛に報いるだけの塵芥――――……ああ、嗚呼、サテラ! アナタのモノなのデス!」

 

 

そのサテラ、魔女がこの目の前の狂人の事が眼中にないと悟ったら一体どんな顔をするだろうか?

そっち方面には非常に興味を持てるが、聞くべき事はもう聞いた。

 

 

 

「―――福音書に記されし、言葉が愛を物語るすべて! ワタシの未来を導くのデス!! ゆえにこそ、ここにすべてが……、ワタシのすべてが在る、全てが在るのデス!」

 

 

何処から取り出したのか、大きく掲げた黒い書。

ページを凄い勢いでめくり、口の端では泡を浮かべてまた嗤う。

 

覚えがある。この福音書と言う代物。

これを奪い、解析をすれば―――より核心に踏み込む事が出来るだろう。

 

 

「―――福音の、提示を」

 

 

 

音を立てて、福音書を閉じたペテルギウス。

魔女教への入門書を見せろ、と言う事だろう。

 

 

ある日送られ、やがて魅入られ、狂人となる。それまでの道筋を見せろ、と。

 

 

見せるのは一つしかない。

 

 

 

「――――それ、は?」

「見ての通り、《ミーティア》でございますよ、司教様。身に覚えがあるのでは? ……指先の一人、ケティが持っていたモノでもありますしねぇ」

 

 

ペテルギウスは、今回に限ってはスバルと同じ様に意味が解らない、と顔を傾ける。首の骨が折れんばかりの勢いと角度で。

確かに見覚えはある。ケティの名も寵愛を受けし信徒だ。知らない訳がない。

 

だが、それらをかき消す程の驚きが眼前で起こる。

自分自身だけを移す鏡だったのだが、やがて光を放ち、そこから先を映し出したのだ。

 

 

【おーー、映った映った! わぁ、聞いてた以上に怖い顔が映った!】

 

 

鏡を通して聞こえてきたのは、いかにも状況にそぐわない可憐な声。

スバルからその顔は見えないが、ペテルギウスにはハッキリ見えている事だろう。

 

意味が解らない、流石のペテルギウスも、これ以上沈黙をし続ける事は無い様だ。

 

 

 

「えええええ、アナタは、いいえ、アナタ方は何を!!」

【っていうか、スバルきゅん、おっそーーーい、もうとっくに始末しちゃって暇弄ばしてたヨ~~。数にして10本。指チョッキーーン、ってなわけで。――――――トラトラトラ!】

「――――ッッ!!」

 

 

無理解、と思ったその時だ。更にこの上をいく驚愕な事態が起きたのは。

 

 

 

辺りに響く鳴動。

震天動地ともいえるべき現象が湧き起こり、スバルたちのいる場を揺らす。

 

 

「うおおおっ、わ、わかって、わかっていたっちゃわかっていたんだが」

 

 

何とか踏ん張って転がるのを阻止。

そしてペテルギウスもある意味流石だと言えるか、無様に転んだりはしなかった。

 

 

軈て、この森の木々よりも遥かに高い壁が四方八方、円形状に回りを囲いだした。

空でも飛べない限り、この場から逃げ出す事は出来ない光景。

 

 

だが、一部だけは空いている。

 

 

 

 

 

「「――――――――!!!」」

 

 

 

 

 

此度の戦い。必ず参戦する、と意気込んでいた2頭の竜がまさに捨て身のタックルをペテルギウスにかました。

 

 

 

「ガッ、ピョッッ!??」

 

 

まず一頭がペテルギウスを跳ね上げ、もう一頭が宙にいる状態のペテルギウスにダイビングヘッドバットを打ちかます。

 

変な奇声を上げて吹き飛ぶペテルギウスを見た。

その見事な連携のとれた地竜たちは、揃って咆哮を天へと上げた。

 

 

それが本戦開戦の合図。

 

 

 

「我、奇襲ニ成功セリ―――ってな」

「十分だ。十分。見事な演技で、よくぞ、ここまで我慢したよスバル。ほんと凄い」

「褒められる様な事じゃねーよ。オレが出来るのはこのくらい。連中に好かれちまう体臭と小賢しい悪知恵。……兄弟並みに強けりゃ、エミリアの事聞いた時点で締め上げて、はい終わり、って格好よくいく感じ、なんだけどな」

 

 

 

地の囲いを生み出した張本人が、空から降りてきた。

パチン、と手を合わせて合流を果たす。

 

これでもう、ペテルギウスには用はない。

いや、もう最初から無かったと言って良い。

 

ペテルギウスも魔女教も、理解が一切できない全世界共通の敵だという事を再認識したまでだ。

 

 

 

 

「は、はあ?」

「何が起きたか、わからないようだから手短に説明する、ペテルギウス・ロマネコンティ」

 

 

 

 

 

大地を踏みしめる。

それが呼応したかの様に周囲には白い輝く霧が発生した。

 

そして、上空には黒い竜巻。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、逃げられない。逃がさない」

 

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