Re:ゼロから苦しむ異世界生活 作:リゼロ良し
取り合えずそう言う事デス‼ヾ(o´∀`o)ノワァーィ♪
ツカサにそう言われた途端に、スバルの中で熱く滾り、燃え上がるナニカ。
狂人だろうと何だろうと、何でも来い! と両足でガッチリ地面の感触を確認し、踏ん張る形で、
図々しくも、他人の身体に勝手にお邪魔してくる異様で異質で、不快な存在。
胸の奥深く、心臓とはまた違う部分に食い込み、ねじ込み、肉体の制御権を強奪する目には見えない寄生体。
朽ち果てかけている肉体を捨てた寄生体ペテルギウスの甲高くひび割れた高笑いが、スバルの脳に響く。
「脳が、ふるっ、える!! や、は、りぃぃぃぃ!! この肉体はワタシを収める器として機能、したの、デス! 否、否否否否否!! これ程馴染むとは、想像以上! 何十年ぶりの事かぁぁぁ!」
スバルの身体で狂気狂乱を体現するペテルギウス。
元々スバルも結構奇行が目立つ部分があるから、割と違和感がないと思うのは、ツカサだけじゃないだろう。
きっとユリウスも同じ感想を持っている筈だ。
――――と、どうでも良い感想を頭に思い浮かべている間にも、ペテルギウスの舞台は止まらない。
「さぁ、さぁさぁさぁさぁさぁさぁぁぁ!! どうデス!? どうデスか!? ワタシの道を如何に塞ごうとも! アナタにコレを防ぐ術がありますか!? 否、否否否否否否否否!! あるわけがないのデス! その様な術、ある訳がないのデス!! 既に肉体は我が制御下! あぁ、あぁぁぁぁ、嗚呼、怠惰、怠惰デスね!」
狂気狂乱を続けるスバル・ペテルギウス。
そんな彼に対して向けられる視線。……それはペテルギウスが想像していた、いや、願っていた代物ではない。
絶望に染まる顔ではない。
八方ふさがりで、如何に巨大な力を持っていたとしても、この状況下では、友である筈のスバルを犠牲にする以外ない。
仲間意識が高い事は、ペテルギウスにも十分解る事。
そうでなければ、村を救う為にここまでの行動をとったりはしない筈だ。
「―――自信があるというのに、なぜそうも不安そうに喜ぶんだ? 今のお前……姿形はスバルのモノだが、今のお前は、最初の時のソレとは全く違う。上辺だけで薄っぺらだ」
「ハ?」
ペテルギウスは、何を言っているかわからないと目を見開いた。
絶望に染まってない。なぜか?なぜか?なぜか?
考えうる答えは多くはない。
スバルを犠牲にした上で滅する。人一人を犠牲にして、魔女教幹部を討てるというのなら、正直安いものだ、と考える者もこの世界には多いだろう。
なぜなら、ペテルギウスが魔女教大罪司教【怠惰】担当として、幾星霜……試練を世界に求め、齎し続け、どれ程の人間がその身勝手な大義名分で命を落としたのか、数えきれない。
それは、かの三大魔獣の白鯨にも匹敵すると言っても良いから。
「確かに。私もそう思う。不安、無理にでも声を出そうとしている印象だ」
ユリウスもツカサが言う事を肯定した。
2人とも、犠牲を是とする人間じゃない筈だ。その筈なのだ。
なぜ、なぜ――――……。
「アナタは、アナタ方は、この身体を、ワタシが支配しているとは言え、友人の身体なのデス。それを、斬る―――と言うのデスかな? 斬れるというのデスか!?」
不安の裏返し。
間違いない、と核心出来る程、ペテルギウスは焦りに焦っている。
スバルの身体の身体機能を全て把握したとでも言うのか、その額には脂汗がにじみ出ており、膝は笑っている様にも見える。
「いいや。やらないよ」
「うむ」
「――――ハァ!?」
そしてまた、想定外の返答。
薄く笑みを浮かべたまま、ツカサもユリウスもそれぞれの得物を構えるのを止めている。
攻撃をしない、と言っているのだ。
「ならば、ならばならばならばならばならばならばぁぁぁ!! アナタ方はいったい何を考えてるというのデス!?」
再び甲高く、耳の奥に響く大奇声を放つ。
得体にしれない悪寒に苛まれ始めて数秒後。
「はっ!! 怖いのかよ! あんだけ色々やってきたお前が今更!?」
【何!?】
ペテルギウスではない。
紛れもなく、間違いなく、スバル自身の声がその身体から出てきたのだ。
【アナタ、アナタまで、まさか、まさかここまで見越していたというのデスか!?】
「おうよ。こっからがオレの見せ場、オレだけが出来る見せ場だ」
【~~~~~ッッ!! アナタ方はいったい何なのデスか!! ワタシが、ワタシがアナタ方に何をした!? なぜ、なぜ立ちはだかるばかりか、ワタシをここまでェ!! 筋違いの逆恨み、見当違いも甚だしいのデス!!】
己が何をする為にこの地へと赴いたのか、それが齎す負の連鎖は? なぜそう簡単な事が理解できないのだろう。
いや、ペテルギウスにとっては、まだ起こっていない未来の事。エミリアに試練を課し、村人を供物として捧げ、それを実行できた時こそ、正当性が出るというモノの筈なのに、全て一足飛び足でやられてきている。
これではまるで、未来を――――。
「見せ場だー、って気合入れてやったつもりなんだが、マジで拍子抜けするほど、楽に出てこれたよ。……まぁ、だからと言って腹割って話したりとかはしねぇけどな。なんせ、相手人間じゃねーし」
【――――! アナタ、アナタはいったい何を!?】
「いや、バレてないとでも思ったのか? ぜーんぶお前の種は割れてんだ。そう上で、兄弟は最初にこういったんだよ。《逃げられない、逃がさない》ってな」
スバルは続けて話した。
ペテルギウスと言う存在について。単なる憑依する寄生体で収まるモノじゃないという事を。
「まっ、実を言うとあっちの可愛らしいモフモフの
【―――――!!!】
高らかに正体を暴くスバルの声。
ペテルギウスが当初から感じていた恐怖とはまた違った所から、違った角度から身体を抉り、貫かれた。
その【痛み】は、これまで以上のモノ。自傷行為をし続け、今回は全身くまなくボロボロにされた【痛み】を遥かに超える程のモノだった。
「こっちの精霊サマの方が大分スゲーんだぜ? なんせ全知全能? とか言っちゃってくれてる上に、もふっもふのさいっこうの毛並みなんだからよ」
【ダマレ! ダマレダマレダマレダマレダマレ!! このワタシを精霊などと! そんな下等な存在と一緒にするなッ!!】
「おーおー、ダブルスコアどころか、トリプルスコアのボロ負けだよお前なんか。精霊の格付けは完了。下等はお前なんだっつーの。いや、精霊っつーか、お前邪霊だろ」
普段の仕草を見ていれば、精霊などと言う神々しい響き――――だが、パックやらベアトリスやらも精霊だから、一概に言えない所が少々引っかかるが、兎にも角にも、邪が似合う、邪悪が似合う魔女教所属の精霊を、精霊などとは確かに呼びたくない。
スバルが言う様に、邪霊、邪精霊だ。
【このワタシは! 精霊を超越した存在なのデス!! 寵愛によって、曖昧なる自意識を脱却し、目的を獲得した選ばれし存在なのデス!! 愛が、ワタシを変えた! 全ては魔女の為、魔女のために―――――!!】
「おーい、スバルー。見せ場で、相手を揶揄って楽しんでる所申し訳ないんだけど――――そろそろ本当に耳障りになってきたよ」
「うぉ……、中身が別モンでもオレの声を耳障り……、兄弟にそう言われると辛いぜ」
以前は、ペテルギウスに憑依しかけられた時。相応の苦悶や苦痛、全身全霊を賭して、どうにか身体の支配権を奪い返そうと抗いに抗い、最後は話す事だけ出来る様になった。
だが、今のスバルはどうだろう?
精神を乗っ取られかけても、全く怖気づく所か、ペテルギウスを精神的に追い詰めていっているではないか。
「仕様がねぇな。……喜べよ、ペテルギウス。オレからの餞だ。最後に合わせてやる」
【ッ!! 何を! 誰と!! 一体何の話を―――!!】
「―――お待ちかねの魔女様に、だ」
求めてやまない、愛してやまない魔女に合わせるとスバルは言ったのだ。
その様な真似出来る訳が、と普段ならばペテルギウスも更に苛烈に激昂する事だろうが、この時ばかりはそうはいかない。
漂白された狂気の思考が完全に停止するのを感じた後―――スバルは自らその瞬間を引き寄せる。
「―――オレは、【死に戻り】をして」
禁忌の言葉。
ペテルギウスから抗う事は正直楽勝の気分だったが、これはいつまでも慣れる事はない。
スバルの中のトラウマレベルNo.1に匹敵する……と言っても良いくらいのモノだから。
以前ユリウスの滅多打ちがNo.2だと言ってしまったが、実の所その少し上はいる。言うならNo.1,5が。
世界は色を失い、全ての動きが止まる。
軈て、何よりも深い闇を背負って、それはスバルを迎えにやってきた。
【うんうん、独占欲の強い子みたいだね~? 君との秘密を知ろうとした人、許さないっ! って感じだったよ】
スバルの中に住まう闇―――魔女。
それをまるで可愛いらしい娘、と言わんばかりに称するクルル(ナニカ)の言葉だ。
秘密を話しただけで、誰かが知ろうとしただけで、許さないと心臓を潰しにかかる。
それも、聞けばその魔手はスバル自身だけでなく、他者にまで及ぶとの事だ。
そんな苛烈で激烈で、激熱な愛を身に纏ってる存在がいる中に――――異物が混入したらどうなるか?
一緒に居れる空間に、異物が入り込んだらどうなるか?
憑依の対応策。
速攻で、その解決策を仕込んでくれた、あの存在に、この時ばかりは感謝だ。
ツカサは勿論、スバル自身も一瞬感謝して、直ぐに気を改めたが。
何せ、
【――――私を、利用、した?】
【そんな事ないよ~♪ でもさ? 彼の身体を狙ってる男がいるんだよ? 他でもない可愛い君の手で、やっちゃう方がよくない? って思っただけ】
【―――――そう。なら、良い】
いつの間にか始まった全てが止まった世界での会話。
今回ばかりは勝手が違う様だ。
―――他人の中に一体何人お邪魔してんだよ、ばかやろーーー!
と、盛大に抗議してやりたい気分になってくるが、生憎この世界で声を上げたりは出来ない。
【―――どうして? どうしてあなたは、私に、ここまで 良くしてくれる?】
【ん? あっはは。良くしてるつもりは無いんだけど、そだね~。うん♪ その方が―――――楽しいからだよ】
【そう―――。じゃあ……、私を……●●●てくれる……?】
【それは駄目。そこには干渉しません。楽しみが減っちゃう】
何か、重要な話をしている様な気がしたが……、肝心な部分が聞き取れない。
そんな時だ。
自分以上に、放っておかれた異物……ペテルギウスの声が聞こえてきた気がしたのは。
【これ――――は、いったい……? あなたは、あなた様が、我が愛を……】
【うるさい】
だが、その声は速攻で消されてしまう。
【この場所に、これ以上入って来ないで】
ほのかにだが、確かに憤りをその声に感じた。
怒りにも。つい先ほどまで悠長にお茶会みたいにお話をしていたというのい、一瞬でそれは姿を変えた。
怒りと憎しみと呪い。
入り混じりながら、それらは一点に迫る。
当然、招かれざる者――――ペテルギウスだ。
決して認められる事はなく、愛される事も当然ない。
今確実に、拒絶をされた。その信仰を捧げる事すら許されない。
【―――消えてしまえ】
一瞬だ。
その声がした途端に、ペテルギウスの存在が掻き消えた。
視界がハッキリ見えている訳ではないというのに、確かに感じた。
【ふふ。凄く愛されてるね~~? 君も♪ まぁ、これ以上は野暮って事で】
もう一つの存在は、いつの間に戦いの場に来たのか、いつの間にこの世界に入り込んだのか、様々な疑問を全て置き去りに、勝手にやってきて勝手に出て行った。
確かに、戦っている時は、
そして、とうとう二人きり。
ただ静かになった世界。
漆黒の闇が確かに自身の身体に、魂に語りかける。
愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる
愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる
愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる
愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる
ただただ無心に、愛を囁き続けるのだった。
「――――――あぁぁがぁっ!! 戻ってきたぁぁ!!」
永遠を思わせる苦悶。
先のペテルギウスの憑依とは比べ物にならない程の苦行から解放され、スバルの意識は現実に覚醒した。
【一体、オレと嫉妬の魔女に何の関係があるんだってんだよ】
それは、現実に解放される直前に、苦行の中においても、スバルの中を一定の割合を占めていた疑問。クルル(ナニカ)に聞いてもそれは答えてくれなかった。
「―――っ、他力本願上等なオレだが、これに関しちゃ、オレ自身の力で解き明かしてやらねぇといけねぇ……か。一応、惚れられちまってるからな」
あの存在の愛の囁きだけは頂きたくない。
何よりも、自分の両手は既に塞がっている。
愛を囁きたいのも、囁いて欲しいのも、もう決まっているから。
「――――っと、それより!」
色々と耽っている暇はない、とスバルは直ぐに視線を変えたが……、もう終わっているも同然だった。
「解ったか? お前は眼中に無いって事が」
「こん、な……、はず、は………、こんな、けつ、まつ……あり、えない……の、デス」
既に致命傷だったペテルギウス。
スバルの肉体を乗っ取る事で生きながらえようとしたその目論見は打ち砕かれ、最早死を待つだけの身体に舞い戻り、その苦痛に喘いでいる。
「出ていくまで何度でもやってやる、って気概だったってのに、たった1回でギブたぁ、根性なしも良いトコだぜ!」
それだけ愛されてるという事だね、とツカサは言いたかったが、口を噤む。
何せ、ここにはユリウスもいるからだ。スバルが変な事を言ったり騒いだり、はユリウス自身も解っている事だが、そこにツカサが入って状況を説明してしまうと――――あの嫉妬にまみれた魔女が憤慨するのが目に見えている。
ラムとレム。今の所許されている範囲は4人までだ。ナニカの存在で何とか出来るとは思うのだが、あの愉快犯をそのまま信頼すると手酷いしっぺ返しを食らうので、しない。
「今度こそ終わりにしよう」
「ああ」
私がする、と名乗り出てくれたのはユリウス。
万象を切り裂く虹色の剣を手に、その魂を今度こそ虹の彼方へといざなう為に。
そして、一息つく間もなく、死に体なペテルギウスに容赦なく突き刺した。
ゴフッ、と口から血が噴き出し、焦点の合わぬ目で天を仰ぎながら、感情の内を爆発させた。
「何故、何故、何故ぇ――――! 魔女よ……! 魔女よぉぉ! これほどまでに、アナタのために捧げ、あれほどまでにアナタの為に尽くして、思いつく限りのすべてでアナタに報いたというのに、何故、何故――――!!」
「好いた惚れたは自由。例えそれが世界の半分を吞み干した魔女、……嫉妬の魔女サテラであったとしても、選ぶ自由はある。お前は見向きもされなかった。ただの独り善がりだ」
もう幾ばくも無い命であったとしても、ツカサの見下ろす眼光には同情の欠片もない。
ただただ、冷徹に事実だけをその狂人の黄泉への餞別にと送るだけだ。
「つか、つか、つかつかつかつかつかつかつかつか―――――――――――!!」
――――ツカサぁぁぁ!!!!
血飛沫を口から噴出しながら、最後の力でその名を叫びながら、見えざる手を発動させた。
だが、最後の残り香、華々しく散ろうと言うその心根さえも、ツカサは許しはしない。
「テンペスト」
いつの間にか、ペテルギウス周囲には、暴風が湧き起こり、無駄な破壊を拒んでいたからだ。
幾度も手を伸ばし、弾かれ、時には搔き消され、最後の残り香でさえ、残る事が出来ない。
「オレがお前がスバルの中にいた時、ただ黙って見ていただけだと思っていたか?」
暴風の結界は、軈て範囲を狭めていく。
余計な破壊を一切しない。それでいて―――外に何も逃がさない。
ペテルギウスの見えざる手も、
「その身体は人間のモノだ。なら、精霊としてのお前自身の身体は何処にある?」
命尽きるまで、狂った様に喚き続けるペテルギウス。
ツカサの問いに答える事はない。
「肉体が滅んだとしても、その精神は、その精霊としての形は現世に残る。……そうだろ?」
確信があるわけではないが、間違いない筈だ。
パックやクルル、ベアトリスといった様に、その身体は人間のソレではなく、精霊として己のオドを核としてマナで身体を構成したもの。ペテルギウスの身体は傷つけば血が出る。骨も折れる。間違いなく生身の人間。
パックは、エミリアが持つ石の中に入っている様に、人間の中に入っているペテルギウスは、その肉体が死に絶えれば、もう入る肉体が無くなれば恐らく精霊としての姿が顔を出す。
ただ、魔女の愛に狂い、厄災をまき散らし、暴走するだけの邪精霊の姿に。
「それを許す訳無いだろ」
ツカサはテンペストの結界の中で新たに魔力を溜めた。
そう、スバルがやり合っていた時に溜めていた3種の力に加えて、もう1種……今溜め直した。
結界用に使っていたテンペストの力を……風の魔法をその腕に窶す。
彼の腕の中には4種の魔法が存在している。
そして、訪れるは白の世界。
万象を成しえる根源の力。
―――カタストロフィ―――
もう存在しない世界の分の悲しみや怒り、そのすべてを込めて。
狂気を白で覆い、掻き消した。
魔女教大罪司教【怠惰】担当ペテルギウス・ロマネコンティ。
VS
エミリアとレムの【自称英雄・自称騎士】ナツキ・スバル
王国とラムの【英雄】ツカサ
王国の【最優の騎士】ユリウス・ユークリウス
大罪の一角、崩れる。
予告!(かもしれない………)
ソロソロ、原作とちょっと違う方向へ……? (-ω-;)ウーン