Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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( ´~`)( ´~`)( ´~`)


『◼️◼️◼️◼️◼️』

ラムは心臓を鷲掴みにされたかの様に、突如胸が苦しくなった。

 

 

―――そして、次の瞬間には身体に悪寒が走り……嫌な予感がしていた。

 

 

 

 

 

 

 

王都に戻る際に、魔女教の襲撃を受ける。

 

 

確かに魔女教とは、永きに渡り世界に災厄、厄災を、振りまき続けた最悪な存在だ。

その性質は凶悪で、極悪で、兇悪で、残酷―――、言葉じゃ言い表す事が出来ない程のものだ。

 

 

でも、そんな闇を具現化した様な奴らをものともしない大きな光が常に傍にいるから大丈夫なんだ。

 

 

闇や影が、どれだけ迫ってきたとしても、明るく、暖かな光は皆を包んでくれるから、大丈夫なんだ。

 

 

それに、その光は、自分の心をも満たしてくれた。溢れる愛しさで満たしてくれた。

 

当時は、心から愛している、と思っていた相手が居たと言うのに、心変わりをした事。それも指摘されて、心変わりをした事を告げた時もあり、心底卑しい女だと思えた。―――でも、自らの心に従った。抗えなかった。抗うつもりも無かったのかもしれない。

元々、最初に愛した男は、自分の事を見向きせず、そして全く気付かれもしなかった事も、ある意味では良かったと今なら思える。

 

 

 

大きな光が傍にいる。

【白鯨】も【怠惰】も退けた。

ここから先に待ち構えているは、【強欲】と【暴食】

 

でも、大丈夫だと、強く想っていた。

絶対に、大丈夫だと。

 

 

ただ、不安だったのは己が身を顧みない所にある。

だからこそ一緒に来た。

一緒にいれば、きっと大丈夫。最後にはラムの元へと帰ってきてくれる。

 

約束を、したから。

 

 

 

それなのに、何故だろう?

不安が、身体中にまとわり、へばり付き、離れようとしないのだ。

 

 

 

 

 

「――――ッ!」

 

 

 

 

その一番の理由、ラムは、ツカサと短くも濃く長く時を(・・)共にしたからか、歪み(・・)を感じられるようになった事に尽きる。

 

何故感じる事が出来るのか、その理屈はわからない。

だが、直感で解る様になってきている。

 

 

 

「―――今、時間が……、また(・・)

 

 

 

そう、感じる事が出来るのだ。

一緒に戻った訳でもないと言うのに―――時がまた(・・)、戻った、と。

 

それは、共有読込(シェア・ロード)の様に100%覚えてる訳じゃない。未来(さき)で何があったのか、はっきりと覚えている訳じゃない。

 

ただ、直感で時間が巻き戻った事実を、朧気ながらも認識する事が出来たのだ。

それも、感じる歪みは 1つや2つじゃない。あまりにも複雑に入り乱れており、考えられない、数えきれない、頭の中が混乱し破裂してしまい兼ねない程の衝撃を受けていた。

 

 

慌てて、ラムは竜車の中を見渡して探した。

無論、探している相手はただ1人だ。

 

 

 

 

 

「はぁ~~~、僕って姉弟の中じゃ、やっぱりダメダメですよ……、ティビーは全ての面で僕より優秀ですし……」

「――――いや、そんな事は無いよ」

「そーでしょーか? ツカサさん。……絶対、お姉ちゃん、きっと今頃僕の事【へータローは貧弱軟弱~】って言ってると思いますよ? ……まぁ、お姉ちゃんは元気すぎると思いますけどね」

 

 

 

目で探したら、直ぐ見つける事が出来た。

グッタリともたれ掛かっているへータローと話をしているその背が目に入った。

 

 

「……へータローのおかげ、なんだ」

「え?」

 

 

意気消沈気味。

撤退組に加わってからと言うもの、ずっと意気消沈していたヘータローと話をしていた。

ラムの中にあった心配の心が、一瞬だけ安堵し……そしてすぐさまその安堵感は消し飛んだ。

 

 

「ヘータローのおかげで、皆が助かる(・・・・・)。ヘータローが居なかったら、全滅していた。……お前のおかげなんだ。誇って良いと思うよ。恐れ多くも、王国から勲章を頂けた俺が太鼓判を押す、よ」

「……どういう、事ですか? え……ツカサさん? 大丈夫……ですか?」

 

 

ヘータローからしてみれば、彼とはほんのつい先ほどまで、普通に話をしていた筈だった。

ほんの少し、落ち込んで目を逸らせた後に、明らかに変わった姿を見て、思わず目を見開いた。……驚いたのだ。

まるで、生気を奪われたかの様な顔だった。それに、綺麗な黒髪だった髪の色が白へと変っているのが目立つ。

 

 

そんなヘータローを他所に、ツカサは手を伸ばしてその頭を撫でた。

 

 

「感謝してる。……ありがとう。ヘータローのおかげで、大切な人を、皆を、護る事が出来る」

「ッ、つか、ツカサ、さん……?」

 

 

ヘータローは更に驚く。

触られた事に対して、ではなくその手だ。

 

頭を撫でられる事から、伝わってくる体温。獣人は人間とは遥かに多い体毛もあり、素肌の人間と違って相手の温もり、体温が伝わりにくい。

だが、それでもハッキリと分かった。

 

人である筈なのに、その手には熱が無い。

冷たいのだ。

 

それは、まるで――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッッ―――!?」

 

 

ほぼ同時に、もう1人、混乱極まっている者が居た。

それは、つい先ほどまでラムと話をしていたクルシュだ。

 

腰を下ろし、これから先の対応に頭を悩ませながらも、皆と達成感を共有し、ラムとも談笑していた筈だった。ただ、それだけの筈だったのだが、目の前に広がっていた光景、白昼夢とは思えない程のリアルさ、痛覚、ありとあらゆる情報が身体の芯に伝わってくる。

 

 

異様な光景だった。

魔女教の襲撃があった筈だった。竜車は粉々にされた。生き残った臣下たちを何人も虐殺した。

 

ツカサのおかげで、生き残った者たちも居たが、その殆どは、次々と粉砕させられ、その命を散らされた。自分の攻撃は一切通らず、ただただ護られる事しか出来なかった。無力を嘆いた。

そして、自分自身もただでは済まなった筈だった。

致命傷を受けた筈だった。

 

フェリスが居ない今、絶望的だと思えた状況だった。

 

最後に覚えているのは、降り注ぐ雨。

一滴一滴が死を呼ぶ、【死の雨】だった。

 

 

だが、それは今は? どうなってる? 頭が混乱する。思わず叫び出してしまいそうな衝動をどうにか抑える。

 

クルシュが見た光景は掻き消えている。

 

 

「クルシュさん」

 

 

混乱しきってる頭だった。

普通ならば、他人の声など入らない。入れる余裕なんてない。それは如何にクルシュ程の精神力の持ち主だったとしても同様の筈だった。

 

そんな頭でもハッキリと聞こえてくる、頭に入ってくる声があった。

 

鮮明に、はっきりと、そして何よりも落ち着ける様なそんな声。

 

 

 

「―――黙っていて、すみませんでした。これが、オレの力(・・・・)です。……落ち着いて」

 

 

 

混乱しきった頭に入ってくる声。

そして、クルシュを身体を包む暖かな風。風見の加護と相まってか、より精神を落ち着かせる事が出来た。

 

 

 

「つかさ!? 今のは、今のは、一体――――ッ」

「この先に、何があるのか(・・・・・・)。この先で、何が起きるのか(・・・・・・・)。もう、知っている筈です」

「つか、さ?」

 

 

混乱する頭であっても、入ってくるツカサの声。

そして、落ち着いていく精神。

 

だからこそ、気づく事がある。

ヘータローやラムが気付いた様に、目の前のツカサの様子が明らかにおかしい事に。

 

 

そして、ラムが駆け出した。

 

 

「ツカサっ!?」

「―――もう、時間が無い」

 

 

ふらりと揺れる身体。まるで、力が入っていないかの様な身体。

ラムの不安、心配がピークに達する。

 

 

 

ツカサは、生気の無い眼で、ラムを見た。

少しだけニコリと笑うと……目を軽く伏せた。

 

 

「ごめん、ラム。約束―――守れそうにない(・・・・・・・)

「ッ!? な、なにを言っているの」

「でも、これが唯一の道(・・・・)。これしか、無かった。だから、オレは逃げた訳(・・・・)じゃないから。それだけは……ラムにだけは、わかってほしい。ラムなら、わかってくれる……よね? しんじてる」

 

 

 

ツカサは、ラムを抱きしめた。

ツカサに抱きしめられたラムは……戦慄する。身体の震えが止まらなくなる。

愛しい人に抱きしめられていると言うのにも関わらず、ラムの心は冷え切っている。

 

 

この感覚は、覚えがあるから。

 

 

 

こんなに触れているのに、こんなに傍にいるのに、愛しい人が目の前にいる筈なのに心が震え、凍っていく。

 

ツカサは、ツカサの身体からは全く生気を感じられない。

冷たい身体。まるで、死んでしまっているかの様な冷たい身体だから。

 

 

それは、あの時……、世界が白銀に染まり、時間が逆行し、ツカサが鮮血で染まったあの時と同じだった。

いや―――それ以上。

 

 

 

「愛してくれて、ありがとう。ラム」

 

 

 

耳元で愛を囁く。

それはまるで餞のよう。

死にゆく者からの、最後の餞……。

 

 

 

「クルシュさん。……どうか、ラムを、みんなを、よろしくおねがいします」

「――――ッ」

 

 

理解が追いついているとは言えない。

だが、言葉に出来なくても、クルシュにも解る事はある。

 

この先に、魔女教が待ち構えている。

 

【強欲】と【暴食】の2名。

 

たった2名により、壊滅的な被害を被ってしまう。

それは、白鯨を退けた王国の英雄の力をもってしても、届かない程のもの。

 

 

厳密にいえば、ヴォラキア帝国の城塞都市をたった1人で壊滅させた【強欲】レグルス・コルニアス。かの存在、かの男だけ、どうしても突破する事が出来なかった。

 

クルシュは覚えている。

レグルスだけがどうしても無駄だった。あの無敵の身体、不可視の攻撃、絶対の破壊の能力、権能だけがどうにもならなかった事を覚えている。

 

何をしようとしているのかは、わからないが、決してさせてはいけない、1人にしてはいけないと、クルシュは本能的に察した。

故に事細かく問いただそうと、止めさせようとしたが、それよりも早くにラムが動いた。

 

 

 

 

 

「何をするつもり……? いいえ、何をしようとしても、ラムは絶対にこの手を離すつもりはないわ。ツカサが逝くと言うのなら、ラムも最後まで一緒に連れて逝きなさい。―――一緒に、立ち向かっていくと約束……した筈よ。心を、強く持ちなさい、と言った筈よ」

 

 

 

 

 

 

生気の無い身体に、ラム自身が生気を与える様に。

マナを移譲してくれている様にラムからツカサへと伝わる様に、身体を抱きしめ続ける。

 

ラム自身にそんな力はないが、想いの力は時として現実を超える事だってあると信じて、ラムはツカサの身体を抱きしめた。

 

ツカサが倒れていた時にもしていた様に。

 

 

「ツカサは言った。―――絶対に、ラムの所に返ってくるって。約束する、って言った筈よ」

 

 

一筋の涙がラムの頬を伝う。

もう殆ど時間は残されていない事はラム自身も解っている。ここから、あの魔女教が手始めに先頭の竜車を襲撃する。そこから惨劇が始まる。全て、覚えている。

こんな事をしている時間はないと分かっている。それでも、手を放す事は出来ない。

 

 

 

「――――ごめん」

 

 

 

ツカサは、ラムの身体を抱きしめ返した。

 

 

 

「ラムが、ラムが死ぬのだけは堪えられそうにない。もう、ダメ。……ラムが、ラムが……」

 

 

 

 

涙が、瞳から溢れ、軈てラムにまで伝う。

 

 

 

 

「ラムが、オレが生きた証だ」

 

 

 

 

ラムの顔を見て、涙だけが流れる無表情のままの顔をラムに向けて、その唇にそっと口づけを交わした。

その口付けには、これまでの甘美さが、身の内側から溢れんばかりの多幸感が全くと言っていいほどない。

 

まるで全ては虚構だったかの様。

 

 

愛しい人に触れているのに、触れてない。

 

 

ラムには、ただただ、冷たい死の味がしていた。

 

 

 

 

 

 

軈て、淡い光がラムを包む。

その光は粒子となりて、ラムだけでなくクルシュを、ヘータローを、この竜車そのものを、討伐隊全体を包み込む。

 

 

 

 

 

 

 

―――紅玉に眠りし瞳。

 

 

 

 

 

 

ツカサの中から、あの精霊が姿を現した。

目映い赤の光で、周囲を染め上げた。

 

 

 

 

 

―――神々の導きに目覚めん。

 

 

 

 

 

 

掌の大きさの精霊が徐々に身体を大きく大きく変貌させた。

 

大きな四足獣の姿。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――我が聖戦に光を。

 

 

 

 

 

 

紅玉の光を放つ真紅の獣は、ツカサの身体へと消えてゆき、更に輝きを増した。

 

 

 

 

 

「ラム」

 

 

 

 

 

繰り返していた世界は、【108回目】にして漸く時計の針を先へと進める。

 

 

 

 

 

『 ◼️◼️◼️◼️◼️』

 




やーっぱし、この段階では無理かなぁー( ´~`)
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